イベントレポート

New Norm Meeting Vol.1

アフターコロナの転職・キャリアはどうなる? スキルとポジションはもう通用しない!

withコロナの働き方・暮らし方を経営者らが討論~「New Norm Consortium」発足イベント<3>

 IT事業者やメーカー、広告企業などが集まり、オンラインワーク前提の職住環境やサービスのあり方を探っていく「New Norm Consortium」が発足した。New Norm(ニューノーム)とは、「新しいあたりまえ」を意味する。

「New Norm Consortium」の参加企業は20社。調査研究を経て、サービス、ツール、プロダクト、コンテンツや活動主体に対する「ニューノーム」認定マークの整備にも着手する

 緊急事態宣言下の4月28日、その発足イベント「New Norm Meeting Vol.1」がZoomを使ってオンラインで開催され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への各社の対応と今後の働き方について企業経営者や有識者が語り合った。その中の3つのセッションに注目して紹介していく。

ダイレクトリクルーティングの波が来ている

 オンラインワークの比重が高まると、転職はどうなるのか。「キャリアのNew Norm」と題したセッションでは、リンクトイン・ジャパン株式会社日本代表の村上臣氏、Mistletoe Singapore Pte. Ltd.の大蘿淳司氏、株式会社デジタルハーツプラス代表取締役の畑田康二郎氏が登場した。

(上段左から)司会の池澤あやか氏、畑田康二郎氏、(下段左から)大蘿淳司氏、村上臣氏

 まず、村上氏は日本企業の人材採用について「これまでのエージェント経由ではなくダイレクトリクルーティングの波が来ている」と述べ、「コロナ禍で求人トレンドはいったん引き締めに入ると予想されるが、日本では人材が足りていないため、特定の業務に関してはコスト意識を高めたうえで直接採用したいという意識が高まる」という見方を示した。

 村上氏はさらに「日本では従来、タレントプールをつくるという意識が低いが、COVID-19がきっかけで意識の転換点になる」と語り、リンクトインでは楽天、ヤフー、メルカリなどがプロフェッショナルコミュニティと直接つながっていることを紹介した。

 これまでの就職・転職システムではわずかな面接とシステムの流れで採用が決まっていたが、長期プランに基づいた企業と個人の対話を続けて継続して行うことが、双方にとって有益であるという。

企業は潜在候補者との間でエンゲージメントを深めていく必要がある(リンクトインの資料より)

スキルとポジションでなく「環境適応能力を最大化」

 これに対して大蘿氏は、「個人がスキルや組織のポジションを基に会社を変わっていく時代は終わる」と別の角度から意見を述べた。大蘿氏自身が10回以上職を変わっており、かつてはスキルと属していた会社のポジションがキャリアだと信じていた。しかしこの十年ほど海外のプロジェクトで働くようになってから考え方が変わったという。

 「今は先行き不透明になって、逆にやりたいことをやるべきではないかと考える人も増えている。キャリアとは何かを考えたとき、だれと働くか、どんな環境で働くか。その2つの組み合わせによって自分自身がどのように変わっていくのかという視点にシフトしていくのではないか。」(大蘿氏)

 大蘿氏はまた、スキルとポジションでなく「環境適応能力を最大化するのがよい」と述べ、「キャリアチェンジを考える人は、誰とどういう環境で仕事をするかを1年ごとに意図的に変え、変化を楽しむことを意識するとよい」とアドバイスした。企業側も人を全面的に信頼し、「伴奏型」でプロジェクトを進めていく必要があるという。

これまで活躍の機会が抜け落ちていた人材のキャリアをつくる

 経済産業省からソフトウェアのテスト/デバッグを手掛けるベンチャーに転身した経験を持つ畑田氏は、「世界中の人たちが外出規制を経験したいま、これから起こるのは引きこもりの逆襲」であり、満員電車で通勤できない、面接で「御社が第1希望」と言えない、ハンディがあるなどの理由で社会から排除されてきた人たちにとってはチャンスが広がると強調した。

 初めての仕事との出会いをどう作るのか、キャリアの第一歩はどう踏み出すのかというという司会の池澤あやか氏の問いに対して畑田氏は、例えばデジタルハーツでは若者支援NPOなどと連携してゲームイベントを実施してきたほか、ゲームデバッグの仕事を体験してもらう「バグトレ」というプログラムの提供を開始したと答えた。その経験から「一般的なコミュニケーション能力がないというあいまいな評価でこれまで社会からはじき出されていた人たちこそ、興味関心を掘り下げていける人たちであり、彼らはサイバーセキュリティをはじめとしてオンライン社会のさまざまな問題に対処できる人材に育っていくという実感がある」と述べた。

デジタルハーツの人材育成プロジェクト「サイバーブートキャンプ」

 そして現在、障がい者を積極的に雇用するデジタルハーツのグループ会社の代表としての立場から、今後の取り組みたい課題を語った。

 「私が障害者支援機関を訪ねてみて気付いたことは、うつや発達障害のような新しいタイプのハンディを抱えている人たちを労働参加へと導いていくシステムが確立されていないこと。支援団体の多くはデジタル武装できていない。この隙間を埋めて、これまで活躍の機会が抜け落ちていた人材のキャリアをつくることができれば、アフターコロナと言われるこの先、日本が世界と闘えるようになる。」(畑田氏)

5月29日18時から「New Norm Meeting Vol.2」開催、YouTube Liveで誰でも観覧可能

 New Norm Consortiumでは、第2回オンラインイベント「New Norm Meeting Vol.2」を5月29日18時~21時に開催する。YouTube Liveで誰でも観覧でき、登壇者への質問の申し込みも同コンソーシアムのウェブサイトで受け付けている。

 第2回では、緊急事態宣言下での「押印出社問題」などをきっかけに「契約のNew Norm」について考えるセッションなどが予定されている。同セッションでは、電子押印に関わる法律と解釈や、そもそも契約とはなにか/これからどうあるべきかを議論するという。