インタビュー

「Internet Week 2024」開催中、会場ネットワークでROVを体感してほしい! NOCのメンバーに見どころを聞いた

ケーブルはすべて手作り。ネットワーク構築・運用の実践機会を若手エンジニアに提供

Internet Week 2024 Network Operations' Center(IWNOC24)のL2/L3チームの作業の様子

 インターネット技術と社会を語るイベント「Internet Week 2024」が11月19日から27日まで開催されている。主催は一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)。

 前半の11月19日~21日は「オンラインWeek」と称して、オンラインで基礎的なプログラムとハンズオンプログラムを提供した。後半となる11月25日~27日は「カンファレンスWeek」となり、浅草橋ヒューリックホール&カンファレンス(東京都台東区浅草橋1-22-16)にて、リアルでの会合が開催される。

 そのリアル会合での会場ネットワークを担当するのが「Internet Week 2024 Network Operations' Center(IWNOC24)」チームだ。参加者、とりわけ会場で行うハンズオンやワークショッププログラムのネットワーク運用のため、プログラム委員会と公募で集まった約20名がネットワーク構築・運用にあたっている。

 今回、IWNOC24を作った趣旨は、実際のネットワーク構築や運用に興味を持っていても“手を動かす場がない”若手に向けて、その機会を提供することにあったという。こうした趣旨に賛同し、機材やクラウド環境を提供してくれているのが、アリスタネットワークスジャパン合同会社とさくらインターネット株式会社だ。

 先日の記事『今年の「Internet Week 2024」は、オフラインで”手を動かす”ハンズオンプログラムも!』でも伝えた通り、Internet Week 2024では、実際に手を動かして学ぶ、ハンズオンやワークショップのプログラムをオンライン/オフラインともに充実させ、より効果的に学ぶことができるよう目指している。

 IWNOC24チームが実際に事前設定を行う「ホットステージ」の場にお邪魔し、お話を伺った。

――IWNOC24は、どのように進めているのですか。

 4つのチームを作って、それぞれのチームに3~5名か所属してチーム制で活動しています。「L1チーム」「L2/L3チーム」「サーバーチーム」「AP(アクセスポイント)チーム」です。

――それぞれのチームは具体的にどのようなことをやっていますか。

 L1チームは、無線を飛ばすAPとルーター/スイッチの物理的な接続を担うチームです。 APチームやL2/L3チームの機器配置や、会場の図面を基にケーブルの配線も設計しています。 会場に私設するケーブルをすべて手作りして頑張っています! 物理層のことを全般に担い、何でもします(笑)。

 L2/L3チームは、会場とインターネットの接続部分、いわゆるバックボーンと会場内のネットワーク(一般的なNOCにおけるL2/L3部分)の両方を担当しています。バックボーンについては、イベント用の臨時IPアドレスを申請・取得し、会場ネットワークに使用します。そのために、L2TP VPNを介したトランジットAS(インターネットへの到達性を担当するAS)との接続、グローバルIPのアドレッシング等を行っています。また、 会場ネットワークについては、VLANの設計・構築、各セグメントでのアドレッシング作業、インターネットへの接続のためのNATやACLの設定等を担当しています。

 サーバーチームは、クラウド上で、DNSや監視系について作っています。昔はこうしたサーバーも会場に物理的においていました。しかし今はさくらインターネットさんに提供いただいたクラウド上に作っています。事前にすべて確認できるので、とても助かっています。

 APチームは、実際の無線のアクセスポイントのセッティングをしています。また、クラウドサービスの仕様の設定確認などをやっていますね。

サーバーチーム

APチーム

――どんなところが面白いですか。また、今回の見どころなどがあれば教えてください。

 一番の目玉は、会場ネットワークでRPKI(Resource Public Key Infrastructure)を導入するところです。「会場ネットワークはROV(Route Origin Validation)を実施します! Invalid経路はRejectします!」という点ですね。

 ROA(Route Origination Authorization)の発行率については年々増加していますが、ROVを行うASは国内では限られているのが現状です。そこで、実証実験的な意味合いとして会場ネットワークでROVを実施し、サービス提供の観点で問題は発生しなかったか、仮に発生した場合どのような対応をどの程度の時間で完了したか等の知見を収集しようと考えています。

 また、面白いところとして、イベント系のネットワークは、短期での構築と撤去が求められるところが一般的な企業のネットワークと違うところで、瞬発力や即効性が求められるとことが特徴です。日頃はない刺激を得ることができます。

――苦労しているところはありますか。

 はい、チームそれぞれ苦労がありますね。苦労というよりトラブルなのかな?(笑)

 紹介したいのは、L1チームの苦労でしょうか。ケーブルの敷設場所の設計を他のチームと連携しながら進める中で、まず、手作りするケーブルの量が物理的に非常に多く、その作成や管理には大変な手間がかかっています。他のチームからもメンバーを総動員してケーブル作成を進めることになり、長いケーブルを扱う際には取り回しの難しさにも直面しました。さらに、ケーブル作成が初めてのメンバーも多かったため、慣れているメンバーが作業の仕方を教えながら進める場面もありました。それでも、みんなで協力し、ワイワイと和やかな雰囲気の中で作業を進めることができたのは良い思い出になるのかもしれません。

L1チーム

――今回なぜ、IWNOC24に参加してみようと思ったのでしょうか。

 参加の動機はそれぞれ異なるとは思いますが、共通しているのは、楽しく学びたいという意欲ではないかと。

 例えば、「普段、情報系の学校に通っているわけではないため、ネットワーク技術に触れる機会が少ない」という学生。社会人になることを見据え、学生のうちにネットワーク技術に挑戦しておきたい、実際に無線通信を飛ばす経験を通じて、より深く無線技術を学びたいと考えたとのことでした。

 とある社会人のメンバーは、職場で無線に関わることが多いものの、L2/L3の実務経験がなく、これまでは机上の知識にとどまっていたそうです。IWNOC24では、L2/L3チームで実機を使って一からネットワークを構築する実践的な作業ができると知り、「ハンズオンで技術を深められること」と「純粋に作業そのものが面白そうだ」と感じて参加を決めたと聞きました。

 特に、L2/L3技術を重点的に学んできた経験がある方は、L2/L3はネットワーク全体の安定性を支える要となる領域としての重要性を実感しており、現場での実践を通じて理論だけでは得られない技術力を高めたいのではないでしょうか。また、RPKIなどの新技術の導入に対応する手法を学び、変化するネットワーク課題への柔軟な対応力を養いたいという具体的な目標を持って、このチームへの参加を決めていると思います。

L2/L3チーム

 多様な背景や目的を持つ参加者が集まることで、それぞれの学びがより深まり、ネットワークに対する理解が広がる場、まさにInternet Week 2024のテーマである「つなげて、ひろげて、楽しもう」を体現しているのが、このIWNOC24ではないかと思いますね。

――Internet Weekで楽しんでもらいたい、もしくは自身が楽しみたいというポイントはどういうところでしょうか。

 そうですね。それぞれに楽しみたいポイントや期待していることがあります。

 初めて現地参加を経験するメンバーは、やはり「会場で皆さんと直接会えること」が楽しみの1つであるようです。現地での実地作業についても意欲を見せており、「トラブルがあれば現場でカバーします!」という頼もしい声も聞かれ、実践的なトラブルシューティングを楽しみに?している様子もあります。

 社会人のメンバーは、「限られたリソースでどれだけのことができるのか」というチャレンジ精神を持ちながら、各サービスのスケール感や設定プロセスそのものを楽しみにしているようです。「会期中に何か問題が起きたときには冷静に頭を動かして対応したい」という姿勢や、「人とのつながりをオンラインから現地まで広げていく楽しみ」「今日初めて会う人たちと一緒に協力し、つながりを深めていくことに期待」といったポイントはみんなに共通しているかもしれませんね。

 また、当然、Internet Weekに参加するわけですから、プログラムにも申し込んで、「最新技術について知る機会があれば嬉しい」といった、技術的な学びも期待しています。

――最後にメッセージをお願いします。

 NOC活動を通じて「実務的なネットワーク構築の技術や技術に関する知見を深めたい」という具体的なモチベーションをもって、皆、今回のInternet Weekのネットワークを作っています。そのうえで、会場に来場する皆さんには「ROVを実施しているネットワークだったり、純粋に会場ネットワークだったりを体感してほしい」と思っています。

 Internet Weekを通じて、技術的な挑戦だけでなく、現場でのつながりや新しい発見を楽しみにしています。その思いをInternet Weekの会場で、ぜひ分かち合えればと思います!

――ありがとうございました。


 Internet Weekは「インターネットに関する技術の研究・開発、構築・運用・サービスに関わる人々が一堂に会し、主にインターネットの基盤技術の基礎知識や最新動向を学び、議論し理解と交流を深めるためのイベント」として開催されているもので、今年で28回目を迎える。毎年テーマを掲げており、今年は「つなげて、広げて、楽しもう」をテーマに、40近いプログラムを展開している。

 なお、各プログラムの詳細は、Internet Week 2024のウェブサイトに掲載中だ。リアル会場での開催となる11月25日~27日が「カンファレンスWeek」では、議論や意見交換を重視したプログラムを浅草橋ヒューリックホール&カンファレンスで実施される。

 参加費は1万6500円。この基本料金で、ハンズオンプログラム(3300円)と懇親会(7000円)を除く全てのプログラムに参加できるほか、現地参加できなかったプログラムについても後日、オンデマンドで視聴可能だ。

 学割もあり、30歳以下の学生を対象に、参加費の1万6500円が無料になる。今年は「初参加者向けワンセッション参加券」もあり、4950円(税込)で「カンファレンスWeek」のワンセッションと「オンラインWeek」のすべてに参加できる(※ハンズオンと懇親会を除く)。

 会期いっぱいまで申し込みを受け付けているので、興味を持った方はぜひ除いてみてほしい。

INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Weekのイベントレポート記事(2009年以降)は、下記ページにまとめている。