インタビュー
CEATEC 2021 ONLINE、オンライン開催2年目の「進化」をエグゼクティブプロデューサーに聞く
出展者・来場者双方の会話を促進、イベントの「活気」を感じさせる仕掛けも
2021年7月29日 07:07
CEATEC 2021 ONLINEが、2021年10月19日~22日の4日間を中心として、オンラインで開催される。当初は、幕張メッセの会場とオンラインを組み合わせた開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、昨年に続き、オンラインだけで開催することになる。
だが、昨年の経験を生かした工夫が施されており、例えば、期間を5つのフェーズに分けて開催するといったことも、これまでにはない新たな試みだ。現在、CEATEC 2021 ONLINEの出展申し込み受付を開始しており、7月30日に締め切りを迎える。CEATEC エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏に、CEATEC 2021 ONLINEのポイントを聞いた。
幕張メッセの良さをオンラインにも取り込みたい
――2021年3月に行われたCEATEC 2021の開催概要説明会では、幕張メッセ会場とオンライン会場の双方を組み合わせたイベントとすることを目指していましたが、6月にオンラインだけで開催することを決定しました。この理由をお聞かせください。
[鹿野氏]今年のCEATECは、リアルとオンラインがシームレスに連携したイベントとして開催するとお伝えしていたのですが、ギリギリまで悩みに悩んだ結果、昨年に引き続き、今年もオンラインだけで開催することにしました。
理由はいくつかあります。ひとつは、幕張メッセ会場で開催した際に、出展者、来場者が、安心しながら来場してもらえる環境をつくれるかどうかという点です。CEATECは、会期中に約15万人が来場し、1日あたり3万人以上が訪れます。政府や自治体が示しているイベントへの来場者数の制限を遥かに超えてしまっていますし、いまのところ10月までにこれが緩和される見通しは立っていません。
会場の収容人数を各ホール5000人以下に制限した場合でも、来場者一人ひとりが安心して、時間をかけて会場を回ってもらえるのか、1日中会場にいる出展者も、安心して展示や説明が行えるのか、といった部分も考慮しました。今後ワクチン接種の広がりが期待できますが、CEATECの主な来場者となる年齢層に広がるまでには、もう少し時間がかかるという見通しも判断に影響しました。
もうひとつは、新型コロナウイルス感染症に伴う企業のガイドラインなどで、リアルの展示会への参加を見送るようにとしているケースが、私の想像以上に多かったことです。これは正直、ボディブローのように効きました。
出展に直接携わる現場からは、「できればリアルで出展したい」という声をずいぶんといただいていました。また、昨年のオンライン開催後には、来場者からも、「やはり、実際の展示を見たい」という声が出ていました。
ただ、私も、リアルで開催されている複数の展示会に実際に足を運び、その状況を確認しましたが、結果として来場者数が少なく、閑散としている様子を見ることも少なくありませんでした。また、これらの展示会の出展者たちからも、「ここまで来場者が少ないとは思わなかった」という声を聞きました。つまり、企業にとって、現時点では、リアルの展示会への投資対効果が見込めないという状況になっていたのです。
今年からCEATECの主催団体がJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)に一本化されました。関係各位と緊密に連携を取りながら、オンランインでの開催を決断しました。JEITAのマネジメントは、2021年以降のCEATECは、これまでの流れとは違う変革をすべきだという強い意思を持っています。展示会のあるべき姿そのものを変えていかなくてはならないという思いがあり、それはJEITAそのものの変革につながるものと捉えているからです。先を考え、よりアグレッシブな姿勢で、CEATECの将来を考えた結果が、今回のオンライン開催につながっています。
――6月15日に行ったCEATEC 2021 ONLINEの開催概要説明会では、「ONLINEで出会う、リアルなコミュニケーション」という新たなメッセージを打ち出しました。この意図を詳しくお聞かせください。
[鹿野氏]オンラインであっても、リアルの会場と同じように、リアルなコミュニケーションができるイベントにしたいという思いを込めました。CEATEC 2021 ONLINEは、リアル開催の良さや優位性をオンラインに取り込んだ、新たな展示会のスタイルを目指しています。
実は、6月の説明会の際に、新たな図を示しました。3月時点では、オンラインと幕張メッセをシームレスに統合し、それぞれの良さを生かした展示会を目指していましたから、それを2つの円として表現し、横に並べる形で表示しました。しかし、6月の説明会では、オンラインだけの開催になったことで、オンラインの円を大きく表示したのですが、その後ろには、幕張メッセでのリアルの円を少し見えるようにし、また「CEATEC 2021」の数字の部分だけを二重化しました。幕張メッセでのリアル開催の展示会の良さを、少しでもオンラインに取り込みたいと考えています。
プラットフォームを改善し、出展者・来場者双方の会話を促進イベントの「活気」を感じさせる仕掛けも
――CEATEC 2021 ONLINEでは、昨年とはどんな違いがあるイベントになりますか。
[鹿野氏]昨年は、準備期間が短い中で独自のオンラインプラットフォームを開発し、初めてのオンライン開催を行いました。すると、会期終了後に業界関係者から「うちでもこのプラットフォームをイベントに活用したい」といった声をいただくなど、高い評価を得ました。ただ、やってみて初めて気が付く課題や改善すべき点もありました。
例えば、来場者と出展者を結びつけ、ビジネスを生むためにチャットツールを用意したのですが、これがほとんど使われませんでした。チャットツールの存在がわかりにくかったり、日本ではビジネスの利用において、チャットが普及していなかったりといった点が理由だったといえます。出展者各社には、チャットに対応できる人員を展示品ごとに配置していただいたり、海外からの来場者のために英語で回答できる体制まで取っていただいたりしたのですが、残念ながらそれがうまく機能しませんでした。
今年は、その点の改善を最優先に取り組みました。オンライン会場で、リアルタイムコミュニケーションを実現するための工夫を行い、直接会話ができ、ビジネスにつながるきっかけづくりを提案します。たとえば、テキストのやりとりだけでなく、ビデオチャットの機能を組み入れたり、登録時に来場者の同意を得て、出展企業のビジネスマッチングに参加したいという意思を示せるようにしたり、興味のある分野が合致したりする来場者には、出展企業からアプローチできる仕組みも用意しました。
リアル会場のように、出展者から来場者に話しかけることができなかったのが、昨年のオンライン開催での反省点です。昨年の仕組みでは、来場者から声がかかるのをただ待っているしかできなかったのですが、今年はそれを改善して、出展者がプロアクティブにアプローチすることで、リアルタイムに話ができるようにしています。
また、リアル会場ならではの活気が欲しいという声もいただきました。これをオンラインで再現するのは極めて難しいのですが、少しでもそれに近づける努力をしています。
リアル会場では、見回すだけで、どこのブースが混んでいるのかがわかり、そこに注目されている展示物があることが理解できるのですが、オンラインではそれがわかりません。そこで、混んでいるブースがわかるような仕掛けを導入しようと思っています。
さらに、コンファレンスでも、講演中に聴講者が反応したり、意思表示をしたりできるようにします。講演者や聴講者は、拍手などのアイコンを通じて、盛り上がりを知ることができるようになります。これらは、最終的にどんなデザインにするのか、現在検討を進めているところです。
また、展示会場のマップを用意し、3Dのようなイメージで、リアル感を演出するといったことにも取り組みます。昨年のCEATECでは、エントランス画面は、誰もがわかりやすいようにシンプルな作りにしたのですが、その結果、行きたい場所にいくまでにいくつかの階層が生まれてしまうという課題が生まれました。今年は、1ステップや2ステップで、行きたいところに到達できることを優先した設計としています。
そのほか、来場者に「ふらり」と立ち寄ってもらうことを目的に用意した「CEATEC GO」もバージョンアップを図り、カテゴリー表示などを通じて、より便利に利用していただき、よりたくさんの展示ブースに「ふらり」と立ち寄ってもらえるように進化させます。
オンライン開催を生かしイベント間の連携も検討
――CEATEC 2021 ONLINEでは、開催期間を5つのフェーズに分けていますね。これも初めての取り組みです。
[鹿野氏]もともと幕張メッセでの展示期間としていた10月19日~22日をメインイベント期間とし、この期間に出展者のブースが公開され、最新技術やイノベーションに触れることができます。
ただ、開催期間はそれだけに留まりません。CEATEC 2021 ONLINEでは、9月9日~9月30日までを「プレイベント」とし、週ごとに、カーボンニュートラル、5G、モビリティ、スーパーシティ/スマートシティをテーマにした各種セッションを配信します。コンファレンスのオンライン開催とともに、関連する出展企業などによるセミナーなどを配信し、その後は、アーカイブも見られるようにしたいと考えています。
とくに、スーパーシティやスマートシティについては、各地で、かなり具体的な事例が出ていますから、全国の数多くの都市と連携したセミナーが増えることになりそうです。
これらの4つのテーマは、メインイベント期間中に開催されるカンファレンスでも、重要なテーマに位置づけており、来場者にとっては、事前に学習したり、準備をしたりするための場にもなると考えています。
第2フェーズが、10月15日に開催するオープニングデーです。ここでは、オープニングメッセージやオープニングキーノートスピーチを通じて、国内外の産業界、経済界、政府の代表がメッセージを発信することになります。これまでは開催初日の午前中にオープニングイベントを行っていましたが、これに参加することで、開催初日の半日が終わってしまうという課題がありました。開催期間中により多くの出展ブースを訪問してもらいたいということが、オープニングデーを別の日に設ける狙いです。
そして、第3フェーズとして、10月18日をメディアデーとして、メディアに向けた情報発信の日を用意しました。出展企業は、この日にあわせて新製品発表などの会見を行うことができます。
こうした取り組みを経て、いよいよメインイベント期間となります。
さらに、メインイベント期間が終了した後の10月23日~11月30日には、アフターイベントを用意しています。各種アーカイブを公開するほか、CEATEC AWARD受賞企業によるセッションなどを配信する予定です。会期中に見逃してしまったという人は、この機会を活用してもらいたいのですが、ここでも単にアーカイブを用意するということではなく、様々な仕掛けをしていきたいですね。
加えて、9月にスタートするデジタル庁、10月10日および11日のデジタルの日との連携も検討しています。
オンラインだからこそできるという企画があると思います。国内外の他のオンラインイベントと連動し、空いている時間帯を相互に乗り入れたりといったことも考えられますし、海外スタートアップ企業との連携という形では、JETROとの連携を強化したり、海外からの来場者を増やすという点ではIFAやCESともこれまで以上に緊密な連携をしたりと、いろんな取り組みを実施していきたいと考えています。
アクセス集中を避け、多くの人が参加しやすい仕組みに改善
――昨年のCEATECでは、開催初日にアクセスが集中し、オンライン会場に入れないという状況が発生しました。これについては、どんな解決策を図りますか。
[鹿野氏]アクセスが集中した理由は、オンライン展示会でありながらも、リアルの展示会と同様に、午前10時開場ということを必要以上に訴求してしまい、当日登録をする方のアクセスが集中してしまったことが原因です。その点では、事前登録者をいかに増やすかということは、解決に向けたポイントのひとつになります。
たとえば、プレイベントの開催も、事前登録者を増やすことにつながります。ここに参加登録をしていただければ、これがCEATECの事前登録にもなり、そのままCEATECに参加することができます。
また、例年、オープニングイベントに参加する方々は非常に多いですから、これを開催前週の金曜日にしたことで、来場登録をするタイミングの分散化に貢献できると思っています。
来場者の登録開始は8月下旬を予定しており、多くの方々にお早めに事前登録をしていただきたいと考えています。昨年は事前登録の仕組みが浸透していなかったことも反省材料のひとつです。できれば半数以上の方々にはメインイベントが始まる前に事前登録をしていただきたいと思っています。
また、会期初日のオープンの仕方も考えたいと思っています。午前10時にアクセスが集中しないようにする仕組みも検討しているところです。このほかにも、アクセス集中を分散するための仕掛けを考えていきます。
新設したJEITA スタジオも活用。蓄積したノウハウを生かす
――主催者であるJEITAは、昨年、オフィス内にJEITAスタジオを開設しましたね。これはCEATECでも活用することになりますか。
[鹿野氏]JEITAスタジオは、各種オンライン講演会や記者会見などの配信ができるように整備したスタジオで、JEITAの情報発信の中核になるものです。すでに9月下旬から会期中までは、CEATEC 2021 ONLINE向けにスケジュールをすべて確保しています。昨年の成果という点では、JEITAやCEATECの職員に撮影、編集、配信ができるノウハウをある程度蓄積することができていますので、より効果的に活用できると思います。これも、昨年のCEATECとは大きく異なる点です。
CEATEC AWARDは受賞企業へより大きな価値を提供できる賞に
――毎年注目を集めているCEATEC AWARD は、今年から有料での申請登録方式となりました。その狙いはなんですか。
[鹿野氏]これまで以上に、CEATEC AWARD受賞企業に価値を提供することが狙いです。CEATEC AWARDは、CEATEC 2021 ONLINEに展示される技術や製品、サービスの中から応募されたた出展品を、有識者によって構成される「CEATEC AWARD 2021審査委員会」が、学術的観点、技術的観点、市場性や将来性などの視点から、イノベーション性が高く優れていると評価したものを表彰します。
昨年の実績をみ見ても、CEATEC AWARDの受賞企業の出展ブースへのアクセス数が多いという結果が出ています。また、受賞企業に対して、様々な形での対外的な訴求をより積極的に行いたいと考えており、そのために有料化することを決定しました。
申請費用は1件あたり5万5000円。Co-Creation PARKの出展者は、1件あたり1万1000円となっています。申請は8月31日午後5時が締め切りになっています。
オンラインの強みを生かした開催で、来場者のリピートを重視
――毎年、来場者数や出展社数の増減などが注目されますが、今年のCEATEC 2021 ONLINEにおいては、どんな指標を重視しますか。
[鹿野氏]今回、重視したい指標のひとつが、1人の来場者が何回繰り返して、CEATECに来場してくれたのかということですね。幕張メッセでの開催は、ほとんどの来場者が1日だけ訪れて、会場を見て回ったり、コンファレンスに参加したりというものでした。しかし、オンラインになったことで、より気軽に、数日に渡って来場するという人が増えました。これは昨年の実績からも明らかです。
さらに、今年のCEATEC 2021 ONLINEは、プレイベントからアフターイベントまで、約3カ月に渡って、さまざまなコンフアレンスやセミナーを実施しますから、複数回に渡って参加する人が、昨年以上に増えると予測しています。
何度も来てもらえるというのは、興味を持ってもらっていることの証ですから、リピート率や延べ来場者数という指標は、極めて大切な指標だと思っています。これは、オンライン開催だからこその重要な指標だといえます。CEATEC 2020 ONLINEの延べ来場者数は15万人以上となりましたが、今年はこれを超えていきたいですね。
また、カンファレンスの聴講者数は、2020年は延べ12万0847名で、リアル開催だった2019年の2万8228人の4倍以上の結果となりました。こちらも、昨年以上の聴講者数を目指して準備を進めています。
それに加えて、CEATECの長年の課題である海外からの出展者、来場者も着実に増やしていきたいと考えています。
――出展申し込み締め切りを7月30日に迎えますが、反応はどうですか。
[鹿野氏]前回を上回るスピードで出展の申し込みをいただいています。昨年のCEATECに出展したものの、あまり効果がなかったという声も一部にはありました。しかし、そうした企業からも、説明会を聞いていただいた上で、これならば今年は効果がありそうだという期待の声もいただいています。
これまでに出展経験がある企業だけでなく、業界の枠を超えた形で、出展や来場を呼びかけています。出展申込期限は7月30日までとなっていますが、期限後も申込受付を継続いたしますので、いまからの検討でもCEATECに間に合います。主催者としてこれまでにはない新たな形のオンラインイベントを実現したいと意気込んでいますので、ぜひ楽しみにしてください。