一人暮らしのネット環境Q&A

100均のLANケーブルって、使っても問題ないの?

100円均一ショップ「ダイソー」で購入したLANケーブル。「CAT6」で長さは1m

【記事訂正:5月17日 19:30】
記事初出時の、複数箇所の誤記および不正確な記述を修正しました。誠に申し訳ありません。
修正内容の詳細は、記事末尾をご参照ください。


 Wi-Fiルーターなどを接続するケーブルがないとき、近所の100円均一ショップで売っているLANケーブルを使っても問題ないでしょうか? 安すぎて不安に思う人もいるかもしれませんが、通信速度と安全性の面からは、問題ないと考えられます。

長ささえ問題なければ、通信速度は十分に出せる

 今は、PCもほとんどの場合Wi-Fi接続で、有線LANを使う機会は少ないと思いますが、それだけにLANケーブルの用意がなく、引っ越した後で不足に気付くことがあるかもしれません。通信販売の配達は待てない、近所に電気店もない、けれど100均ならある……というときは、100均で売っているLANケーブルを使っても、長ささえ足りれば問題ありません。

 有線LANの規格で、現在主流なのは、最大1Gbps(1000Mbps)の通信ができる「1000BASE-T」です。そのほかに、より高速な「10GBASE-T」(10Gbps)や「2.5GBASE-T」(2.5Gbps)、低速な「100BASE-TX」(100Mbps)や「10BASE-T」(10Mbps)などもあります。

 一方で、LANケーブルの性能を示す最も重要な情報は「カテゴリ(CAT)」と呼ばれるもので、カテゴリにより、どの通信規格に対応できるかを判断できます。現在、市販されているLANケーブルのカテゴリの主流は「CAT6」で、100均ではこれらよりも下の(対応できる通信速度が低い)「CAT5e」が販売されていることもありますが、それでも1000BASE-Tに対応でき、1Gbpsの通信が可能です。

 ケーブルの規格上、対応可能な有線LANの規格はCAT6なら5GBASE-Tまで、CAT5eなら2.5GBASE-Tまで、のようになっていますが、LANケーブルのコネクターは「RJ45」で共通しているため、これらのどれでも物理的に接続は可能です。

 ケーブルの構造はいずれも同じ2対×4組の8芯による接続のため、規格で定められている最大通信速度を超える通信もできないわけではありません。例えば、CAT6のケーブルは37mないし55mまでは10GBASE-Tに対応可能とされています(参考記事)。

有線LANの規格と対応するLANケーブルのカテゴリー
有線LANの規格カテゴリー
10GBASE-T(10Gbps)CAT6A
5GBASE-T(5Gbps)CAT6
2.5GBASE-T(2.5Gbps)CAT5e
100BASE-TX(100Mbps)CAT5

 また、LANケーブルは電源コードや電源タップと違って、大きな電流が流れるわけではありません。そのため、火災の原因となるようなことは考えにくいです。

 ちなみに、法人向けのネットワーク機器では、LANケーブルで給電する「PoE」と呼ばれる機能が使われる場合もあります。その場合には大きな電流が流れることになるため、PoE対応のLANケーブルを使う必要があります。

 筆者が100均で売っているLANケーブルの品質を保証できるわけではありませんが、極端に作りの悪いケーブルだったり、初期不良で壊れていたりしない限りは問題なく使えるでしょう。接続してみて十分な通信速度が出たなら、そのまま使って大丈夫です。

LANケーブルの価格に影響する要素は「長さ」と「付加価値」

 では、100均のケーブルと、一般のより高価なケーブルは、何が違うのでしょうか? ケーブルの価格に影響する大きな要素の1つは「長さ」です。100均では1mぐらいのケーブルは買えても、部屋の隅から隅まで配線できる3mや5m、またはそれ以上の長さのケーブルは、なかなか置かれておらず、もっと高額となります。

 ほかには、ノイズに強く通信への悪影響を受けにくかったり、細かったり平たかったり柔軟性が高かったりするケーブルの特性、壊れにくかったり折り曲げやすかったりするコネクタの仕様などの、付加価値的な要素があります。LANケーブルが安いから遅い、または高いから特別に速いということは、現状、まず考えられません。

このケーブルは「フラットタイプ」と呼ばれる平たいケーブルで、厚みがないため床などで配線しやすいことが特徴

よく見ると結線数が少ないケーブルが存在する

 ネットではときどき「速度が出ないLANケーブル」が話題になることがあります。本当にLANケーブルが原因で速度が低下するとしたら、考えられる可能性は、過去にあったCAT5よりも下のカテゴリのケーブルを使っていることです。

 LANケーブルのコネクタは多くの製品で透明になっていますが、通常、CAT5以上のケーブルは、コネクタにある8つの電極から、全てケーブルが接続されているのを確認できます。しかし、8つのうち4つの電極にしかケーブルが接続されず、100BASE-TXまでしかリンクしないものがあります。

8つの電極全て結線されたケーブル(写真はCAT5e)
4つの電極だけ結線されたケーブル

 このようなケーブルは、現在では見つけるのが難しいほどですが、10BASE-T(10Mbps)まで対応の機器にはしばらく添付されたこともあり、古いケーブルをもらって使うときなどには、こうしたケーブルがあるかもしれません。LANケーブルが原因で遅いのでは? と思うときは、コネクタ部分に注目してみてください。また、長ささえ問題なければ100均のもので十分ですから、新しいケーブルに替えてください。


【訂正内容:5月17日 19:30】
初出時の以下の誤記、および不正確な内容を修正しています。

誤:CAT5なら2.5GBASE-Tまで
正:CAT5eなら2.5GBASE-Tまで

「有線LANの規格と対応するLANケーブルのカテゴリー」の表中、「CAT5」の対応を「1000BASE-T(1Gbps)」から「100BASE-TX(100Mbps)」とs修正しました。また、「規格で定められている最大通信速度を超える通信もできないわけではありません。問題は、長距離(100mなど)接続で利用した際にも、規格上の速度を保てるかという点になります」という記述を「規格で定められている最大通信速度を超える通信もできないわけではありません。例えば、CAT6のケーブルは37mないし55mまでは10GBASE-Tに対応可能とされています」と修正しました。

「よく見ると結線数が少ないケーブルが存在する」の箇所は初出時「よく見ると結線数が少ない『CAT3』ケーブル」との見出しでしたが、CAT3ケーブルに限定した記述が不正確であるため、「例えばCAT3のケーブルでは、8つのうち4つの電極にしかケーブルが接続されず、100BASE-TXまでしかリンクしません」→「しかし、8つのうち4つの電極にしかケーブルが接続されず、100BASE-TXまでしかリンクしないものがあります」と、4つの電極だけ結線されたケーブルでは通信速度が十分に出ないことがある旨の記述に修正し、前後の記述もあらためました。

以上の点、ご迷惑をおかけいたしましたことをお詫びいたします。

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正田 拓也