急遽テレワーク導入!の顛末記

「指定の時間にPCを自動起動&終了! さらにデータのバックアップを自動化してみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(109)

日頃使っていないサブマシンをピンポイントで自動起動/終了させる

時間をトリガーに、PCの起動、バックアップ、終了までを自動で行う仕組みを作ってみた

 前回はWake On LAN(WoL)などを使って、自宅のPC1台を外出先から遠隔操作できるようにした。あとは、このPCに仕事用のデータをバックアップして、いつでもアクセスできるようにしておきたい。

……この記事を書いている時点で、東京都でまん延防止等重点措置が解除されてから137日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はBIOSのAPM(Advanced Power Management)などを駆使して、電源投入からPC間でのバックアップまでを自動で行う仕組みを作ってみた。

【今回のハイライト】
BIOSの機能でPCを自動起動させ…
指定の時間にデータを自動バックアップ
さらにシャットダウンも自動化してみた

8月1日(月):BIOSの機能を使い、毎日サブマシンを自動起動させる

 Wake On LANとchrome リモートデスクトップを組み合わせて、外出先から遠隔操作できるPCを自宅に1台用意した。とはいえ、社外秘のデータにアクセス可能な状態にするのは怖いので、ここには日常的な作業データのみを保存しておくことにしよう。

 遠隔操作用のPCはサブマシンとして利用しているので、普段から起動するような使い方はしていない。となると、ここにバックアップデータを保存するには

(1)サブマシンを自動で起動させる
(2)メインマシンからデータをバックアップする
(3)サブマシンを自動でシャットダウンさせる

という仕組みを用意することになる。

 このうち、(1)については、BIOSに用意されている「APM」という電源管理用のメニューが使えるだろう。さっそく、サブマシンのBIOSを起動すると、APMのメニュー内にRTC――指定の時間(リアルタイムクロック)で電源を投入する機能が用意されていた。この時刻を会社の定時にセットしておけば、その日の作業データをスムーズにバックアップできそうだ。

サブマシンで利用していたASUSのマザーボードでは、BIOSの「詳細」タブに「APM」の機能が用意されていた
機能を有効にして、毎日定時にPCを起動させるように設定する

 なお、「APM」の各種機能は、Windowsの「高速スタートアップ」をOFFにしないと利用できないことがあるので注意が必要だ。この操作は前回のWake On LANの設定で行っているので、参考にしてもらいたい。

8月2日(火):サインインとバックアップも自動化!

 BIOSの設定を行ったことで、定時になるとサブマシンが自動で起動するのを確認できた。ただ、電源が自動で入っても、Windowsのサインインにパスワード入力が必要だとデスクトップ画面までたどり着かないので、この操作も自動化しておきたい。

 サインインの自動化は、Windowsの「ユーザーアカウント」画面から設定できる。ここで、「ユーザー名とパスワードの入力が必要」のチェックをオフにすると、指定しておいたアカウント名・パスワードの入力を、Windowsが自動で行ってくれるという仕組みだ。

タスクバーの「検索」ボタンをクリックして、「netplwiz」を検索→起動する
「ユーザーアカウント」画面が表示されたら、下のボックスでアカウントを選択。「ユーザーがこのコンピューターを使うには~」のチェックボックスをオフにして、「適用」ボタンをクリックする
「自動サインイン」画面が表示されたら、先ほど選択したアカウントのサインインに利用する「ユーザー名」と「パスワード」を入力して、「OK」ボタンをクリックする

 これで、電源の投入からデスクトップの表示までが自動化されたので、引き続きバックアップの設定を行いたい。なお、バックアップツールには、いつもお世話になっている「BunBackup」を利用することにした。

 「BunBackup」は非常にシンプルなインターフェースをしており、保存先と保存元を指定するだけでデータのバックアップが行える。ただ、初期状態では時間を指定しての自動バックアップ機能がOFFになっているので、アプリ内で機能を有効にする必要があった。

バックアップ元/先のフォルダを開いたら、アドレスバーをコピーして、BunBackupの各入力欄に貼り付ける
「設定」→「機能表示設定」と操作して、「自動バックアップ」を有効にする
「設定」→「環境設定」と操作して、バックアップを開始する時間を登録。今回はPCが自動起動しているであろう、定時から10分後を指定した

 そのまま定時になるのを待っていると、サブマシンでステップ2までの操作が自動で行われるのを確認できた。引き続き明日からはステップ3の“PCの自動シャットダウン”に取り組んでいきたい。

8月3日(水):自動シャットダウン専用の「Dropbox」を用意

 ステップ3ではPCを自動でシャットダウンさせるわけだが、そのツールには以前に“PCを声でスリープさせる”回で使った、「Assistant Computer Control」を利用することにする。

 「Assistant Computer Control」では、オンラインストレージの同期用フォルダに作成されたテキストファイルをトリガーに、PCを自動でシャットダウンする。なお、利用するオンラインストレージには「Dropbox」が推奨されているので、先にクライアントアプリをインストールすることに。「ファイルの同期方法」の選択画面では、テキストファイルをPCに作成する必要があるので、「ファイルを『ローカル』に設定する」を選択すればよいだろう。

インストーラーで「ファイルの同期方法」を尋ねられたら、「ファイルを『ローカル』に設定する」を選択
今回はDropboxを「Assistant Computer Control」でのみ利用するので、オンラインへのバックアップは一切行わない設定にした
インストールが終わると、「Dropbox」専用のフォルダが作成される

 なお、オンラインストレージとの同期に時間がかかると、その後の操作に支障が出る恐れがあるので、「Dropbox」はなるべく「Assistant Computer Control」専用として利用するようにしたい。既に「Dropbox」利用している場合には、専用のアカウントを作って運用した方がよさそうだ。

8月4日(木):シャットダウンも自動化……できない!?

「Assistant Computer Control」でPCを自動シャットダウンさせる

 「Dropbox」の設定も終わったので、いよいよ「Assistant Computer Control」をサブマシンにインストール。自動シャットダウンの設定を行っていこうと思う。とはいえ、基本的な操作は以前に公開した記事と変わらない。アプリをインストールしたら画面に表示されるウィザードに従って、設定を行っていけばOKだ。

ウィザードが表示されたら言語に「English」を選択。ストレージに「Dropbox」を選択し、「>」ボタンをクリックして画面を進めていく
自動シャットダウンのテスト画面が表示されたら、「閉じる」ボタンで画面を閉じる

 「Assistant Computer Control」がインストールされたら、後はクラウド連携サービスの「IFTTT」で“指定の時刻に(If This)、「Dropbox」で「Shutdown」というテキストファイルを作成する(Then That)”というアプレットを作成すれば準備は完了。ここで、“指定の時刻”に自動バックアップが終わった頃を設定しておけば、そのタイミングでPCが自動でシャットダウンするようになる。

「IFTTT」で「My Applets」を作成(Create)。今回は「If This」に「Date & Time」を利用する
トリガーに「Every day at」を選択
ちょうど自動バックアップが終わった頃の時刻を指定する
続いて「Then That」でDropboxに関する設定を実施
トリガーに「Create a text file」を選択。「File name」に「computerAction」を、「Content」に「shutdown」を、「Dropbox folder path」に「assistantcomputercontrol/」を指定する

 これで、指定の時刻になると「IFTTT」 が「Dropbox」にテキストファイルを作成し、それを確認した「Assistant Computer Control」がPCを自動でシャットダウン……してくれるはずなのだが、この自動シャットダウンがうまくいかない。テキストファイルの自動作成までは上手くいっているのに、一体なぜなんだ?

8月5日(金):邪魔なウィザード画面が原因だった模様

 あれからいろいろと設定を見直してみたところ、どうやら原因は「Assistant Computer Control」のインストール時に表示されるウィザードにあったようだ。実はこのウィザード、アプリが起動するたびに表示されて困っていたのだが、いろいろ試したところようやく非表示にすることができた。

ウィザードのオンラインストレージを選択する画面で「Click here to skip the setup guide」を選択
さらに、通知領域からAssistant Computer Controlの「Settings」画面を呼び出し、「save」ボタンをクリックすると、ウィザードが自動表示されなくなった
PCの電源が入ると、BunBackup やDropbox、Assistant Computer Controlが勝手に起動して、バックアップからシャットダウンまでを自動で行ってくれた

 その後は、自動シャットダウンも機能するようになり、“指定した時刻にサブマシンを起動/終了させ、データをバックアップ”するという一連のタスクが、全て自動で行われるようになった。こういうツールの連携が狙い通りに実行されるのは、成功したドミノ倒しを見ているようで気持ちよい。

 とはいえ複数のツールを利用したため処理が複雑になり、PCへの負荷も大きくなってしまった。今となると「もう少しスマートなやり方があったのでは?」とも思えるので、もう少しシンプルな方法も模索してみたい。

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

※編集部より
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飛田九十九