“出版費用無料”の個人出版サービスで2万冊を売り上げた著者も～「ネクパブPODアワード2020」受賞者が決定

「ネクパブPODアワード2020」特設ページ

　Amazon.co.jpのプリントオンデマンド（POD）サービスを利用して個人出版を行った人を表彰する「ネクパブPODアワード2020」（主催：株式会社インプレスR&D、協賛：Amazon.co.jp）の各賞受賞者が決まり、5月25日にオンライン授賞式が開催された。グランプリには、国の特別天然記念物で生きた化石とも呼ばれる「オオサンショウウオ」と人間がともに暮らしていくために知っておきたいことをマンガで解説した『オオサンショウウオと暮らすための50のこと』（清水則雄・山﨑大海著）が選ばれた。また、今年のアワードでは「ネクパブ栄誉賞」が新たに設けられ、『アスリートのための最新栄養学（上）』（山本義徳著）が選ばれた。

グランプリを受賞した『オオサンショウウオと暮らすための50のこと』著者の清水則雄氏、山﨑大海氏

“出版費用無料”の個人出版サービス「ネクパブ・オーサーズプレス」

　ネクパブPODアワードは、インプレスR&Dが運営する個人・団体向けの出版販売支援サービス「ネクパブ・オーサーズプレス（旧称：著者向けPOD出版サービス）」を使って個人出版した人を対象に2018年から実施しているアワードで、今年が3回目（旧称：POD個人出版アワード）。

　ネクパブ・オーサーズプレスでは、所定の形式の原稿データを用意すれば、登録料や利用料はかからず、誰もが無料でAmazon.co.jpで紙の書籍を出版できる。注文が入ったときに1冊ずつ印刷・製本して出荷するPOD方式のため、事前に大量印刷する必要がなく、自費出版のように初回出版時に費用負担がないのが最大の特徴だとしている。

　また、実際にAmazon.co.jpで書籍が売れると、販売価格から、販売価格に応じた販売手数料と印刷ページ数に応じた印刷費を差し引いた全額が著者に支払われるため、柔軟な価格設定ができるのも特徴だという。

　今年のアワードには、161名のエントリーがあり、グランプリを含む計11名の受賞者を選定した。

授賞式に参加した受賞者と審査員ら。今年は新型コロナウイルスの影響により、Zoomによるオンラインで開催された

　なお、ネクパブ栄誉賞に選ばれた山本義徳氏は、『アスリートのための最新栄養学』で2018年のアワードで最優秀賞に輝いているほか、著者の2019年にも『ウェイトトレーニング -実践編-』で入賞している。これまでにネクパブ・オーサーズプレスで計4タイトルを出版し、それぞれ数千冊以上を売り上げ、累計販売数は2万冊を超えているという。また、著者自身がTwitterなどのSNSやYouTubeを活用した情報発信を展開するなど、POD出版を行う著者のプロモーション活動の参考になると評価。POD出版の普及・発展に大きく貢献したとして、ネクパブ栄誉賞を授与することとした。

ネクパブ栄誉賞を受賞した『アスリートのための最新栄養学（上）』著者の山本義徳氏

オオサンショウウオの未来を何とか明るいものに――

　グランプリを受賞した『オオサンショウウオと暮らすための50のこと』は、オオサンショウウオの保全研究に取り組んでいる2人による共著。「忘れられたことで消滅の危機に陥った生き物を救うためには、たくさんの人に知ってもらうこと」が不可欠だとして情報発信を進めてきたが、「より分かりやすく、深く、多くの人に」を実現するかたちとしてPOD出版を選んだ。アワードでは、研究の最前線かつ専門家レベルの内容を子どもでも楽しみながら読めるようにかわいらしいマンガにしており、その内容のバランスとテンポの良さが評価された。

　国の天然記念物であるオオサンショウウオという生き物は、文化財保護法という法律で厚く保護されているように見えるんですけれども、実は消滅のピンチを迎えている、と我々は思っています。「あと20年経ったら本当にいなくなるんじゃないか」、僕たちはそのような情報を、30年間地域で調査をしていたおじいさんから聞いたわけです。

　そんなことはないだろう、と思って一緒に調査を続けてみると、その現状がどんどん明らかになってきました。その中で僕たちは、こういったことをもっと人に知ってもらわないと、オオサンショウウオの環境は良くならないねということで、講演会をしたり、LINEのスタンプを作ってみたり、授業をしてみたり、はたまたテレビや新聞に出たりしてみたんですけれども、それらをいくつやっても実はまだまだ多くの人には伝わっていませんでした。

　そこで山崎くんと僕たちが考えたのが、片面が四コマ漫画で、もう片面は専門的な解説（という形の本）。講演会では深く話を伝えることはできても、広い人に伝えることができない。LINEのスタンプでは広く伝えることができても、深い内容を伝えることはできない。このPODの書籍は、「より深く、より広く」を実現できる機会を与えてくれた、素晴らしい媒体だと本当に感謝しております。

　こういったものでより広く訴えることで、オオサンショウウオの未来を何とか明るいものにしていきたいと思っておりますので、皆さんご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。そして、私の家族や地域の皆さんには本当にいろいろと支えてもらったので、この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

著者・清水則雄氏のコメント

家族のバックアップで出版した88歳のおばあちゃんらも受賞

　ネクパブ栄誉賞の『アスリートのための最新栄養学（上）』のほか、優秀賞 に『山本太郎がほえる～野良犬の闘いが始まった』『賢いトランペットプレーヤーの渡世術』 『しんせ本 by synthAtion』、審査員特別賞に『くせになるおりがみ』『「映像編集の考え方」 ～経験と映画から紐解く～ 第一版』『お陰様でViva88』『インクルージョン インクルージョン時代の幕開け！共に未来を切り拓こう!!』『模型で知る第1次世界大戦機』『福岡将之写真集 SEED 2 アジアの洗濯物』がそれぞれ選ばれている。

　家族のバックアップを受けて出版した88歳のおばあちゃんや、全盲の視覚障害者でありながら、音声PCを使って基本独力で企画・執筆・編集・出版を行った著者も受賞しているという。