急遽テレワーク導入!の顛末記

「ホストでなくてもZoomで勝手に画面共有できるようにしてみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(60)

「OBS Studio」でサブ画面をPinP配信、さらにカメラ映像を補正してみた

Zoomでブラウザーの画面を配信しながら、画面右下にカメラ映像をPinP表示してみた

 「Zoom」でビデオ会議をしているときに、何かと面倒なのが「画面共有」に許可が必要なこと。会議の流れを止めてしまうし、ホストがZoomに詳しくない場合、操作に時間がかかることもある。

 ……この記事を書いている時点で、東京都などで緊急事態宣言が解除されてから19日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はホストでなくてもZoomで勝手に画面共有する方法を考えてみた。

【今回のハイライト】
「OBS Studio」でブラウザーとカメラ映像を同時に表示
フィルタを使ってカメラ映像を補正する
LUTを使って、さらなる映像の美しさを追求
【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された2020年4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【2020年4~8月末までの顛末はこちら】

7月5日(月):Zoomの画面共有は、もっと自由であるべきでは?

 今日はクライアントとZoomでビデオ会議。新規案件についての説明を受けている途中に、相手の会話がパタリと止まる。どうやらレジュメを共有するのに苦労しているようで、話が本題に入るまでに随分と時間がかかってしまった。

ホストが「セキュリティ」で「画面の共有」を有効にしないと、ゲストは機能を利用できない

 実はそのファイルは手持ちがあるので、画面共有しようとしたのだが、ホスト側のセキュリティ設定のために機能が利用できなかった。この

自分: 「画面を共有したいのですが」
相手: 「分かりました、設定を変更します」

 というやり取りは、過去に何度も繰り返しているが、どうにも時間の無駄な気がする。“見知らぬ第三者が勝手に画面を共有するような現場”でなければ、初期状態でセキュリティを自動で無効にしてほしいのだが……。

6月29日(火):「OBS Studio」でブラウザーの画面を勝手に共有

 「Xbox Game Bar」を使って会議を勝手に録画した時のように、「ツールを使ってホスト権限をパスできないか」と考えていたところ、以前にバ美肉(バーチャル美少女受肉)したときに使った「OBS Studio」のことを思い出した。

 「OBS Studio」はユーチューバーなどがよく使っている、無料のライブ配信用ソフトだ。画像やウェブカメラの映像、ウィンドウのキャプチャ映像などを画面上に配置して、それを仮想カメラの映像として出力。Zoomのカメラ映像として、ビデオ会議に利用できる。

 今回は「ウェブカメラの映像」と「ブラウザーの画面」を切り替え、もしくは同時に表示できる環境を作ることにした。まずは、「OBS Studio」を起動して、ソースとして「映像キャプチャデバイス」と「ウィンドウキャプチャ」を選択。それぞれ、使用するウェブカメラとブラウザーを指定する。

画面左下の「ソース」の「+」をクリックし、「映像キャプチャデバイス」を選択
ソース名を入力後、次の画面で「デバイス」から利用するウェブカメラを選択する
ウェブカメラの映像が表示されたら、赤く表示された縁をドラッグしてサイズを縮小し、右下に配置
ブラウザーを起動したうえで、「ウィンドウキャプチャ」のソースを追加し、「ウィンドウ」にブラウザーを指定。同じように赤縁をドラッグして、全画面まで引き延ばす

 ソースの配置が終わったら、「VirtualCam」の設定をオン。Zoomの設定画面でカメラに「OBS-Camera」を選択すると、「OBS Studio」に配置したブラウザーとカメラ映像がプレビュー画面に表示された。

メニューバーを「ツール」→「VirtualCam」と操作。表示されたウィンドウで「Start」ボタンをクリックする
Zoomの設定画面で「ビデオ」の「カメラ」に「OBS-Camera」を選択

 ちなみに、今回はカメラの映像を画面右下に小さく配置したが、ビデオ会議中に表示するソースをワンクリックで切り替えることもできる。この「画面に小さくカメラ映像を表示する」機能はZoomにもあるが、PowerPointのファイルを背景としてしか、カメラ映像を表示することはできなかった。しかし、「OBS Studio」ならどんなウィンドウとでも、カメラ画像をセットで表示できるので、ちょっとユニークなプレゼンができそうだ。

ソースは上にあるものから重ねて表示され、目の形のアイコンをクリックすると、そのソースを非表示にできる。Zoomに配信する映像の切り替えに便利だ

7月8日(木):ウェブカメラの映像を「OBS Studio」で明るく補正

 「OBS Studio」で配信する映像のソースが配置できたので、ビデオ会議向けに設定をもう少しイジってみることにした。

 ビデオ会議の準備でどうしても時間を取られるのが、ウェブカメラの画質の設定。顔が暗く映っていると、補正機能をオンにしたり、部屋の明かりを調整したりとバタバタすることになる。

 そこで便利なのが「OBS Studio」のフィルタだ。これは、ソースとして取り込んだ映像に、様々な効果が加えられる機能。「映像キャプチャデバイス」であれば、「色補正」というフィルタを使い、「ガンマ」「輝度」「彩度」「色相」といった各パラメーターを調整できる。

ソースの「映像キャプチャデバイス」を右クリックして「フィルタ」を選択。表示された画面で「+」をクリックし、「色補正」を選択する
「ガンマ」や「コントラスト」などの各種パラメーターが変更できるようになった

 自宅の部屋でビデオ会議に参加すると、どうしても顔が暗く映りがちなので、今回は「ガンマ」と「輝度」をプラスに動かして明るくしたうえで、コントラストを少し強くしてみた。この設定は「OBS Studio」を再起動しても残るので、ビデオ会議のたびにZoomやGoogle Meetの設定をいじらなくても、すぐに会議に参加できそうだ。

7月9日(金):LUTを使ってカメラ映像をシネマ調にしてみた

 今日は朝からZoomでビデオ会議。さっそく「OBS Studio」を利用してみたが、カメラの映像は明るいものの、色味がどうも不自然な気がする。終了後に再び「色補正」フィルタのパラメーターをいじってみたが、これ以上の調整はプロの手を借りる必要がありそうだ。

 そこで、「OBS Studio」の「映像キャプチャデバイス」で、新たに「LUTを適用」フィルタを追加してみた。これは、LUTと呼ばれるファイルを参照することで、映像の各パラメーターをまとめて補正するためのもの。ネット上には“シネマ調”など、さまざまなLUTがファイルとして提供されており、その中にはフリーで使えるものもある。

「LUTを適用」フィルタを追加。「参照」をクリックして、LUTファイルを指定する

 さっそく、良さそうなLUTをネットで探してダウンロード。「LUTを適用」フィルタから適用させると、顔の発色や肌の質感がキレイになった。フィルタ効果をどのぐらいかけるかは、バーのドラッグ操作で調整できるので、不自然にならないぐらいに映像を補正。その上で、「色補正」フィルタを使い、明るさや彩度を微調整するのが良さそうだ。

 「OBS Studio」を経由させることで、ホストでなくてもZoomで画面共有できるようになり、さらに映像の補正も可能になった。一度設定さえ行えば、後はZoomなどと一緒に「OBS Studio」を起動するだけでOKなので、ぜひ試してみてはいかがだろうか。

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※編集部より
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飛田九十九