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NASのドライブ1本を“リムーバブル化”する「MyArchive」、ASUSTOR NASのイチオシ機能
HGSTはHDDのヘリウム充填技術によるメリットをアピール
2017年7月25日 06:00
名古屋の大須にあるツクモ名古屋1号店にて、7月22日(土)に「NAS・HDD合同イベント」が開催された。参加メーカーはNASメーカーのASUSTORとQNAP、HDDメーカーのHGSTとSeagate。当日は、台数限定特価のNASが用意されたほか、参加者限定のNAS製品オークションや、HDDの割引販売も実施された。さて、ここでは当日のイベント内容からASUSTORとHGSTについて紹介しょう。
ASUSTORのイチオシ機能「MyArchive」
ASUSTORのセッションでは、NAS向けの独自OS「ADM」の最新機能や、同社NAS製品の最新機種をデモを交えて紹介。ASUSTORは、QNAP、Synologyを含む、いわゆる“NAS御三家”では後発であり、差別化に力を入れている。そのような中で、特に力を入れてアピールしていたのが、同社独自の機能である「MyArchive」だ。
MyArchiveは、言ってみれば“ネットワーク接続型のリムーバブルドライブ”としてNASを利用できる機能だ。これを活用すれば、NASに組み込んだドライブを取り外して直接PCに接続して読み書きできるなど、NASとしてはかなりユニークなファイルシステム管理とバックアップの機能と言える。
販売代理店である株式会社ユニスター第二営業部課長で、NASサーバーを統括する越沼哲史氏によると、例えば4ベイのNASのうち、3台のHDDでRAID 5を構築した場合、残る1ベイに搭載したHDDを、RAID 5とは異なるファイルシステムとして利用できる。その1台のHDDでは、EXT4やNTFS、HFS+といった多彩なファイルフォーマットをサポートしている。
MyArchiveに設定したHDDとRAIDアレイとの間では、NASのハードウェア機能を用いた高速なコピー機能が利用できる。MyArchiveのHDDをNTFSでフォーマットしていれば、ホットスワップして取り出したHDDを、Windows PCなどとSerial ATAやUSBアダプターを介して接続し、そのまま読み込むことができるわけだ。
このため、MyArchiveにRAIDアレイのバックアップを取っておけば、NASのRAIDアレイが万が一故障してしまったような場合に、LANを介するよりもはるかに高速に、NASのRAIDアレイから必要な情報をPCにコピーできるわけだ。この点で、LANを経由するより短時間で復旧できる。
MyArchiveのHDDをEXT4でフォーマットすれば、Windows PCから読み書きする難易度は上がるものの、暗号化オプションを利用可能になるため、ビジネスにおけるセキュリティを向上できる。そのほか、MyArchiveを設定したHDDは、ASUSTOR製NAS間でもデータを読み書きできることから、旧NASから新NASへの移行にも活用できる。
そのほかにもASUSTOR製NASの特徴的な機能が紹介されたので、スライドとともにピックアップして紹介していこう。
イベント当日は、ASUSTORやQNAPをはじめとしたNAS製品の特価販売も行われていた。
ヘリウム充填HDDのパイオニアである点をアピール、HGST
NASがテーマのイベントということで、HGSTのプレゼンテーションも、同社HDDのNAS向け機能にフォーカスして行われた。
HGSTのメインテーマは「ヘリウム充填」。ヘリウム充填HDDは、HGSTが他社に先駆けて採用製品を販売開始している。2013年の6TBモデルを皮切りに、現在12TBモデルについて2017年内(暑さが和らぐころ!?)の市場投入を目指しているとのこと。
ヘリウム充填HDDの特に大きなメリットは、株式会社HGSTジャパン営業本部ストレージソリューション部ディレクターの山本慎一氏によると、容量、省電力、耐久性の3つだ。
ヘリウムは、主に窒素と酸素の混合気体である空気と比べて密度が7分の1であるため、気流抵抗が抑えられ、プラッタとヘッドの間をより近づけても安定した読み書きができる。そして、空気と比べて気流抵抗が抑えられたことにより、プラッタ回転時のフラッターが抑えられるとのことだ。
これにより振動と、振動に伴うエラーの発生が減り、駆動時の動作音も抑えられるなど、さまざまなメリットが生まれる。また、プラッタを薄くできることで枚数の増加も可能になる。ヘリウム充填の採用により、従来の最大5プラッタから、現在では8プラッタまで増加可能になったという。12TBや14TBといった大容量が、3.5インチフォームファクターのHDDで実現できた理由がここにあるわけだ。
気流抵抗が少ないことで、プラッタを回転させるモーターの力も少なくて済み、消費電力が抑えられる。これにより発熱も小さくなる。ただし、ヘリウム充填には漏れ対策が必要となり、製品では溶接による完全密封が施されているという。
製造工程は、空気を利用する開放式のHDDと比べて増えてしまうが、ヘリウムならではのメリットとして酸化の問題もなくなるとのこと。発熱が少なく、酸化の問題がなくなるために、耐久性も向上するのだと言う。