急遽テレワーク導入!の顛末記

「Zoomで採用面接は当たり前? でも新たな課題が」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(44)

「ものすごいHR展」で課題解決のヒントを探ってみた

3月9日に開催されたオンライン展示会「ものすごいHR展」

 採用面接の現場で、最近はZoomが当たり前のように使われはじめている。テレワークの普及にともない、人事の領域でもDXが加速しているようだ。

 ……この記事を書いている時点で、一都三県で緊急事態宣言が発出されてから64日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、ほぼすべてのスタッフがリモートによる業務を行っている。人事の業務もリモートで対応する機会が増えているのだが、同時に問題も起きているようだ。そこで、今回は解決の糸口を探るべく「ものすごいHR展」に行ってみた。

【今回のハイライト】
1人の採用担当者が日程調整にかけている時間は……
採用コストゼロ時代が到来?
テレワーク中の社員の評価をツールで可視化
【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された2020年4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【2020年4~8月末までの顛末はこちら】

3月5日(金):同僚が大学生アルバイトの採用面接をZoomでやっていた

 今日、久々に出勤したところ、会議室で同僚のCさんがZoomを使っていた。相手はかなり若い、というか社会人ではなさそうで、後から聞いた話では大学生のアルバイト採用面接をしていたらしい。

現在、会議室ではノートPCを常時起動させて、すぐZoomができる状態にしている

【飛田】: というか、今だとアルバイトの面接もZoomでやるんだねぇ。
【同僚C】: 一応、Zoomかリアルかを選んでもらっているけど、ほとんどZoomで面接することになるかな。
【飛田】: 履歴書……は、前もってメールしてもらえばいいわけか。
【同僚C】: そうだねぇ。資料は画面の共有機能でも見たり、見せたりできるね。

 同僚Cさんの話によると、リアルだとマスクをするので表情が分かりにくい分、Zoomの方が相手の雰囲気をつかみやすいこともあるという。さらに、Zoomで面接を行うことは、相手のITスキルを把握するのにも役立っているのだとか。ただ、コミュニケーションスキルを重視する営業職では、2次面接を必ずリアルで行っているようだ。

【同僚C】: けどまぁ、今テレワークで問題なく回っている仕事は、オンライン面接の範囲内で人となりが分かっていれば、問題ないんじゃないかなぁ。
【飛田】: うーん、そういうことになるか。じゃあこの春の採用も、オンラインで面接をやるつもりなの?
【同僚C】: それもまた問題なんだよねぇ……。

 というのも、従来の面談であれば、電話でスケジュールがフィックスしたら、後はサイボウズOfficeで担当者と会議室の予定を抑えればよかった。だが、面接をZoomで行うとなると、さらに「Zoomの空き状況を確認し」、「予約を行い」、「URLを応募者に送る」という作業が必要になる。相手が数人のアルバイトなら良いが、これが何十人もとなると「さすがに面倒」(同僚C)なのだとか。

 そういえば来週には、人事分野のオンライン展示会があったはずだ。せっかくなので、この状況に役立つツールを探してみたい。

3月9日(火):「ものすごいHR展」でDXが進む人事の現場をのぞき見してみた

Zoomで開催されたオンライン展示会「ものすごいHR展」

 今日はHR(Human Resources)に特化したオンライン展示会「ものすごいHR展」が開催される日。同僚Cとの会話の後で参加申し込みをしたところ、週明けにZoomの招待URLが届いた。ここで各出展者が持ち時間3分のライトニングトークを行い、各商材をアピールするらしい。

URLを一斉配信するだけの面接日程調整ツール「eeasy」

Zoomへの予定の登録までをサービスが自動で行ってくれる

 展示会を視聴していたところ、さっそく同僚Cさんをサポートしてくれそうなサービスが出てきた。日程調整サービス「eeasy」ではグループウェアと連携し、自動でZoomの予約が取れるらしい。その仕組みはというと……。

  • サービス利用者の空き時間を、グループウェアから「eeasy」が自動で認識
  • 利用者は専用URLを発行し、相手に送信
  • 相手の画面に、リアルタイムな予定の空き時間を元にした候補日程を表示
  • 相手が候補日程から希望日を選択
  • 選択された希望日を元に、「eeasy」が予定をグループウェアとZoomに自動登録

 相手にはリアルタイムな候補日程が表示されるので、面接希望者に同じURLを一斉送信しても問題はない。誰かの面接が決まれば、その面接時間がグループウェアに登録されるので、他の人の画面には候補日程として表示されなくなるという。

 これなら、同僚Cさんは面接相手にメールを一斉送信するだけでいい。1カ月間は無料試用ができるので、この春の人事面接で試しに使ってみるのも良さそうだ。普段のZoomを使ったミーティングなどでも、参加者の日程調整に使えるだろう。

 ただ、「eeasy」が対応しているグループウェアは、「G Suite」と「Microsoft 365」の2つだけだという。うちの会社ではグループウェアにサイボウズOfficeを使っているので、データ連携にひと手間必要になりそうだ。

完全無料や副業特化のマッチングサービスも

完全無料の就活マッチングサービス「ハントバンク」

 他にも、展示会では人事採用について、興味深いサービスが紹介されていた。そのうちの一つが、就活マッチングサービスの「ハントバンク」。完全無料で大学生とコンタクトを取ることができ、成功報酬すら必要ないというから驚きだ。

 このサービスでは毎日昼の12時に、サービスに登録している学生をランダムにレコメンド。プロフィールを確認してマッチングが成立すると、チャット画面に移行して面談予約などの連絡ができるという。

 サービスはインターン採用にも使われているようなので、本採用のタイミングでなくても、気軽に登録をすることができそうだ。最近では人材不足が深刻化しているので、こういうコストゼロで大学生と出会える窓口があるのは、正直ありがたい。

副業に特化したマッチングサービス「Another works」

 ちなみに、うちの会社では緊急事態宣言以降、お付き合いのある企業の社員の方を副業として雇っている。役員に聞いた話によると、「ある程度の人となりを聞いているので、ミスマッチが起きにくい」こともあり、即戦力として活躍しているようだ。

 ただ、本業もあるため、うちの会社に来られるのは週に2日だけ。なかなかプロジェクトの進みが重く、何より月曜日に本業を優先されてしまうのが痛い……。ただ、育児休暇を取っている社員がいるため、会社としては人員をスポット的に確保する意味でも、副業の社員を雇うことには前向きらしい。

 展示会ではそんな副業に特化したマッチングサービス「Another works」についての紹介も行われていた。月額2万9000円で、成約手数料は0円。営業から制作まで人材の分野も広そうなので、担当を割り当てるにはキャパオーバーするぐらいにプロジェクトが増えてきたら、ピンポイントで使ってみるのも面白いかもしれない。

業務可視化システムで、テレワーク中の部下をマネジメント

 HRの領域というのは、何も採用だけではない。テレワークが広まる中で問題になっているのが“直接会えない部下のマネジメント”だが、これを解決するものとして、会場では業務可視化システムの紹介が行われていた。

業務可視化システム「Qasee」
マネジメントDXサービス「Retool」

 そのうちの一つが、2019年10月にリリースされた「Qasee」だ。従業員のPCにアプリをインストールすることで、アプリやクラウドサービスの使用ログを抽出。どの業務に何時間を費やしたかを分析することで、業務の効率化や費用対効果の分析にも利用できるという。

 この基本的な仕組みはマネジメントDXサービス「Retool」も同様で、インストールしたアプリやカレンダーから日常活動を把握。特に、重要とされる「コアタスク」について、誰がどれだけの生産性をあげているかも把握できるという。

 ただ、こうしたサービスは、一歩間違うと社員の監視ツールになりかねない。「正当に評価される」「業務効率の改善に役立った」といった、社員側の成功体験がなければ、なかなか広まるのは難しいだろう。

 テレワークによって、採用面接や人事評価をリモートで行う必要が出てきた。採用のミスマッチや離職率、エンゲージメント低下などが問題視されているが、サービスの力を借りてこれらの課題に対応していきたい。

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※編集部より
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飛田九十九