急遽テレワーク導入!の顛末記

「原稿の校正をAIに任せたい! しかも無料で」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(39) CMSを使わずに原稿をクラウド管理、しかも自動校正付き!

「遽」は常用漢字ではないとAIからお叱りの声が

 テレワークが始まってからは、社内から上がってきた原稿のチェックを、基本メールで行うようになった。以前はプリントしたものに赤字を加えて、その理由などを口頭で説明していたのだが、最近はもっぱらMicrosoft Wordの校閲機能を使っている。基本的には問題ないのだが、ファイルのバージョン管理がやや面倒だ。

 ……この記事を書いている時点で、一都三県で緊急事態宣言が発出されてから29日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、ほぼすべてのスタッフがリモートによる業務を行っている。その中で、今回は「Shodo(ショドー)」というサービスを使って、CMSを使わずに原稿をクラウドで管理してみたい。

【今回のハイライト】
今なら無料のAI校正ウェブサービス「Shodo」
連続した助詞の使用を「Shodo」は見逃さなかった
編集者との原稿のやり取りがクラウド上でできる

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】

1月25日(火):社内の原稿チェックで問題発生

 今日も自宅でテレワーク。始業時間にパソコンを起動すると、同僚からメールが届いていた。どうやら現在担当しているプロジェクトの件で、頼んでいた原稿の修正に対応してくれたようだ。さっそくファイルを開いたのだが、どうもおかしい。頼んでいた修正が反映されていないようだが……。

 後で確認すると、どうやら古いファイルがメールで送られていたようだ。テレワークが始まって以降、原稿はMicrosoft Wordで作ったファイルで受け渡し、修正の指示はそのコメント機能でやり取りしている。修正を重ねるごとにファイルを複製し、そのバージョンをファイル名で管理していたのだが、今回はそのファイルの管理をミスしたらしい。

Microsoft Wordのコメント機能を利用。バージョンは「v3」というように、ファイル名の末尾に数字を入れて管理

 ファイルのバージョン管理を間違えると、誤ってファイルを上書きして、作業データが消えてしまう恐れもある。WordPressのようなCMS(コンテンツ管理システム)を使い、原稿をクラウドで管理しているプロジェクトでは、そのようなトラブルとは無縁なのだが……。

1月29日(金):AI校正ウェブサービス「Shodo」を使ってみた

 前回の反省を踏まえて、原稿をクラウドで管理しようと考えた。ドキュメントの共同作業というと、ぱっと思いつくのは「Microsoft Office Online」と「Googleドキュメント」。ただ、最近のリリースをチェックしていたところ、興味深いサービスが目に留まった。1月26日にリリースされたばかりの「Shodo」というクラウドサービス。これが、ブラウザ上で原稿を共有するだけでなく、AIによる校正もできるらしい。

AI校正ウェブサービス「Shodo」

 ベータ版は無料で使えるとのことなので、さっそくアカウントを作成。ひとまずこの原稿を「Shodo」で作ることにした。……と、ここまで書き進めてみたが、編集画面はシンプルながらも、今のところ使い勝手は悪くない。もちろん、ベータ版なので細かいところに不自由さはあるが、クリティカルな問題はないように思える。タイプした文章は自動で保存されるので、いちいち「Ctrl+S」を入力する必要がないのも嬉しいところだ。

下線をマウスオーバーすると、AIの校正を確認できる

 そして、注目のAI校正機能はリアルタイムで機能しており、スペルミスや「で・ある調」の統一ができていないところなどに赤の下線が表示され、マウスオーバーすると「同じ助詞を連続して使っています」というように理由を表示。その場で修正しながら、原稿を書き進めることができる。

 これを同僚にも使ってもらえば、赤字を入れる手間が減るのではないだろうか?

 引き続き、レビュー機能も試してみたいので、同僚Aさんにメールを送信。テストに参加してもらうことにした。

2月1日(月):いちいちメール添付しなくても、原稿チェックはクラウド上で

 ある程度の原稿を書き進めたところで、同僚Aさんから「『Shodo』にアカウントを作ったよ!」との連絡があった。さっそく、招待メールを送り、原稿を見られる状態にする。

招待の操作を行うと、相手にメールでURLが届く

 「Shodo」では校正者のことを「レビュアー」と呼んでおり、その役割を参加メンバーに指定できる。そこで、同僚Aさんをレビュアーに指定。「記事の版を作成」をクリックすると、「バージョン1の記事を作成しますか?」「レビュー依頼する」とのポップアップが表示された。どうやら、これで記事のプレビューを作成できるようなので、さっそく「レビュー依頼する」をクリック。すると、「執筆ステータス」の表示が「✓レビューOKにする」に変更された。

同僚Aさんを「レビュアー」に指定
レビューを依頼すると、「レビュアー」に指定した同僚Aさんに自動でメールが届く

 しばらくすると同僚AさんのShodoアカウントから、「ステータスが『執筆』に変更されました」とのメールが届いた。後で確認すると、こちらでレビューを依頼した際に、彼女のところには「タスクがレビュー待ちになりました」とのメールが届いていたようだ。

【同僚A】: そのメールにURLが貼り付けてあったので、アクセスすると原稿が表示されました。画面は執筆の時と同じですけど、文字の修正や加筆はできないみたいです。

【飛田】: なるほど、レビューを頼んだ後に見つけたミスを、こちらでこっそり直すことはできないわけだ。

【同僚A】: やめてくださいよ、そういうのは……。で、「+」ボタンをクリックすると、その場所にコメントが書き加えられたので、その上で「記事の修正を依頼する」をクリックすると、飛田さんに通知が行くという流れのようです。

「レビュアー」は原稿にコメントを入力できる
レビューが終わったら、期限を指定して修正依頼を行う

 その同僚Aさんから届いた通知メールのURLから、原稿を開いたところが以下の画面だ。原稿の横にコメントが表示され、それがどの部分についてのものかを地色で確認できる。後は、原稿完成まで、これを繰り返すという流れになるようだ。

「レビュアー」からのコメントが原稿の横に表示された。修正対応したものは「✓」をクリックしてステータスを「解決済み」にできる

 ちなみに、設定を確認すると、メールでの通知は1時間おきにまとめて行う設定になっていた。急ぎの原稿確認を依頼する際には、別途電話などで連絡をした方が良いかもしれない。

2月4日(木):AI「この原稿は読みやすいです。読了時間は約4分」

 この記事の締め切りまで、残すところはあと1日。最後にAIによる校正機能をフル活用して、この原稿を仕上げていこうと思う。

 「Shodo」では主に3つの機能を駆使して、原稿の不備をAIがチェックしてくれる。

  • 校正ルール
  • 表記ゆれ
  • 文章分析

 このうち、「校正ルール」は冒頭で紹介したような、表記の揺れなどをリアルタイムで検出し、原稿内に下線で指摘してくれるというもの。その注意に従って書き進めていけば、「で、ある調の統一」「ら抜き言葉の禁止」といった、一般的なルールに沿った原稿に仕上げることができる。

 一方、「表記ゆれ」は言わば「校正ルール」のカスタム機能に当たるものだ。単語表記の正誤を登録しておくことで、誤記があった場合には、それも下線で指摘してくれるようになる。

表記ゆれをチェックする単語の正誤を、それぞれボックスに入力
「表記ゆれ」に登録した単語が、下線で指摘された

 これらの機能を使って原稿を書き進めた上で、最後に利用したいのが「文章分析」。これを使えば“漢字比率”や“文の平均長”などから原稿の読みやすさを分析し、読了にかかる時間を割り出してくれる。繰り返し出現する単語を数の多いものからリスト化してくれるので、その使い過ぎにも気を配ることができそうだ。

この原稿では漢字が23%使われており、AIは「読みやすい」と判断した。読了時間は約4分

 最後に画像を挿入して、最終版のプレビューを確認。これで問題なさそうなので、後はコピーを編集部に入稿すればいいだろう。

画像を挿入して、実際のページに近いプレビューを見ることもできる

 こうして今回の原稿が完成したわけだが、AIによる自動校正が細かい表記まで面倒を見てくれるのには助かった。Microsoft Wordにも同じような機能はあるが、チェックされる範囲は「Shodo」の方が明らかに幅広い。「漢字」を「感じ」と誤入力していた箇所なども、見逃さずに下線で指摘してくれた。

 そして、クラウドに原稿が保管されるというのは、やはりデータのやり取りの上では便利そうだ。クライアントに「『Shodo』を使って!」というのはハードルが高いが、まずは身内での原稿のやり取りから試してみるのはアリだろう。

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※編集部より
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飛田九十九