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社員のようなリモートエンジニアを1日単位で購入できる新サービス「バーチャル・ラボ」

 ビジネスの成功においてIT戦力がカギを握る時代。しかし、IT技術者が不足する昨今、欲しい知識や技術レベルを持った人材を雇用することは容易ではない。今年3月に株式会社ウェブインパクトが開始した「バーチャル・ラボ」はそんな命題を解決してくれそうなソリューションだ。SIerからクラウドサービスプロバイダーに転じ、自らもリモートワークを推進する同社に、その詳細を聞いてきた。

マーケティンググループ/ソリューション営業部の宮脇部長

 このサービスの特徴は、案件単位の“受託開発”や、多くのSIerが行うクライアント先への“派遣・常駐型”(SES)のエンジニアリングサービスではなく、創業25年のソフトウェア開発会社として培った高い技術力、開発力、最新技術に対する洞察力、そしてプロジェクトマネージ力といったITスペシャリティを最低1日単位から柔軟に組み合わせ、オフサイト型でその能力を提供する。今までのIT業界で常識とされていた業務形態を一新するサービスだ。特にオフサイト型という点は、同社だから実現できるまったく新しいITサービスである。

 同社は今から約10年前、当時東京飯田橋にあった120坪ほどのオフィスを解約し、全社員がテレワーク(同社の言葉では「ノマド・ワーク」という)に移行した。当時40人規模だったエンジニアやすべての社員、役員が完全ノマド・ワークに転じる様は10年前にはとても珍しく、多くの主要メディアがこれを取り上げた(日経ビジネスオンライン:「社員を全員ノマドワーカーにした会社」)。

 社員間のやり取りはすべてネット会議とビジネスチャット。社内会議はもちろんのこと、顧客とのミーティングもビジネスチャットという徹底ぶりだ。つまり、それぞれの活動場所からインターネットを介した高度なコミュニケーションの構築を行える実績が十分にあるという背景がある。このノウハウを、「バーチャル・ラボ」というクライアントサービスとしてビジネス展開し、同社のエンジニアをはじめとするITのスペシャリストがオフサイト型でありながら、顧客の隣に寄り添うかのようなサービスを提供することを可能にしているのだ。代表取締役の高柳寛樹氏は、立教大学で社会学の教鞭をとる研究者の側面もあり、5年ほど前から「IT前提経営」という概念を構築し、論文や書籍を多数執筆している(参考:高柳寛樹/著『まったく新しい働き方の実践~「IT前提経営」による「地方創生」~』ハーベスト社)。

 その分かり易い物言いは非IT産業の中小企業経営者にとても人気があり、それで納得した経営者が利用しやすいサービスとして同社の「バーチャル・ラボ」が誕生した。2018年3月にサービスを開始してから、受注が月に3~4件はあるという。

 以下に「バーチャル・ラボ」サービスの具体的な導入事例を紹介する。

 多くの中小事業会社では情報システム部として専門的な人材を抱えることはできないが、業務システムの管理や自社サイト運営や管理に、1名もしくは2名ほどITのわかる社員がいる。こうした数少ないITのわかる人材の退職や休職は、業務上大きな支障をきたす。そのため経営者は人材の確保に疾走するが、IT技術者不足が加速する現代、欲しい知識や技術レベルの人材はなかなか見つからない。このようなケースに、同社の「バーチャル・ラボ」が効果を発揮している。

 また、昨今はAIを使って新規に業務システムの開発を検討する事業会社が増えている。通常の受注プロセスで見積りをすると、そこからシステムの稼働までに、数カ月から1年という時間を消費してしまい、同時に莫大な予算を最初から提示されることが多い。これでは大手事業会社にしかAIを導入することができないと肩を落とす経営者も少なくない。しかし、このケースに「バーチャル・ラボ」を導入すると、トライアンドエラーが多く発生するAI開発において、まずAIにかかる最低限の教育工数のみを予算化し、その他のシステム構成や開発の完了にかかるまでの工数は、実際に稼働する最低限の日数のみ契約することが可能となる。予算の確保やAIの導入がより実現しやすいと感じてもらうことができる。

 これらは、あくまでもある一部の活用事例にすぎない。実際、AIの導入判断や実装のような高度な仕事だけではなく、導入を検討しているクラウドサービスの比較検討や、ベンダーから出てくる見積りの評価など、管理業務も高度にこなす。一人のIT人材を雇用すると、その人の能力に依存してしまうが、「バーチャル・ラボ」の場合は、同社の多岐に渡るITスペシャリティを1日単位で組み合わせることが可能なため、1名の正規雇用より安い費用で圧倒的に多様な能力を調達できる。

 経済産業省の「平成28年6月IT人材の最新動向と将来推移に関する調査結果(下記図参照)」によると、すでに約17万人以上のIT人材が不足しているが、2020年にはさらに倍以上の人材不足になると予測しており、多くの経営者は将来のIT投資より以前に、人材確保のための高いコストを払わなければならなくなり、それが原因でビジネスを後退させる可能性すら否めない。

 同社が提供するITスペシャリティは、IT業界で業務経験の長い日本在住の日本人や、日本語を母国語レベルで扱う外国人を含めたITプロフェッショナル集団である。それらの高品質な能力を最低契約日数は月に3人日から、また最低契約期間は3カ月で利用でき、増減も自由なため、本当に必要なITスキルを1日単位で契約できる。繁忙期には多めに契約し、閑散期には最低限の契約に抑えるなど変更が自由自在で、SESで常駐エンジニアを抱えるよりも、効率的でリスクが少ない。

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