急遽テレワーク導入!の顛末記

「無料でも使える『Trello』はテレワークで増えた進行管理トラブル対策になる!?」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(33)

専用のツールを使うことで、進行管理の手間やミスは減らせるか?

付箋ライクなインターフェイスでタスクを管理する「Trello」

 テレワークが普及する中、社員一人一人の業務内容を見える化するものとして、プロジェクト管理ツールが注目されている。元々は主にソフトウェア開発で利用されていたが、今では様々な現場に広まっており、作業フローの管理に欠かせない存在となりつつあるようだ。

 ……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから214日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、スタッフが可能な範囲で出社と在宅勤務を使い分けている。進行管理の連絡などは主にメールで済ませているのだが、以前に比べると細かいトラブルが増えているようだ。

【今回のハイライト】
グループウェアの予定共有はいまいち……
そういえば、Trelloが使えるかも!
新規プロジェクト用のボードを作ってみた

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】

12月7日(月): テレワークが始まって数カ月、ここ最近の悩みは……

 今日は自宅でテレワーク。朝からメールの確認をしていると、あるクライアントから仕事の依頼があった。どうやら、来月から新たなプロジェクトが始まるらしい。

 さっそく、役員にLINEを繋いで概要を説明したところ、社内におけるリーダー役を任されることになった。案件に関わるメンバーは社内が1人、社外が2人。その進行管理が主な仕事になりそうだが、さてどうしたものか。

 テレワークが始まって数カ月が経つが、その間に社内では進行管理で細かいトラブルが増えている。電話やメール、LINE、Slack、サイボウズOfficeなどと連絡経路が分散したことが、確認などの抜け漏れにつながった。そもそも予定はサイボウズOfficeで共有しているのだが、全体事項から個別案件まで何でも登録している人も多く、表示欄はパンパン状態。見落としも多く、確認しないと忘れられているタスクも多い。

 それでも、オフィスに出社していた頃は、気軽に声掛けをしてリマインドできていた。それが、テレワークになって以降、いわゆる“言った言わない”問題が多発し、放置されたタスクが大事になったこともある。

予定の共有には「サイボウズOffice」も使っているが、確認漏れが多くてリマインドが必須な状況

 このご時世にせっかく拾えた仕事の評価を、事前に予想できたトラブルで下げたくない。ここは、何らかの対策を打っておくべきだろう。

12月14日(月): 進行管理のトラブル対策に「Trello」はどうだろう?

 プロジェクトの開始に先駆けて、メンバーとZoomミーティングをすることになった。概要をまとめた資料を共有し、作業フローを説明。そして、問題の進行管理だが……

【飛田】「Trello(トレロ)」を使ってみようと思うんだけど、どうかな?

【仕事仲間M】あぁ、何か聞いたことがある。プロジェクト管理ツールだっけ。

【仕事仲間T】いいんじゃないかな。前に使ったことがあるけど、今回は短いタスクを繰り返す案件だからハマると思う。

 どうやら、メンバーの反応も良さそうだ。「Trello」は以前の記事で紹介した、アトラシアンが提供するクラウドツール。無料アカウントでも10件までのプロジェクト(ボード)を管理できるので、インタビュー後は個人的なタスク管理に使っていた。

アトラシアンのプロジェクト管理ツール「Trello」

 とはいえ、本来は「Trello」は多人数のプロジェクトを管理してこそ、本領を発揮できるツール。そこで以前取材したつてで事前にアトラシアンさんに連絡をして相談してみたのだが、アトラシアンさんによれば、今回のような少人数の進行管理でもしっかりと役立ってくれるとのこと。実際にどれだけ便利に使えるか、今から楽しみだ。

「Trello」ってどんなツール? 何が便利なの??

 「Trello」は「カンバンボード」と呼ばれるフレームワークを利用し、付箋を貼るようにタスクを管理するツール。タスクは「カード」単位で管理され、ドラッグ操作で「リスト」と呼ばれるグループ間を移動できる。

タスクの情報を入力したカードを、ドラッグ操作で移動させる

 「Trello」でタスクを管理する際は、一般にプロジェクト単位で「ボード」を作成。さらに、各ボードで作業工程ごとに「リスト」を作成する。例えば、「テレワーク日記」というプロジェクトであれば、「企画提案中」「作業中」「納品済み」「公開済み」……といったところだろうか。

工程ごとにリストを作成すれば、タスク(カード)の状態が一目で分かる

 その上で、「テレワーク日記 第33回」というように、タスクごとに1枚のカードを作成。カードには「タイトル」と「説明」を書くことができるので、それぞれ提出した企画書から「企画名」と「企画内容」をコピペして、「企画提案中」リストに置いておく。

 その後に、企画が編集部に採用されたら、カードを「作業中」リストに移動。記事を納品したら「納品済み」リストに移動……というように、各タスクの進捗をカードの配置で管理するわけだ。

メンバーを追加すれば、ステータスの変化を通知できる(現在ぼっち運用だけど……)

 なお、カードに「メンバー」を追加しておけば、そのカードを登録した時、リスト間を移動した時などに、全メンバーに自動で通知が届く。カード内ではメンバーとコメントのやり取りができ、ファイルを添付で共有することも可能(※)だ。

※無料アカウントでは1ファイル10MBまで

 さらに、「Google Chrome」と連携させることで、「Trello」では様々なプラグインが利用できる。人気のツールだけあって、レイアウト変更から自動化、Google連携まで、ネット上ではさまざまなプラグインが公開されていた。

Gmailのメール本文から、タスクを素早く登録できるプラグインも

 これらの機能が、「Trello」では無料アカウントで全部使える(笑)。本当にいいんですか、アトラシアンさん?

12月15日(火): プロジェクト専用のボードが完成!(使用時間10分)

 いよいよ明日からプロジェクトがスタート。それに先駆けて、「Trello」に専用のボードを作成した。

 まずは、「基本情報」リストを作成。ここを資料置き場として、プロジェクトの概要、Trelloの入力ルールなどを、それぞれカードに記載しておく。

 あとは、作業フローごとにリストを作成。これは、ひとまず「企画提案中」「作業中」「納品済み」「公開済み」とした。今回は仕事仲間のTさん、Mさんに、企画案をカード入力して納品してもらうので、「企画提案中」リストにサンプルを作成して置いておく。

 この2人と同僚のAさんには、既にTrelloのアカウントを作ってもらっているので、そのメールアドレスをボードに招待すれば準備は完了だ。

プロジェクトのボードが完成!(※実物だとモザイクだらけになるので、画像はダミーです)
最初にカードを配置することになる「企画提案中」リストに、カードのサンプルを置いておいた

 ここまでの作業時間は10分程度、ひとまずイメージ通りの準備は整った。あとは、実際に運用してみて、問題があれば改善していきたい。

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※編集部より
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(協力:アトラシアン株式会社)

飛田九十九