インタビュー

今、「暗号資産交換業」に参入したコイネージ、その理由をCEO 奥山泰全氏に聞いてみた
「ポストコロナ時代、国民一般が利用するという強い信念がある」

 27日、暗号資産交換業を新たに開始したコイネージ。その事業に関して、コイネージ株式会社代表取締役CEOの奥山泰全氏に話を聞いた。

 同社は7月7日、暗号資産交換業者としての登録を完了、27日にサービス提供を開始している。

 コイネージの設立経緯は、ユナイテッドが2017年10月に設立、2019年4月にマネーパートナーズグループらの関連会社に事業譲渡し、2019年6月にマネーパートナーズグループが子会社化した(関連記事)。マネーパートナーズグループの代表取締役社長である奥⼭⽒は、暗号資産(仮想通貨)のビジネスを6年前から構想していたが、苦難の末に実現した形となる。

6年間の準備期間を経て参入

──サービスをこの時期に開始した背景は?

[奥山氏]6年前、2014年12月に企業集団による第1回の勉強会を開催した。これはのちに「仮想通貨ビジネス勉強会」となり、現在のJCBA(一般社団法人 日本暗号資産ビジネス協会)へと続いている。暗号資産(注:当時は「仮想通貨」が一般的だった)の時代が来ると強く確信し、マネーパートナーズグループで参入を検討し、決めた経緯がある。

 これからの金融機関が暗号資産を取り入れていくのは時代の流れだ。一刻も早くビジネスの土台を企業グループとして保有するべきだと考えた。ただし、これから暗号資産交換業者を作るのは大変だ。コイネージは2年半苦しんでいる。マネーパートナーズは6年かかった。しかし6年前に「やるんだ」と言ったところから、意識としては変わっていない。金融機関の未来のために、事業軸に組み込みたい。未来を⼿に⼊れたい。そういう気持ちです。コイネージのメンバーとは軸線が⼀緒だった。子会社化した際にやめた⼈間はいない。

 コインチェック事件(注:2018年1月に時価換算約580億円の暗号資産がクラッキングにより盗難された事件)以降、国内の暗号資産マーケットは下火になったといった声も聞かれるが、その後の2年を見ていると、暗号資産の存在感は世界的にも強く、技術者らがバージョンアップを行い、市場も維持されている。ビットコインの市場価格も一時期は30万円台に突入するなど低迷していたが、今は100万円を越えるときもある。取引量はむしろ増加している。これからは暗号資産の時代がくる。

法整備で国内の環境が整ってきた

──新たに始めたコイネージのサービスのポイントは?

[奥山氏]ゼロからスタートして一を作るところだ。暗号資産交換業者の末席として、大学生の間で小学1年生ですよ。でも、「ここに未来がある」という思いでは社会人にも負けない小学生です。応援してもらいたい。

 今はまだスペックや機能など、ないものづくしな部分もある。暗号資産の入出庫の仕組みひとつとっても、AML (マネーロンダリング対策)を意識して慎重に作っている。これらの提供は数カ月後になるだろう。

 スペックに出ない部分は、マネーパートナーズグループが15年間大事にしてきた、お客様を大事にする、インチキをしない、フェアに取り組むところだ。簡単に言うと自分達が伸びると思っていないものを売ることはしない。今、ビットコインの未来を情熱的に語っている暗号資産交換所はありますか? そこを伝える情熱を持ちたい。

──暗号資産ビジネスは、コンプライアンスが厳しくなってきました。

[奥山氏]まずコンプライアンス(法令順守)は私たちの基本姿勢です。青信号になってから渡る。現在の規制も、我々の目から見れば厳しい部分とザルな部分とがある。赤信号でも渡っていい場所があれば、それは法改正しなさい、という話だと思う。

 僕はエンジニアあがりだが、金融機関の経営も長かった。グレーゾーンの事業はしない。そこで経理財務、法制度、顧客資産を預かるフロー、インサイダー取引対策など様々な論点が当時から存在していた。そこで事業者協会でルール作り、コンセンサスを作っていた。

 そこから認定自主規制団体の一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)も立ち上がっていった。この5月には、認定金融商品取引業協会の認定も取得した。民間の団体として、資金決済法と金商法(金融商品取引法)をまたぐ認定を取得したのは初めてのことだ(注:資金決済法は暗号資産交換業の規則を定め、金商法は暗号資産関連デリバティブ取引の規則を定めている)。

 暗号資産を取り巻く国内環境は整備されてきた。ようやく世の中の目線と合ってきた。

暗号資産は分散化した社会のコミュニティ通貨だ

──暗号資産を取り巻く今後の状況をどう見ますか?

[奥山氏]1番目に、パブリックブロックチェーンの未来を信じています。そのブロックチェーンの燃料であり血液であるもの、行き交うものが暗号資産、クリプト(暗号通貨)な訳です。その未来を信じなければデジタル化は発展しません。

 2番目に、21世紀は分散化の時代です。集中化ではなく。20世紀が大量生産、一元化、集中管理の時代だとすれば、21世紀は分散化、多様化の時代。ポストコロナの社会の方向性もそう。小規模なコミュニティの価値観がちゃんと認識されるようになる。コミュニティの通貨──通貨という言葉が適切かどうかは分からないが──それが発行されてやりとりされていく。これが通貨の分散化の文脈です。政府発行のデジタル通貨とか、(巨大企業の連合が発行する)Libraとかじゃない。

 暗号資産は法定通貨より規模が小さく、企業ポイントより大きいぐらいの、小規模分散型社会のために価値をやりとりするツールです。分散化時代の多様な価値観をスケールさせるためのもの、そのコミュニティの血液が暗号資産じゃないのか。そういう話です。

──多種多様な暗号資産があり、小さくても良いものもあるという形でしょうか。

[奥山氏]そうです。デジタル化の文脈とは別に、多様化、分散化の文脈で考えても暗号資産の未来はある。

 3番目は、政府発行の法定通貨、フィアット(Fiat)マネーへの信頼がポストコロナで揺らいでいくことがあります。世界恐慌以上と言われる経済危機の中で、アメリカは金融緩和で貨幣をじゃぶじゃぶ発行して経済のバランスを取ろうとしている。さしあたり、ゴールド(金)や日本円などが安全資産に分類されていたが、もうひとつ、暗号資産、ビットコインの存在感が高まっている。ビットコインは発行数量が限られ、取引されている。ゴールドとは性質が違うが、安全資産の一種としてのビットコインという考え方はある。

──多数派の普通の人々が暗号資産(仮想通貨)を所有して使うようになるでしょうか?

[奥山氏]中長期的に、暗号資産は国民一般が利用するところになるという強い信念がある。ビットコインの値動きが激しく投機で儲かるから参入するという安易な考えではない。今後のステーブルコイン、価格が安定した暗号資産が普及する未来も踏まえ、国民みんながデジタル資産を一部保有するような時代が訪れるだろう。それが、私たちコイネージ、マネーパートナーズの基本的な考えだ。

 2月以降、新型コロナウイルス感染症の流行が大問題となっているが、実は暗号通貨を持つ選択肢が広がっている。(経済システムが不安定な中で)どうやったら自分の資産を保全できるのか。そういう動きが世界的に出ている。資産ポートフォリオの一部をデジタルな暗号資産で持っておくという選択肢が見えてきた。それがポストコロナの時代です。

ステーブルコインを暗号資産交換業者に取り扱わせて欲しい

──日本の暗号資産交換業者はステーブルコイン(法定通貨建て価格が安定したコイン)をまだ取り扱っていません。どう見ますか。

[奥山氏]ステーブルコインは待ち望んでいるもののひとつです。資金決済法に、暗号資産(旧名称は仮想通貨)は通貨建て資産を除く、という条項があるが故に、ステーブルコインは暗号資産には含まれていない。しかしグローバルでは普通に、暗号資産の一種として取り扱われている。実運用上は(取り扱い銘柄に)入れないと気持ち悪いということはある。

 そこで言いたいこととして、暗号資産交換業者にこそステーブルコインを取り扱わせていいと思います。すべてのステーブルコインが完全にペグ(通貨連動)して価値が保全されている訳ではない。そこは業者が説明し、利用者がステーブルコインのリスクを認識して取り扱っていくことが求められる。これは暗号資産交換業がふさわしい。もし(為替取引を営むために)資金移動業が必要ということであれば、ライセンスを取って兼業すればいい。

──ありがとうございました。