インタビュー

学割で基本料金16,500円が無料に。「僕たちのような若者や学生にも多く集まってもらいたい」

ネットの基盤技術を覚えれば自分の基礎体力にもなる!「Internet Week 2023」は初心者・若手にもお勧め

「Internet Week 2023 プログラム委員会」が若返りした!? 委員長の輿石隆氏(上左)、副委員長の島田直人氏(上右)、副委員長の吉浜丈広氏(下)

 インターネットの技術を語るイベント「Internet Week 2023」が11月15日~22日に開催される。主催は一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)。

 Internet Weekは「インターネットに関する技術の研究・開発、構築・運用・サービスに関わる人々が一堂に会し、主にインターネットの基盤技術の基礎知識や最新動向を学び、議論し理解と交流を深めるためのイベント」として開催されているもので、今年で27回目を迎える。毎年さまざまなテーマのプログラムが設けられるが、そのプログラムを企画・策定する「Internet Week 2023 プログラム委員会」が“若返り”を図ったとの話も聞こえてくる。

 そこで同委員会のメンバーに、今年のInternet Weekで新しくなった点や逆に伝統的に変わらない点、注目の話題、お勧めのプログラムなどを伺った。

 なお、各プログラムの詳細は、Internet Week 2023のウェブサイトに掲載中だ。会期前半の11月15日・16日・17日が「オンラインWeek」となっており、ハンズオンセミナーやベーシックなプログラムをオンラインで実施。後半の20日・21日・22日がリアル会場での「カンファレンスWeek」で、議論や意見交換を重視したプログラムを東京大学伊藤謝恩ホール(東京都文京区)で実施する。

 参加費は1万6500円で、事前参加登録を受け付け中。この基本料金で、ハンズオンプログラム(1000円)と懇親会(7000円)を除く全てのプログラムに参加できるほか、現地参加できなかったプログラムについても後日、オンデマンドで視聴可能だ。

 学割もあり、30歳以下の学生を対象に先着100人まで、参加費の1万6500円が無料になる。

「基盤はなくならない。一度きちんと勉強したら何年も長く戦っていける分野」

――今年のInternet Weekの特色を教えてください。

吉浜氏:今年は現地で開催することに非常に大きなウェイトを置いて、ある種、回帰していることが一番大きいと思います。

 ここ3年ほどはオンラインでの開催がメインとなっていました。オンラインは参加しやすいという点でとても良いのですが、コロナ禍を経て、面と向かって話すことの重要さを感じています。今回は「対話したい」という点に重きを置いたので、現地開催をメインに据えました。

輿石氏:そうですね。そこが、今年のInternet Weekのテーマ「集まれ! インターネットワーキング!」にもつながっています。

 そして、僕たちのような若者や学生にも多く集まってもらいたいなと思っています。その層に向けたセキュリティ関連のセッションなども行う予定[*1]ですが、学生は授業の兼ね合いもあって出られない場合もあるので、学生向けは「オンラインWeek」での開催としました。昨年までのオンライン開催で培った配信等の知見も生かしつつ、オンラインと現地のいいとこ取りをしようと考えました。

――ズバリ、お勧めのプログラムは?

島田氏:いろいろありますが、自分が中心となって企画したのは「SSEの技術」[*2]です。昨今のリモートワーク環境の整備などとあわせて推進されている“ゼロトラストネットワーク”のお話です。従来分けて考えられていた“セキュリティ”と“ネットワーク”をまとめて考える、それに寄り添ったプログラムを行います。今まではSSE(Security Service Edge)というと、その概念や考え方の話ばかりでした。では、「それって技術的にはどうなっているんだろう?」という話はほぼないわけです。今回は技術の解説をメインに、理解できるようなプログラムとしていますので、ぜひご覧いただきたいです。

輿石氏:私は主にセキュリティ分野のプログラムを担当しているのですが、セキュリティはアップデートが多いので、サイバー攻撃などの最新動向[*3]はもちろん聴いていただきたいです。資料や法令などが活発に出ることもあり、今年ならではのトピックを取り上げたプログラムがたくさんあります。

 ほかには「IP Meeting」[*4]も、今年を総括するような話題と最新動向を織り交ぜたプログラムです。インターネットの政治的な動向やネットワーク運用の動向について、すごく先ではなく、ちょっと先のことを見て考えていこうというプログラムになっています。

 また、社会的な動向が知りたい人は「スナックまさこ3」[*5]がお勧めです。

[*2]…… SSEの技術 11/21(火)15:00~16:30

[*3]…… サイバー攻撃2023 11/20(月)10:00~11:30

[*4]…… IP Meeting ~集まれ! インター ネットワーキング! 11/22(水)10:00~18:30

[*5]…… スナックまさこ3 ~スピークイージー~ 11/20(月)15:00~18:15

――セキュリティ関連のプログラムも多いようですが、Internet Weekでセキュリティ関連の話題を取り上げる意義は何でしょうか?

島田氏:セキュリティ関連の話題は必要なものであり、かつ、毎年必ずアップデートされていくものなので、まずは話題に事欠かないということがあります。

吉浜氏:一方で、運用やネットワーク基盤についての話は、年々のアップデートはもちろんあるものの、なかなか大きな変化があるものでもないと思います。そうした事情で年々、Internet Weekのプログラムもセキュリティ関連セッションの割合が増えつつあります。

 しかし、DNSに関する話題を集約する「DNSDAY」[*6]ほか、ネットワーク関係の最新動向のプログラムとセキュリティの話題を合わせ技にして盛り込んでいるところが、Internet Weekと他のインターネットイベントとの最大の違いだと思います。セキュリティと他の話題とのミックスのバランスが、Internet Weekの特徴であり、いいところですね。

島田氏:また、大きなアップデートはない話題もあるかもしれませんが、ベテランの方からしたら常識のようなことも、あらためて若手層に基本をきちんと伝えていけるようなところもInternet Weekのいいところです。

[*6]…… DNSDAY 11/21(火)13:00~18:15

――そもそもInternet Weekは、どんな人が集う場なのでしょうか? また、今年どういった人に参加してほしいですか?

吉浜氏:Internet Weekはベテランの人が多いという話をよく聞きますが、実際の参加者のボリュームゾーンは30歳代・40歳代です。いろいろなプログラムを提供しているので、年齢層の違いはプログラムによるところもありますね。私は、ハンズオン(実習)のプログラムを中心にプログラムの検討を行っているのですが、ハンズオンプログラムの参加者は若手が多い印象があります。

 どういう人に参加してほしいかという点では、基盤系の話は、先にもありましたが、アップデートがそこまで多くないというか、新しい技術がポンポン出てくるようなものではないんですね。したがって、一度きちんと勉強したら何年も長く戦っていける分野だと思っています。また、いくらクラウドやらいろいろな技術が出てきても、基盤はなくならないわけです。初心者の人が一度それを覚えると、基礎体力になると思います。Internet Weekの基盤系プログラムは、 基礎から発展的な内容まで網羅しているので、自分の今後の体力をつけたい、初心者や若手にお勧めですね。

輿石氏:あらためて「学生・若手歓迎」のプログラム[*1]をお勧めしたいです。“セキュリティ”とは言ってもさまざまな種類のお仕事があるので、そういったいろいろなセキュリティのお仕事をしている人にお話を聞くプログラムです。

 また、Internet Week全体として、若手が参加しやすくなる支援もしていきたいと思っていまして、今、企画中です。

島田氏:Internet Weekのいいところは、ざっと内容を見ておけば、業界のトレンドを追うことができる点だと思います。世の中にはいろいろなバズワードがあって、そういうバズワードが並んだ記事を読んだり講演をどこかで聞いたりすると「最先端の人が最先端の話をしていてすごい!」とは思うけれど、自分のこととしてついていけないということはよくあることだと思うんですよね。日常の運用の中での監視の話、例えば“オブザーバビリティ”といった単語や、それに“ゼロトラスト”といったものですが、今までなんとなく聞いたことがある話題をInternet Weekで聴講してみてとりあえず損はないと思うんです。

 Internet Weekは、発展的な話のベースになる知識を取りそろえています。日常の業務の中で生かせるかもしれない、何となく聞いたことがあるものや、ベースの知識になるような内容を多く取り扱っているのが魅力だと思っています。

 自分の分野が決まっている人も決まっていない人も、いろいろな分野について、ちょっとのぞき見するような感覚で気軽にプログラムに参加していただきたいですし、自分の分野に新たな知り合いを作る場としても活用していただきたいです。

――最後に何かメッセージがあれば。

吉浜氏:毎年そうなのですが、プログラム委員は半年以上かけて各種プログラムを考えて作っています。毎回、自分たちがおもしろいと思うことや知っておいた方がいいと思うことをもとにプログラムを練っています。どのプログラムもおもしろいところや役立ちそう!と思うところがあるはずなので、ぜひいろいろなプログラムに参加してみてください。

島田氏:オンライン開催は便利ですが、“ここだけの話”がしにくい面がありました。「オンラインWeek」も楽しみつつ、オフラインでしかできない皆さんとの濃密な会話も楽しみにしています。

輿石氏:久しぶりのオフラインミーティングですので、ぜひ「集まれ!インターネットワーキング!」をいたしましょう!

――ありがとうございました。

INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Weekのイベントレポート記事(2009年以降)は、下記ページにまとめている。