急遽テレワーク導入!の顛末記

「そうだ!ゲームバーで会議を録画しよう!」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(4)

 緊急事態宣言にともなうテレワークの普及により、社内のコミュニケーション不足が問題視されている。それを解決するために、ZoomやSlackなどのツールを駆使して、テキストや音声をオンラインでやり取りする機会が増えているようだ。

 ……この記事を書いている時点で、7都府県の緊急事態宣言発令から38日が過ぎた。

前回の記事では、ビデオ会議をLINE通話で行う様子を紹介した。

テレワークが始まると、同僚とボイスチャットをする機会が増えた

 私が勤めている新宿にある中小企業では、引き続きテレワークが推奨されており、社員は可能な範囲で在宅勤務を行っている。

 かつてはオフィスで話しかけたり、メールをしたり、LINEでメッセージを送ったりと、さまざまな形で同僚とコミュニケーションを取っていたが、緊急事態宣言後はボイスチャットが頻繁に使われるようになった。

 こうなると、何かのヒアリングをしているときなどに、音声のログを残したくなってくる。会社では様々な経緯からLINEを主に使っているが、LINEはZoomやSkypeなどと違い、標準で録音/録画の機能はついていない。

 そこで、 なるべく手間をかけずに、PCで音声ログを残す方法 を探ってみた。

いろいろとドタバタはあったが、その顛末を、ありのままに書いていきたい。

【今回のハイライト】
LINEの音声を録音したい………
録音できたのは自分の声だけ
録音できても音量がおかしい

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

4月29日(水):国内感染者の総数が1万4000人を超えるあれ?議事録の内容が薄い……

昨日はLINEのグループビデオ通話を使い、会社の全体ミーティングを行った

 昨日は会社ではじめてのビデオ通話による全体ミーティング(前回)だった

残念ながら準備不足もあって、とてもスマートとはいえない結果となった。その様子は議事録にも現れている。後から確認したいことがあって読んでみたのだが、その下りは丸ごと省略されていた。というより、いつもに比べると内容が…薄い?

 当日の記録担当だったBさんに話を聞いてみると、 「途中で音声が途切れて、聞きづらいところがあった」 とのこと。

社長は「コミュニケーションのために、ミーティングを増やしていく」と言っていたが、その声が聞こえていなければ意味がない。

とはいえ、個人宅のネット環境までは、なかなか会社からは手が出せないだろう。何らかのテコ入れが必要になりそうだ。

5月8日(金):PCR検査の新しい目安が公表されるボイスチャットだと質問しにくい!

仕事中はヘッドセットをすぐ装着できる位置に準備している

  同僚と話をするのにボイスチャットが便利 で、すっかりヘッドセットが手放せなくなっている。

最初はスマホを使うこともあったが、時々声が途切れるのが気になる。「電波環境が悪いのかな?」と思い、デスクトップPCにインストールしたクライアントを使うようにすると、回線が安定したのか声が明瞭に聞こえるようになった。

 こういう状況だから相手も通話に出てくれるし、どこにいても捕まえられるのはなかなか便利だ。……とはいえ、相手の時間を割いているので、無駄な通話はなるべく控えるなど、マナーとしての配慮が必要かもしれない。

 今日もある案件について、ボイスチャットで役員にヒアリングを行った。ヘッドセットを使うと両手がフリーになり、PCでメモが取れたのだが、固有名詞を一つ…いや、二つ聞き違えていたようで、ググってみても正しい表記が出てこない。

聞くべきか、時間をかけて調べるべきか。配慮の狭間で悩むことになる。

  ボイスチャットでは話の間がつかみにくく、相手が上役だと、なかなか会話中に疑問を差し込みにくい。

 会話を始めるときに「ログを取りますね」と言えれば、言った/言わないの問題も防げそうだが……。

Windows 10には「ボイス レコーダー」というアプリがプレインストールされている

 そこで、LINEのボイスチャットを録音する方法を調べてみる。

 同僚も困っていると思うので、なるべく簡単に教えられるものがないかと探していると、 マイクロソフトの「ボイス レコーダー」というアプリで、PC上で流れている音声を録音できる らしい。

 Windows 10にプレインストールされており、スタートメニューから起動することができた。これなら簡単でいいだろう。次に何かの機会があれば、これで会話を録音してみたい。

5月12日(火):全国の感染者数が3日連続で100人を下回るLINEをPCで録音するが………

 週が明けて全体ミーティングの日になった。

 前回はLINEのグループビデオ通話を利用したところ、映像データが回線を圧迫したのか、音声が乱れに乱れた。

その反省(?)からか、「今回のミーティングはビデオ無しのグループ通話で行う」と役員から連絡が入る。ビデオ無しならノートPCのWebカメラを使う必要がないので、デスクトップPCから参加できる。何より服を着替えないでいいのがありがたい。

LINEでグループ通話に参加し、同時に「ボイス レコーダー」の「録音」ボタンを押す

 定時になると役員からグループ通話の招待が届いたので、さっそく参加する。

同時に、「ボイス レコーダー」のアプリを起動、「録音」ボタンを押した。これで、何かを聞き逃しても、後から確認できるだろう。

 オンラインでは3回目ということもあり、そろそろ慣れも出てきたのか、大きなトラブルもなくミーティングは終わった。

ただ、 顔が見えていないと、話していることが全員に伝わっているのか、ときどき不安になる 。前回のような確認合戦にはならなかったが……、このまま続けて大丈夫なのかな。

録音したファイルはOneDriveの「ドキュメント」にある、「サウンドレコーディング」フォルダに保存されていた

 さて、音声データを聞いてみよう。このデータはアプリ上で聞くこともできるし、保存したファイルを再生することもできる。

ただ、保存先がOneDriveの階層になっているのが面倒くさい。最近のマイクロソフトあるあるだが、最初はデフォルトの「ミュージック」フォルダを探してしまった。

 ファイルをダブルクリックして再生する。
……再生バーを見る。ん? ちゃんと動いているよな。なのに音声が聞こえてこない。これは

「おはようございます」

って、いきなり、私の声が聞こえた!
いや、これは私の声“だけ”が再生されている?

よく耳を澄ますと、かすかに同僚の声が聞こえてきた。とはいえ、これは音量をかなりあげないと聞こえヅラ。

「それに!ついては!私の方から!説明します!」

って私の声がうるさい!! あぁぁ、一体どうすれば。

……結局、私がずっと一人で話しかけたり、相槌を打っている録音データができてしまった。

怖い。「議事録を取っていたBさんに送ってあげよう」とミーティング前には思っていたのだが、こんなもの、とても送れそうに、ない。

5月13日(水):抗原検査の検査キットが厚生労働省で承認されるBさんを巻き込んでLINE録音にチャレンジ

 自録りテープが作成されてしまった理由を、あれから一晩考えてみた。最初に疑ったのはWindowsの「サウンド」設定。

 想定としては、以下のようになっているのではなかろうか。

1: 我が家のデスクトップPCはUSB接続したボリュームコントローラーをスピーカーにつなぎ、I/Oパネルの音声出力端子をヘッドセットにつないでいる。
2: Windowsの「サウンド」設定では出力デバイスをスピーカーに設定しているが、LINEのアプリ上では出力デバイスをヘッドセットにしている。
3: このことからLINEでのグループ通話中だけ、音声がヘッドセットで再生される
4: 一方、「ボイス レコーダー」はWindowsの「サウンド」設定に従って、スピーカーの音声を拾おうとした?

デスクトップPCからの音声出力は、USB接続したボリュームコントローラー(USB Audio DAC)を経由してスピーカーに接続している
Windowsの「サウンド」設定では、出力がスピーカー(USB Audio DAC)に設定されている。
LINEの「通話」設定では、出力がヘッドセット(Realtek(R) Audio)に設定されている

 そこで、

「LINEの『通話』設定では、出力がヘッドセット(Realtek(R) Audio)に設定されているのではないか?」

という仮説を立ててみた。

これを検証するには、WindowsとLINEの出力デバイス設定をいじって、誰かとLINE通話する必要がある。それも、会社で一番電波環境の悪いBさんとの通話がクリアに録音できれば、まず大丈夫と考えてよいだろう。

【飛田】:ということで、Bさんよろしくお願いします。
【Bさん】:よろしく…って、僕はどうすればいいんですか?
【飛田】:そのまま話していただければ、というかテスト録音はもう大丈夫ですね。お騒がせしました!(ガチャン)

 ふう、とりあえずWindowsとLINEの出力デバイス設定について、どちらもスピーカーに設定した場合、どちらもヘッドセットに設定した場合の録音が完了した。

さっそくファイルを再生してみる。……あれ、どちらもBさんの声が、ささやき声以下にしか聞こえない?

「デバイスのプロパティ」では、マイクのボリュームは100(最大)に設定されていた

 となると、これは音声出力と入力の音量バランスが取れないのが原因だろうか?

Windowsの「サウンド」設定では、出力のマスター音量が100、マイクのボリュームが100と、ともに最大に設定されていた。

つまり入力側(マイク)の音量を絞れば、ボリュームを上げた時に、Bさんの声が大きく聞こえるようになる? さらに、LINEの通話設定画面を見てみると、「マイク設定」が「音量の自動設定」になっていた。これも怪しい……。

【飛田】:と思うんですけど、どうですかね?
【Bさん】:いや、そう言われても。僕はあまりパソコンに詳しくないので…
【飛田】:あ、パソコンのことは大丈夫です。今はサンプルの声をもらえれば。
【Bさん】:……。
【飛田】:あの、もっと話してくださいよ。あれ、Bさん? おーい。

 やっぱりボイスチャットでの意思疎通は難しい……。対面だとできている(と思う)配慮が足りなかったかな………

とはいえ、音量調整をいろいろイジって、さまざまなサンプルを録音することはできた。……のだが、やはりBさんの声がどれも小さくしか聞こえない。ごめん、Bさん、無駄な時間を使っただけだった。

5月14日(木):39県で緊急事態宣言が解除にそうだ!「ゲームバー」でビデオキャプチャすればいいんだ!

 さらに一晩考えて、先日オンラインゲームの様子をキャプチャしているときに、BGMもオープンチャットの声もクリアに録れたことを思い出す。

つまり、 音声のキャプチャではなく、ビデオキャプチャなら正常に音声が拾えるのではないだろうか?

「Win」+「G」のショートカットで、「ゲームバー」を起動

 Windows 10には 「Win」+「G」のショートカットで起動できる、「ゲームバー」という機能 がある。

 アクティブウインドウをワンクリックで録画してくれるので、これならビデオ会議の様子もまるっと記録できそうだ。……音声が正しく録れれば。

 さっそくショートカットを入力すると、画面に「ゲームバー」がオーバーレイ表示される。あとは、サンプルを録音するだけだ。

【Bさん】:……なんですか?
【飛田】:ごめんなさい、昨日のアレの続きです。
【Bさん】:切ってもいいですよね、この電話?
【飛田】:もう声は録れたから大丈夫だと思うんですけど、ちょっと待ってください。録画データを確認しますから!

「録画中はマイクをオン」をクリックすると、「プライバシー設定によりマイクを使用できません」のメッセージが。

 慌てて、録音データを確認すると、Bさんの声が聞こえてきた。やった、ようやく成功だ! ……と思ったのだが、今度は私の声が入っていない。なんだ、これ? 思いっきり騙された気分。そこで、ふと画面の左上を見てみると、マイクのアイコンがオフになっていた。

Windowsの「マイクのプライバシー」設定で、「Xbox Game Bar」を「オン」に。これで、「録画中はマイクをオン」をクリックできるようになった

 原因はこれか! すぐに設定を変えて再度通話、映像を撮り直す。再生した映像からは、私とBさん、両方の声が聞こえてきた。

BさんとのLINE通話を録音中……

【飛田】:やりました!成功です。
【Bさん】:あー、それはおめでとうございます?
【飛田】:ありがとうございます!Bさんの協力なしでは、この検証は不可能でした。
【Bさん】:協力……そうですよね、しましたよね? じゃあその分、何か欲しいなぁ(笑
【飛田】:えっ(笑

 Bさんの貢献は社長に報告しておくとして、こういう会話まで記録に残ってしまうのがネットの怖いところだ(苦笑

 それはともかく、かくして会社のボイスチャット環境は、これで一歩前進することができた。さっそく、役員にこのことを報告する。

【役員】あ、飛田くん、うちでもZoomを導入することが決定したから。

…………えっ?

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※編集部より
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飛田九十九