テレワークグッズ・ミニレビュー

第118回

7000円台で買ったノイキャンヘッドホンのコスパがスゴい!! 音が良い上にWeb会議でもYouTube配信でも大活躍

人生初のノイズキャンセリングヘッドホンを購入

 今までそれほど興味を持てなかったアレを買ってしまった。なにかと言えばノイズキャンセリングヘッドホンだ。

 筆者は音楽を聴くのは好きなので、ホームオーディオもカーオーディオもそれなりにこだわっている。にもかかわらずこれまでノイズキャンセリングヘッドホンに興味が湧かなかったのは、テレワークメインになって外で音楽を聴く機会が減ったからだ。以前毎日出社していたころは、イヤホンにこだわったこともあった。

 ただ、iPhoneからイヤホンジャックがなくなり、仕方なく手頃なワイヤレスイヤホンを試したら、それがあまりにも音がよくなかったため、「ワイヤレスは音が悪い」という印象を持ってしまった。そのせいで、ワイヤレスのイヤホンやヘッドホンに興味がなくなった、というのもある。

 ただ、最近は出社する日が増えてきたこと、そして新たに好きなアーティストを見つけたこともあって、電車の中でも音楽が聴きたい願望が強くなってきて、なんか探そうかな、という気になった。

 音楽を聴くだけならイヤホンでもよかったのだが、最近、清水理史氏と始めたYouTube「イニシャルB」チャンネルの配信で、配信から聴こえてくる音と、リアルタイムの声と両方を聴く必要があって、そのときに、脱着がしやすく、且つどちらかの音に専念できるヘッドホンが望ましく思えた。

清水理史の「イニシャルB」チャンネルを配信中

 さらにさらに加えて、オフィスでのWeb会議の問題だ。

 弊社でも出社率が上がっているので、オフィス内に人が増えて、けっこううるさい。今までは出社時はマイク付きのイヤホンで対応していたのだが、それだと場合によってはよく話が聴こえない。ここ最近そういったシチュエーションが続いている。

 そしてこの3つの課題をまとめて解決できるアイテムが、ノイズキャンセリング付きのヘッドホンだったというわけだ。

 ノイズキャンセリング付きのモデルの場合、マイクも付いていてWeb会議でも使えるモデルが多いし、周囲の騒音を減らせるのは、オフィスでのWeb会議に便利だ。さらにBluetoothのマルチポイント対応のモデルであれば、Web会議のときはPCに、音楽を聴いたり通話をしたりするときはスマホに接続することができる。ヘッドホンは大きくて、持ち運びにジャマだと思っていたが、行き帰りの電車の中では音楽を聴いているのだから、荷物にはならないじゃないか。もちろんYouTubeの配信のときや後の編集のときにも役に立つ。これは買うしかない!

ハイレゾをワイヤレスで飛ばせる! しかも実売7000円台で買える!!

 ということで、探してみた。

 条件としてはノイズキャンセリング付き、マルチポイント対応、そしてマイク搭載でWeb会議対応をうたっているもの。もちろん音楽を楽しみたいので音にもこだわりたいし、メガネを使うので、イヤーパッドが柔らかく耳が痛くならないものがいい。

 調べてみると、種類も豊富だし、価格もピンキリだ。あまり安物を買って後悔するのもイヤだけど、上を見れば青天井なので、1万円前後のモデルで評価の高いものを探してみた。

 そして選んだのが、EarFunの「Wave Pro」というモデルだ。実売7640円で購入した。

 実のところEarFunというブランドをあまり知らなかったのだが、比較的新しいブランドで、イヤホンをメインに扱っていて、なかなか好評らしい。

 このWaveProは同社初のヘッドホンとして登場したもので、国内外で数々の賞を受賞しており、口コミの評価も高い。しかもVGPの「コスパ大賞」を受賞しているとか。ワタクシこう見えてコスパと言う言葉には弱いのだ。同社からはヘッドホンの第二弾となる「Tune Pro」というモデルもほぼ同じ価格帯で登場していたが、最近ハイレゾ音源にハマっている筆者は、ハイレゾ音源も飛ばせるBluetoothの規格、LDACに対応しているという理由でWave Proを選んだ。

選んだのはEarFunの「Wave Pro」

高級感があってセミハードケースも付いて所有欲的にも満足度高し!!

 届いた製品を見てみよう。実のところオーバーイヤータイプのヘッドホンを買うのは初めてだし、ノイズキャンセリングタイプも初めてなので、詳しい読者にとっては当たり前のことも多いと思うがご容赦いただきたい。

 まずは立派なセミハードケースが付いていた。しかも専用ケースでしっかりと型にはまるようになっている本格的なものだ。ケースもグレーのファブリック調で、品がある。

セミハードケースが付属
中にはヘッドホン本体のほか、ケーブル類も収納できる
イヤーパッドがハマる立体形状になっている
充電用のUSBケーブルと有線接続用の3.5mmステレオミニプラグのケーブルが付属

 本体もケースに負けず高級感があるし、派手すぎもしないので、50代のオッサンが身につけていても恥ずかしくない感じだ。

 装着してみると、思ったよりは軽い。そしてなによりメガネを掛けていても耳が痛くならないのがいい。

 というのも、テレワーク用にオンイヤーのヘッドセットを使っているのだが、オンイヤータイプだと、耳の外側(耳介)を押すかたちになるので、長時間使っているとメガネのツルの当たる部分が痛くなりがちだったのだ。

 ところがオーバーイヤータイプは耳介の外側にイヤーパッドが来るので、それがない。オーバーイヤータイプのヘッドホンを買うのが初めてだったので、これはうれしい結果だ。

グレーメタリックで派手ではないが高級感のあるデザイン
やわらかいイヤーパッドでメガネ利用時でも耳が痛くならない
折りたたんでコンパクトにすることも可能
電源、音量ボタンでは曲の再生/停止や曲送りなども操作できる。ノイズキャンセリングボタンではオン・オフに加えて外音取り込みモードも選べ、有線接続用の3.5mmステレオジャック、そして充電用のUSB Type-Cポートが付く
3.5mmジャックの横にある穴がマイクだが、他にハウジングの上下にマイクが内蔵される

iPhoneとAAC接続でつないで聴いてみる

 そして試聴。まずはiPhoneをBluetoothでつないで、ハイレゾ音源を聴いてみる。

 聴いたのは筆者が最近すっかりハマっているchilldspot(チルズポット)というバンドの曲だ。メンバー全員2002年生まれという若手バンドなのだが、その楽曲が、アラフィフの筆者にはとても心地いい。

最近どハマりしているchilldspot。若手らしからぬ安定感と、でも予定調和にはハマらず、良い意味で裏切ってくれる新鮮さがあって、最近の若い人の音楽にはついて行けない……とか思っている人にこそ聴いてもらいたい

 実のところ、姪っ子と話をしていても出てくるのはボカロ曲ばかりで「オッサンには今時の音楽シーンについて行けない」と思っていたのだが、羊文学とかchilldspotとか、探せばオッサンにも響く楽曲を作るアーティストは出てきているようだ。最近そういった新しいアーティストを探すのが楽しくなっている。

 話を戻すが、端的に言ってこのヘッドホンの音はかなりいい。

 説明しておくと、iPhoneのBluetoothのコーデックはLDACに対応しておらずAAC止まりなので、ハイレゾ音源の本来のビットレートは再現できていない。そのため、これはハイレゾの本領でもWave Proの本領ではないのだが、それでも結構音がいいと感じられる。これまで「ワイヤレスは音が悪い」と思い込んでいた筆者だが、考えを改めねばならない。

mora playerを使えばiPhoneでもハイレゾ音源(FLAC)が再生できる。だが、Bluetoothのコーデックがハイレゾのビットレートに対応していない

 筆者は学生時代にベースをやっていたので、バンドの曲を聴くときはついベースの音に意識が行く。chilldspotの楽曲も、ベースのレベルの高さが気に入っていて(というかメンバー全員レベルが高いと思う)、このヘッドホンは、そのベースの良さの部分、味の部分がちゃんと表現されている。とかく安いイヤホンなどだと、ベースの音の滑舌とか艶の部分が埋もれてしまって表現できないものが多いが、これだと指の弦への当たり方まで感じられて、聴きながらニヤついてしまう。

LDAC接続でハイレゾを堪能したいのに……、つながらないだと!!

 AACでこれだけ良いのならLDACはどれほどなのか? 期待に胸を膨らませつつ、PCでLDACを使えるようにして、LDAC接続でハイレゾ音源を聴いてみよう。

 と、試みたのだがなぜかLDACでつながらない……。

 結論から言うと、このWave Pro、LDAC対応のAndroidスマホでなければLDAC接続できない仕様になっている。

 というのも標準ではLDACは使えない設定になっていて、アプリを使って設定変更する必要がある。だが、iPhoneはLDACに対応していないので、iPhone用アプリにはその設定自体がないのだ。EarFunのアプリはiPhone用とAndroid用しかなく、Windows用はないし、アプリを使わずに本体で設定変更する術もない。

WindowsでLDACを使えるようにできる「Alternative A2DP Driver」を入れるが、なぜかLDACが選べない

 つまりAndroidスマホを持っていない筆者には、WaveProのLDACをオンにする術がない。いくらWindows側をLDACに対応させても、LDACで聴くことができないのだ。いずれLDAC対応のハイレゾプレーヤーでも買おうかと思っていたが、これでは使えないじゃないか!

 エミュレーターを使ってWindowsでAndroidアプリを動かせないかとか、Amazon Fire HDで動かないかとか、いろいろ試したがうまくいかず、結局Androidスマホを持っている友人に頼んでアプリを入れてもらい、設定変更をさせてもらった。

 これでPCとLDACでの接続に成功した。一度設定を変えておけば、その後iPhoneとAACで接続しても、再度PCにつなぎ直したときにはLDAC接続になった。

 ただし注意点があって、マルチポイント接続(アプリではデュアルデバイス接続と表記)とLDACは併用できない。そのため、マルチポイント接続をオンにしてしまうと自動的にLDACがオフになってしまう。

AndroidアプリでLDAC接続の設定をオンにすると、PCともLDACで接続が可能になった。サンプリング周波数96kHz、ビットレート990kbpsで接続できている

やっぱりハイレゾはいい! LDACはいい!!

 というなかなかiPhoneユーザーには萎える仕様に肩を落としつつ音を聴いてみる。

 すると驚いたことに、さらに確実に音が良くなった。もちろん元も良かったので「別もの」とまでは言わないが、一つ一つの音の表現に厚みが出て、情報量が増える。特にchilldspotのボーカルの、抑えの効いた歌声の表現がとても気持ちいい。たとえばchilldspotの1stアルバム「ingredients」の弾き語り曲「私」のような音数の少ない楽曲では、如実のそこの表現力に差が表れる。また、同アルバムの「ネオンを消して」は雨音から始まるのだが、これまでただのSEとしてしか感じていなかったその雨音がやけに生々しく楽曲の始まりをドラマチックで印象深いものにしてくれる。これを聴いてしまうと、iPhoneがLDACに対応していないことが残念で仕方がない。

 正直1万円以下のヘッドホン、しかもワイヤレスにそこまで期待できない、と思っていただけに、これはうれしい誤算だった。以前の経験から抱いていた「ワイヤレスは音が悪い」という感覚は完全に過去のもののようだ。

 もちろん価格が何倍もする高級ヘッドホンと比べてどうこう言う気はないが、とはいえ高価なら必ず良い音かというと、そこは聴くジャンルや好みがあるのも事実。その点、このヘッドホンについていうと、アプリを使えば、好みに合わせて細かく音をセッティングすることができる。素がクセのない味付けになっているので、セッティング次第で好みに合わせて幅広く調整することが可能で、音の好みの問題については、さほど心配しないでも大丈夫だと思う。

アプリで細かく音質が設定できる
ビープ音を聴きながら設定することで自分にあった音質に調整できる適応イコライザ

 ただし、LDAC接続については注意があって、情報量が多い分、距離が離れると途切れやすくなるらしい。筆者の場合、PCが目の前にある状況だったのでほとんど途切れることはなかったが、それでもまれにCDの音飛びのような症状が出ることがあった。

有線でもつなげるのでやってみたのだがしかし……

 さて、ワイヤレス接続の音の良さに驚かされたところで、最後に有線でもつないでみることにした。このヘッドホンには3.5mmのミニジャックも付いていて、有線でアナログ接続することもできるのだ。

 とりあえず付属のケーブルでハイレゾ音源の入ったノートPCのイヤホンジャックに接続。するとなんということでしょう、驚くぐらいに音が悪い。

PCのヘッドホン端子に有線でつないで鳴らしてみるが、とても残念な音だった。もちろんつなぐ先が良いアンプなら別だろうが

 要は、有線接続時にはヘッドホン内にあるDACもアンプも使わず、単にアナログヘッドホンとして動く。そのためノイズキャンセリングも効かないし、先のスマホでの音のセッティングも使えない。つまり音の善し悪しは、今回の場合だとPCのアンプ性能に左右される。これまでPCのヘッドホンジャックの音の善し悪しなど気にしたことがなかったが、まぁこんなものなのだろう。

 逆に言うと、このヘッドホンを使ってからやたらといい音ばかりだったので、「いやいや普通こんなもんだろ」という気はする。他にポータブルアンプなどを持っているのなら話は別だが、基本的にはこの製品はワイヤレスでシンプルに楽しむのが向いていると思う。

秀逸なノイズキャンセリングで電車の中もWeb会議も快適に

 続いて外に持ち出して、電車の中でノイズキャンセリングを使って聴いてみた。

 今までノイズキャンセリング付きのヘッドホンやイヤホンを使ったことがなかったので、どれぐらい音が消えるのかも分からなかったし、なんなら今まではそれほど必要性さえも感じたことがなかった。

 が、使ってみるとこれまた快適で音楽に没入できる。ただし、完全な無音になるようなことはなくて、特に人の声の周波数帯については、意図的にあまりキャンセルしないようになっている印象だ。

 というのも、電車の中でのアナウンスが聴き取りやすい。実は音が聴こえず駅で乗り過ごさないか心配していたのだが、むしろアナウンス以外の騒音が減るので、アナウンスの声だけを聴き取りやすい。

 その分、ドア付近で大きい声で騒いでいる学生の声とかも聴こえてしまうのが残念だが、耳につく高周波の音が抑えられているので、声は聴こえるけどうるさくはない、という感じだ。

 このノイズキャンセリング機能、家でテレワーク中にも結構役立つ。5歳の娘が幼稚園から帰ってくると、結構騒がしいのだが、そんなときに音楽を鳴らさないまでも、このヘッドホンを付けてノイズキャンセリングをオンにすると、騒がしさがだいぶ抑えられる。気がつけば仕事に没入できていて、それはそれで良い効果があった。

 Web会議でも良い感じだ。このヘッドホン、ノイズキャンセリング用も含めて5つのマイクを持っており、それとAIを組み合わせて、周囲の音を抑えつつ話者の声をピックアップできるのだとか。そのため、ヘッドセットのようなマイクブームがないが、相手にも声がよく届いているとのこと。こちらも周囲の騒音が気にならないから、大事な会議のときも会議に集中できる。

全部で5つのマイクを持ち、AIを組み合わせて話者の声をピックアップしてくれる

 もちろんYouTubeの配信中も便利だし、後で動画を編集するときにも、動画の音に集中できるので、作業効率がアップする。

 残念なのはLDACとデュアルデバイス接続が併用できないところだ。デュアルデバイス接続をオンにすれば、iPhoneとPCを同時に接続できるので、いちいち切り替える手間がないのだが。LDACを使う場合は、その都度接続を切ってつなぎ直す必要がある。まぁ音を取るか便利さを取るか、今のところ音を取っているがそのうちめんどくさくなるかもしれない。

デュアルデバイス接続をオンにしてしまうと、LDACの設定はオフになってしまうのだ

 というわけで、EarFunという、個人的には初めてのブランドに挑戦してみたのだが、各所で賞をもらっているのは伊達じゃない、というのが素直な印象だ。

 ただしLDACはちょっと残念。その点、iPhoneユーザーならLDAC非対応のTune Proを選んでもいいかもしれない。あちらはデュアルドライバーだし、USBケーブルでスマホとつないで鳴らすこともできるし、有線接続時でもノイズキャンセリングが効くとか。ハイレゾは有線と割り切ればむしろ使い勝手は良さそうで、うっかりそっちも買ってしまおうかと思えるほどだ。

 もちろんもっと高級機であればもっといい音が楽しめるのかもしれないが、この価格帯でこれだけの満足度が得られるのであれば、いきおいで買っても後悔しない、そう思えるだけの逸品だった。マジでオススメです。

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