急遽テレワーク導入!の顛末記

「自宅と会社のメール環境をVPN経由で同期させてみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(51)

Thunderbirdのプロファイルをツールでお手軽同期させる

VPNとNAS、バックアップソフトを使って、2拠点間でメール環境を同期させてみる

 先週からThunderbirdをポータブル運用しているが、1週間使ってみると“USBメモリーの持ち歩き”に思ったよりも気を遣わされた。他のファイルと一緒に保存していると“うっかり削除してしまう”のが怖いし、いわゆる“安全な取り外し”でエラーメッセージが出ると「裏でまだ何か作業しているのかな?」と気になる。そして、セキュリティについての不安材料も。

 ……この記事を書いている時点で、4都府県で緊急事態宣言が発出されてから5日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はThunderbirdのバックアップ、およびVPNでの2拠点間での同期を試してみた。

【今回のハイライト】
ポータブル版のThunderbirdをバックアップ
NASへのデータ移行に伴い、「profiles.ini」を書き換え
VPN同期で、さらに「profiles.ini」を書き換え(1日ぶり2回目)
【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された2020年4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【2020年4~8月末までの顛末はこちら】

4月26日(月):ポータブル版Thunderbirdをパソコンにバックアップする

 今日も始業時間に合わせてパソコンを起動し、USBメモリーを装着。Thunderbirdを起動して、新着メールを確認する。

 そこで、ふと「メールの保存場所がUSBメモリーだけというのは怖いな」と思った。USBメモリーの耐用年数は数年と言われているし、衝撃でコネクタがゆがんで中のデータが取り出せなくなることもある。USBメモリーを挿したままなのを忘れて、うっかり出社してしまうこともありそうだ。

 こういう心配事は早めに解決しておくに限るので、データのバックアップを取ることにした。今回、利用するのはフリーのバックアップソフト「BunBackup」。多機能ながらもインターフェイスがシンプルで、気軽に使えるのが気に入っている。

 「BunBackup」にはインストール版とZIP版があるが、今回はUSBメモリーに入れて持ち運びたいので、ZIP版を利用することにした。解凍したファイルをUSBメモリーに保存したら、EXEファイルを実行。初回起動時はウィザードが立ち上がるので、画面に従って操作する。

上のボックスのチェックを全てオフに。「追加」ボタンをクリックし、USBメモリーにインストールしたThunderbirdの「profile」フォルダを指定する
あとはバックアップ先のフォルダを指定すれば準備完了
ウィザードで行った設定は指定の場所に保存される。このファイルを指定することで、同じ設定のバックアップを簡単に繰り返し実行できる

 ウィザードでの操作が終わったらメイン画面が表示されるので、さっそくバックアップを実行。Thunderbirdの各種データがまとめられた「profile」フォルダが、指定の場所にコピーされた。Thunderbirdは初期状態で、メールをサーバー上に14日間残すよう設定されているので、少なくとも2週間おきにはバックアップ操作を行うようにしたい。

「バックアップ」→「バックアップ開始」と操作すると、先ほどの設定どおりにファイルのコピーが行われた

4月27日(火):「profiles」フォルダをNASに移動させる

 今日も朝一でUSBメモリーをパソコンに装着。そこに保存しておいた「BunBackup」を見て、ふと思いついた。VPNでThunderbirdの「profiles」フォルダを同期させれば、USBメモリーを使わずに済むのではないかと。

 ただ、うちの会社ではNASやプリンターなど、特定の機器にしか固定IPアドレスを振っていない。そのため、同期には以下のステップを踏む必要がある。

  • (1)会社のThunderbirdの「profiles」フォルダをNASに移す。
  • (2)帰宅後にNASの「profiles」フォルダを、自宅のThunderbirdと同期させる。
  • (3)出社前に自宅のThunderbirdの「profiles」フォルダを、NASと同期させる。

 このうち、(1)については先週までに何度かやってきた操作の応用技になる。まずは、「profiles」フォルダを丸ごとNASにコピー。元あった「profiles」フォルダを開いたら、「profiles.ini」(.以降は拡張子)という名前のファイルをメモ帳などで開く。

 あとは、「Path=」以降の記述を、NASに移動した「profiles」フォルダ内にある「●●●release」というフォルダのパスに書き換えて上書き保存。Thunderbirdを起動すれば、以降は各種設定や送受信メールがNASに保存されるようになる。

「profiles」フォルダの中身を、NASにコピーする

※ThunderbirdをCドライブにインストールした場合、「profiles」フォルダはC:¥Users¥ユーザー名¥AppData¥Roaming¥Thunderbird¥Profilesにある
※隠しファイルがあるので、アクセスするにはエクスプローラーの「表示」タブで、「隠しファイル」のチェックをオンにしておく必要がある

元あった「profiles」フォルダを開き、「profiles.ini」ファイルをメモ帳などで開く。移行先の「profiles」フォルダの「●●●release」というフォルダを開き、アドレスバーをクリックしてパスを全てコピー。「Path=」以降の記述に上書きする
Thunderbirdを起動しようとすると、「ユーザープロファイルの選択」画面が表示されるので、「Thuderbirdを起動」をクリックする

 過去にも「profiles」フォルダの保存場所を移したことはあったが、NASに移動させたことはなかったので、ひとまずこのまま様子を見ることに。移行先をNASにしたので、会社のパソコンが起動していなくても、自宅から同期の操作が行えるようになった。これで問題なければ、引き続き(2)以降の操作を進めたい。

4月28日(水):自宅=会社間で「profiles」フォルダを同期させる

 あれから1日様子を見たが、Thunderbirdは問題なく動いているので、いよいよ「profiles」フォルダを自宅のパソコンと同期させたい。

 この作業には、先ほども紹介した「BunBackup」を利用する。VPNに接続した状態で、バックアップ元に会社のNASに保存された「profiles」フォルダを、バックアップ先に自宅のパソコンの「profiles」フォルダを指定してバックアップを実行。バックアップが終了したら自宅のパソコンの「profiles.ini」ファイルをメモ帳で開き、「Default=Profiles/」「Path=Profiles/」以降の記述を、「profiles」フォルダにコピーされたフォルダ名に変更すれば作業は完了だ。

「ファイル」→「新規作成」と操作し、設定を初期化。その上で「+」をクリックし、バックアップ元/先を指定する
今回は設定を「帰宅時」という名前でデスクトップに保存した
自宅のパソコンで「profiles.ini」ファイルを開き、「●●●release」というフォルダ名の記述を、同期された「profiles」フォルダ内にあるフォルダのものに変更する

※ThunderbirdをCドライブにインストールした場合、「profiles.ini」ファイルはC:¥Users¥ユーザー名¥AppData¥Roaming¥Thunderbirdにある

 その後、Thunderbirdを起動すると、受信したメールの未読/既読状態はもちろん、アドレス帳やフィルタ、署名の設定に至るまで、会社の環境が一通り再現されていた。ポータブル版のThunderbirdをNASに移して利用すれば、話はもっと簡単だったかもしれないが……。こうすることで、2拠点間でメール環境のバックアップを取り合うことができたので、このままインストール版の最新リリースを使い続けたいと思う。

4月30日(金):出社前にThunderbirdを同期させる

 GW前に外せない予定ができたので、急遽出社することに。(2)の同期に無事成功したので、引き続き(3)にあたる“自宅PC→会社NAS”方向でのバックアップを「BunBackup」に仕込んでおいた。「BunBackup」では設定をファイルとして保存できるので、「帰宅時」「出社前」のものをデスクトップに保存。それを、「BunBackup」のショートカットにドロップすれば、すぐに同期が実行できる。

 一昨日は仕事が終了した後でバックアップを実行しておいたのだが、出社してThunderbirdを起動したところ、メール環境が最新の状態に更新されていた。これで、VPNを使った2拠点間でのThunderbirdの同期については、成功したと言ってよいだろう。

設定ファイルをドロップして、表示されたバックアップを実行する

 受信メールが「profiles」フォルダ内にある「Inbox」という1つのファイルにまとめられているため、同期には毎回40分近くの時間が必要になるが……。操作は自宅でできるので、朝起きた時、帰宅後にそれぞれ実行しておけば、それほど不便さは感じない。ただ、アドオンは同期した方のThunderbirdが最初の起動時に認識しないので、一度Thunderbirdを再起動する必要があった。

 テレワーク下におけるメールの運用については、Gmailの利用にはじまって試行錯誤を繰り広げてきたが、今の方法がベストに思える。ここからさらに利用を続けて、何か改善点が出てきたら、またこの場で紹介していきたい。

「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧

※編集部より
テレワーク導入から在宅生活の楽しみ方まで!
「在宅で仕事する時代」の情報をまとめたサイト「在宅ライフ」を公開中です。ぜひご活用ください。

飛田九十九