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埼玉県深谷市が「DEEP VALLEY」宣言、農業のシリコンバレーとして「アグリテック集積都市」目指す

 「深谷ねぎ」の産地として知られる埼玉県深谷市の小島進市長が27日、「DEEP VALLEY アグリテック集積宣言」をした。アグリテックとは、Agriculture(農業)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語。首都圏における農産物の一大供給地である同市が、農業と最先端技術の融合によって農業のシリコンバレー化を図り、日本の農業が抱える後継者不足や技能伝承といった課題を解決していくのが狙いだ。その取り組みの第一弾として、アグリテック分野のビジネスコンテスト「DEEP VALLEY Agritech Award 2019」を開催し、先進的な技術を有する企業や個人に対して総額1000万円を出資などのかたちで提供。アグリテックの誘致・定着を図る。

「DEEP VALLEY」の活動には、市内の3つの農協や商工団体、埼玉工業大学、株式会社トラストバンク、株式会社マイナビが推進パートナーとして参加している(27日に都内で行われた記者発表会で。中央が小島進深谷市長)

渋沢栄一翁の「論語と算盤」の精神、アグリテックで実践

 「平成29年全国の市町村別農業産出額(推計)統計表」によると、深谷市の農業産出額は約350億円と全国23位、野菜の産出額に限ると全国6位。深谷ねぎのほか、トウモロコシやブロッコリーをはじめとした多種多様な農産物を首都圏に供給する、全国でも有数の農産地となっている。一方で、農家の高齢化が進み、使われない土地が増えてきており、後継者の減少が同市でも問題になっているという。

 そこで深谷市では、郷土の偉人である渋沢栄一が明治期に多くの企業活動を支援したのと同様に、「論語と算盤」の精神に基づき、地域の経済課題の解決と国の経済発展に貢献するための戦略をとることにした。宣言では「さまざまな知識や技術を深谷市に集め、アグリテックを生み出し、この地から日本の農業課題の解決を図り、これからの日本の産業の発展に資する企業や人材を多く輩出していく」なとどしている。

 具体的な戦略としては、まず、現場の課題を集めるとともに、アグリテック開発に協力する農家や実証フィールドも募って「農業課題データバンク」を創設する。その一方で、アグリテックコンテストを開催し、授賞者に賞金や実証フィールドを提供するなどして製品化・事業化を支援する。

 また、アグリテック企業と地域の農業関連企業や農業従事者との交流を促進するなどして、深谷市における農業の課題と技術をマッチングさせ、アグリテックの活用や企業活動の定着化を図る。さらに、起業家や農業従事者などとの異業種交流を促進することで、DEEP VALLEYの取り組みを広げていく。地域の関連機関や企業、金融機関なども参加するコンソーシアムの設立や、インキュベーションオフィスについても検討するという。

「DEEP VALLEY」実現に向けたイメージ(「アグリテック集積戦略(概要版)」より)

 DEEP VALLEY Agritech Award 2019は、「プロダクト部門」「コンセプト部門」の2つで行われ、応募期間は7月16日~8月31日。書類審査やプレゼン審査を経てファイナリストを選出し、10月31日に深谷市で行われる公開プレゼンによる最終審査で各部門の最優秀賞などを決定。その後、12月より、事業化に向けた支援の検討を開始するスケジュールとなっている。コンテストは来年度以降も引き続き開催したい考えで、来年度以降は、ふるさと納税や協賛企業からの寄付を賞金に充てることを想定している。

 深谷市では、DEEP VALLEY戦略の目標として、2020年度までに、アグリテック実証実験の実施数・参加企業数を累計10件・10社、アグリテック企業の誘致数を3社としている。また、2016年度時点で56社ある農業法人を、2020年度までに68社に増やす目標も掲げている。