急遽テレワーク導入!の顛末記

「今からでもできる『出勤7割削減』に役立つ5つのツール」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(37)

テレワークで本当に役立つ「ツール」とは? 昨年の経験で得たリアルな答え

緊急事態宣言に伴い、会社ではスタッフ全員がテレワークに移行した

 2度目の緊急事態宣言は発出され、国から「出勤7割削減」というお達しが出た。しかしネットやテレビのニュースを見ていると、前回より人の動きが制限できておらず、「特に中小企業でテレワークの普及が停滞している」という話も聞く。そうしたこともあって、編集部から急きょ執筆の依頼がきた。おなじく中小企業のスタッフとしてテレワークのポイントをまとめてほしいとのことである。

 ……この記事を書いている時点で、一都三県で緊急事態宣言が発出されてから13日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、ほぼ全てのスタッフが業務をリモートで行っている。前回の緊急事態宣言の時には、かなりバタバタしたのだが、今回はスムーズにテレワークに移行することができた。

 そこでこれまでの経験から、テレワークで本当に便利だと思ったツールや、こだわるべきポイントについて紹介してみたい。もちろん企業によって課題は異なると思うが、中小企業の一例として参考にしていただければ幸いだ。

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】


ポイント1:まずは「Chrome Remote Desktop」で自宅から会社のPCを操作

 1月8日、緊急事態宣言が発出されたことで、翌週から「業務は基本テレワークで」と会社から指示が出た。まずはテレワークに向けた準備が必要だ。

 前回の緊急事態宣言の時には、会社のPCからデータを持ち帰ろうと、Blu-rayディスクへの書き込みに1日かけた。その後に、支給されたノートPCへのコピー、One Drive、VPN接続など、データの移行についてイロイロ試してきたが、その中でも一番カンタンで便利だと感じたのが「Chrome Remote Desktop」の導入だ。自宅から会社のPCを遠隔操作できるツールで、これがポイント1つめ。

「Chrome Remote Desktop」では、ブラウザ上に会社のPCの画面が表示され、通常通りに操作できる

 VPNは初期設定のハードルが高いので、急遽テレワークに取り組むなら、こちらがオススメ。ちょうど、同僚もテレワークの準備をしていたので、役員の許可を取ったうえで、他のPCにも「Chrome Remote Desktop」の設定を行った。

 後日、同僚から話を聞く機会があったが、「オフィスにいる時と同じことが、自宅でもほとんどできるようになった」と好評だった。テレワークのとっかかりとしては、分かりやすくて便利なツールだと思う。


ポイント2:ミーティングは「Zoom」で顔を見ながらコミュニケーション

テレワーク以降、社内ミーティングはZoomで行っている

 全員テレワークの中、「Zoom」を使って会社の全体ミーティングを行う。Zoomの導入については当初こそバタバタしたが、ゲストで参加するだけなら、すぐに同僚も操作に慣れたようだ。このZoomがポイント2つめ。当初こそ無料アカウントで試したが、現在は有料アカウントを使っている。

 恐らく、Zoomへの慣れが早かった理由は、以前から社内のコミュニケーションにLINEを使っていたことが大きかったと思う。そのおかげで、最初はLINEのグループチャットでミーティングを行うことができ、それと同じ感覚でZoomを利用できた。

 社内でSlackやLINEを使うことは、テレワークの感覚をつかんでおくにも有効だと思う。何より、電話は相手が不在なことがあるし、メールは返信までに時間がかかるので、普段使いのコミュニケーションツールとしてあると便利だ。


ポイント3:取引先とも「Zoom」でOK、ただしマイクやカメラに注意

 緊急事態宣言中ということもあり、営業先との打ち合わせをZoomで行うことになった。取引先もZoomに慣れていたので、話し合いはスムーズに終了した。世間ではいろいろと言われているが、リアルで面識がある相手であれば、テレワークでも問題なく営業できると思う。ただ、声被りを気にしてレスポンスが悪くなることがあるので、一方的な会話にならないように、今まで以上に注意が必要だが。

 あと、これもよく言われていることだが、こちらの映像と音声がきちんと伝わる環境を用意しておくのは絶対条件だろう。これがポイント3つめ。前に売り込みの対応をZoomで行ったことがあったが、顔が良く見えないと話が頭に入ってこないし、声が聞きにくいと一気に話をする気がなくなる。

アーム型のスマホスタンドにiPhoneを固定すれば、好きな角度から撮影できる

 音質については、安物でもいいのでヘッドセットを用意しておくべきだろう。ステレオミニジャック接続のものなら、大抵のPCで使えるし、Zoomでも認識される。

 一方、映像を向上させるといえばWebカメラだが、私の身の回りの環境では、スマホを使うのが一番手軽でキレイに映った。最近よく使っているのが、iPhoneアプリの「EpocCam」。これは、スマホをWebカメラ代わりに使うためのもので、PCでの認識がスムーズなことから、ストレスなく使えるところが気に入っている。


ポイント4:業務の引継ぎも「Confluence」があれば大丈夫

 外注先とのやりとりやスケジュール管理には「Trello」を使うことでテレワーク化でもしっかりと連携が取れるようになったが、今回テレワークに移行するなかで、経理部の引継ぎにトラブルが発生した。これを解決するために、新たに「Confluence」というツールを導入した。これがポイント4つめ。

 「Confluence」はドキュメントをページ単位で管理し、それをスペースという単位でまとめたもの。いわゆる社内Wikiのように使われているが、このツールの真骨頂は優れたコメント機能にある。文書内で指定した箇所について、「ここはどうなっていますか?」などとメッセージが送れるので、マニュアルを共有するには最高なのだ。

選択してハイライト表示した部分について、確認などのメッセージが送れる

 今回は引継ぎ用のドキュメントを「Confluence」で共有したが、後はこちらから何もしなくても、引継ぎ担当の同僚2人が次々とコメントをやり取りしていた。彼はテレワークが始まる前、「顔を合わせないで引継ぎって、無理でしょ……」と言っていたが、どうやら「Confluence」を導入したことで、問題は一気に解決したようだ。


ポイント5:「board」のおかげでハンコをもらいに出社……は、なし

 1月も終わりに近づいたので、そろそろ請求書などを取りまとめる必要がある。そこでポイント5つめ。うちの会社では案件管理にクラウドツールの「board」を使っているので、請求内容をブラウザ上で入力したら、後はメールを送るだけで経理が請求書を発行してくれる。

 「board」の導入前はエクセルで作った請求書を、紙ベースで確認していた。そのままテレワークに突入していたら、最低でも月に1回は出社するハメになっていただろう。有給休暇などの各種申請は「サイボウズOffice」で行っているので、少なくとも現場サイドにおいて、うちの会社は「ハンコをもらうために出社する」ということがない。

見積書や請求書などの作成は、すべて「board」で行っている


まとめ:クラウドツールや助成金活用で中小企業でもテレワークはできる

 昨年4月から、会社ではテレワークの体制について試行錯誤してきた。その結果として、今回の緊急事態宣言では、「前回の苦労は何だったんだろう?」と思うぐらい、スムーズにテレワークに移行できたと思う。

 「Chrome Remote Desktop」や「Zoom」、「Confluence」など、こうして振り返ってみると、やっぱりテレワークではクラウドツールが便利だ。前回の緊急事態宣言の時に「テレワークに移行する」と社長が言ってくれたおかげで、業務としてその準備をしたり、補助金を申請して機材を購入することができた。結果として、今回の緊急事態宣言に伴うテレワークでは、自宅で仕事をしていても特に不満に思うことがない。

 ちなみに、以前会社で申請した「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」だが、現在はその後継となる「テレワーク定着促進助成金」の募集が、東京しごと財団で行われている。テレワークに必要なPCの購入などにも使えるので、興味がある人はぜひ調べてみてはいかがだろうか?

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※編集部より
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飛田九十九