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テレワーク&オンライン学習で「家庭内印刷」需要が増加、エプソンが「Withコロナ」戦略のプリンター新製品を発表

 エプソン販売株式会社は8日、家庭向けインクジェットプリンターの新製品8機種を発表した。コロナ禍で急拡大した「家庭内印刷」の需要に応えるべく、6色エコタンクのハイエンドモデル、テレワーク利用を意識した低価格高機能モデルなどを順次、発売していく。

緊急事態宣言後にプリンターの販売が急増、ただし7月以降は供給不足に

 新型コロナウイルス感染症の問題は、インクジェットプリンター市場全体に大きなインパクトを与えた。エプソンによれば、2020年3月までの市場は対前年比でおおむね100%前後を維持していたが、4月7日の緊急事態宣言以降、外出自粛をよそに大きく拡大した。5月14日の宣言解除以降も、その勢いは変わらなかった。

 しかし7月になると、前年比でマイナスに転じた。ただ、これはエプソンの分析によれば需要が減少したわけではなく、プリンターの主な生産拠点である東南アジアにおいて、生産の遅れが発生したことによる供給不足が原因という。

 国内の消費者もコロナ禍によって生活様式が大きく変化してきている。中でもテレワーク、子どもたちのオンライン学習、そして「イエナカ」「おうち時間」などと呼ばれる自宅での過ごし方などの要素は、プリンターの利用実態にも影響を与えた。

 テレワークについては、実施率が東京商工リサーチの調査によると大企業で55.2%、中小企業で26.1%に上った。しかし別の調査によれば、プリンターやスキャナーが自宅にないため、印刷がままならず、不便に感じているユーザーが少なくないことも分かった。

テレワークが増加したものの、自宅にプリンターがなくて不便との声も多かった

 コロナ対応に伴う学校の一斉休校は全国的な動きとなったが、そうした生徒・学生たちにとっても印刷ニーズは高かった。エプソン製プリンターでは、利用者の同意をもとにプリンターの稼働状況データを集計しているが、ユーザー属性を「子どもありの利用者」「学生」と申告している環境での印刷がやはり急増した。同様に、LINEアプリのトーク画面からプリンターを使って印刷できる機能の利用も増えており、宿題や連絡事項の印刷が積極的に行われているとみられる。

 小学生~高校生の多くは通学が再開したが、大学生は在宅でのオンライン学習がまだ盛んだ。その際、教授から配布されたPDF資料を学生がプリントし、これをもとにオンライン授業を進める例も多いという。

オンライン学習のシーンでも印刷ニーズは高い

6色エコタンクのハイエンド「EW-M873T」をはじめ、8機種を投入

 一般ユーザーにとってのプリンターの存在感といえば、従来は年賀状印刷に代表されるように「一家に一台あったほうが便利」といったものだった。また、会社員を中心に「出社すれば複合機が完備」というスタイルが定番化していた。

 しかし「Withコロナ」を考える上では、これまでの利用に加えて、テレワークに代表されるように「家庭内での印刷」の重要性が高まってきた。つまり「オフィスのプリント需要を家庭用に市販されるプリンターで満たす」状況にもなってきている……という格好だ。

 こうした情勢変化を受けて、エプソンでは家庭用インクジェットプリンターの新製品8機種を新たに発売する。今回のラインアップ中、ハイエンドモデルが「EW-M873T」(A4印刷対応)と「EW-M973A3T」(A3印刷対応)で、文書から高精細写真まであらゆる印刷ニーズを満たす機種という位置付け。また、大容量エコタンクの採用で印刷コスト低減を図っている。

コロナ禍のニーズに応えるかたちで、新製品を投入
「EW-M873T」

 「EW-M752TB」は、昨シーズンに発売した「EW-M752T」のカラーバリエーションで、本体カラーがブラックのモデルとなる。こちらもエコタンクを採用しており、印刷コスト面で有利なことから、テレワークおよびオンライン学習で印刷枚数の増加を見込む家庭での利用を期待する。

既存モデルのカラーバリエーションとなる「EW-M752TB」

 「EW-M530F」は、従来型のインクカートリッジ式ながら、FAX・スキャナーを搭載して想定実売価格1万円台中盤を実現した低価格モデル。仕事や学習でプリンターが必要だが、初期投資を抑えたいユーザーに最適としている(関連記事『1万5500円の「在宅ワーク複合機」、エプソンが「EW-M530F」発売』参照)。

「EW-M530F」

 このほかにも、従来機種の直接的後継機種として、A4印刷対応の「EP-883AW/AB/AR」「EP-813A」「EP-713A」、はがきプリンターの「PF-81-2021」が発表された。

「EP-883AW/AB/AR」(画像はホワイトカラーモデル)

 発売時期は、「EW-M873T」が12月初旬、「EW-M973A3T」が2021年2月、そのほかの機種は全て10月22日の予定。

 全機種ともオープン価格で、市場想定価格(税別)は「EW-M873T」が6万円台前半、「EW-M973A3T」が8万円台中盤、「EW-M752TB」が3万円台後半、「EW-M530F」が1万円台中盤、「EP-883AW/AB/AR」が3万円台前半、「EP-813A」が2万円台中盤、「EP-713A」が1万円台後半、「PF-81-2021」が5万円台中盤。

【お詫びと訂正 2020年10月9日 10:15】
 記事初出時、「EW-M973A3T」の発売時期について誤りがありました、お詫びして訂正いたします。

誤:2021年3月
正:2021年2月

初期セットアップは、スマホアプリのチャット風UIで簡単に

 今回発表した機種のうち「EW-M873T「EW-M973A3T」「EP-883AW/AB/AR」「EP-813A」「EP-713A」については、スマートフォンアプリを用いた簡単セットアップ機能が利用できる。

 これには、エプソンがAndroid/iOS向けに提供中の「Epson Smart Panel」アプリを用いる。同アプリと対象プリンターをBluetooth LEで一時的に接続することにより、開梱からネットワーク接続までの初期セットアップをアプリ内のチャット風インターフェ-スで完結させることができる。

 対象機種のうち、エコタンク採用モデルでは開梱後のインク充填に5~7分かかるが、この待ち時間中にWi-Fi接続設定を行うなど、使い勝手にも配慮した。なお、Wi-Fi Directでスマートフォンをプリンターに接続する際にも、Bluetooth LEが利用可能。

一部機種では、「Epson Smart Panel」アプリとBluetooth LEによるセットアップなどが可能になった