テレワークグッズ・ミニレビュー

番外編 現役大学生のデジタル事情6

エントリーシートや面接はオンラインが定着し、新しい就活の方法も盛んに―2023年卒大学生の就活事情

 私は現在大学4年生で、就職活動を経験し、先日無事に内定式を終えました。今回は私の経験をもとに、2023年大学卒業予定の学生たちの就活事情を紹介します。これから就活を始める人や、コロナ禍以降の就活がどのように行われているか関心がある人の参考になればと思います。

 エントリーシートの提出など、近年は就活における多くの手続きがウェブで行われるようになりました。さらに、「ニューノーマル」と言われる時代に順応するように、面接などもオンラインでの実施が多くなっています。また、インターンシップやスカウトといった、「エントリーシートを提出し、何度もの選考を経て内定をもらう」という一般的な就活とは異なる手段のウエイトが大きくなってるのも、最近の大きな変化だと思います。

テレワークが定着しているINTERNET Watch編集部だが、大学生のインターンスタッフもテレワークで業務に参加している。今回はテレワークグッズミニレビュー 番外編として、就活を終えたインターンスタッフが、最新の就活事情の一端を紹介する。

 学生の就活に関しては、経団連がいわゆる「就活ルール」を決定していましたが、2021年卒対象のルールを最後に廃止されました。以降は、政府主導でそれまでのルールが維持されている状態になっており、私が就活をした2022年は、2022年3月1日が採用活動の広報解禁日、6月1日が選考活動の解禁日と定められていました。

 3月1日の採用活動の広報解禁日には、企業の新卒採用ページや就活サイトで「プレエントリー」が始まります。いわばメルマガ登録のようなもので、企業説明会などの選考情報(企業の採用に関する情報)をいち早く入手できるようになります。

 6月1日の選考活動の解禁日は、「日時や場所を指定する選考」の解禁日で、エントリーシートの受付や、オンラインで任意の時間に行える適性検査(特性などを測り企業との相性を見る検査)などは、この前から行われています。

 企業研究などの実質的な就職活動は、ずっと早くから始める人もいますが、一般には3年生の夏ごろから本格化します。なぜなら、夏休みになると、3年生向けの夏季インターンシップが開催されるからです。企業によっては、参加した学生に対してエントリーシートの免除や特別な選考枠などのメリットを用意している場合もあります。

 そのほかの就職活動として、スカウトサイトに登録して企業からのスカウトを待つ手段もあります。こちらも大手就活サイトと同じように、その年の翌々年に卒業する学生(2022年であれば2024年卒)が登録できるため、3年生から始める人が多い傾向にあります。

就活サイトの定番、「リクナビ」と「マイナビ」
新しい就活スタイルとなるスカウト(逆求人)サイト「キミスカ」と「OfferBox」

戦いは大学3年生の夏から始まる

 インターンシップとは、1日~1カ月ほどの期間で実施される職場体験のことです。実際に働いてみることで、仕事内容や職場の雰囲気などを知れるようになっています。人気の企業では応募時にエントリーシートの提出はもちろん、面接も数回行われるため、綿密な準備が必要です。

 私が参加したある企業の1日インターンシップでは、複数のグループに分かれて、実際の取引先に企画の提案を行い、順位を付けて評価していただく、という体験をしました。実際に社員になって取引先の前に立っているような緊張感や、やりがいを感じられました。

 同様にインターンシップに参加した友人たちの話を聞くと、このように実際の業務を体験できるものもあれば、事業紹介がメインの、ほとんど企業説明会のようなものもあるようです。傾向として、1日だけのインターンシップでは会議室などでワークショップとして行う企業が多いようで、仕事の体験プログラムとして有意義な体験ができる一方、職場のリアルな雰囲気などは、分かりにくいように感じました。

 インターンシップに参加することで確実に内定へとつながるわけではありませんし、「選考には一切関係がない」と明言している企業もあります。それでも、周りより早く企業の情報を集め、体験を通して自分の適性を考えることは、後の就活を有利に進めるために役立つと思います。

カメラはオン? オフ? 企業説明会のスタイルはさまざま

 3月のプレエントリーの後、企業説明会などに参加して企業研究や業界研究などを行ったら、その中から実際に選考を受けることにした企業に対して、エントリーシートを提出します。

 私は約140社にプレエントリーし、そのうち約50社にエントリーシートを送りました。この数は、友人たちと比べてもかなり多い方です。私は入りたい業界が決まっていたので、その業界の多くの企業に話を聞きたいと考えていました。

 コロナ禍に入ってすぐは合同企業説明会(複数の企業が参加しての説明会)も完全にオンラインでしたが、2022年3月ごろは対面とオンラインの併用開催がほとんどでした。一方、個別の企業説明会は、私が受けた中では2社のみが対面で、残りは全てオンラインでの開催でした。コロナ禍になり、不特定多数が訪れる企業説明会を一企業が行うのは、感染症対策の面で難しくなったからだと思われます。

 オンライン説明会の形式はさまざまです。動画として共有される場合には、通学時など自分の都合のいいときに視聴でき、時間を効率よく使えます。その代わり、その場で企業に質問できないため、質問したい場合には別の方法を使う必要があります。また、動画の公開期間が限定されている場合もあるため、要注意です。

 Zoomミーティング(Web会議形式)で実施し、ブレイクアウトルーム機能によって少人数で質問ができる説明会もあります。丁寧に対応してもらうことができ、とてもありがたいですが、少人数であるため、ただ聞いているだけではいけないような雰囲気を感じ、特に質問がなくても、何か質問しなければと必死に考えたことがありました。Web会議形式の説明会では、事前に企業のウェブサイトなどを見て複数の質問を用意おくのがいいと思います。

 ウェビナー形式(企業側のみ映像を配信する形式)の説明会は、学生側はカメラもマイクもオフでいいため、どこからでも参加できます。また、一方的に視聴するだけでなく、チャットで質問もできます。慣れないうちは、ほかの参加者の様子が一切分からないため不安で、質問しにくく感じましたが、同様の説明会に何度か参加するうちに、慣れていきました。

 なお、Web会議形式の説明会では、参加する学生側のカメラのオン/オフについて、明確な指示がされている場合と、されていない場合があります。「カメラはオフでOKです」とされていたら、ウェビナー形式に近い感覚でリラックスして受けられますが、オンにする必要があれば、髪型や服装、女性であればメイクと、それなりの準備が必要になります。

 事前に「カメラをオンにすること」という指示がないにも関わらず、開始後にオンにするよう言われたことが何回かありました。「オフでOK」と明確な指示がある場合以外は、カメラオンで問題がないよう準備をしておいた方がいいでしょう。

紙の履歴書からウェブのエントリーシート、そしてスカウト型就活へ

 企業説明会を経て選考を受ける企業を決めたとき、まず必要になるのはエントリーシートの作成です。選考を通過できるようなエントリーシートを書くには自己分析と業界・企業研究が必須になってきます。内容は自己PRや学生時代に力を入れたことのほか、企業によっては独自の課題を出してくるところもあり、私は1社に対して4時間ほどかけて作成していました。

 履歴書といえば手書き、というイメージがありましたが、私が作成したエントリーシートは9割がウェブ上での入力でした。残りの1割も手書きしたものをPDF化することがほとんどで、実物を郵送したのは2社だけ。紙の履歴書からウェブのエントリーシートに移り変わってきたのだな、という実感がありました。

 さらに近年では、「オープンエントリーシート」というもので提出する場合があります。これは、連絡先や学歴、自己PRなど、どの企業に対しても必要な情報をあらかじめ登録しておき、企業が求めてきた場合に提出できるツールです。2013年からリクナビが「Open ES」としてサービスを開始したもので、現在ではマイナビでも同様の「My Careebox」が提供されています。

実際に登録したOpen ES
実際に登録したMy Careebox

 エントリーシート提出のピークは3月~4月で、そのころには提出したいものが1週間で15個ほどありました。あらかじめ用意しておけるオープンエントリーシートで提出できる企業は、説明会や勉学で目が回るような忙しさの中では、とてもありがたい存在でした。

 同じように、情報を登録しておくことで企業からスカウトが届くスカウト型就活というやり方もあります。これは「逆求人サイト」と呼ばれる「キミスカ」や「OfferBox」などを利用するもので、企業でも就活生でも利用者が増えてきているようです。マイナビ、リクナビでもオープンエントリーシートでスカウトが届くようになっています。

 人によってはいくつかの選考過程をスキップすることができるため、かけた時間に対する満足度を示す「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視すると言われている「Z世代」、つまり今の20代前後に合っているのだろうと思います。

 情報を登録する際に、志望している業界や職種、企業規模などもあわせて登録するので、基本的には志望に沿った企業からのスカウトが届きます。ですが、自己PRなどを見た企業が「うちに是非!」となった場合は、思いがけないところからスカウトが届くこともあります。

 私の場合は、志望する業界に向けた情報を登録したつもりでしたが、そうではない業界からのスカウトが多く、「もしかして、こっちの方が向いているのかな」とも思いました。自分が考えていない可能性に気付ける点は、まだ志望分野がぼんやりしている人や、就活を始めたばかりの3年生にとっても、いいシステムではないかと思います。

 ちなみに、私は選考過程をスキップできるスカウトをほとんどもらえませんでした。スカウトにそれほど大きな期待をしていたわけではありませんでしたが、「就活市場における自分の価値はこの程度なのか」と感じられ、就活ですり減った心が痛かったです。

人は視覚情報が55%!? オンライン面接の舞台裏

 提出したエントリーシートによる書類選考をパスすると、いよいよ面接が始まります。私は対面とオンラインそれぞれで面接を受けましたが、対面の面接は早くても2次面接からで、1次からという企業は1社もありませんでした。

 人の印象は見た目で大部分が決まるとよく言われますが、それを裏付けるものとして、就活サイトなどでは「メラビアンの法則」がよく持ち出されます。この法則によると、コミュニケーションをとる際には言語が7%、聴覚が38%、視覚が55%の割合で影響するそうです。そして、オンライン面接は対面の面接よりその場の空気感が伝わりにくいこともあり、自分をよりよく伝えるために、私は画面に映る自分の「見た目」に気を使っていました。

 複数の就活サイトで紹介されていた就活マナーによると、意識が逸れるようなものがないように背景はなるべく無地がいいとのことで、私も窓がない白い壁を背にしています。

 もし完全に無地の背景がない場合はバーチャル背景を使うか、Zoomなどの背景ぼかしの機能を使ってもいいそうですが、印象が悪くなるとのことです。とはいえ、グループ面接を一緒に受けた人にバーチャル背景の人も背景にぼかしが入っている人もいたので、よほど堅い業界でない限りはさほど気にする必要はないように思います。

 ここで、私が使っていた「オンライン面接セット」を紹介します。

面接セット。PCの下に置いた2冊の辞書で高さを調節しています
正面から見るこんな感じ。国語辞典が小さいので、ちょっと不安定です

 無地の背景に合わせられる場所にPCを置くため移動式のチェストを土台にし、足りない高さを補うため、広辞苑と国語辞典を重ねた上にPCを乗せていました。カメラはPC内蔵のものを使用していたのですが、このカメラを目線より少し高い位置にすると、画面越しにいる面接官が、目が合っているように感じるそうです。

 実は、インターンとしてINTERNET Watchの記事を書くようになって初めて、高さ調整にはPCスタンドという手段があることを知りました。広辞苑はともかく国語辞典はサイズが小さく安定性に欠けていたので、もっと早く知っていればよかったと後悔しています。

 また、室内灯だけでは明るさが足りず、画面越しでは顔色が悪く見えるので、ライトを追加で付けました。作業机のライトを使用するのは配置的に難しかったため、3COINS(雑貨店)で「ライト付きスマホクリップ式ホルダー」を1100円で購入しました。

3COINSのライト付きスマホクリップ式ホルダー

 製品が想定する本来の使い方はスマホでのビデオ通話用ですが、PCと組み合わせてライト部分だけを使っても問題なく、効果的でした。ライトは白、暖色、白+暖色の3タイプあり、明るさは10段階で調節可能。全て付属のコントローラーで操作します。電源はUSBで、PCから給電して使えます。就活サイトが主催する合同企業説明会に参加したときにもライトをもらったくらいなので、今の就活生にとって、Web会議用のライトは必要不可欠なものになっているのだと思います。

 コロナ禍の就活で一番変わったのは、面接なのではないかと思います。無地の背景も、カメラ位置の調整も、ライトも、余計な情報をできる限り省き、狭い画面越しであっても自分のアピールに説得力を持たせ、採用していいだろうと思っていただくための工夫です。

 これらは対面であれば必要なかったものですし、「背景はなるべく無地」のような、オンライン面接が始まってから生まれた就活マナーも多くあります。2020年、2021年、そして今年と、コロナ禍の就活も3年目になり、「オンライン面接の正解」のようなものが固まってきているのかなと感じます。