急遽テレワーク導入!の顛末記

「リモートデスクトップを使いたい!……会社の反応は?」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(24)

フリーの「Chrome Remote Desktop」を試してみた

Pro版のWindowsでなくても、無料でリモートデスクトップはできる

 状況に合わせて出社と在宅勤務をする中で、会社のデスクトップPCとノートPCを使い分けるようになった。その中で細かいトラブルが起きるのだが、どうにも解決しないときには、出社している同僚の手を煩わせてしまうこともある。

 ……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから143日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を利用してテレワークの環境を整えた。その中でも、どうしても出てくるトラブルを、今回はリモート操作で解決していきたい。

【今回のハイライト】
ほとんどラグなしで仕事ができる
サインアウト状態でもリモート接続OK
あの機能を試してみるか……

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】

10月9日(金):パソコンをリモート操作(人力)する

 今日は午前中だけテレワーク。午後から出社の予定だったが、ビデオ会議の予定が急遽早まった。準備していたファイルは、会社のNAS……ではなく、デスクトップパソコンの中にある。これから急いで出社しても、会議の時間に間に合いそうにない。

 やむを得ないので会社に電話をして、パソコンの電源を入れ、ファイルをメールで送ってもらうことにする。おかげで会議は無事にできたが、同僚に無駄な時間を使わせてしまった。これは、何らかの対策が必要だろう。

出社してすぐ使うからと、会議用のファイルはデスクトップに。NASに保存しておけば……。

10月13日(火):「Chrome Remote Desktop」を会社のマシンにセッティング

 先週の反省から、会社のパソコンをリモート操作する環境を整えることにした。とはいえ、会社支給のパソコンは全てWindowsがHomeエディションなので、OS標準のリモートデスクトップ機能では、ホストとしての操作ができない。

 そこで、リモートデスクトップに対応したフリーソフトをいくつか試してみたところ、「Chrome Remote Desktop」に行きついた。無料アカウントでも機能制限などがなく、接続時の操作も必要最小限。そして、画面のラグがほとんどない。

 さっそく、会社のデスクトップパソコンに導入してみよう。まずは、Google Chromeを起動して、仕事用のアカウントでログイン。公式サイトにアクセスして、必要なソフトをインストールする。さらに、デバイス名とPINを設定すると、リモート操作のための準備が整った。

Google Chrome上でインストールの操作を実行。
さらに、デバイス名を入力して……。
リモート接続時に利用するPINを入力する。

 会社支給のノートPCは自宅に置いてきたので、今日の作業はここまで。パソコンの電源を入れたまま、帰宅することにした。

10月14日(水):いよいよ自宅からリモート操作することに

 今日は自宅でテレワーク。さっそく、会社支給のノートPC……でいきなりリモート操作できるようにするのは、ちょっと怖いので、テスト運用として私物のノートPCを用意。「Chrome Remote Desktop」の初期設定を行う。

同じGoogleアカウントでログインし、「Chrome Remote Desktop」にノートPCを登録

 ここで一覧から会社にあるデスクトップPCをクリックすると、そのデスクトップ画面がすぐに表示された。アクセス認証の操作などが必要ないのは、Googleアカウントでのログインが、その代わりになっているということだろうか。これは、スムーズでありがたい。

 そのまま、マウスポインタ―を動かしたり、ファイルを開いて原稿を書いたりしてみたが、やはりラグがほとんど無い。パソコン間でのファイルの受け渡しも可能。というか、メールソフトを起動して、原稿を添付して納品することもできるので、この日の仕事のほぼすべてを「Chrome Remote Desktop」上で行うことができた。

“ファイルを開いて、文字を入力”という操作がほぼタイムラグなしでできる。さらにメニューを開くと……
ファイルの保存時に良く見るダイアログボックスが表示され、ファイルのダウンロードやアップロードができる

 スペックは会社のデスクトップPCの方が上なので、重い作業をさせるなら、むしろ快適かもしれない。あとは、この運用を会社に何と言われるか…だが。

10月15日(木): セキュリティと電気代をどう解決するか?

 電源をつけっぱなしのデスクトップPCが気になったので、今日は出社することに。「Chrome Remote Desktop」の運用について、さっそく会社の役員に相談してみる。

【役員】そうだなぁ、セキュリティ的にはサインアウトした状態であれば、パソコンの電源が付けっぱなしでも大丈夫だと思う。
【飛田】なるほど、それは大事ですよね。
【役員】あとは、「パソコンをつけっぱなしにすると、電気代が月に3000円ぐらい増える」と聞くから、それ以上の成果が出れば問題ないかな。

 それ以上の成果……なかなか難しいオーダーだ。

 とりあえず、会社のデスクトップPCを電源が入ったまま、サインアウトさせた状態で帰宅。自宅から私物のノートPCで「Chrome Remote Desktop」を起動させると、デスクトップPCのステータスに「オンライン」の文字が表示された。

 これは――いけるのではないだろうか。すぐに、マシン名をクリックすると、Windowsのサインイン画面が表示され、パスワードの入力でデスクトップ画面が表示された。どうやら、ホスト側のマシンは電源オンでネットにさえ繋がっていれば、ゲスト側からの操作が可能らしい。

リモート接続すると、Windowsのサインイン画面が表示された

 これで、セキュリティの問題は解決できた。あとは電気代だが、省電力というと真っ先に思いつくのがスリープ。ただ、試してみると、ホストがスリープ状態では、ゲストからリモート接続できなかった。さて、どうしたものか……。

ホストがスリープ状態の場合、「Chrome Remote Desktop」ではリモート接続ができなかった
そういえば、VPNでもあの機能は使えるのだろうか?

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※編集部より
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飛田九十九