ニュース

「Jira」の新製品やアップデート情報など、アトラシアンの年次イベント「Team 21」で発表

アトラシアンのクラウド製品は今年の後半に日本もデータレジデンシーの対象に

アトラシアンの共同創始者・共同CEOであるマイク・キャノンブルックス氏

 Trello(トレロ)やJira(ジラ)といったコラボレーションツールを提供するオーストラリアのソフトウェアベンダー「アトラシアン」は、同社の年次イベント「Team 21」を4月28日〜29日(米国時間、日本時間4月29日~30日)にオンラインで開催した。米国時間28日に行われた同社共同創始者で共同CEOのマイク・キャノンブルックス氏による基調講演では、同社が「Point A」と呼んでいる新しいプログラムと、「Jira Work Management」という新製品が発表された。

 また、基調講演では、今年の後半に同社のクラウドサービスのデータレジデンシー(データを保管しておくクラウドサーバーの地域)が日本、カナダ、英国などにも拡大されると発表された。これにより、同社製品のデータレジデンシーに日本を指定できないという理由からオンプレミスで利用していたエンタープライズの顧客が、JiraやConfluence(コンフルエンス)をクラウドベースへと移行することが可能になる。

今年後半にアトラシアンのクラウドサービスにおけるデータレジデンシーが日本も対象に

クラウドの強化を発表するキャノンブルックス氏

 キャノンブルックス氏は、今回のイベント名になっているほか、同社の株式コード(TEAM)にも使われており、同社が最近強調している「Team」(チーム、組織)での働き方についての話から講演を始めた。

 「昨年COVID-19が発生してから多くのことが世界を変えて、チームでの働き方がこれまでの人類の歴史では無かったような新しい形に進化した。1960年代には4年かかっていたワクチン開発は12カ月以下で出荷が開始された。我々のJiraやConfluenceもワクチンを開発している顧客に利用されていたほか、アトラシアンの最大顧客が2000万のワクチンを世界各国に輸送している。このように、昨年はチームでの働き方を大きく変えた年になった」

 同氏は以上のように述べ、JiraやConfluenceなどアトラシアンのソフトウェアがワクチン開発や輸送などに貢献したことを例に挙げながら、組織の働き方に大きな変化が出てきた年だったと総括した。その上で、新しい組織での働き方が重要になっているとし、Teams 21ではそうしたビジネスを変革する新しいビジョンを示すと強調した。

新しいソフトウェアを提供する

Team21で発表される3つの鍵ひとつ目はJiraやConfluenceのアップデート

 キャノンブルックス氏は今回のTeam 21において説明する分野について、JiraやConfluenceなど既存製品のアップデート、クラウド関連の発表、そして新製品の3つになると述べた。

 JiraやConfluenceなど既存製品のアップデートに関しては、絵文字をクロスプラットフォームで使えるようにしたり、アバター機能の拡張、さらにはマシンラーニングベースのAI機能の拡張などの機能拡張を施したりしたと説明した。細かな改良ではConfluenceのタイトルへの絵文字の追加、写真に手書きが可能、などの拡張について説明した。

絵文字サポート
プロフィールの強化
Confluenceのタイトルに絵文字
写真に手書きできるようになった

クラウドサービスのデータレジデンシー拡張

 クラウド関連では、エンタープライズ向けのクラウドベースのサービスとして「Cloud Enterprise Edition」を既に発表しており、Jira Software、Confluence、Jira Service Managementなどで利用できる。キャノンブルックス氏によれば拡張されたセキュリティを利用可能で、グローバル規模で利用できる。管理機能なども充実しており、99.95%の稼働保証と24時間のサポートなどの特徴を持っているという。

クラウドエンタープライズエディション
クラウドエンタープライズエディションの特徴

 今回のTeams 21では、このクラウドサービスのデータレジデンシーの拡張が発表された。既に米国とEUではサービスが開始されており、既にJira Software、Confluenceで利用可能。Jira Service Managementに関してはまもなく開始されるという。

 今年の後半にはそれがオーストラリア、日本、カナダ、イギリスで利用可能になると発表された。対象となるのはスタンダードクラウド、プレミアムクラウド、エンタープライズクラウドの各契約で、これらの有償のクラウドプランに契約している場合に、このデータレジデンシーの機能が利用できる。

 日本では先日、LINEのデータがどこに置かれているのかで一騒動あった後だけに、エンタープラズがデータをどこに置くかという問題には注目が集まっている。今年の後半に日本でもデータレジデンシーが利用できるようになって日本のデータセンターに置けるようになると、JiraやConfluenceでもクラウドへの移行が進むことになりそうだ。

データレジデンシー
オーストラリア、日本、イギリス、カナダなどで今年の後半から提供開始
スタンダード、プレミアム、エンタープライズの各プランでデータレジデンシーが利用可能

 この他にも、クロスプロダクトサーチ、スマートリンク、エディターといった新しい機能がクラウドベースのツールとして提供されると、キャノンブルックス氏は説明した。

クロスプロダクトサーチ
スマートリンク
Editor

Point Aと称される次世代製品構築プログラムと、そこから生まれる新製品が発表される、一部は本日より一般提供開始

 キャノンブルックス氏は、今回のTeam 21で発表された顧客と共に次世代製品を作り上げる新プログラムPoint Aと、そこから生まれる新製品についても説明した。

 「Point Aは、未来のチームワークを支援する次世代製品を構築するための、アトラシアンの新しいプログラムだ。これはお客様と共に創り上げるコラボレーティブなプログラムで、共に学習しながら新機能が急速に進化するように設計されている。この先数カ月の間に、合計5つの製品が参画する」とした。

 また、新製品のひとつとなるTeam Centralについては「我々はアトラシアン市場最もエキサイティングな製品を発表する。組織のメンバーがその目標や現状を把握するには、それなりの方法論でオープンなカルチャーを作り、組織を進化させる必要がある。誰がどこで何をしていて、今どんなことが課題になっていて、どこで問題の細分化が発生しているのかなどを把握する必要がある。それを実現するのがTeam Centralとなる」と述べた。

Point Aの導入

 同氏によれば、Point Aには「Jira Work Management」、「Jira Product Discovery」、「Team Central」、「Compass」、「Halp」という5つのツールが用意されているという。なお、これらの新しいソフトウェアはすべてクラウドベースで提供される。

 Jira Work Managementは、マーケティングや人事、経理、法務などのIT部門や技術開発部門ではない組織のメンバーが利用するJiraといった趣。彼らの仕事を可視化し、プロジェクトの進行状況などを管理するツールとなる。Jira Work Managementは4月29日より一般提供が開始されている(詳しくはアトラシアンのブログ記事にある紹介を参照)。

Jira Work Management

 Jira Product Discoveryは製品のアジャイル開発を行う際に役立つ製品管理ツール。PM(プロダクトマネージャ)が製品の開発を管理する際に発生するさまざまな課題を可視化し、優先順位付けなどをしたりして、よりよい管理ができるようにする。現在はアルファ版へのアーリーアクセスが行われている。

Jira Product Discovery

 Team Centralは、組織に所属するメンバーがその目標や状況などをシェアするためのツール。現在ベータ版の提供が開始されている。

Team Central

 Compassは、組織のメンバーが自組織の提供しているデジタルサービスを俯瞰して確認するためのツール。開発部門などが新しいサービスを提供するときに、より容易に組織のメンバーに紹介したり、サポートしたりできるようになる。まもなくアルファ版へのアーリーアクセスが開始される予定だと言う。

Compass

 HalpはSlackとMicrosoft Teamsにチケット型のヘルプデスクサービスを提供するツール。ユーザーが簡単に対話によるサポートを求めることが可能になる。Halpはすでに一般提供が開始されている。

Halp

【お詫びと訂正 2021年5月12日 19:46】
 記事初出時、翻訳に一部解釈が異なる部分がありましたので、正確な表現にさせていただきました。