イベントレポート
Frontiers Tour Tokyo
締めのプロテインをもう一杯! 東大アメフト部のSlack活用術とは?
基調講演では新機能「ワークフロービルダー」などをデモンストレーション
2019年9月24日 12:00
Slackのカンファレンスイベント「Frontiers Tour Tokyo」が9月17日に東京都内で開催された。基調講演ではSlackのCEOや製品開発の責任者らがSlackの新機能などを披露したほか、Slackを積極活用する国内企業3社の事例を紹介。なかでも、Slackが持つサードパーティアプリとの連携機能も利用してチーム運営を効率化する東京大学アメリカンフットボール部の事例が注目を集めた。
限られたリソースを最適化していくことが成長の鍵
国内企業3社の事例紹介は、オープニングキーノートのセッション後半。そのなかの東京大学運動会アメリカンフットボール部におけるSlackの活用事例については、同部監督であり、アンダーアーマーで知られるアスリート向け製品ブランドを日本で展開する株式会社ドームで常務執行役員を務める三沢英生氏が解説した。同部には部員が約200名、OB・OGが約1000名おり、その他ファンクラブや父母会などに所属するメンバーなども合わせると2000名近くが関係しているとのことで、それぞれの円滑なコミュニケーションにSlackを活用しているという。
同じくチャットツールのLINEも「相当ヘビーに使っている」と同氏。適材適所でSlackとLINEを使い分けながらチーム運営に生かしているようだ。当然ながらSlackはコミュニケーション手段としても有用だが、同アメフト部では多数のアプリと連携させることで「チームとしてのあるべき姿を追求し、(チームとしての)価値を最大化」しようとしているのが特徴となっている。
連携しているのは、選手情報の管理や部員のスケジュール管理を行なう独自ツールのほか、栄養管理ツール、プロテインなどを購入できるECサイト、出欠確認に用いるGoogle フォーム、マネージャーのタスク管理に使うTrello、部費管理のためのマネーフォワードと多岐に渡る。
例えば、選手が食事写真を送信すると、自動で栄養素やカロリーが計算され、チャットボットからその結果をメッセージで受け取ることができる。食事内容によっては不足している栄養素とともに改善アドバイスをコメントしてくれるので、1日の終わりにタンパク質が不足していれば選手側で「締めのプロテインをもう一杯飲む」といった対処ができる。また、プロテインのストックが残り少なければ、ECサイトですぐに購入できるようにもなっている。
企業と同じようにチームにも「ありとあらゆるルーチンワークがある。選手もマネージャーも、ルーチンワークをこなすだけで1日が終わってしまう」という課題があると三沢氏。そのルーチンワークをいかに省力化するかという問題解決に、Slackとそこで連携しているアプリが活躍している。省力化によって「全員が少しでも思考に時間を使い、クリエイティブな活動に時間を使う。人という限られたリソースをいかに最適化していくかがチームの成長の鍵だと思っている」と語った。
企業間コラボレーションを加速する「ワークフロービルダー」
オープニングキーノートのセッション前半では、SlackのCEO兼共同創業者であるスチュワート・バターフィールド氏と、最高製品責任者のタマル・イェホシュア氏が登壇した。2人によると、いまやSlackは世界150カ国で1000万人以上に使われ、1週間のメッセージは10億件に上る。東京だけで50万人以上がSlackを使用しており、大手自動車メーカーから離島のワイナリーまで、企業規模や産業を問わず多彩な分野で活用されているという。
キーノートでは、絵文字によるリアクションの有用性をアピールしたほか、9月11日に発表した「データレジデンシー」機能を紹介。Slackでやりとりするデータを明示的に各国のローカルリージョンに保管できるようにし、各国の法制度に則ったデータ保護と運用管理を可能にするものだ。同氏はデータレジデンシーについて、2019年の冬にドイツに初のデータリージョンを設置し、その次の段階となる2020年第1四半期に日本にも導入すると明かした。
また、現在、Slackに有料登録している組織の一部がベータ版として利用中の「共有チャンネル」機能について、その他の有料登録しているユーザーも9月16日から使えるようになったと発表した。自社以外の企業、組織、個人とやりとりするための共通のチャンネルとして、自社のワークスペース内に設置できる共有チャンネルでは、企業間コラボレーションや多数のステークホルダーが関係するプロジェクトにおいて便利に活用できるもので、Slackにおいても今後の同社ビジネスの成長の鍵を握る重要機能として位置付けられている。
さらに、2019年中に公開予定とされる新機能「ワークフロービルダー」についても紹介し、同社シニアソリューションエンジニアの水越将巳氏がデモンストレーションを行なった。ワークフロービルダーは、定型的な業務をワークフローとして定義し、その一連の流れをSlackのなかで自動化するもの。例えば「来客申請」を行うワークフローでは、来社予定日、訪れる人数、代表者氏名などを入力する専用の画面がポップアップし、情報を入力して送信すれば、あらかじめ指定したチャンネルにその内容が投稿され、担当者がアクションを取れる仕組みになっている。
ワークフロービルダーでは、こうした処理の内容を一切コーディングすることなく、GUI上で簡単な設定をするだけで作れるのが特徴だ。「業務を自動化するだけでなく、作る過程において誰もが簡単に、ノンコーディングでフローを構築できる」と、水越氏はワークフロービルダーのメリットを強調した。