急遽テレワーク導入!の顛末記
「使い方次第で電気代が1.5倍に! 自宅にある全PCの消費電力をシーン別に計測してみた」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(133)
筆者の自宅にあったPCの中で、普段使いにすべきPCはどれだ?
2023年3月6日 07:00
前回はデスクまわりの機器が1日あたりに使用する電気代を調べてみたが、PCやディスプレイは使い方によって消費電力が変化する。外出時にノートPCを使うこともあれば、そもそもテレワーク中の作業内容はその日によって異なるので、それぞれの電気代も知っておきたい。
……この記事を書いている時点で、東京都でまん延防止等重点措置が解除されてから347日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回はPCやディスプレイの使い方によって、電気代がどのぐらい変わるかを調べてみた。
2月27日(月):会社PCは4K動画の再生で電気代が1.5倍以上に!
今日はオフィスで書類仕事の日。動画制作班から“街の様子を徒歩で歩きながら撮影した4K動画”のサンプルが上がってきたので、それをチェックすることにした。
会社で使っているデスクトップPCはグラフィックボードを搭載していないため、デコードはCPUで行うことになる。とはいえ、4K動画の再生ぐらいであれば大した負荷はかからないようで、タスクマネージャーを確認したところ、GPUの使用率は25%程前後で推移していた。
ここでふと思いついて、リモートでPCを起動するために持ち込んでいたGosundのスマートプラグを電源タップに装着。PCの消費電力を調べてみたところ、消費電力は26~29Wh程度で推移していた。アイドル時の消費電力は17Whだったので、4K動画を観ていると単純計算で電気代が1.5倍以上になるらしい。GPUの負荷を見た時の印象からすると、思ったより電力を使っているようだ。
家ではYouTubeなどの動画を観る機会も多いので、こうなると使い方によって自宅PCの電気代がどのぐらい変わるのかも気になってくる。ここは再びスマートプラグを持ち帰って、いろいろと検証を行ってみたい。
今回計測したPC
- CPU:Intel Core i3-7100(3.91GHz/TDP51W)
- グラフィック:プロセッサー内蔵GPU
- アイドル時消費電力:17Wh
- 4K動画再生時:26~29Wh
2月28日(火):自宅PCは動画エンコード時に電気代が約1.5倍に!
今日は1日テレワーク。急ぎの作業が片付いたところで、昨日会社から持ち帰った4K動画を自宅のPCで再生、およびエンコードを行うことにした。
自宅のデスクトップPCはNVIDIA製のGPUを搭載しているので、4K動画をGPU支援のあるプレイヤーアプリで再生してみたところ、GPUの使用率は30~50%。消費電力は81W~84Wで推移した。このPCはアイドル時の消費電力が79W程度なので、動画再生ぐらいの負荷であれば、消費電力に大きな変化はないようだ。
続いて、コーデックにNVEncを利用して、動画のエンコードを行ってみたところ、消費電力は150Wh~230Whという結果に。作業中はGPUの使用率が0%~90%程度で大きく変動しており、消費電力にバラつきが出たようだ。中間値を取って190Whの電力消費があったとするならば、1時間あたりの電気代はアイドル時の2倍以上となる約5.8円かかったことになる。
ちなみに、業務時間が終わった後で、PCゲームの『ホグワーツレガシー』をプレイしたところ、消費電力は約370Whに達した。1時間あたりの電気代は11.3円。のんびりプレイしてメインシナリオのクリアに約56時間かかったので、632円の電気代がかかったということか……。意外とランニングコストがかかってたんだなぁ、PCゲームって。
今回計測したPC
- CPU:Intel Core i7-12700F(最大4.9GHz/TDP65W)
- グラフィック:GeForce RTX 3070Ti(290W)
- デスクワーク時の電気代:約2.6円/h
- 4K動画再生時の電気代:約2.5円/h
- 4K動画エンコード時の電気代:約5.8円/h
- ゲームプレイ時の電気代:約11.3円/h
3月1日(水):省電力モードでは消費電力が10Wh下がった
自宅で利用している自作PCについて、マザーボードまわりのユーティリティを調べていたところ、EPU(Enerygy Processing Unit)という省電力向けの機能が用意されていた。ここで、「power saving mix」モードを選択すると、CPUの最大電力消費量やファンの動作を抑え、未使用のI/Oコントローラーをシャットダウンするなどして、電力消費を抑えられるらしい。
さっそく、「power saving mix」モードを有効にしてみたところ、一気にファンの音が静かになった。この状態でのアイドル時の消費電力は約68Wh、4K動画の再生時は73Whと、どちらも通常時より10Whほど下がっている。
そのまま、1日いろいろと作業をしてみたが、特にパワー不足を感じることはなかった。日常的なデスクワークを行っている分には、CPUには十分な余力があるので、ゲームをしない時は省電力モードを利用するのはありかもしれない。
今回計測したPC
- CPU:Intel Core i7-12700F(最大4.9GHz/TDP65W)
- グラフィック:GeForce RTX 3070Ti(290W)
- アイドル時の電気代:約2.07円/h
- 4K動画再生時の電気代:約2.23円/h
3月2日(木):ノートPCを使えば、電気代が1/10以下に!
自宅ではメインに自作のデスクトップPCを使っているが、余った旧パーツで組んだサブPCがテレビ下にもう1台ある。とはいえ、以前に使っていたPCは完全に壊れてしまったので、CPUは10年前に発売された「Core i7-3770K」。グラボは4年前に発売された「GeForce GTX 1060」を搭載したモデルだが……。
このデスクトップPCにもスマートプラグをつないで消費電力を調べてみると、アイドル時で47Wh。4K動画の再生時は52Whの電力を消費していた。「Core i7-3770K」はTDPが77Wだが4コアしか搭載しておらず、GPUの消費電力も120Wと低いので、全体的に消費電力が少なくて済んだようだ。どうやら、ゲーム以外はこちらのPCを使った方が、電気代を抑えられるらしい。
そして、省電力を追求したノートPCは、さらに消費電力が少なくて済む。筆者が現在使っている富士通のノートPC「LIFEBOOK WU-X/G2」の場合、フル充電状態からのAC駆動におけるアイドル時の消費電力は約6Wh。4K動画の再生時でも、消費電力は9~10Wh程度で済んだ。
デスクトップPCの場合、これにディスプレイの消費電力がかかってくるので、ノートPCで仕事をした方が電気代はかなり抑えられるだろう。とはいえ、ノートPCでずっと仕事をしているとバッテリーの劣化が気になるので、どちらを優先すべきか悩むところだ。
今回計測したPC
【自作デスクトップPC】
- CPU:Intel Core i7-3770K(最大3.9GHz/TDP77W)
- グラフィック:GeForce GTX 1060(120W)
- アイドル時の電気代:約1.43円/h
- 4K動画再生時の電気代:約1.58円/h
【LIFEBOOK WU-X/G2】
- CPU:Intel Core i7-1255U(最大4.7GHz/最小保証電力12W)
- グラフィック:プロセッサー内蔵GPU(インテル Iris Xe グラフィックス)
- アイドル時の電気代:約0.18円/h
- 4K動画再生時の電気代:約0.3円/h
3月3日(金):ディスプレイは輝度10%→100%で電気代が1.5~2倍に
自宅のデスクトップPCでは、デルの31.5型ゲーミングモニター「G3223Q」と、2009年発売の三菱電機製27インチモニター「RDT271WLM」を横並びにして2台使っている。画面を明るくすると目が痛くなるので、どちらも輝度は10%まで下げているが、輝度をあげると消費電力はどのぐらい変わるのか? 実際に試してみた。
今回計測したディスプレイ
【G3223Q】
- 発売:2022年
- 画面サイズ:32型
- 輝度:600cd/m2
- 輝度10%時の電力消費量:22.4Wh
- 輝度50%時の電力消費量:27.3Wh
- 輝度100%時の電力消費量:33.4Wh
【RDT271WLM】
- 発売:2009年
- 画面サイズ:27型
- 輝度:400cd/m2
- 輝度10%時の電力消費量:19.5Wh
- 輝度50%時の電力消費量:29.3W
- 輝度100%時の電力消費量:42.3W
画面サイズが小さいこともあってか、輝度10%時の消費電力量は「RDT271WLM」の方が少なくて済んだ。ただ、「RDT271WLM」は10年以上前のモデルということもあり、省エネ性能で劣っているのか、輝度を50%まであげると「G3223Q」の方が電力消費量は少なくなる。
なお、「G3223Q」には「FPSモード」や「MOBA/RTSモード」など、画質のプリセットがいくつか用意されていたが、これらのモードを使用しても消費電力に大きな差はでなかった。また、「RDT271WLM」には3段階のECO設定が用意されており、一番効果の高いモードでは、電力消費量を16.8Whまで抑えることができる。もちろん画面はさらに暗くはなるが、筆者のように画面が暗くても苦にならないようなら、こうしたモードを試してみるのはアリだろう。
その後も、各PCを実際に使っている時の消費電力を調べてみたが、パフォーマンスに余裕のあるPCであればデスクワークぐらいなら問題ないが、性能の低いPCはちょっと重い作業をすると消費電力が一気に増えた。そして、グラボを搭載したPCは、やはり電気代が高くつくらしい。
家にある全てのPCの消費電力を計測したことで、普段の業務にどのPCを使えば、どのぐらい電気代を節約できるか見えてきた。今年の春には電気代の値上げも想定されているので、普段使いするPCをランニングコストで選ぶというのもアリかもしれない。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。