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「ワーケーション」は仕事の効率向上・ストレス軽減につながる~NTTデータ経営研究所らの実証実験結果

 株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社JTB、日本航空株式会社の3社は、慶應義塾大学教授・島津明氏の監修の下で行ったワーケーションの実証実験の結果を公表した。公私分離、仕事の効率化、ストレスの軽減についてはっきりとした向上が見られたという。

 この実証実験は、参加企業の中から18人がワーケーションを体験し、その間、活動量計と睡眠時間を測定するリストバンド型の測定器「Fitbit Charge3 HR」を装着。あわせてウェブアンケートに回答し、数値としてワーケーションの効果を測定したもの。6月19日から7月3日まで実施した。

 6月19日から6月25日まではワーケーション前の状態を測定するために、参加者は通常通り勤務。6月26日から6月28日は、カヌチャリゾート(沖縄県名護市)に滞在。6月26日は勤務日として同リゾートでテレワークで仕事を行い、6月27日・28日はワーケーションを実施、6月29日から7月3日まではワーケーション後の通常業務でワーケーションが与えた状態を測定するというスケジュールだ。

実証実験の全体のスケジュール(左)、ワーケーション実施時の1日のスケジュール(右)

 ワーケーションの環境として用意されたカヌチャリゾートでは、基本的には参加者が広い執務エリアで仕事を行う。また、自室における仕事も選択できる。なお、執務室は、参加者同士のソーシャルディスタンスの確保、マスクの着用、手洗いと消毒を行っている。

カヌチャリゾート。執務エリア(左)は人が集まるが、ソーシャルディスタンス、マスク、手洗いで新型コロナウイルス感染症の対策を行っている。宿泊部屋(中央)では1人で仕事ができる。カヌチャリゾートの周辺の写真(右)

 実証実験で得られた数値により、その効果が見えてくる。

 ワーケーションを経験したことにより、公私分離志向が高まり、初日と終了後5日目を比較するとスコアが25%伸びた。ワーケーションは公私の区分けがはっきり付かないと思われがちだが、「新しい発見」として注目すべき結果だとしている。

 仕事のパフォーマンスの向上も見られる。世界保健機関(WHO)による仕事の効率を表す指標「WHO-HPQ」が、ワーケーションの初日に20.7%上昇した。さらに、ワーケーション後も5日間にわたり効果が持続しているという。なお、この実証実験では、ワーケーション終了後、5日間で測定を終了している。そのため、6日目以降も高い数値を保っている可能性もある。

 職業性ストレスにおいても、仕事のパフォーマンスと同様の効果が見られた。初日からワーケーションの最終日の朝まで全ての指数が37.3%改善していた。こちらも、実証試験のあとも5日間、持続したという。

仕事のパフォーマンス(HPQ)はワーケーション期間に入ると急激に伸びている。さらに、ワーケーション終了後も高いパフォーマンスを持続したという
職業性ストレスのグラフ。紫の線は「活気」で、ワーケーション実施後に上昇している。ほかの線は「イライラ感」「不安感」「抑うつ感」「疲労感」「身体愁訴」の値。これらが低くなっているため、職業性ストレスは低下している

 また、ワーケーションの期間中は、活動量は2倍に増えた。これは、通常業務がテレワークで行われており、普段の運動量のほうが少ないことが原因だとしている。そのため、ワーケーションは健康にも寄与すると期待される。

 実証実験の総括として「ワーケーションが生産性や心身の健康に与えるポジティブな効果が分かった」としている。そのため、この実証実験を踏まえ、自治体や企業に対して効果実証支援を実施。データを集め、効果的なワーケーションのかたちを作っていくとしている。