インタビュー

3年ぶりの幕張開催!「CEATEC 2022」がリアル開催で目指すものとは?

「絶対とは言えないが、過去2年とは状況が違う」 ――エグゼクティブプロデューサーに聞く

 Society 5.0総合展の「CEATEC 2022」が、2022年10月18日~21日の4日間、千葉市の幕張メッセで開催することが発表された。2年連続で完全オンライン開催となっていたCEATECにとって、幕張メッセ会場での開催は3年ぶりとなる。また、オンライン会場も用意し、こちらはリアルの開催期間を挟む形で、2022年10月1日から10月31日までの開催を予定している。

 さらに、新たな共創の場として、「パートナーズパーク」を設置。政府が推進する「デジタル田園都市」をテーマに、業種や業界、地域の壁も越えて、新しい事業を作り出そうとする企業などが一堂に集う展示を目指すという。CEATECの鹿野清エグゼクティブプロデューサーに、「CEATEC 2022」について聞いた。

「オンラインだけでは実現できないこと」をリアル開催で「100%の確信はないが、過去2年とは状況が違う」

エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏

――CEATEC 2022の概要が発表され、3年ぶりの幕張メッセ会場での開催となります。この意義について教えてください。

[鹿野氏]CEATECは、2020年、2021年と2年連続で完全オンライン開催となりました。実は、2020年、2021年も、春先のタイミングでは、幕張メッセでのリアル開催を計画、いずれも多くの企業から出展申し込みをいただいていました。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、4~5月にかけて、10月の幕張メッセ会場での開催は難しいと判断し、この2年間は、同じような経過を繰り返しました。なかなか先が見通せないなかで苦渋の決断を繰り返してきたわけです。

 とくに、2020年は、これまでに経験がないオンライン開催へと急遽変更したわけですから、なにも準備をしていない状態から、わずか半年で開催しなくてはならない事態に追い込まれました。

 まさに不安だらけのなかで準備をし、独自のプラットフォームを開発し、なんとか完全オンライン開催を行うことができました。その実績をもとに、2021年は、初年度の反省を踏まえながら、より進化したオンライン開催へとつなげることができました。

 正直なところ、今年こそリアル開催ができるのかという点では、「絶対」と言い切れる人は誰もいないでしょう。しかし、過去2年間とは違う状況にあるのも事実です。

 この2年間の経験をもとに、感染症対策にはどういったことが必要であるのかが具体的に見えてきたこと、国内外において一部ではリアル展示会が開催されはじめており、そこでの感染症対策の事例が蓄積されてきたことなどが大きな違いです。

 CEATEC 2022においても、展示会場における検温や消毒、マスクの着用などの基本的な感染症対策に加えて、来場者や出展者、関係者を対象にした入場に伴う完全登録制の導入、ブースの全ての方向を通路とするなどの、「3密」を回避する会場構成や動線、小間割りへの対応、感染対策に配慮したブース設計や、ブース内における感染対策への協力要請、幕張メッセに設置されているセンサーを活用したCo2濃度計測の実施などを予定しています。これらを確実に行うことで、出展者や来場者に心配をかけず、安心して参加していただける環境を作りたいと思っています。

 どうしてもオンラインだけでは、実現できないことがあります。私自身もほかのオンラインやリアルの展示会、セミナーなどに積極的に参加してきましたが、オンラインだけでは、対面でのコミュニケーションを超えられない部分があることを強く認識しています。

 会場で直接会って話をするということは、展示会ではとても重要なことであり、ビデオチャット機能を活用しても、なかなかカバーできません。メタバースの世界を取り込んだとしても、リアルでの対面を超えることは難しいでしょう。

 リアル開催にこだわる理由のひとつはそこにあります。また、会場のワクワク感や熱気といったものは、出展者にとっても、来場者にとっても重要なものであり、そこにもリアル開催ならではの価値があると考えています。


 また、見逃せないのは、多くの方々に、「オンラインイベント疲れ」といったものが出ている点ではないでしょうか。完全オンラインの仕組みでは、新たな提案を繰り返しても、フル活用してもらうことが難しいフェーズに入ってきたともいえます。

 CEATECは、2016年に家電見本市から脱却し、展示会の方向性を変えて、新たな産業界の出展、幅広い産業の方々の来場、そして、学生の来場といった特徴を持った展示会にシフトしました。

 CEATECに関わる皆さんに満足していただくためには、対面でコミュニケーションを取ることができるリアル開催にすることが極めて重要だと改めて強く気が付きました。今年のリアル開催に向けた決意の背景はそこにあります。

 単なるハイブリッドでの開催ということではなく、あくまでもリアルの展示会をメインとしながら、2年間の完全オンライン開催と、CEATEC自らが独自のオンラインイベント開催のプラットフォームを持っているという強みをフルに活用した展示会を目指します。

オンラインでは「目的意識をもった来場者」が多かった反面、来場者の幅広さは縮小、「共創」に向けた課題に……

――2021年のCEATEC 2021 ONLINEは、同じく完全オンラインで開催したCEATEC 2020 ONLINEに比べると、来場者数は前年比で半分以下の6万人超でした。来場者数としては過去最低となったわけで、まさに完全オンライン開催の限界が見られはじめた気がします。

[鹿野氏]完全オンライン開催を初めて実施した2020年は、先が見通せないなかコロナ禍のなかで、CEATECは、早いタイミングで完全オンラインでの開催を打ち出した大規模展示会のひとつであり、そこに大きな関心が集まったといえます。

 しかし、それから1年が経過し、「オンラインイベント疲れ」といった状況が生まれるほど、オンラインでの展示会やセミナーが次々と開催され、目新しさという観点での注目度は大きく減ったといえます。

 実際、来場者を分析してみますと、2020年は「一般」に属する来場者が多かったのですが、2021年は「一般」が急激に減少しています。「オンラインの展示会はどんなものだろう」と思った方々は来場を見送っていたということです。

 しかし、「エンジニア」や「開発」といった職種に分類されるような、CEATECに目的意識を持って来場している人は、それほど減少しませんでした。

 コアの来場者は減っていないと判断しており、出展者にとって、引き続き、ビジネスを拡大したり、共創のきっかけの場につながったのではないかと思っています。

 その一方で、反省点も多々あります。2020年は、多くの業界からの来場者があったのですが、2021年はその幅が縮小したのも事実です。Society 5.0総合展であり、共創の場であるCEATECにとっては、2022年には解決しなくてはならない課題だといえます。

感染症対策に加え、SDGsにも考慮したリアルのシステムを整備

――現時点では、リアル開催を前提としていますが、最終的な決定は、やはり新型コロナウイルスの感染状況に大きく左右されることになると思います。判断基準は何になりますか。

[鹿野氏]定量的な指標だけで決めることではなく、定性的な世の中の流れといったことも捉える必要があります。また、指標についても、その要素は多岐に渡りますから、判断は簡単なものではないと思っています。

 感染者数や3回目のワクチン接種率といったことも大切な指標ですし、経口薬の開発状況や、他の展示会の開催状況はどうなのかといったことも影響するでしょう。総合的な観点で判断をすることになります。

 もちろん、幕張メッセ会場における感染症対策は、しっかりと実施します。先に触れた各種対策に加えて、小間の配置は、4方向を通路とした小間を増やすことを努力目標としたり、通路幅をできる限り拡張し、来場者同士が通路で接触しないように整備していくことを考えています。

 実は、幕張メッセ会場で開催した場合に、非接触型の来場管理システムの導入も検討し、スマホだけで入場できるような仕組みも検討しました。ただ、全てをデジタル化すると、コミュニケーションに支障をきたすケースがあることも事実です。

 たとえば、出展者がブースで説明するときには、首からぶら下げたネームホルダーを見て、相手がどんな会社のどんな職種の人なのかということを判断し、それにあわせて最適な説明を行うといった実態があります。

 スマホだけで登録、入場ができてしまうと、ネームホルダーがなくなり、現場では説明がしにくいという状況が生まれてしまうのです。こうしたことにも配慮しながら、なにが出展者、来場者に最適なのかということも考えていきます。

 一方で、これまでは会場を回るために紙のマップを用意していましたが、これはSDGsの観点からも、デジタルに置き換えていきます。幕張メッセ会場とオンライン会場も網羅するようなマップにしたいと考えています。

CEATEC 2022のポイント

本来の趣旨「Society 5.0」のため、あえてスローガンは打ち出さず

――3年ぶりの幕張メッセ会場での展示会となるCEATEC 2022のテーマはなんですか。概要説明会では、そのあたりには触れていませんでしたが。

[鹿野氏]実は、今年のCEATECでは、あえて、テーマとスローガンを打ち出していません。それには理由があります。

 昨年までのCEATECでは、テーマに「つながる社会、共創する未来」を掲げていました。また、昨年のスローガンは、「CEATEC - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」としました。

 しかし、テーマやスローガンばかりが注目され、本来のCEATECの開催趣旨が伝わらなくなってしまったのではないかと考えたのです。CEATECの開催趣旨は、「経済発展と社会課題の解決を両立する『Society 5.0』の実現を目指し、あらゆる産業・業種の人と技術・情報が集い、『共創』によって未来を描く」ことです。

 出展者からもテーマがないと社内での提案が難しいと言われたり、メディアの方々からも記事が書きにくいという声もあがっていますが、この2年間の完全オンライン開催を経験し、状況が大きく変化したなかで、主催者側として、CEATECそのものをもう一度振り返り、「なぜCEATECを開催するのか」という趣旨をもっと発信していかなくてはならないと考えたのです。

 CEATECが、日本の産業界に貢献できるものはなにかといったことを考えた場合、Society 5.0という日本が目指す社会のショーケースになる場の提供であるという目的を、改めて前面に打ち出すことにしました。

政府が目指す「デジタル田園都市」を具体的に見せる「パートナーズパーク」という仕組み

――新たな共創の場として、「パートナーズパーク」を設置することを発表しました。この狙いはなんですか。

[鹿野氏]パートナーズパークは、開催趣旨を具現化する取り組みのひとつであり、ここで掲げたテーマである「デジタル田園都市」は、政府の施策と連動しながら、開催趣旨に則ったものとして企画しました。政府が目指す「デジタル田園都市」の姿を、展示会場で具体的にお見せし、体験してもらえる場になります。

 これまでの出展方法とは異なり、パートナーズパークは、パークリーダーと呼ばれる企業を中心に、デジタル田園都市の実現に向けた独自テーマを設定し、そのテーマに賛同する複数の企業や団体で展示を構成することになります。

 クラウドプラットフォームやソリューションプラットフォームを持っていたり、共同で利用できる技術やデバイスを持っていたりといった企業を中心に、テーマを設定して共同で出展するといったことが想定されます。テーマはスマートシティや地方再生、モビリティなどが、多岐にわたることでしょう。

 また、パートナーズパークの出展では、プレミアムとスタンダードの2つがあり、出展料が大きく異なり、同時に出展条件も異なります。とくにプレミアムプランでは、パークリーダーとなる企業が、展示エリア内を自由に設計し、しかも、展示エリア内に出展した企業に対しても出展料を請求できるようにしました。こうした再販の仕組みは、これまでのCEATECでは規約で禁止をしていたものなのですが、今回、パートナーズパークのプレミアムバークでは初めて再販を可能にしたのです。

 これまで禁止していたものを、逆にやってくださいという大転換であり、パークリーダーは、パーク内に出展する企業に対して、出展内容を提案したり、デザインも共通のものを提案したりといったことが行え、展示エリアにおける自由度がさらに高まることを期待しています。すでに数社からパークリーダーとして、出展したいというお話もいただいています。5社以上のパークリーダーに出展してもらえるといいですね。

 CEATECでは、これまでにも主催者特別企画として、IoTタウンやSociety 5.0タウンを設置し、統一したテーマのもとで、産業の枠を超えた企業に出展していただいた経緯があります。今回のパートナーズパークでは、各パークリーダーがそれぞれのテーマのもとに、さまざまな企業が参加する形で展示エリアを形成し、それがまとまって、「デジタル田園都市」を体験できるパートナーズパークとして構成することになります。

 また、パークリーダー各社に参加してもらい、パートナーズパーク全体の構成も検討していく予定です。いわば、パークリーダーは、CEATEC全体の企画、運営の一部を担ってもらうことにもなります。こうしたことからもわかるように、パートナーズパークは、これまでのCEATECにはない、新たな挑戦だといえます。

「パートナーズパーク」は、共創を実現する場に

――なぜ、いまパートナーズパークを設置することにしたのですか。

[鹿野氏]これまでのCEATECでは、個社ごとの出展によって、会場を起点に共創が始まることを期待してきました。日本の企業がオープンイノベーションを重視するなかで、そのきっかけを作ったり、相手を見つけたりできるのがCEATECの重要な役割でした。

 実際、その成果はあがっているのですが、それをもっと加速させ、具体的な形でお見せする場や機会の提供が必要だと考えました。

 また、サービス、ソリューションの展示は増加しているのですが、どうしても製品やデバイス、技術にフォーカスした展示になってしまう傾向が強く、インフラやプラットフォームを中心とした展示が少なかったともいえます。

 パートナーズパークには、こうした観点からの展示が増えることを期待しています。パートナーとなっている企業の具体的な展示を見ることで、共創の姿を提示できますし、それをみた来場者になにかヒントを与え、新たな共創のきっかけにつながるといったことも想定しています。共創をより加速することが、パートナーズパークの役割になります。

 そして、この成果を最大限に発揮するのは、やはりリアルの展示会だと思います。今年は、これまでとは環境が異なり、リアルの展示会開催がかなり現実的になりましたので、そうしたタイミングにあわせて実施する新たな挑戦だといえるわけです。

 Society 5.0で目指している2030年の「超スマート世界」の実現を牽引するのが「デジタル田園都市」になります。「デジタル田園都市」は、テクノロジーを活用して、日本の社会構造がどう変化するか、生活がどう便利になるか、といったことをより現実的なものとして提示しています。

 しかし、それをさらに身近なものにして見せる必要があり、それがCEATEC 2022のパートナーズパークの役割となります。

スタートアップ&ユニバーシティエリアからも共創を促すスタートアップ、大学、研究所、海外企業……

――CEATECの目玉展示となっていたスタートアップ企業や海外企業が出展するCo-Creation PARKは、今年の開催概要では名前がありませんでしたが。

[鹿野氏]今年は、Co-Creation PARKは設置しません。これも、原点に立ち返り、CEATECが目指す展示会全体を、Co-Creation PARKと捉え、そのエリアだけでの共創ではなく、展示会全体で共創する場にしたいという狙いから、あえてCo-Creation PARKの名称を冠したエリアを作ることをやめました。

 ただ、展示エリアには、「スタートアップ&ユニバーシティエリア」を設けました。ここには、スタートアップ企業や大学、研究所、海外企業が出展することになりますし、やはりCEATECにとって、共創が生まれるための重要な場になるでしょうから、「スタートアップ&ユニバーシティエリア」は、パートナーズパークの近くに設置し、それぞれの出展者同士においても共創を生みやすい環境を作りたいと思っています。

――そのほかに、「トータルソリューションエリア」「キーテクノロジーエリア」「スマート×インダストリーエリア」を設置する予定ですね。

[鹿野氏]トータルソリューションエリアは、Society 5.0の実現に向けたさまざまなソリューションや製品全般を展示するエリアで、電機大手企業などの出展が予定されています。

 また、キーテクノロジーエリアは、Society 5.0の実現を支える電子部品や電子デバイス、ソフトウェアなどのテクノロジーを展示するエリアです。

 そして、スマート×インダストリーエリアは、特定分野や特定産業、マーケットを革新的に変革するソリューションや製品を展開するエリアで、スマートモビリティの展示、次世代ライフスタイルやスマートファクトリー、スマートホーム、ヘルスケアなどの切り口から、さまざまな産業の企業の展示が見込まれます。

 これらのエリアは、CEATECで、最も多くの来場者が集まる場所であり、中心となる大手企業のまわりに出展をしたいという企業も少なくありません。かつてのCEATECでも大きな注目を集めたように、多くの人が訪れるエリアになると考えています。

 そして、幕張メッセ会場、オンライン会場、コンファレンスを通じて、5GやDX、サステナビリティといった注目されるトレンドについても網羅していくことになります。

CEATEC 2022 展示エリアの構成

幕張エリアのインフラを活かし、交通系などの実証実験も

――CEATEC 2019では、幕張メッセの外で、自動運転による公道実証実験を実施してましたね。今回も新たな企画を検討しているようですが。

[鹿野氏]幕張メッセがある幕張新都心は、国家戦略特区の指定区域であり、自動運転やドローンなどの実証実験などが積極的に行われています。また、幕張メッセ会場では、全てのエリアで5G接続が可能であり、幕張新都心地域にも全てのキャリアの5Gが広がっています。

 こうしたインフラを活用した新たなソリューションの展示やデモストレーション、実証実験ができたら望ましいですね。まだ決定したものはありませんが、CEATEC 2022の出展企業に対して、展示会場以外を活用した展示についてもアプローチを開始していますし、その一方で、千葉市や千葉県とも連携しながら、CEATEC 2022の会期中に新たな取り組みをしたいと考えています。

 千葉県の熊谷俊人知事は、千葉市長時代から、毎年のようにCEATECを視察しており、デジタルにも明るい人です。ぜひ、幕張で、なにかやりたいと考えています。

幕張に出展する全ての企業が、オンラインでも展示可能に

――昨年のCEATECでは、オンラインの特徴を生かし、会期前にはプレイベントを開催して、テーマごとにコンファレンスを実施したり、会期後には、アフターイベントを開催したり、11月末までオンデマンド配信を行ったりしました。今年は、開催期間を前後したかたちで、2022年10月1日から10月31日までオンライン開催を行います。プレイベントやアフターイベントの開催は予定していないのですか。

[鹿野氏]プレイベントやアフターイベントは、オンラインの特性を生かした企画であり、オンデマンド配信は、2020年は12月末まで、2021年は11月末までそれぞれ実施しました。ただ、やってみてわかったのは期間が長ければ長いほど効果が高いわけではなく、展示会の余韻が残る10月末までが最適だろうということでした。

 また、プレイベントについては、昨年の実績で延べ4万人もの事前登録者が聴講したのですが、これが、CEATECそのものの来場者数の増加には、直接的につながっていなかったのではないかという反省があります。

 一方、今年は幕張メッセ会場に出展する企業の全てが、オンライン展示もできるようにします。出展各社はこれを活用して、10月初旬から、幕張メッセ会場での展示内容の一部を紹介したり、CEATECにあわせて発表する新製品を事前予告したりといったことが可能になります。

 自社ブースに関心を持ってもらったり、会場に足を運んでもらうきっかけにしてもらえるのです。プレイベントの開催よりも、出展各社の情報発信のほうが、来場には効果があると思っていますので、出展者には、この仕組みをうまく利用していただきたいと思っています。

 さらに、今年は、開催前から積極的に情報を発信していくつもりです。たとえば、出展予定企業の名前は、これまでは8月頃に公表していたのですが、今年は3月頃から公表していくことになります。出展するかどうかを悩んでいる企業にとってもヒントになりますし、来場者の関心を高めることもできます。新たな取り組みであるパートナーズパークの出展企業名や、その内容についても、なるべく早い段階から発信していきたいと考えています。

 そのほかにも、CEATECの公式サイトを使って、より多くの方々に読んでいただけるようなコンテンツを、定期的に発信するようなことも考えています。開催前の10月2日、3日には、「デジタルの日」もありますし、それにあわせた政府との連携も進めたいですね。

「オンライン開催」部分の可能性も追求、オンラインの視察ツアーやサテライト会場なども検討中

――オンライン会場では、昨年に比べて進化する点はありますか。

[鹿野氏]幕張メッセ会場への出展者は、全てオンライン出展が可能ですが、なかにはオンライン出展だけという企業も想定されます。そうした場合にも、これまで改善を加えてきたCEATEC独自のプラットフォームならではの特徴を生かして、CEATECの価値を享受できるようにします。

 また、幕張メッセ会場に来られない来場者に対して、オンラインを通じて幕張メッセ会場を体験できる仕組みなども提供したいと考えています。

 たとえば、オンライン視察ツアーのようなものも想定できますね。完全オンライン開催によって、遠方からオンラインで参加したり、授業があって平日昼間は参加できないという学生が、夜の時間帯を使って参加するといったこともありましたから、そうした点でもオンラインを活用したいですね。とくに学生向けのプログラムは充実したいと思っています。

 さらに、幕張メッセ会場と地方都市のサテライト会場を結んだイベントを開催できないかといったことも考えています。このように、リアル会場だけではできなかったこと、オンライン会場だけではできなかったことが、それぞれを組み合わせることによって、新たな企画として実現できるものも多くありそうです。

 また、万が一、世の中の状況が全くもって変わってしまい、3年連続で完全オンライン開催にしなくてはならないという判断を下さざるを得なくなった場合にも、独自のオンライン開催プラットフォームという財産がありますから、これを活用できる安心感はあります。

コンファレンスは、より参加しやすい内容に

――コンファレンスについては、すでに決定していることはありますか。

[鹿野氏]コンファレンスは、基本的にはオンラインでの開催となります。


 昨年よりもシンプルな構成とし、バラバラだったスタート時間をあわせたり、集中してご覧いただけるような時間設定にするなど、より参加しやすい内容にしたいと思っています。

 また、企業による有料セミナーについては、幕張メッセ会場での開催も行い、それをオンラインでも配信するといったことを予定しています。幕張メッセ会場のなかにもステージを用意して、さまざまなことを発信できる場も用意します。

 さらに、会期前日となる10月17日には、都内でオープニングイベントを開催する予定ですが、従来のやり方を踏襲するのではなく、コロナ禍において最適なイベントの姿はなにかといったことを模索しているところです。

 2018年には、約200人の経営層および政府関係者だけに出席を限定した「Global Symposium」を開催しましたが、これと同様の企画も検討材料のひとつにあがっています。

 2022年7月には出展者説明会を開催する予定で、その時点では、さまざまなことが決定していることになります。まだまだ決まっているものは少ないのですが、展示会の内容やコンファアレンスなどを含めて、実施内容を明確にしていきたいですね。

「幕張メッセ会場での熱気を、肌で感じてもらいたい」

――最後に、CEATEC 2022に向けた意気込みをお願いします。

[鹿野氏]2022年こそ、幕張メッセ会場での熱気を肌で感じてもらいたいと思っていますし、出展者や来場者が寄せる期待に応えることができるCEATECにしたいと思っています。

 2019年に幕張メッセ会場で開催した際には、展示会場は7ホールを使用し、14万4491人の来場者が訪れました。幕張メッセで開催するとなれば、この数字が意識されることと思いますが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世の中が大きく変化したいまは、これらの数値と直接比較することに意味はありません。

 展示やコンファレンスにおいても、新たなCEATECをお見せすることが大切だと思っています。そうした観点から見れば、20年以上の歴史を持つCEATECにとって、今年は大きなターニングポイントになる年になるだろうと考えています。

 そうした節目のCEATEC 2022になりますから、ぜひ多くの企業に出展していただき、また、多くの方々に来場をしていただきたいと思っています。