インタビュー
東南アジアで日本のマンガ/アニメ発信拠点となり、海賊版撲滅を目指す「アニメイト」バンコク店~大谷店長にインタビュー
2016年6月6日 06:00
近年、海外において日本のマンガ/アニメの人気は高まるものの、海賊版がはびこっているのが現状だ。株式会社アニメイト、株式会社KADOKAWA、株式会社講談社、株式会社集英社、株式会社小学館の5社は、日本のマンガ/アニメの発信と海賊版撲滅を目指し、株式会社ジャパンアライアンスを設立。2016年2月6日にアニメグッズショップ「アニメイト」のバンコク店をオープンした。実店舗の運営を通じ、海賊版対策の強化、マンガ/アニメの最新情報の発信と現地リサーチを行い、インバウンドの拠点作りを目指す。今回、バンコクで行われたマンガアプリ「comico」のタイ進出記念イベントの取材(関連記事『マンガアプリ「comico」タイ版の事業展開、漫画家発掘と育成方法』参照)とあわせ、同店を訪問。大谷章太朗店長にバンコク店での取り組みや日本のアニメイトとの違いについて聞いた。
日本の「アニメイト」そのままの店構え
バンコク店は、マンガ、ライトノベル、CD/DVD、フィギュアなど日本から仕入れた商品と、タイ語に翻訳された商品を半々の割合でラインアップ。日本語が堪能なスタッフもおり、マンガのタイ語翻訳経験者や、日本語能力試験でN1、N2レベルの資格を持つ店員もいるという。
日本のアニメイトの客層は女性の比率が若干高いが、バンコク店は男性や家族連れが多いという。例えば「ドラえもん」「ポケットモンスター」といった、日本のアニメイトでは多く取り扱わない商品も現地の仕入れ業者から取り寄せて販売している。また、店舗を構えるマーブンクロン(MBK)センターは海外の利用者が多く、中国の旅行者はガンプラやフィギュアを大量買いしてくという。
「バンコク店に異動してうれしかったことは、マンガ/アニメファンの多さ。海外スタッフも非常に良い接客ができており、良い人材がそろっている。」
日本と大きなタイムラグがないタイの売れ筋商品
日本の書籍は関税を含めると元の1.5倍の値段になるが、タイ語に翻訳されたマンガは1冊につき50バーツ(150円)程度。タイ版は日本版より売れる傾向もあるという。特に「ONE PIECE」のマンガが好調に売れており、バンコク店オープン時、期間限定で開催したONE PIECEの公式ショップ「麦わらストア」は大盛況だったそうだ。
2月に好調だったのはライトノベル「この素晴らしい世界に祝福を!」だった。ライトノベルもタイ語に翻訳されており、「相当売れる印象がある」という。
CD/DVDも取り扱っており、中でも日本語版の「ラブライブ!」「アイドルマスター」シリーズが売れている。スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」「グランブルーファンタジー」などのメディア商品に封入されるシリアルコードやQRコードが目当てのユーザーも多いようだ。
BL(ボーイズラブ)作品も好調で、4月は「テンカウント」という作品が非常に受けていた。そのほか、「おそ松さん」「夢王国と眠れる100人の王子様」「うたの☆プリンスさまっ♪」「あんさんぶるスターズ!」といった女性向けのコンテンツが人気だ。
このように、日本とタイで流行する作品に大きなタイムラグがない一方で、日本のアニメは「妖怪ウォッチ」「セーラームーン」が地上波で見られるようになった程度だという。最近では、株式会社アニメコンソーシアムジャパンが運営する「DAISUKI」から正規の動画配信サービスやECを利用できるため、日本のアニメを視聴できない海外のアニメファンへの措置も取られているようだ。
「タイでは翻訳版を発刊する体制の整った出版社が充実しているため、安価なタイ版の商品を展開しやすい。偽物は出回っているが、“本物を持ちたい”というユーザーに向けて、ライセンスの取れた日本のグッズを用意すれば、偽物よりも買ってくれるのではないか。」