急遽テレワーク導入!の顛末記

「既読/未読も状態そのまま!メール環境をUSBメモリーで持ち歩いてみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(50)

会社でメールを送受信した状態を、そのまま家に持ち帰りたい

フリーの定番メーラー「Thunderbird」

 前回、Gmailのバックアップデータ閲覧用としてインストールした「Thunderbird」だが、久々にいじってみると、なかなか使い勝手が良い。Gmailはシンプルで操作性も悪くないが、添付ファイルをローカルで操作するには、いちいちダウンロードする必要があるなど、クラウドならではの不自由さもある。

 ……この記事を書いている時点で、東京・京都・沖縄でまん延防止重点措置が適用されてから11日が過ぎた。この記事が掲載されるころには東京に3度目の緊急事態宣言が出されている模様だ。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はThunderbirdのポータブル運用に着手してみた。

【今回のハイライト】
Gmailのバックアップから送信済みメールを選別
「Profiles」フォルダをコピーして環境を移行
言語パックでメニューを日本語化する
【これまでの経緯】

緊急事態宣言が発令された2020年4月、筆者の勤めている会社では何の準備もないまま、在宅勤務を始めることになった。仕事の環境は「デスクトップPC+メール」が普通だったため、データを外付けHDDで持ち運んだり、LINEの個人アカウントを流用したりと大混乱。その後、補助金などでNASやノートPCを導入、徐々にテレワーク環境を整えていく……

【2020年4~8月末までの顛末はこちら】

4月19日(月):過去に送受信したメールをThunderbirdで統合、で大失敗……

 Thunderbirdの使い勝手が思いのほか良かったので、過去にバックアップしたメールをまとめてインポートして、本格的に運用してみることにした。

 現在、ThunderbirdにはGmailで受信した、10カ月分のメールがインポートされている。しかし、その中には不要なメールをフィルターでラベル分けしたもの、「プロモーション」ラベルに自動で振り分けられたメルマガなどが含まれていた。なので、「Googleデータエクスポート」で、これら2つのラベルを含まないよう設定を行い、MBOXファイルを再び出力。これを、Thunderbirdに再度読み込ませる。

https://takeout.google.com/」で、メルマガをフィルタリングしていたラベルと、「プロモーション」のチェックを外す

 さらに、エクスポートされたデータは受信メールと送信済みメールがひとまとめになっているので、これをThuderbirdの各フォルダに振り分けたい。

 特定のメールを抽出するには、Thunderbirdの「メッセージフィルター」機能が利用できる。機能を立ち上げたら、新規のフィルターを作成し、条件に「自分が差出人のメール」を指定。抽出したメールを“仕事用アカウントの「送信済みトレイ」に移動させる”アクションを組んだら、後はフィルターを手動で実行すればOKだ。残ったメールはまとめて選択し、「メッセージを移動」の操作で受信トレイに移動させればよい。

「自分」が差出人のメールを抽出して、送信済みトレイに移動。操作後はフィルターを削除するのをお忘れなく
残ったメールはまとめて受信トレイに移動させた

 なお、Gmailの運用以前はマイクロソフトのメーラーを使っていたので、こちらのメールはEMLファイルでエクスポート。Thunderbirdに「ImportExportTools NG」というアドオンをインストールし、これを利用してインポートを行えば準備は完了だ。

 ……いや、だったのだが。この一連の作業で筆者がやってしまったミスを、ありのままに紹介しておこう。

受信トレイにファイルをドラッグしてもインポートできるが、ファイル数が多いとエラーが出やすい気がするので、今回は「ImportExportTools NG」を利用した
「受信トレイ」と「送信済みトレイ」をそれぞれ右クリックして、「ImportExportTools NG」からエクスポートしたEMLファイルを保存したフォルダを選択

 Thunderbirdの運用にあたり、さっそく会社のメールアカウントを登録したのだが、この時に筆者は受信サーバーのプロトコルが、初期状態では「IMAP」になっているのを見過ごしていた。そして、そのままバックアップしたメールを、大量にインポートしてしまうというコンボが発動。その結果として一体何が起きたか、勘の良い読者ならもうお分かりだろう。

 メールサーバーに大量のメールがアップロードされ、それが他のメーラーなどにものすごい勢いでダウンロードされはじめたのだ。

 慌ててWindowsを再起動させて、メールの受信をシャットダウンしたのだが……。結局、サーバー上のメールを削除し、Thunderbirdの受信トレイも空にして、メールのインポートを1からやり直すハメになった。このコンボは同じアカウントを登録しているスマホなどの受信トレイに同じメールがダブって保存され、サーバー容量やストレージ容量をパンクさせる恐れがあるので、くれぐれもご注意を。

Thunderbirdでは初期状態で受信サーバーに「IMAP」が選択されていることがある

4月21日(水):ThunderbirdをUSBメモリーで持ち歩く

 いろいろドタバタはあったが、会社のメールアカウントが登録され、過去に送受信したメールをひと通りインポートしたThunderbirdが完成した。次はそのポータブル運用に着手したい。

 といっても、やること自体はシンプルだ。Thunderbirdにはリムーバブルディスクで持ち運べるポータブル版があるので、これを「PortableApps.com」からダウンロード。USBメモリーなどにインストールする。

ポータブル版のインストーラーを起動し、インストール先にUSBメモリーを指定する

 後は、インストール版のThunderbirdから、データをコピーすれば準備は完了だ。 Thunderbirdは送受信したメールやアドレス帳、各種設定などが丸ごと「Profiles」フォルダに保存されているので、バックアップやインポートの操作がとにかく簡単。今回ならインストール版の「Profiles」フォルダにある「●●●release」の中身を、ポータブル版の「profile」フォルダに上書きコピーするだけだ。

【各フォルダのディレクトリ】
C:¥Usersユーザー名¥AppData¥Roaming¥Thunderbird¥Profiles
E:¥ThunderbirdPortable¥Data¥profile

※上のディレクトリはインストール版をCドライブにインストールし、USBメモリーがEドライブとして認識されている場合。

※隠しファイルがあるので、アクセスするにはエクスプローラーの「表示」タブで、「隠しファイル」のチェックをオンにしておく必要がある。

フォルダの中身を開いたら、全てを選択して上書きコピーする。コピーの方向を間違えないように注意

 データのコピーが終わったところで、USBメモリーに作成されたEXEファイルをダブルクリックしたところ、無事にポータブル版のThunderbirdが起動。各種設定やインポートしたメールも、全て再現されていた。ただし、初回起動時はメールアカウントのパスワードが求められたので、事前に準備しておくと良いだろう。

 ちなみに、このポータブル版のThunderbirdを、すべてのテレワーク用のPCでOneDriveなどのクラウドストレージの共有フォルダにインストール。クラウド経由で互いを同期させることで、USBメモリーを持ち歩かずに、Thunderbirdの状態をあらゆるPCで再現させるという方法もあるのだが……。インポートしたデータが20GBを優に超えており、将来的にクラウドストレージの容量がパンクする不安があったことから、今回は断念することにした。

4月22日(木):メニューを日本語化して使い勝手がUP

 問題なく動くことが確認できたので、いよいよ今日からポータブル版のThunderbirdを使っていきたい。となると、まずはメニューを日本語化しておくべきだろう。

 「PortableApps.com」からダウンロードしたThunderbirdは、初期状態でメニューなどが英語表示になっている。設定画面には「Language」という項目があるが、ここで「Japanese」を選択するには、言語パックのインストールが必要だ。

メニューバーを「Tools」→「Options」と操作し、「Options」タブで「Composition」画面を表示。「Spelling」の「Language」にある「Download More Dictionaries」のリンクをクリック
「All locales」にある「Japanese」の「Language Pack」をクリック
「Add to Thunderbird」をクリックし、ポップアップ画面で「Add」をクリック
「Options」タブに戻り、「General」の「Language」で「Set Alternatives」をクリック。「select a Language to add」で「Japanese」を選択し、「Add」→「OK」と操作
「Language」で「Japanese」を選択し、「適用して再起動」をクリックすれば日本語化は完了

 英語のままでもそこまで操作には困らないが、やはり不慣れなアプリは日本語化した方が、使いこなしの難易度が下がる。Thunderbirdはアドオンで機能を強化できるので、これからも色々とカスタマイズしていきたい。

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※編集部より
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飛田九十九