急遽テレワーク導入!の顛末記

「NASとVPN、起きたトラブルを振り返ってみる、ファイルが消えた(ように見えた)事件とか……」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(21)

会社に設置されたNAS「HDL2-AA4」。VPN経由で自宅からアクセスできる環境を構築している

 緊急事態宣言が解除されてから、出勤している日と、在宅勤務をしている日が入り混じるようになった。こうなると、面倒なのがファイルのバージョン管理。誤って古いファイルで上書きしたら、せっかくの作業が無駄になってしまう。

 ……この記事を書いている時点で、全国で緊急事態宣言が解除されてから122日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を利用してVPNルーターを導入。自宅から会社に設置したNASにアクセスできる環境を整え、ここでファイルを一元管理するようになった。今回はそれに伴うドタバタを、ありのままに紹介していきたい。

 さて、話は7月にさかのぼる………

【今回のハイライト】
VPN接続による会社のネットワークへの負荷は?
NASからファイルが消えた!?(消えていない)
テザリングではVPN接続できず……

【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【4~8月末までの顛末はこちら】

7月21日(火):VPN接続が会社のネットワークに負荷をかけている?

 7月、VPNの環境が整ったので、昨日はOneDriveに保存していた業務用のファイルを、NASに用意された個人用フォルダに移動させた。これで、OneDriveはひとまずお役御免ということになる。

 今日はテレワークで在宅勤務。会社支給のノートPCでVPNクライアントを立ち上げて、NASに保存しておいた仕事用のファイルを開く。

ふとVPNクライアントの画面を見ると、結構なデータ量を送受信していた

 その後、ある要件で出社している同僚のAさんに電話をしたのだが、どうにも相手の話の歯切れが悪い。話を聞くと会社のインターネット環境が不安定で、ブラウザでグループウェアを開くにも時間がかかっているようだ。

 そういえば、先日からVPNによるNASへのアクセスが解禁された。もしかしたら、それが原因で会社のネットワークに負荷がかかっているのではないだろうか? そのうち、インターネット環境は安定したようだが、このままNASへのアクセスを続けてもいいのか不安になってくる。

【飛田】ということで、ちょっとテストに協力してもらえないかな。
【Aさん】いいですけど、私は何をすればいいんです?
【飛田】ちょっと待ってね、これをこうして……

 ダミー用に作成した10GBのファイルを、VPN経由でNASへとコピーする。これで、会社の下りネットワークには、ある程度の負荷がかかっているはずだ。

【飛田】サイトの表示速度が遅くなったりしていない?
【Aさん】今ですか? 試してみますけど……、うーん特には感じないですね。

 その後もファイルのアップロードを続けながら電話をしたが、体感できるほどの影響は出ていないようだ。ただ、ファイルのコピー画面を見てみると、筆者自宅の上り速度が1Mbps前後しか出ていない。確かにこれなら負荷はかからないだろうが……。大きなファイルをやり取りするのは、ちょっと大変そうだ。

 ちなみに結局、「なんでインターネットが不安定だったのか?」の理由はわからなかった。その時刻、「ほかの複数のスタッフもアクセスしていた」などの可能性も考えられるが、ざっと聞いてみた限りではそんなこともなかったようだ。その後、そうしたことはほとんどなかったので「まぁいいか」で済ませているが………

10GBのファイルをアップロードするのに1時間以上かかる……

8月13日(木):NASからファイルがごっそり消えた!?

 今日は会社で書類仕事の日。NASに保存された過去の仕事データを確認していると、中身が空になっているフォルダがあった。それも一つだけでなく、いくつも並んで。

 中身が消えたフォルダは、いずれも7月20日に更新されていた。この日付には見覚えがある。そう、OneDriveからNASへと、ファイルを移動させた日だ。恐らく何らかの理由で、一部のデータがコピーされなかったのだろう。

 ブラウザからOneDriveにアクセスすると、ごみ箱に削除したフォルダがまだ残っていた。Microsoftアカウントで利用している場合、OneDriveのごみ箱にファイルが残されるのは30日間まで。トラブルは困るが、早目に気が付いてよかったと思うべきだろう。

NASにコピーした後、削除したファイルがまだOneDriveに残っていた

 ごみ箱からの復元作業をすることで、パソコンのOneDriveにも、削除したフォルダが表示されるようになった。ただ、この時点でファイルはまだクラウド上にしか存在しない。ダウンロードしてNASへ移動させるには、ちょっと時間がかかりそうだ。

8月27日(木):テザリングの時だけVPNにつながらない、なぜ……

 今日は久々に対面での打ち合わせがあったので、ノートPCをカバンに詰めて、取引先の会社に向かう。その打ち合わせ中にNASにアクセスしようとしたのだが、なぜかVPNに繋がりにくい。というか繋がっても、すぐに接続が途切れてしまう。これは、一体……。

 結局、原因が分からなかったので、打ち合わせの後でVPNルーターの設置をお願いしたKさんに問い合わせてみると、「テザリングで接続したとき固有の症状みたいです」とのこと。どうやら、iPhone経由でインターネットに接続していたのが、トラブルの原因だったようだ。

 指示に従って「FortiClient VPN」のリモートGWの設定をドメインではなく、グローバルIPアドレスに変更すると、その後はスムーズに繋がるようになった。

「FortiClient VPN」のリモートGWを、グローバルIPアドレスに変更

【Kさん】飛田さんって、もしかしてWi-Fiテザリングされていますか?安定性ということだと、Bluetoothでテザリングした方が良いと思いますよ。……速度は落ちますけど。

 なんと、それは知らなかった!さっそく、ノートPCと自前のiPhoneをブルートゥースでペアリング。iPhoneをアクセスポイントとして使用するように設定した。外出先でノートPCをネットに繋げる時は、しばらくこの方法を試してみよう。

BluetoothテザリングでノートPCをインターネットに接続

9月18日(金):「ファイルが消えた」(ように見えた)事件……

 週が明けて定時通りに出社すると、何やら会社の様子が慌ただしい。焦ったようにパソコンを操作している人もいれば、複合機の前にも何人かが集まっている。一体どうしたんですか?

【社員A】 「それが、スキャンの調子がおかしいみたいで……」

 話を聞くとスキャンの操作自体は問題なくできるのだが、それがファイルとして保存されないのだという。スキャンデータはNASに保存される設定になっているのだが、どうにもファイルが見当たらないのだとか。

 そういえば、会社のネット環境に不具合があったので、週末にVPNルーターやNASの電源を一度落としたという話を聞いた。なんとなく嫌な予感がしたので、スキャンデータの保存フォルダ内を「日付時刻」でソート。一番古い日時のファイルを開くと、先ほどスキャンしたデータが表示された。そのファイルの更新日時は2011年1月2日。どうやら、スキャンしたデータがタイムスリップしてしまった……のではなく

【飛田】「多分、NASの時刻設定が初期化されてるんじゃないかな」
【社員A】「えっと、それって結局どうすればいいんですか?」

 まぁ、日時が古いファイルを探せばいいのだが、このまま放置するのも気持ち悪い。こういう時こそVPNの出番だろう。外出中の役員に状況を伝えると、NASのGUIにVPN経由でアクセスし、すぐに時刻設定を修正してくれた。

タイムサーバーとの同期がまだのようで、日時が工場出荷時まで巻き戻っていた

 2カ月近くVPNルーターとNASを使ってきて、とりあえず表立った問題は潰せたと思う。ファイルのバージョン管理やセキュリティの問題には、ある程度解決の目途が立ったと言えそうだ。

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※編集部より
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飛田九十九