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ワーケーション実施者の半数近くが「隠れワーケーター」との調査結果、企業は制度導入の検討を
2021年5月14日 14:36
株式会社クロス・マーケティングと山梨大学(生命環境学部地域社会システム学科 田中敦教授・西久保浩二教授)の研究グループは、「ワーケーションに関する調査(2021年3月)」の結果を公表した。予備調査で「直近1年以内にワーケーションを経験した」と回答した人の中の1000人を対象に、本調査を3月23日~29日にインターネットで行ったもの。
ワーケーションで仕事をした施設、「ホテル」が上位に
「直近で行ったワーケーションの実施場所」は、「自宅や会社から離れた観光地(ホテル・旅館・キャンプ場等)」が最も多く49.0%、「日常生活圏外でのコワーキングスペース・カフェ等」が36.2%、「観光地にある会社が保有・契約するリゾート施設、宿泊施設等」が12.5%となっている。
「実際に仕事をした施設」としては、「ビジネスホテル」が43.1%、「リゾートホテル」が31.4%、「シティホテル」が27.0%で、ホテルが多くを占めている。
ワーケーションで「仕事」が中心の人は39.5%、「観光・遊び」は26.3%
ワーケーションの際の働き方としては、「業務時間内は仕事中心で、業務時間外も、遊びや観光・地域での交流は行わない」が22.1%、「仕事中心だが、遊びや仕事以外での地域での活動は3割程度」が17.4%で、仕事が中心の人は合計39.5%だった。
その一方で、「遊びや観光、地域での交流など、仕事以外の活動が中心で、仕事は3割程度」が10.5%、「遊びや観光、地域での交流などが中心で仕事は必要最小限」が15.8%で、観光や遊びが中心の人は合計26.3%だ。
この両者の中間は、「業務時間内は仕事中心だが、業務時間外は、積極的に遊びや観光・地域との交流を行う」が21.3%、「仕事以外の活動は、仕事と遊び・地域での活動などだいたい半々くらい」が12.9%で、合計34.2%だ。
「ワーケーション実施時の仕事内容」は、「普段、会社で行っていた仕事の一部」が50.6%、「普段、会社で行っていた仕事とまったく同じ」が40.9%となり、ワーケーションであっても仕事の内容は日常とほとんど変わらない。
ワーケーションでは「ネットワーク環境が意外とネック」との意見も
「ワーケーションの効果・感想」(複数回答可)で、ポジティブな意見としては「リフレッシュできた」が35.2%、「リラックスできた」が31.3%、「日常と異なる経験ができて刺激を受けられた」が22.0%、「自分の趣味を楽しめた」が19.0%、「家族や同行者とのコミュニケーションが取れた」が18.2%。
また、仕事の面にも良い影響があり、「実際にやることや時間のコントロールがしやすかった」が16.9%、「仕事に集中でき成果があげられた」が16.7%、「これまでと異なる環境で新たなアイディアや企画が生まれた」が13.5%。
しかし、「簡単にコミュニケーションができないのは辛い」「仕事に集中する意識の切り替えが難しい」「ネットワーク環境が意外とネック」というネガティブな感想も見られた。
勤め先のワーケーション制度、「導入されていて利用したことがある」は47.8%
「今後のワーケーション実施・導入意向」(「行きたい」と「やや行きたい」の合計)は、「あなたが行う場合」では53.0%、「あなたが行う場合(管理職以上)」では71.9%、「会社や組織に導入する場合(管理職以上)」では69.2%という結果に。全ての層で半数を超える人が再びワーケーションを行いたいと考えており、さらに管理職以上と、勤務先にワーケーションを導入したいという人が多いため、今後、広がる可能性がある。
ワーケーションは勤務先の制度に基づいて行うのが理想的だが、「勤め先でのワーケーション制度の導入状況」としては、「導入されていて利用したことがある」が47.8%でほぼ半数だったのに対し、「導入されているが利用したことがない」は17.7%、「導入されていない」は27.2%、「導入されているかわからない」は7.3%だった。そのため、ワーケーションを実施した従業員のうち44.9%は、勤務先が把握していないことになる。調査結果ではこれを「隠れワーケーター」と指摘している。
こうした結果を受けて田中教授は、企業側は「フレックスプレイス制度の導入など働く場所の自由度を高め、社員が安心してワーケーションを行うことができる仕組みを検討する必要がある」としている。