テレワークグッズ・ミニレビュー

第43回

今年ってカミナリ多くない!? 停電対策に手頃なUPSを買ったら、NASと連携して使いやすい!!

夏のカミナリ対策にオムロンのUPSを導入してみた

 あくまで主観だが、今年はなにやらカミナリが多い気がしている。先日もカミナリがあって、近所に落ちたんじゃないかと思うほどの爆音に「停電」の不安が頭をよぎった。我が家では数年前からすべてノートPCになっているので、停電したところで大きな問題はない……、と思っていたのだが、ふと気が付いてしまった。「NASがやばい!」

 この連載でも以前紹介したとおり、先日リモートアクセスが簡単なアイ・オー・データ機器のNAS「LAN DISK」を導入したのだ。iPhoneからアクセスすることもあって、仕事中以外もNASの電源は入りっぱなしだ。例えば外出先からリモートでアクセスしているときなどに停電すれば、最悪の場合NASが壊れかねない。

 停電の可能性は落雷だけではない。冬だって積雪で電線が断線することはあるし、ドライヤーと電子レンジの同時利用でブレーカーが落ちることだってある。わざわざデータの冗長性のために2ベイNASを選んでいるのに停電対策しないというのはどうなんだ?

最近購入したアイ・オー・データ機器のNAS、LAN DISK「HDL2-AAX4E」

今はやりのポータブル電源をUPS代わりにできないか?

 普通に考えればUPS(無停電電源装置)の導入だが、ほかに使い道のないUPSを買うより、今はやりのポータブル電源を買ってUPS代わりに使えないか? などと思いついてしまった。NASの電源をポータブル電源経由で引っ張ることで、UPS代わりになるんじゃないかというわけだ。

 ポータブル電源なら、アウトドアでも100Vが使えるし、災害時にはほかの家電でも使えて役立ちそう。最近では手頃な価格の製品も増えてきて購買欲求を刺激するが、とは言え年に何回使うのかと思うと、なかなか踏み切れない。しかし普段使いからUPSとしても役立つなら買ってしまってもよさげじゃないか!!

 と思って調べてみたのだが、結論からいうと難しそうだ。もしかしたら筆者の知らない製品があるかもしれないし、今後、対応製品が出て来る可能性は考えられるが、現時点で筆者が調べた範囲では難しい。

 まず一般的なUPSとポータブル電源では給電の仕組みが違う。多くのポータブル電源の場合、給電用コンセントはバッテリーにのみ繋がっている。そのため、NASをポータブル電源に繋いだ場合、NASへの給電は常にバッテリーから行われる。

 つまりNASをつないでいる間、バッテリーは常に充放電を繰り返すことになるわけで、停電していない間もバッテリーにダメージを与え続けてしまうわけだ。

 その点、UPSの給電用コンセントには、普段は壁コンセントから来る電気が直結しているので、バッテリーを介さずに給電できる仕組みになっている。停電したときにだけバッテリー給電へと切り替わるわけだ。

 ただし、調べた範囲ではAnkerのいくつかの製品で、UPSのようにバッテリーを介さない「パススルー充電」に対応したモデルがあった。ただし、もう1つ問題があって、それが切り替わりに必要な時間だ。

 パススルー充電の場合、停電した瞬間に、壁コンセントの給電からバッテリー給電に切り替わるわけだが、そこにはタイムラグ(瞬断)がある。UPSでも同じで、一部のモデルを除いて瞬断が発生してしまう。ただし、その時間はわずかで、個人向けの低価格なモデルであっても10ミリ秒程度で、家庭で使うPCやNASであれば、影響のない範囲に抑えられている。

 これが、Ankerのパススルー対応モデルの中でも簡易UPSをうたっているモデルでは、切り替え時間が明言されていない。唯一「UPS機能」を明言している「Anker 757 Portable Power Station」だけは、20ミリ秒での切り替えが可能なっているものの、16万9900円という大容量モデルなので、UPS代わりと気軽に手を出せる製品ではない。

パススルー充電に対応し、簡易的なUPSとして使える「Anker 521 Portable Power Station」
切り替え時間が20ミリ秒という、より本格的なUPS機能を備えた「Anker 757 Portable Power Station」

個人で使えるUPSってあるの?

 ということで気を取り直してUPSを調べてみる。恥ずかしながらかなり昔に調べた印象で、UPSといえば業務用の大きくて高価なもの、というイメージを持っていたのだが、調べてみたら個人ユースでも使えそうなモデルが結構あった。

 価格も意外とお手頃で、個人利用向けであれば1~2万円のモデルもある。メーカーによっては、あくまで想定だが5年程度使えるらしい。また、バッテリー交換可能なモデルもあって、ランニングコストもさらに安くなりそうだ。仮に2万円のモデルで5年使えれば、年間では4000円、月額333円ほどのランニングコストなので、バックアップ用にクラウドを数テラ契約するよりは安く済みそうだ。

 メーカーも種類もいろいろとあったが、筆者が選んだのはオムロンの「BW55T」だ。価格としては2万円を下回る程度。それでいて期待寿命5年という長寿命バッテリーを搭載し、バッテリー交換も可能なのでランニングコストを抑えられる。UPS本体3年保証に加え、バッテリー3年間無償提供サービスが付くなど、長く使っても安心そうだ。

オムロンの「BW55T」

 実はアイ・オー・データ機器のウェブサイトには「ランディスク対応UPS一覧」が用意されていて、その中から選んだ形だ。他のメーカーのNASでも対応するUPSが公開されていることが多いので、そこを参考に選ぶとよいだろう。

 一言でUPSと言っても医療用などの特殊なモノから業務向けのモノまでいろいろとあって、どれを選べばいいのか分かりにくい。もちろん利用環境によって必要な容量も仕様も変わってくるので、各自調べてくれとしか言いようがないのだが、その上ですごーくざっくりと、個人利用ならコレ買っておけば大丈夫だろう的な存在がオムロンのBW55Tだと言える。実を言えば、筆者の使い方ならもう1つ下のBW40Tでも十分だったかと思っているところだが、将来的に環境が変わるかもしれないと思えば、まぁいいかと思える範囲だ。

個人で使うUPS選びのポイント

 UPSの説明をちゃんとするとものすごい文字量になってしまうので、すごーくざっくりと個人利用に絞って説明したい。

 まず給電方式の違い。「常時インバータ給電方式」「ラインインタラクティブ方式」「常時商用給電方式」の3つがあるが、個人利用で一般的な家庭向け機材しか使っていないなら常時商用給電方式でいい。ほかの2種類は、安定した電源を求められるシビアな機材や、1ミリ秒の瞬断も許されない医療機器などで使われるものなので、そういった特殊な機材を使っていない限りは、価格も最も手頃な常時商用給電方式で大丈夫だ。

アイ・オー・データ機器のウェブサイトに掲載されているNASに最適なUPSの選び方。同社のNASでは常用商用給電方式が最適とある

 続いてバッテリーの容量だ。容量が大きければそれだけ長い時間、バックアップ電源を供給することができる。ただし容量が大きくなれば価格にも反映されるので、あくまでPCやNASをシャットダウンするための時間を稼ぐものと割り切りたい。

 そしてもう1つ容量で気にすべきなのが、UPSに接続できる最大出力容量。オムロンのBW55TとBW40Tの違いはここで、前者が550VA/340Wまで、後者が400VA/250Wまでとなる。実はこの2モデル、搭載しているバッテリーの容量は同じなので、筆者のように使用する機器が少ないならBW40Tでも事足りたかもしれない。

 ちなみにBW55Tで最大となる340Wを使い続けた場合で、3.6分間電力を供給できる計算だ。後述するが1分後に自動シャットダウンする設定にすれば、たぶん間に合う時間だろう。何年も使っていれば、バックアップできる時間は短くなっていくので、その分も考慮する必要はあるが、実際にはつないでいるNASも、常に最大容量の電気を要求しているわけではないので、最大容量で340Wの機器をつないだとしても、もっと長時間バックアップ給電できる可能性は高い。

 次に出力する電力の波形だ。大きく分けると正弦波と矩形波があって、正弦波を選んでおけば問題ない。矩形波のモデルのほうが安いが、PFC電源を搭載した機器を動かすことができない。現時点でPFC電源を使った機器を持っていなかったとしても、将来的な機材の買い換えや買い増しを考えれば正弦波出力できるモデルを選んでおくほうがよいだろう。もちろんBW55T(BW40Tも)は正弦波対応だ。

 最後に自動シャットダウンとかUPS連携といった機能について。

 これは、文字通り停電したときにPCやNASを自動でシャットダウンさせる機能のこと。多くのUPSにはPCやNASとUSB接続できるようになっていて、停電したという情報を伝えることができる。筆者の使っているLAN DISK(HDL2-AAX4E)の場合、このUPS連動に対応しているので、たとえ外出中に停電になったとしても、その信号をキャッチして自動でシャットダウンしてくれるというわけだ。

LAN DISKとUPSをUSBケーブルで接続することで、停電した情報が伝えられ、自動シャットダウンといった連動機能が使えるようになる

 というのが、非常にざっくりとしたUPSの選び方だ。できるだけカンタンにしたつもりだがそれでも結構長くなってしまった。なお、オムロンのウェブサイトには「UPS選定ツール」として、接続する機器の電源容量や希望のバックアップ時間などからオススメのUPSを選べるページもあるので、そちらを参考にしてもらってもよいだろう。そして原稿を書くために改めて調べ直すと、やっぱりBW40Tでも十分だったんじゃないかという思いが強くなったのも事実だ。

使い方はいたってカンタン!!

 ということで商品が到着。サイズ感は……、それなりに大きい。大型のデスクトップPCと並べばそれほどでもないかもしれないが、ノートPCがメインの環境だと、なかなかの存在感だ。

 本体の他に3Pのコンセントプラグを2Pに変換するアダプターと、NASやPCなどにつないでシャットダウンの信号などを送るためのケーブルなどが付属する。説明書は同梱されていなくてスマホでQRコードを読んでサイトにアクセスする形だ。サイトも説明書もすべて日本語。また、本体にもエラーコードの説明などが書かれるが、こちらももちろん日本語だ。非常時にしか使わない製品なだけに、こういった表示があるのはうれしい。

2ベイのLAN DISKとサイズ比較。それなりの大きさはある
背面にはコンセントが4口と、NASやPCとつなぐUSB/接点ポートなどがある。側面にはアイコンなどの説明がある

 といっても使い方に難しいことはない。というかむちゃくちゃカンタンだ。基本的にはUPSと接続する機器(NAS)をつないで電源をオンにすればいいだけ。その状況でUPSの壁コンセントを抜いてみると、停電したのと同じ状況になって瞬時にバッテリー給電へと切り替わる。さらに便利に使うためにはいくつか設定も必要だが、UPSとしての機能はデフォルトのままコンセントにつなぐだけで問題無く発揮される。

 また、この際に表示部にはバッテリーのアイコンと、現在の出力の度合い、そしてその状況で予想されるバッテリーの持ち時間などが表示される。ちなみに筆者のLAN DISKを1台だけつないだ状態だと、残り時間は99.9の表示になった。なにも書き込んだりしていなければNASの消費電力なんてこんなモノだろう。

 設定は前面のボタンで操作するほか、PC用のソフトを使って設定することもできるようだ。ただ、LAN DISKと連携する場合、LAN DISKの設定でコントロールできる。

 ちなみに、実際に接続機器をすべてつないで、停電時にバッテリーがどれだけの時間持つのかを計測しておくと、将来的にバッテリーの劣化具合を判断するのに役立つ。

壁コンセントから電源が来ている通常の状態。左上の波形のアイコンがその証。106Vで出力できているという表示
コンセントを抜いてみるとバッテリーのアイコンに切り替わる。満充電状態ではないが、それでも残り時間99.9Minの表示。NASがシャットダウンなどを始めると消費電力が増えるため一瞬残り時間が短くなるが、その程度だ

LAN DISKとの連携でウェブブラウザでカンタンに設定

 続いてLAN DISKの設定をする。PCをシャットダウンする場合、専用のアプリを使うのだが、LAN DISKの場合、LAN DISKの設定画面でUPSの設定ができる。

 まずはUPSに付属のケーブルを使って、NASのUSB端子に接続。

UPSとNASを付属の専用ケーブルで接続する。もちろんNASの電源はUPSにつなぐ

 続いてウェブブラウザからLAN DISKの設定画面にアクセス。「情報・ログ表示」の中の「システム情報」でUPSの接続状態が確認できる。するとすでに「UPS接続状態」は正常になっていた。細かなこと言わなければすでにUPSの設定は完了だ。

ウェブブラウザからLAN DISKの設定画面にアクセス。システム情報を見るとUPSが認識されていることが分かる。この画面でバッテリー残量やバッテリー状態、UPSの内部温度なども確認可能だ

 ただし、もう少し使い勝手を上げるために、次に「ホーム」から「システム」>「電源」>「UPS設定」に進む。ここでUPS警告の設定と停電後のシャットダウンまでの時間を設定する。

UPS設定画面。UPS警告は有効にしておいてよいと思う。停電後のシャットダウンの時間は状況に応じて選びたい。複数のLAN DISKを持っている場合は、連動してシャットダウンさせることもできる

 「UPS警告」というのは、UPSとの接続ケーブルが抜けてしまっていた場合にランプやブザーで警告するというもの。デフォルトでは「無効」になっているので「有効」にしてみた。

 「停電後のシャットダウン」は、1分、5分、10分から選択できる。文字通り、停電した場合にどれだけ時間が経ったらシャットダウンを始めるかというもので、UPSのバックアップできる時間が短ければ1分などにすればよいし、余裕があるなら5分や10分を選んでおけば、短時間で復旧した場合はシャットダウンされないで済む。ブレーカーが落ちた場合にも5分あれば配電盤から復旧できるだろう。

 ちなみにバッテリーが弱ってきたりして、想定よりもUPSのバッテリーが早く減る可能性もあるが、そうした場合であっても、UPSのバッテリー残量が30%以下になると、設定時間にかかわらずシャットダウンを開始するようになっているので安心だ。

 「ネットワークシャットダウン機能」とは、USBで直接つないだLAN DISKだけでなく、同じLAN上にある他のLAN DISKシリーズも自動シャットダウンさせる機能。UPSには1つの信号出力ポートしかないので、複数の機器をUSB接続することはできないのだが、この機能を使えば複数のLAN DISKをシャットダウンできる。ただしLAN DISKでもネットワークシャットダウンに対応していないモデルがあるのと、他のメーカーのNASはコントロールできないので注意。

 そのほかにも、停電から復帰したときに自動で電源をオンにする「AC電源連動設定」(ホーム>システム>電源>AC電源連動設定)や、エラー発生時などにメールで通知する「定期通知」(ホーム>システム>通知>定期通知)なども利用可能だ。ただし、定期通知を利用するためにはメールの設定なども必要になるのでちょっと面倒。AC電源連動設定は有効にしておいたほうが便利そうだ。

AC電源連動設定は有効にしておくと停電から回復したときにLAN DISKが自動で起動する
メールで通知する定期通知の設定。他にメールの情報も設定する必要がある

 ということで設定は終了。まずは1分間でシャットダウンし、通電後は起動する設定にして試してみた。

 すると動作はばっちりだ。コンセントを抜くとUPSの警告音がピッピッと鳴り続け、バッテリーのアイコン表示に。続けてその信号がLAN DISKに行くのだろう、LAN DISKのランプがグリーンからレッドに変わる。ただし、この時点で電源が落ちることはない。1分経過するとLAN DISKが自動でシャットダウンを開始。50秒ほどで無事LAN DISKの電源が落ちた。なお、UPSの警告音は停電中鳴り続けるが、ブザー停止ボタンを長押しすれば消すことができる。

 次にコンセントをつないでみる。停電から復帰した想定だ。

 するとピッという音とともにUPSのバッテリーのアイコンが、コンセントからの電源を表すアイコンに切り替わる。ただしどうやらUPSがチェックを行っているようで、アイコンが点滅している。およそ2分ほどでピーっという音とともにアイコンが点灯に。するとLAN DISKも自動で起動を始めた。LAN DISKが立ち上がるまでに3分25秒ほどかかったので、トータル5分25秒ほどで完全復旧状態となった。

 ということでこれでいつ停電になっても大丈夫になったわけで、それ以降はカミナリが鳴っても安心感が違う。なんなら停電にならないかと期待してしまう状況だ。BW55Tにはサージ保護機能も付いているので、落雷には鉄壁と言えるだろう。

 筆者はNASだけをつないでいるが、電源には余裕がありそうなので、スイッチングハブや外付けのディスプレイも1枚つなごうかと思っている。そうすれば仕事中に停電になったときも、ノートPCのディスプレイを開くことなくシャットダウンをすることができて便利そうだ。