急遽テレワーク導入!の顛末記

「テレワークを普通にしたら、業務効率は落ちます」、先輩企業にコツを聞いてみた――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(6)

美容室でも進むテレワーク、その事情

 ついに全国で緊急事態宣言が解除された。

 その一方で、テレワークの継続を望む声は政府と現場の両方であがっているという。安倍総理も「この1か月でテレワークが普及しました。改善すべきは改善しながら、この前向きな変化を今後も継続していただきたい」とコメントしているという。

知り合いの中小企業とZoomで打ち合わせ。私の周りの中小企業でも、ビデオ会議を使う機会が増えている。

 ……この記事を書いている時点で、7都府県の緊急事態宣言発令から51日が過ぎた。

 私が勤めている新宿の中小企業では、緊急事態宣言の発令以降、可能な範囲でテレワークを導入してきた。

 連載1回目でお伝えしたように、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」の申請も行っており、環境整備も進めている……ところだが、助成金の支給決定はまだ。

 感染拡大の第一波には間に合わなかったが、予期されている第二波を見据え、引き続き環境の整備を進めていく。

 今回は、知り合いの中小企業でのテレワーク導入事情を、詳しく聞く機会があったので、その様子も含めて紹介していきたい。

【今回のハイライト】
助成金はまだ決まらず
テレワーク歴9年の先輩中小企業にお話を伺った
美容室でもテレワークが進んでいるという

5月26日(火): 東京都が段階的な要請緩和を開始した日緊急事態宣言解除!……あれ?助成金は??

 昨日25日の緊急事態宣言解除を受け、会社では今週の木曜日から通常通りに出勤することになった。今日の全体ミーティングはオンラインで行うことになったが、当面、これが最後のZoomミーティングとなりそうだ。

 ミーティング中に申請中の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」のことが話題になった。募集要項には「正式受領してから支給決定がおりるまでの期間は最長1か月です」とあるが、もう1か月半以上が過ぎている。

「審査の経過・結果に関するお問い合わせには、一切応じられません」ともあったが、ただ待つしかないのだろうか。

助成金の募集要項によると、業務ソフトウェアの追加購入については、変更承認申請ができるようだ。ただし、6月1日必着とある。

 申請した当初とはテレワーク周りの状況も変わってきているので、
「環境整備の取り組みについて、今一度見直した方がよいのではないか」
との意見が社内から出てくる。

 支給決定日以後における事業計画の変更は、

1.助成対象事業者の名称、所在地、代表者、印影を変更する場合
2.業務ソフトウェアを新たに購入する場合(令和2年4月27日以前に支給決定を受けた場合に限る)

 については対応するとあった。申請している助成対象の機器などは変更できないため、不都合が出た場合や、新たな知見や状況に合わせていく場合は、運用で対応することになるだろう。

 実際、テレワークを導入してから、社内ではその都度状況に応じた変化があり、対応してきた。これらのルールは明文化されていないが、今一度見直す必要がありそうだ。

5月27日(水): 第2次補正予算案が閣議決定された日「テレワーク歴9年の中小企業」のご意見を聞いてみた

支給決定通知の方法について公式ホームページを確認すると、募集期間延長の告知があった。応募が殺到しているのだろうか……。

事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」では、支給決定通知が郵送で届くことになっている。

 しばらく出社していなかったので、役員に確認してみたが、まだ届いていないようだ。

「普通にやったら、業務効率は落ちます」

 その代わりというわけではないが、「〇〇さんのところが、以前からテレワークを導入しているから、参考になるのでは?」とのアドバイスをもらった。

 この方は赤坂にある会社の社長で、健康食品の企画・製造を手掛けている。短い時間ではあるがアポが取れたので、電話で状況について話を聞くことにした。

 この会社がテレワークを始めたのは2011年。東日本大震災が起きた直後のことだ。「働き方改革」という言葉がにわかに広まる中で、今でいう ワークライフバランスと業務の効率化 を目指して、導入を決意したという。

 実際やってみた感覚からいうと「テレワークで業務効率を上げる」というのは、首をかしげる部分もあるが、お話を聞くと「普通にやったら間違いなく効率は落ちます。うちもそうでした」と。やっぱり……。

 実際にテレワークで業務効率が上がったのは、もっと後の話で、それまでは試行錯誤の連続だったのだとか。

重要なのは「社員の自主性」

「テレワークで最も重要なのは 社員の自主性 です。それを育むためにKPIを設け、タスク管理を行い、ツールを導入し、思いつく限りのことを絶え間なくやってきました。

テレワークって、普通に顔を合わせているときより、10倍ぐらいコミュニケーションが必要なんですよ。だから、特に大切にしているのが、 “報連相” を細かく行うことと、そのための環境作りなんです」

 ここでいう報連相とは、雑談や進捗管理とは全くの別物だという。

社長含む全員が「Messengerで報告」
Facebook Messengerを使っているのには特に理由はなく、「ツールは何でもよいと思います」とのこと。

 社長を含めた社員全員がFacebook Messengerをスマホやパソコンのブラウザで常に表示しておき、何か一つの作業を行うたびに、それを報告する。

それを見たほかの社員は、「その件なら、〇〇さんに連絡した方がいいですよ」などとアドバイスをする。そこには上も下もなく、社長が若手の社員に突っ込まれることもあるようだ。

 こうしたやり取りを社長というポジション上、日に100件はこなしているという。社員全員がこのやり取りを自主的にできるようになった頃、テレワークにおける業務効率は一気に上がったそうだ。

「進捗管理と言った瞬間に、それが面倒なものになって、誰もやらなくなるんですよ。監視されているようだし、そのために割く負担が大きいじゃないですか。

だから、 会社にいるときと同じような感覚で報連相をする 。これが大事なんです」

 テレワークが始まってからは、うちの会社でもLINEを使う機会が増えた。まだまだやり取りが少なく、同僚が隣にいるような感覚はないが、これをもっと加速させる取り組みが今後必要になるかもしれない。

5月28日(木): 東京タワーが営業を再開した日美容室のテレワーク事情も聞いてみた

 在宅勤務は昨日で終了。いつもより少し早めに起きて、随分久しぶりに朝の通勤電車で出社した。

Zoomを導入してからは社外とのやり取りについて、オンラインで行う提案をするようになった。

 今日の最初の仕事は、美容室のポータルサイトやサロン支援を手掛ける会社の社長さんと打ち合わせ。

 いつもは先方の会議室にお邪魔していたのだが、「 Zoomでやりませんか? 」と提案したところ、二つ返事で了承された。

 打ち合わせが一通り終わった後で話を聞くと、どうやら先方の会社でも緊急事態宣言に伴って、テレワークを導入していたらしい。どうりでZoomでの会議についての反応が良かったはずだ。

「美容業界は教育産業」、Zoomの勉強会が当たり前に

「最近はZoomを使って、サロンの勉強会をやっているんですよ。スタッフが直接訪問しなくて済むので、1日により多くのサロンを見られるようになりました。

生産性がかなり上がっていますし、営業体制の強化にもつながっています」

前回にうちの会社が社内ミーティングをZoomで行ったときも、ハウリングが問題になっていた。

 ただ、当初はサロンにいる美容師が一斉にZoomにつなげると、 ハウリングが起きる などのトラブルがあったという。

 画面共有の機能を使ってレジュメを見せるにも、従来にはない工夫が必要なので、そこは日々改善を行っているようだ。、

「美容業界は教育産業とも言われていて、技術だったり、商品だったり、その勉強会がサロンで頻繁に行われています。普段なら『〇〇さん、たまには顔を出してよ』と言われるところが、ここ1カ月はZoomでの勉強会が歓迎されるようになりました。これまでならZoomの導入も嫌がっていたと思うので、この流れは絶対に止めたくないですね」

 なお、こちらの会社では顧客情報の管理を行うこともあって、プライバシーマークを取得している。

 テレワークにあたって新たな取り組みが必要になったが気になったが、
「そもそも重要な情報は外部から見られないよう、社内サーバーできちんと管理しています」

 とのことで、今のところ大きな変化はないようだ。

リモートデスクトップは断念、Dropboxは更新タイムラグ……

 その一方で、通常業務におけるファイルのやり取りについては、手間取る場面も多かったようだ。

通常のDropboxと違い、Businessエディションは管理者向けの機能が充実している。

 当初はWindows標準のリモートデスクトップ機能で、自宅から会社のパソコンを操作することも検討したのだが、あまりのレスポンスの悪さに断念。

今では社内でファイルを共有する場所として、Dropbox Businessを導入している。

「ただ、Dropboxはファイルの更新にタイムラグがあるようで……。『入力が終わりました』と連絡が来たので作業を引き継ぐと、更新前のファイルを操作していたことがありました。バージョン管理に注意が必要ですね」

 Zoomについては、画面共有機能の使いこなし、顧客との打ち合わせなど、いろいろとやるべきことが見えてきた気がする。

ファイル共有についてはNASを利用する予定だが、バージョン管理が正しく行われているか、しばらく様子を確認する必要がありそうだ。

 緊急事態宣言の解除を受けて、オフィスで仕事をする日常が戻ってきた。ただ、これまで使ってきたツールやノウハウは、今後の業務にも活かしていきたい。

※編集部より
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飛田九十九