急遽テレワーク導入!の顛末記

「3D空間のバーチャルオフィスに無料トライアルで出社してみた!」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(43)

もはやゲーム感覚! 会社にいる気分で雑談にも花が咲く?

アバターを使って、バーチャルオフィスで仕事中……

 先日、久々に社長と電話で長話をしていた時に、こんなことを言われた。「最近は雑談する機会もないから、プロジェクトの進捗報告は聞いていても、細かい様子がなかなか伝わってこないんだよね」と。

 ……この記事を書いている時点で、一都三県で緊急事態宣言が発出されてから57日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、ほぼすべてのスタッフがリモートによる業務を行っている。その中で、今回は社内のコミュニケーションを加速させるべく、前回に引き続いてバーチャルオフィスを試してみたいと思う。

【今回のハイライト】
オフィシャルの説明会に出席してみた
アバター改造でバーチャルデビュー
気になるマシンへの負荷は?
【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された2020年4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【2020年4~8月末までの顛末はこちら】

2月26日(金):「CLOUD OFFICE RISA」の公式オフィスにお邪魔してきた

アバターの近くにいる人とボイスチャットなどができるバーチャルオフィス「oVice」

 先週はバーチャルオフィス「oVice」を部内でのコミュニケーションに使ってみたのだが、社内の反応が良かったので、本格的に導入を検討することになった。とはいえ、中小企業でも利用できそうなバーチャルオフィスは、何もoViceだけではない。使い勝手もサービスによって異なるので、もう少しいろいろと試してみるべきだろう。

 そこで、今回目を付けたのが、2019年3月からα版を提供している「CLOUD OFFICE RISA」だ。このサービスの特徴は、何といっても仮想3D空間上に、オフィスを設置できることにある。

withコロナ・afterコロナ時代の新しいワークスタイルをうたう「CLOUD OFFICE RISA」

 昨今ではテレワークに伴って、同僚と雑談する機会が減ったことが問題視されている。しかし、よりリアリティの高いバーチャルオフィスであれば、没入感が増すことで雑談も弾むのではないだろうか? さっそく試してみたいと思う。

 なお、RISAは営業日ベースで7日間の無料トライアル期間を設けているが、利用するには事前説明会への参加が必要になる。説明会は公式のバーチャルオフィス上で行われていたので、さっそくアポを取って参加してみた。

 時間になったのでログインすると、目の前には「エントランス」という家具などのないシンプルな空間が広がっていた。視点を移動させると、他にも「応接間」や「RISA開発室」といった部屋があるようで、そこから“片岡さん”という方が姿を現す。名前の下には「応接室3へどうぞ!」とのコメントが表示されていて、どうやらこの人が今日の案内人のようだ。

提供されたアカウントでログインしたところ、前に説明会に参加した人(松田さん)の名前やアバターがそのまま残されていた

 ちなみに、3D空間上での基本的な操作方法だが、「W」「S」キーで前後に移動し、「A」「D」キーで視点を左右に移動させる(※カーソルキーやマウスでも移動や視点移動が可能)。このあたりの操作感はMMORPGに近く、普段からゲームで遊んでいることもあって、すぐに慣れることができた。

 ……というより、ログインした時から感じていたが、デフォルメされたRISAの雰囲気は、ゲームの世界観にかなり近い。朝からバーチャルオフィスにログインし、定時になったらログアウト。そのままMMORPGにログインしていたら、ほぼ1日を仮想空間で過ごすことになりそうだ。

「応接室3」に移動すると、左上に部屋にいるメンバーの名前が表示された

 コメントに従って応接室に入ると、ここでようやく片岡さんからの声が聞こえるようになった。RISAの世界では、六角形のエントランスを囲むように6つの部屋があり、各部屋にはさらに3つの会議室が用意されている。

 エントランスでは会話できないので、基本的には部署ごとに部屋に分かれて過ごすことになるだろう。部屋での会話はそこにいる人の間だけで行うことができ、さらに会議室に入ると中にいる人にしか声が聞こえなくなる。こうしてオフィスにいる時の、“声が聞こえる距離感”を再現しているというわけだ。

 その後、片岡さんには30分ほどかけて、RISAの基本的な使い方を教わることができた。この公式オフィスでは「まだ実装されていない機能も使える」とのことで、せっかくなので使い勝手をイロイロ試してみることに。気になる料金は月額500円/1ID。思ったより安かったが、最低契約期間が6カ月になるという。これは契約前にじっくり無料試用をして、使い勝手を確かめておく必要があるだろう。

公式のオフィスでは、“倒れる”など未実装のモーションも試すことができた。ピンチの時に使えそう?

3月1日(月):アバターのカスタマイズで没入感がアップ!

 事前説明会で「明日にでもRISAを使いたい!」と伝えたところ、翌朝にはメールが届き、うちの会社用のバーチャルオフィスが割り当てられた。さっそくログインしてみると、部屋割りは公式のものと同じらしい。A~Fまで6つの部屋があり、各部屋に会議室が3つある。部屋の名前は設定画面から変更できるようだ。

 ちなみに、ログイン時にはアバターの選択画面が表示され、全20種類あるキャラクターを選択することになるが、そのカスタマイズが各アカウントの設定画面で行える。「髪の色」「肌の色」「髪型」「顔」「服装」「靴」が変更できるので、リアルの自分に寄せるだけでなく、派手なスタイルでバーチャルオフィスデビューするのもアリだろう。

今回はマジメなメガネキャラに。日によって服を変えるのも楽しそうだ
コピーした招待コード(URL)を送るだけで、バーチャルオフィスに招待できる

 他にも、設定画面からは、招待コードの発行も行えるようだ。これをコピーして同僚に送れば、いちいちRISAにアカウントを作らなくても、バーチャルオフィスに出社できるらしい。なので、今回も同じ部署の同僚Aさん、Bさんを巻き込むことにする。この広いオフィスを3人で使えるとは、なかなか優雅なことになりそうだ。……仕様的に1部屋しか使わないだろうけど。

3月2日(火): 同僚2人とバーチャルオフィスに出社してみた

 今日はRISAに出社する日。少し早めにログインして部屋で待っていると、同僚Aさんが姿を現した。こちらの姿を見つけて、部屋に入ってきてくれたので、さっそくモーション機能を使って“手を振る”。しばらくすると、同僚Bさんも出社してきた。

エントランスでは会話できないので、コメントとチャットで部屋に誘導
同僚2人も無事バーチャルオフィスに出社できた

【同僚B】: 何ですかコレ! いきなり画面に部屋が出てきたから、ビックリしましたよ!
【同僚A】: うんうん。なんというか、近未来?
【飛田】: ゲームみたいで面白いでしょ。じゃあ、今日はこのまま仕事をしようか。
【同僚A】: このままって、アバターを操作しながらですか! トイレに行く時とかどうしよう……。
【飛田】: いやいや、その時は離席のアイコンをONにすればいいから。というか、oViceと同じように、普段は何も操作せずに放置で大丈夫だからね?

 その後、RISAではリアルでの状態を“オープン”“通常”“忙しい”“離席”と4つのアイコンで表示できること。「I Watchの作業中」というように、名前の下にステータスを表示できることを、同僚2人に説明。これで、ようやくAさんにも納得してもらえたので、アバターはこの部屋に置いたまま、それぞれ作業に取り掛かることになった。

同僚Aさんが会議室に移動。「ランチを食べています」とのことだ

 そのまま雑談まじりに仕事を続け、昼を過ぎると同僚Aさんが会議室に入っていった。状態が“忙しい”を表す顔マークになり、ステータスも変更される。どうやら食事に行っているらしい。会議室に移動したということは、こちらの声が聞こえないわけで、完全にオフな状態に移行できたようだ。

 とはいえ、仕事をしていると、離席中の同僚に伝えておきたい要件も出てくる。そんなときにはメッセージを送っておけば良いだろう。これはいわゆるチャット機能で、同じ部屋にいる相手にだけにしか届かないので、後で見ておいてほしい事、部内の連絡事項を伝える時に重宝しそうだ。

はい、同僚Aさんは会議室に立ち入り禁止ですー

 ちなみに、会議室で重要な会議をしているときは、他の人が入れないようにロックすることができる。この時、バリアが張られるようなエフェクトが発生するのだが、これがなかなかカッコいい。アイコンのクリックで“手を振る”や“拍手”などのモーションができることといい、やはりRISAには“ゲーム世界でのコミュニケーション”に通じる楽しさがあるようだ。

3月5日(金):3D表示による気になるマシンへの負荷は?

 RISAを使い始めてから、今日で1週間が経った。そのうち3日はバーチャルオフィスに繋ぎっぱなしで仕事をしていたが、特に大きな問題はなかったと思う。“高品質の音声通話”をうたっているだけあり、ボイスチャットの音質もクリアだ。

ブラウザのみ立ち上げた状態で、Windows 10標準の「Xbox Game Bar」で計測

 3D表示となると気になるのがマシンへの負荷だが、会社支給のノートPCでログインしたところ、CPUで20~40%、GPUで50%前後の使用率となっていた。このノートPCはグラボ非搭載の第10世代Core i7 CPUマシンだが、性能的には十分だったらしい。

 設定画面からはフレームレートが変更できるので、処理が重くなるようなら、フレームレートを落として利用すると良いだろう。もちろん、ブラウザを最小化するとか、別のタブを開けばマシンに負荷はかからないので、普段の作業の妨げになることはない。

ほかの部屋にいる同僚に「ノック」して、呼びかけることが可能
ノックされると、ブラウザを閉じている状態でも通知が表示される

 ただ、先日の片岡さんの話によると、RISAはデュアルディスプレイの片方でオフィスを常に表示させ、もう片方の画面で業務をこなすような使い方を想定しているらしい。デュアルディスプレイ環境を用意できない場合、普段はオフィスが表示されなくなるが、そこで役立つのが「ノック」機能だ。

 「ノック」はWindowsの通知機能を利用しており、指定した相手の画面上に、「〇〇さんが▲▲から呼んでいます」というようにアラートを表示させる。ブラウザを最小化しているような状況でも、これなら用事があることを伝えられるというわけだ。

画面の共有機能があるので、ミーティング中に資料を表示することもできる

 ただし、RISA にはZoomのようなビデオ会議の機能はない。ようするに、常にアバターとして3D空間にいる状態こそが、ビデオ会議をしているのと同じという考えなのだろう。なお、画面の共有機能は用意されているので、ミーティングなどは問題なく行えた。身内のミーティングであれば、こちらの方が外見を気にしなくてよいだけ、ストレスなく過ごせそうだ。

 こうしてRISAを使った5日間を振り返ると、やはり3D空間だけあって、世界への没入感は高かった。雑談をしている時も、ついついアバターの立ち位置が気になって操作してみたり、拍手などの機能を使ってみたりしたくなる。ノートPCをリビングに持っていけば、カメラを気にすることなく、ランチ中に雑談も楽しめた。

 そして、“部屋に入れば、そこにいる人に声が届く”という仕組みも、ボイスチャットではシンプルで使いやすかった。仕事中はとりあえず同じ部屋にいれば、話しかけたり、声が聞こえたりする状態になるので、特に何かの操作をしなくても仕事に没頭できる。マイクは必要な時だけONにすればいい。

 バーチャルオフィスを利用したことで、オフィスにいる時と同じように気軽に話しかけたり、雑談したりできる環境が再現できた。後は、もう少し試用を続けて、うちの会社にベストなサービスを探してみたい。

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※編集部より
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飛田九十九