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「感情表現」こそが絵文字の神髄?! ビジネスシーンにおける絵文字活用、栗田穣崇氏・若新雄純氏が指南
2019年7月17日 06:15
Chatwork株式会社が16日に開催したビジネスチャット「Chatwork」の新機能「リアクション」についての記者発表会では、絵文字をテーマとしたトークショーも行われた。登壇したのは、“絵文字の父”として知られる栗田穣崇氏(株式会社ドワンゴ専務取締役COO兼ニコニコ代表)と、コミュニケーション論の分野でメディア出演の機会も多い若新雄純氏(株式会社NEWYOUTH代表取締役)。また、Chatwork株式会社代表取締役CEO兼CTOの山本正喜氏が聞き手を務めた。
栗田氏はNTTドコモ在籍時代に絵文字の企画・開発を担当した。メールやサイトにおける文字数制限を少しでも緩和したい狙いから発想された絵文字だったが、1999年、「iモード」とともに世に出た。栗田氏は「(絵文字は便利だから)使われるだろうとは予想していたが、『絵文字を使いたいから携帯電話を買いたい』というキラー(コンテンツ)にまではなるとは想定しなかった」と当時を振り返る。
結果、絵文字はNTTドコモ以外の携帯電話へと波及。海外でも「Emoji」という言葉が通じるほどの爆発的普及を見た。この背景について、若新氏は「絵文字の父を横にして論じるのはちょっとどうかと思うが」と笑わせつつも、“感情”の表現手法としてやはり優れているのではないかと話す。
「🚄(新幹線)や🍰(ケーキ)のように、記号的な意味の絵文字はだんだん使われなくなってきていて、一方で感情・表情を示す絵文字が今も根強く使われていると感じる。それこそLINEスタンプでは、キャラクターがなんらかの感情を短く代弁してくれているからあれだけ使われているのでは。『本当にうれしいんだよ』という気持ちを長ったらしく書かずに絵文字が1文字で表現してくれる。」(若新氏)
また、人と人とのコミュニケーションにおいては、単に要件を伝達させるだけでなく、それに伴う“気持ち”もまた大きな意味を持つと若新氏は指摘。電話で話すとき、シーンに応じて声色を変えるのはまさに好例だ。その点、ビジネスでやりとりされるメールは、その文面だけで感情を推し量るのは難しいため、絵文字にはこれをフォローする効果が期待される。
「最近、ネットの記事で『電話最悪』とかよく見かけるけど、これは超・良くない傾向。個人的にはメッセンジャーより電話、電話よりもむしろ会いに行く派。なぜなら、相手との感情がズレたまま物事を進めては結局ロスが大きい。(メールで)要件だけを伝えて気持ちが伝わっていなかったら、結局、最終的に会って回収しないといけなくなる。なら最初から電話したほうがいいし、絶対にそのほうが気持ちいいし楽なはず。」(若新氏)
「立場が上の人」から、ビジネス絵文字を使ってみては?
絵文字はこれまで、主にプライベートなコミュニケーションに使われてきた。これだけ便利な手段なのだから、ビジネスでも使いたいと考えるのもある意味当然だ。しかし、部下と上司の間など、ある意味において“遠慮”が働いているのも事実である。
これを乗り越える手段はあるのか? 若新氏は「立場がより優位な人がまず絵文字を使い始める」のが重要ではないかと指摘する。「私は今回、『トークショーに登壇してくれませんか』とChatworkから依頼されたけれど、ここでは、お願いされた私の側が優位にあたる。そういった立場の人が絵文字を使って感情を表しておいたら、絶対楽ですよ。もし『遅刻する』と連絡する場面があっても、顔文字で好意的な感情表現をたくさん送っていたら、(遅刻連絡を受けた側の)気持ちも絶対違ってきます」(若新氏)。
もう1つ、オンラインコミュニケーションを語る上では、LINEなどで作る家族単位のグループが参考になるという。例えば、わずか2文字の「帰る」とだけ投稿しても、周りの家族はいつものことなので、何時何分にどの電車に乗ってきて、どれくらいのズレで迎えにいけばいいか、察しがつく。
つまり、オンラインの話以前に、参加者(ここでは家族)の信頼感がきっちりと醸成されていれば、たった2文字の投稿でも意思が明確に伝わる。これをビジネスシーンに置き換えた場合、グループによって信頼感はまちまちだ。家族チャットのような信頼関係があるときは最小の文面で意思を伝え合ってもいいが、それ以外では絵文字をはじめ、さまざまな手段で感情を表現することが重要なのではないかと若新氏は話す。
一方の栗田氏も、ドワンゴではそれこそ仕事だけでなく、“部活動”の話まで社内チャット上で日常的にやりとりしていることに言及。一見すると仕事の邪魔になりそうな交流が、実は互いの信頼感づくりに役立っているかもしれないと補足する。「『仕事用のスレッドしか作ってはダメ』だと、信頼感の醸成にはつながらないかもしれない」(栗田氏)。
聞き手の山本氏も、やはりChatwork社内において「雑談チャット」「今夜飲みませんかチャット」など、業務に直接関係ないチャットスレッドを複数立てていることを紹介。「とりとめもないチャットをやりとりしているのだが、実はこれらがコミュニケーションの効率を上げてための下地になっているのかも」と述べた。