急遽テレワーク導入!の顛末記

「データ移行に1日がかり…は、もう嫌だ」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(7)

クラウドを色々設定してみた……「ストレージ」「メール」「Webブラウザ」……

 緊急事態宣言の解除をうけて、51日間に渡る我々のテレワークの日々は終わった。

 朝と夜に2回、通勤電車に揺られる日常が戻ってきたが、以前よりも混み具合が少ない気がする。引き続きテレワークを続けている企業や社員もあるのだろうか。

ファイルをクラウド経由で同期。アップロードは意外と順調。

 ……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから10日が過ぎた。

 私が勤めている新宿の中小企業では、5月28日から通常通りの勤務を再開。再びオフィスのPCを使って業務を行うようになった。

 このタイミングで、知り合いの中小企業のテレワーク導入事情を聞いていた(前回)わけだが、それと同じタイミングで「ファイルの引っ越し」が必要になった。

 要するに、「 自宅で作業していたファイルを会社に移行する必要が出てきた 」というわけだ。今回は、それにまつわるドタバタを紹介していきたい。

 なお、本記事では「起きたこと」をそのまま書いているため、「もっといい方法」やなんらかの勘違いが含まれている可能性もあるかと思う。あくまでも「ひとつの事例」として参考にしていただければ幸いだ。また、速度比較も行っているが、あくまでも筆者の環境での検証であり、厳密なものではないことはお断りしておく。

【今回のハイライト】
クラウドストレージを比較してみた
Webメールも活用開始
Webブラウザも同期

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

5月26日(火): 東京都が段階的な要請緩和を開始した日「このファイル群を会社に持っていくのか……」

 今日は全体ミーティングの日。自宅からZoomで参加していると、社長から話があって、明後日から勤務体制を元に戻すことになった。

 テレワークをはじめて約1カ月半、今では仕事関係のファイルが、自宅のパソコンにしっかり溜まっている。これを会社に持っていくのか……。

すべてのファイルやメールをバックアップするのに、3時間近くかかった……。

 4月に急遽テレワークの導入が決まった時は、ファイルを持ち帰るために、片っ端からBlu-rayに書き込んだ。その中には、メーラーに保存されている全メールもあり、小容量かつ大量のファイルをバックアップすることに。これを書きこむ準備にライティングソフトが手間取って、すべてのデータをバックアップするのに3時間近くかかった。

死蔵していた「無料のオンラインストレージ」をたな卸し

 そして、何かトラブルが起きるのが怖いので、その間はPCでの作業が一切とめていた。……正直、また同じことは繰り返したくない。

 そういえば、以前に自宅と会社のPCを同期しようと、いくつかのオンラインストレージに無料アカウントを作ったことがあった。記憶にあったIDとパスワードを試したところ、今も使えたサービスは「OneDrive」「Googleドライブ」「Dropbox」「box」の4つ。

【筆者所有のアカウント(1):OneDrive】
OneDriveの無料プランは標準15GB。ボーナスとあわせた容量は、筆者の場合40GBだった
【筆者所有のアカウント(2):Googleドライブ】
Googleドライブの無料プランは標準15GB
【筆者所有のアカウント(3):Dropbox】
無料のDropboxは標準2GBだが、様々なボーナスで筆者は8.88GBの容量があった
【筆者所有のアカウント(4):box】
boxの無料プランは標準10GB。ボーナスとあわせた容量は、筆者の場合50GBだった。1ファイルの最大容量は250MB(無料のIndividualプランの場合)で、結構少ない

 Googleドライブ以外はボーナスがあったので、標準より多くの容量が使える。

 一番容量が多いのは「box」だが、1ファイルあたりの容量制限が気になった。今後のためにも、どのサービスが一番使いやすいか試しておきたい。

5月27日(水): 第2次補正予算案が閣議決定された日OneDriveとboxを比較してみる

 明日からの出勤に備えて、いよいよファイルのアップロードを開始する。今回、オンラインストレージにアップロードするのは、以下のデータ。

・各種ファイル(合計13.8GB/ファイル数3126個)
・ムービー(合計16MB/ファイル数1個)
・メール(合計393MB/ファイル数2764個)

 この時点でDropboxは容量的にアウト。Googleドライブも容量がGmailと共用なので厳しい。ということで、選択肢として残されたのは、OneDriveとboxの2つということになる。

 ちなみにこの作業は午前中に行った。自宅では「auひかり」の「ホーム1ギガ」プランを使用しており、速度測定を行ったところ、上りは695Mbps出ている。

速度測定には「USEN GATE 02」を使用した

 Windows 10の場合、OneDriveは標準でエクスプローラーに組み込まれているので、専用フォルダにファイルをまとめてドラッグ&ドロップすればよい。通知領域のアイコンをクリックすると、ポップアップウインドウにアップロードの進捗状況が表示されていた。ゲージが次々と進んでいく様子が見ていて楽しい。

ポップアップウインドウに次々とファイルがアップロードされる様子が表示される
すべてのファイルのアップロードにかかった時間は……
アップロード中のフォルダやファイルは、エクスプローラー上でオレンジ色のアイコンが表示される
ミーティングや打合せをZoomで録画したデータなどが、boxでは容量オーバーでアップロードできなかった

 せっかくなので、ネット環境に負荷をかけずに様子を見ていると、すべてのファイルをOneDriveにアップロードするのにかかった時間は約17分。数メガバイトの写真がサクサクとアップされており、フリーのファイルストレージとしては割と優秀ではないかと思う。

 一方、boxはというと、アプリをダウンロードすることで、専用フォルダがエクスプローラーに作成された。さっそく、ファイルをドラッグ&ドロップ。こちらは進捗状態がアイコンに表示されていく。

 同期が終了すると、通知領域から「4個の項目の更新中にエラーが起きました」とポップアップウインドウで表示された。ログを確認すると、ファイルサイズが大きすぎるもの、メールのファイルパスに絵文字が入っていたものが、アップロードできなかったようだ。

 boxがすべてのファイルをアップロードするのに、かかった時間は約34分。今回の測定結果から判断すると、アップロード性能は、OneDriveの方に分があるようだ。測定時間や状況にもよると思うが、厳密な測定をしている暇もない。明日、会社でダウンロードの様子も見て、今後どちらを使うか判断したい。

5月28日(木): 東京タワーが営業を再開した日「オフライン利用可」を設定してみる

 テレワークが終わって、通勤初日の朝。久々に会社のPCの電源を入れて、「サイボウズOffice」の出勤ボタンを押す。これは、通勤でもテレワークでも変わらない。

会社のパソコンを立ち上げて、「サイボウズOffice」で勤怠記録をつける

 会社のパソコンはローカルアカウントでログインしているので、OneDriveには自宅のアカウントでログインする。さらに、boxのアプリをダウンロードすることで、エクスプローラーには両サービスで、昨日アップロードしたファイルが表示された。

 この時点ではどちらのサービスも、エクスプローラーに表示されているファイルはクラウド上にある。そのため、アイコンをダブルクリックしても、ダウンロードを挟むため、ファイルが開くまで少し待たされる。

 会社ではNTT東日本の光ファイバーを社員全員のパソコンで共用している。速度測定を行うと、下りは10~50Mbps前後。動画ファイルなどの大きなファイルを開くのに数秒、コンパクトな文書ファイルでも1~2秒のタイムラグがあった。これが日常的に起きたら、正直かなりのストレスだろうなぁ。

OneDriveは「状態」欄に、boxはアイコンにそれぞれ雲形のアイコンが表示され、ファイルがクラウド上にあることを表している
ファイルを開こうとすると、ダウンロードが行われ、しばらく待たされることに

 ただ、一度開いたファイルは、次から待ち時間なしで表示できる。この時、OneDriveでは「状態」のアイコンが変化し、ファイルがローカルに保存されたのが分かった。

 しかし、boxの方は……アイコンに変化がない。キャッシュは保存されているようだが、“このファイルは待ち時間なしで開ける”かどうか、見た目で判断することはできないようだ。これがわからないのは結構ストレスだ。

ファイルをローカルに保存してみた

 ………というわけで、「ファイルを常にローカルに置く」という設定をしてみたい。

 OneDriveでは「このデバイス上で常に保持する」、boxでは「オフライン利用可」の操作を行うことで、クラウド上にあるファイルをローカルに保存できる。

 合計13.8GBのファイル群(ファイル数3126)について、それぞれ操作を行ったところ、OneDriveは作業が終わるまでに1時間7分、boxは2時間36分かかった。

 そして、この作業中はパソコンがやたら重くなる。Office文書を編集するぐらいなら問題ないのだが、ブラウザで次々とページを開くような操作が辛い。

 リソースモニターを確認すると、各サービスのクライアントのタスクが「ハードディスク」の「書き込み」の上位を独占していた。

 会社のネット回線全体にも負荷をかけているので、就業時間後に操作をおこない、PCの電源を付けたまま自宅に帰るのが正解だったのかもしれない………

エクスプローラー上でファイルやフォルダを選択し、ローカルに保存する操作を行う
保存中は常にハードディスクに負荷がかかり、パソコンの動作が重くなった

 なお、会社のPCで、特定のフォルダに対し「このデバイス上で常に保持する」(OneDriveの場合)の操作をすることで、その後、そのフォルダの下位に自宅PCでファイルを置いても、自動で会社のPCに保存されるようになった。つまり、ファイルをローカルに保存する操作は、一度行えばOKということか。

 これらを活用することで、「進行中の案件のフォルダを、エクスプローラー上でOneDriveやboxに作成。案件が終了したら、別の場所に移す」という運用をすれば、オンラインストレージの容量を圧迫せずに、必要なファイルをすぐ開ける環境ができそうだ。

5月29日(金):J1リーグが7月4日の開幕を決定メールをクラウドで管理したい

 昨日は自宅の作業データを会社のPCに移行したが、大量のメールをインポートし、振り分けルールを使ってフォルダ分けするのに時間を取られた。

 次にテレワークをする機会があった際、同じ作業を繰り返したくないので、メールをクラウドで管理する環境を作っておきたい。

 メールをクラウドで管理する方法はいくつかある。例えば……

・IMAPを使ってクラウドでメールを管理する
・プロバイダの自動転送機能を使って、Webメールで管理する
・Webメールにアカウントを登録して、メールを受信する

 IMAPは受信/送信トレイの状態が、すべてのメーラーで共有されるのはいいのだが、メールをローカルに保存しないので、「○日後にサーバーから削除する」が使えない。会社で使用しているメールサービスのサーバー容量から考えると、IMAPの導入はあまり現実的ではないだろう。メーラーのルール設定で、メールをフォルダに振り分けられないのもマイナスだ。

Gmailで仕事用メールを受信してみた

 となると、残った選択肢は2つ。自動転送機能を使ってWebメールに転送するか、Webメールでの直接受信だ。

 自動転送機能を使った方が、利用できるWebメールの選択肢は増えるが……。いろいろと運用を考えた結果、両者に大きな差が無いことに気が付いた。

 仕事に使うメールを管理するのに、マイナーなフリーメールを使うのはちょっと怖い(そもそもフリーメールを使うなという意見もあるが)。中には、しばらく利用しないでいると、メールが削除されるサービスすらある。そうなると選択肢はGmailやOutlookなどになり、これらのWebメールなら外部メールを受信できるからだ。

Gmail……容量15GB、添付ファイルの送信は25MBまで
Outlook.com……容量15GB、添付ファイルの送信は20MBまで
Yahoo!メール……容量2GB(※筆者はYahoo!プレミアムの特典で無制限)、添付ファイルの送信は25MBまで

 私のケータイはソフトバンクなので、Yahoo!プレミアムの特典が適用され、「Yahoo!メール」のメールボックス容量が無制限になっている。ただ、Yahoo!メールには、メールをエクスポートする機能がない。将来的にメールの運用を変更した際に、過去の受信メールを移行できなくなる事態は避けたいので、今回はGmailを利用することにした。

Gmailで「他のアカウント(=仕事用のメールアカウント)のメールを確認」の設定を行う
「7日で削除」はiPhoneで実現
iPhoneの設定で、「受信後7日で、サーバーから削除する」ように設定

 WebブラウザでGmailを表示し、「設定」の「アカウントとインポート」から「他のアカウントのメールを確認」を選択。仕事用のメールアカウントを登録する。これで、会社のアドレス宛てのメールを、ブラウザ上のGmailで受信することができた。

 ちなみに、Gmailではメールを受信した際に、メールのコピーをサーバーに残すように設定することはできるが、「○日後にサーバーから削除する」という設定項目は見つけられなかった。これはOutlook.comも同様だ。

 これは、iPhoneの標準メーラーにあった、「サーバーから7日で削除」設定で対応することにした。普段から、会社のメールをiPhoneで受信しているので大丈夫だろう。

 メールの削除はiPhoneに任せ、しばらくPCのメーラーをお休みに。仕事用のメールはGmailで管理してみようと思う。

6月1日(月):東京都の休業要請解除がステップ2へWebブラウザ同期問題「家と会社で使い分けたほうがいいのかな……」

 久々の出勤にびっくりした身体を週末で骨休みして、今日は再び会社に出勤。

 パソコンの電源を入れ、メーラーを立ち上げ……ようとする指を引き留めて、WebブラウザでGmailを表示。新着メールをチェックする。

Gmailのラベルを使って、メールの振り分けルールを設定

 古いメールをインポートしていないため、その引用などにしばらくはメーラーを使う機会も出てきそうだが、最終的にはGmailに完全移行していきたい。その第一歩として、メッセージの振り分けルールを設定する。これはメーラーからインポートできないので、一つ一つ手作業だ。

 なので、新しくメルマガなどが届くたびに、「メールの自動振り分け設定」を表示。受信トレイをスキップして、あらかじめ作成したラベルを付ける設定を行っていく。これを一週間も続ければ、不要なメールは受信トレイにほとんど表示されなくなるだろう。15GBのメールボックスを食いつぶしたら、メルマガはがしがし削除していきたい。

ブラウザの履歴を会社と自宅で共有する

 メールのチェックが終わり、打合せ用の資料を作っていると、必要な情報の漏れが見つかった。これは、テレワーク中にネットで調べたものだが、再び検索しようとしても、そのページが見つからない。なぜだ。

 結局、キーワードを変えてググるのにも限界が来たので、家に帰ってWebブラウザの履歴をひっくり返すことにした。同じことを繰り返さないためにも、自宅と会社でWebブラウザの同期も行っておこう。

 これについては、WebブラウザにGoogle Chromeを使っているので話が早い。

 「設定」から「同期の管理」を開いて、「履歴」のラジオボタンをオン。あとは家に帰って、Google Chromeで同じアカウントでログインすればOKだ。他にも、開いているタブなども同期できるが……やめておこう。会社で趣味のページが表示されて、大惨事にはなりたくない。

 とはいえ、自宅で見ていた趣味のページのリストが、会社のPCに表示されるのも、こう、モヤっとする。自宅では普段は別のブラウザを使うなど、何らかの運用をするべきだろう。

Google Chromeで「履歴」を同期するように設定を変更

 自宅での作業データを会社のPCに移行するとともに、クラウド経由で逆方向にも移行させる準備ができた。しばらくはこの状態をキープして、コロナウイルス感染拡大の第二波に備えたい。

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

※編集部より
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飛田九十九