急遽テレワーク導入!の顛末記
「会社のパソコンの電源を遠隔操作でONにしたい!」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(25)
Wake On LANの設定をしてみたものの……
2020年11月2日 07:10
会社のマシンをリモートデスクトップで操作しようとしたところ、役員からいくつかの問題点を指摘された。このうち、セキュリティの問題についてはクリアできたのだが……。
……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから150日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を利用してテレワークの環境を整えた。現在は出社と在宅勤務を使い分けているが、その中で業務を快適に行うためにも、引き続きリモートデスクトップの導入を検討していきたい。
【これまでの経緯】
緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……
10月19日(月):ホスト側でWOLの設定を行う
会社のマシンをリモートデスクトップで操作するにあたり、残された課題は電源の問題。「Chrome Remote Desktop」などのツールでは、スリープやシャットダウンしたマシンを操作できないので、何らかの方法でマシンの電源を入れる必要がある。
マシンの電源を遠隔操作するといえば、真っ先に思いつくのがWOL(Wake On Lan)。同じLAN上にあるマシンやルーターから“マジックパケット”を送信すると、それを受信したマシンが起動するという仕組みだ。
ここでいう“同じLAN上にある端末”は、VPN経由で接続している自宅のパソコンでもOK。ただし、VPN経由ではマジックパケットが届かないという話も聞くが……。ひとまず、試してみることにする。ちなみに、OSはWindows 10だ。
WOLを利用するには、ホスト側の端末でいくつかの設定変更が必要になる。まずは、デバイスマネージャーを開き、ネットワークアダプターのプロパティを表示。「詳細設定」タブで「ウェイク・オン・マジック・パケット」を有効にしたら、さらに「電源の管理」から、
- このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする
- Magic Packetでのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする
の設定を有効にする。
続いて、コントロールパネルで「ハードウェアとサウンド」→「電源オプション」と操作し、「電源ボタンの動作を選択する」から「電源ボタンの定義とパスワード保護の有効化」画面を表示。「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外す。
さらに、イーサネットのプロパティから固定IPアドレスを設定。これはマストではないが、後々の操作が楽になる。
最後にBIOSの設定を変更する。会社のデスクトップマシンはDELL製だが、公式ページで必要な設定が紹介されていた。「Wake on lan/WLAN」を有効に、ディープスリープコントロールを無効にして設定を保存する。これで、ホスト側でのWOLの準備が整った。
10月20日(火):会社のLAN上でのWOLの動作を確認
昨日に引き続き、今日は会社支給のノートPCでWOLの準備を行う。
ゲスト側のマシンからマジックパケットを送信するには、フリーソフトを使うのが一番手っ取り早い。今回は「nWOL」を利用することにした。ソフトを起動したら、設定画面から「Scan」をクリック。LAN上のマシンが一覧表示されるので、ホスト名やIPアドレスから、ホスト側のマシンがあるかを確認する。
この状態で「OK」をクリックして画面を閉じると、メイン画面に各マシンの電源状態が表示された。電源オフのマシンでは、電源ボタンが有効になり、クリックするとマシンの電源を入れることができる。
試しに、デスクトップマシンの電源をオフにしたところ、ステータスがOFFに切り替わり、電源ボタンのクリックで電源を入れることができた。あとは、これと同じことが自宅からできるかだ。
10月21日(水):タブレット経由でマジックパケットを送信する
あの後、自宅に帰ってから「nWOL」を起動してみたが、電源の状態は確認できたものの、電源ボタンを押しても反応がなかった。「Chrome Remote Desktop」でのアクセスも不可能。翌朝に出社してみると、デスクトップパソコンの電源は入っていなかった。
やはり、VPN経由でマジックパケットを送るには、VPNルーターの設定変更が必要なようだ。とはいえ、役員にも相談してみたが、識者にわざわざお願いしたセキュリティに、素人が穴を空けるのはどうかという結論に。次に会社のネットワークを見直す機会に、合わせて依頼するとのことだが、しばらくは手を加えられそうにない。
そこで、最近ある目的から会社に置きっぱなしにしていたタブレットを取り出して、PlayストアからWOL用のアプリをインストールすることにした。
今回は「Wake On Lan」というアプリを利用。起動して右下の「+」ボタンをタップすると、LAN上のマシンが一覧表示されるので、IPアドレスからデスクトップパソコンを選択して、メイン画面上に表示させる。
あとは、このタブレットを自宅から遠隔操作すればよい。タブレットの遠隔操作ソフトはいくつかあるが、今回は既にインストール済みの「AirDroid」を利用することにした。初期設定が多少面倒だが、なかなか使い勝手が良い。
最後は少し力業になったが、これで自宅からWOLでマシンの電源を入れて、それを「Chrome Remote Desktop」で操作することが可能になった。今回、デスクトップパソコンに固定IPアドレスを振ったので、自宅から電源を入れれば、マシンの共有フォルダーを直接見ることもできる。わざわざ、作業データをNASで管理しなくても、ドキュメントフォルダを共有設定した方が、ファイルの運用がスムーズになるかもしれない。
「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧
- 【緊急事態宣言前日】 「えっ?今日から在宅勤務?」
- 【緊急事態宣言突入】初のオンライン会議で久々のシャツ姿!ところが……
- 【GW直前】初のビデオ会議!「もう、LINEでいいんじゃない?」
- 【GW明け】「そうだ!会議を録画しよう!」
- 【5月中旬】ついにZoom有料プランを導入!
- 【5月下旬(1)】先輩企業に聞いてみた「普通にやったら、効率は落ちます」
- 【5月下旬(2)】「データ移行に1日がかり…は、もう嫌だ」
- 【5月末】助成金、ついに決定! 盲点だった価格変動・在庫切れ……
- 【6月上旬】セットアップをどうしよう?
- 【6月中旬】VPNルーターを補助金で設置! IP電話用とWi-Fi用のルーターも設定を変えないと……
- 【6月下旬】うちの会社にNASがきた! VPNで自宅からも利用
- 【7月上旬】今どきのノートPCで思いっきりZoom、男の夢も…
- 【7月中旬】「紙の書類のために出社」はなんと無し?うちの経理って、実は先進的…
- 【7月下旬】「ビデオ会議で自分だけ顔が暗い……」外付けカメラもiphoneも…
- 【8月上旬】ノートPCでは在宅勤務がツラい!「画面の増やし方」を考えてみた
- 【8月中旬】「会社支給PCをテレワーク用に仕上げてみよう」UACとパスワード保護共有
- 4月にはじめたテレワーク、5ヶ月の進化を振り返る……
- 【8月下旬】ビデオ会議の音と画質、超お手軽にUPさせたい!
- 【9月中旬】「展示会に見た、これがテレワークの最前線!」
- 【9月下旬】VPNでトラブル、NASからファイルが消えた!?」自宅から会社のNASに……
- 【10月上旬】Zoomでプロジェクターを使ったプレゼンは可能か?
- 【10月中旬】テレワークの「音」と「映像」変遷記、「あえてクルマの中でビデオ会議」やAirPods Proなど
- 【10月下旬】リモートデスクトップを使いたい!……会社の反応は?
- 【11月上旬】会社のパソコンの電源を遠隔操作でONにしたい!
- 【11月上旬】会社置きのタブレットで会議にZoom参加したい!
- 【11月中旬】同僚と会社にいるのと同じ感覚でおしゃべりしたい!
- 【11月下旬】自宅に1台だけネット通信できない端末が……、原因は?
- 【12月上旬】Zoom仕様に会議室の環境を最適化したい!
- 【12月中旬】会議室をビデオ会議用に改造……、を自前でやってみた
- 【12月下旬】Zoomに『接続が不安定です』と言われた、どうすればいい?
- 【12月下旬】無料でも使える『Trello』はテレワークで増えた進行管理トラブル対策になる!?
- 【1月中旬】カードを動かすだけで関係者への連絡が自動化!! 『Trello』を1週間使ってみた
- 【1月中旬】手段が目的になる!? ITツールを導入する意味を聞いた
- 【1月下旬】リモートでの社内情報共有に『Confluence』を使ってみた
- 【1月下旬】今からでもできる『出勤7割削減』に役立つ5つのツール
- 【2月上旬】テレワーク中の電気代、在宅勤務手当はいくら非課税になる?
- 【2月上旬】原稿の校正をAIに任せたい! しかも無料で
- 【2月中旬】テレワーク不健康を解消!3000円で始めるスタンディングデスク
- 【2月下旬】テレワークの最前線をオンライン展示会に見た!!
- (好評連載中)