イベントレポート
CEATEC 2022
段ボール製の展示ブース、屋内光で発電する「LC-LH」など、サステナビリティを強く意識したCEATEC 2022シャープブース
同社の「ESGに重点を置いた経営」をCEATEC会場でも体現
2022年10月19日 06:50
CEATEC 2022のシャープブースでは、CEATEC AWARD 2022経済産業大臣賞を受賞した屋内光発電デバイス「LC-LH」や、米粒よりも小さいバイタルセンシング用超小型センサーを参考展示するなど、注目される内容となっている。また、展示台を硬質ダンボールや強化ダンボールで作るなど、サステナビリティを視野に入れたブースづくりに挑んでいるのも特徴だ。展示台を叩いてみると、これがダンボールで作られたのかと思うほど、驚くばかりの強度を感じることができる。
シャープブースのテーマは、「Toward Tomorrow with SDGs」だ。2022年6月に社長に就任した呉柏勲CEOは、「ESG(Environment=環境、 Social=社会、Governance=ガバナンスの頭文字をあわせた言葉)に重点を置いた経営」を打ち出しており、その方針に則った展示内容になっている。
屋内光で発電する「LC-LH」は、一般的な太陽電池の2倍の発電効率
来場者の関心を集めているのが、CEATEC AWARD 2022経済産業大臣賞を受賞した屋内光発電デバイス「LC-LH」である。
屋内の光を電気に高効率で変換できる色素増感太陽電池と、シャープが培ってきた液晶ディスプレイの製造技術を融合した次世代発電デバイスだ。ガラス上に発電帯や電極を形成し、電解液を封止する液晶技術を生かすことで、高性能、高品質の光発電デバイスを低価格で提供できるという。生産では、液晶ディスプレイの製造設備もそのまま利用でき、シャープの三重工場で生産が行われる予定だという。
腕時計や電卓などに用いられる一般的な太陽電池に比べて、約2倍の発電効率を有している。屋内の光だけで充電ができ、蓄電池と組み合わせることで長時間の利用にも対応している。約10年の寿命があり、その間はメンテナンスフリーで運用できる。主な用途として、電子棚札やビーコン、ヘルスケア分野や環境分野で用いられる各種センサーなどのIoT製品、各種リモコンやモバイルバッテリーの用途にも適しているという。
展示会場では、省電力のE-INKの電子ペーパーと組みあわせて、棚札や商品説明などで利用する様子をデモストレーションした。
米粒サイズで血中酸素飽和度、脈拍数などを測れるバイタルセンサー
注目されているもうひとつの展示が、業界最小クラスとなるバイタルセンシング用センサーだ。米粒よりも小さい1×1.75×0.35mmの超小型サイズで、イヤフォンや指輪などの小型アイテムにも搭載が可能だ。低待機電力により、従来技術に比べて30倍の長時間駆動をサポートし、独自のアルゴリズムの採用により、高精度センシングを実現している。
同社によると、SpO2(血中酸素飽和度)やPR(脈拍数)、血圧、興奮度などを測定でき、2023年9月以降にはPRの測定が可能なセンサーの出荷を開始し、SpO2の測定が可能なセンサーは2023年年末以降の出荷になるという。
指輪のように常に装着しているアイテムに搭載することで24時間365日にわたり、自然にバイタルデータを収集したり、イヤフォンを装着したことを認識して電源が入るといった用途などを想定しているという。
開発はシャープセミコンダクターイノベーションが行っており、シャープ製品への採用だけでなく、さまざまな企業との共創により応用範囲を広げていきたいとしている。
シャープのブースは、廃棄まで考えたリユース・リサイクル仕様
環境に配慮した取り組みとして、シャープではブースで使用する木材や素材の最小化に加え、リユース素材およびリサイクル素材などを積極的に使用。展示会終了後の廃棄物の最小化を図っているという。同社では、「ニューノーマル時代における新たな展示会のあり方として提案する」という。
具体的には、大きく3つの観点での取り組みがある。その1つめは、ブース全体の外観だ。
リユースができるアルミ骨格部材と、シート生地を組み合わせたものとなっており、木材を使用せずに造形している。シートの上に配置する「SHARP」のロゴもリユースしたものを使っているという。木材などの廃棄物を大幅に低減しているという。
2つめは、壁面にも木工レスの考え方を採用している点だ。
強度が高い展示用アルミシステム部材を採用し、デザインの柔軟性を維持しながら木材を使用しない造形を実現。グラフィックやサインをシート上に出力し、それをアルミシステム部材のフレームに据え付けて設置することで廃棄物の削減につなげているという。壁面の裏側には照明を配置することで、壁面を明るくする効果も生まれている。
そして3つめが、展示台を硬質ダンボールや強化ダンボールで作っている点だ。
牛乳パックなどの飲料容器古紙を材料とした100%再生紙ダンボールによる硬質ダンボールと、重量物梱包材として用いられる軽量、高強度の強化段ボールを使用し、展示台を作り、そこに製品や技術などを展示。展示台は使用後も分解して、再度利用することができる「リユース展示台」となっている。
シャープの担当者の許可を得て、展示台を叩いてみたり、横から押してみたりしたが、ダンボールで作っていることを知らなければ、木材を使っていると思ってしまうほどだ。
シャープによると、従来の方式でブースを設営した場合と比べて、木工低減率は79.2%にも達するという。
2022年9月にドイツで開催されたIFAでは、パナソニックが環境配慮型のブースで出展。前回出展時に比べて、CO2排出量を71%削減する140トンの削減効果があるとして、話題を集めた。今回のCEATEC 2022では、シャープ以外にも、ソニーがダンボールを使用した展示台や、AWSジャパンが外観装飾にダンボールを使用したり、日本マイクロソフトが壁面にシートを多用したブースづくりを行っている。
そのなかでも、木工レスを指向しながら、最も従来展示の外観に近い形で作り上げたのが、シャープだったといえる。展示台や外観は、シャープの製品ではないが、シャープの環境に対する姿勢と、完成度に対するこだわりが見られた。