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「デジタル庁」創設を機に、利用者視点のマイナンバー活用サービスの開発が不可欠
国民ニーズを十分満たした既存サービスは少ない――NTTデータ経営研究所の意識調査結果
2021年9月1日 19:45
株式会社NTTデータ経営研究所は、「多様な民間サービスでの活用促進に向けたマイナンバーカード意識調査」の結果を公表した。
調査は、NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの「NTTコム リサーチ」に登録されているモニターを対象に6月22日~24日にインターネットを用いて実施。有効回答者数は1079人。
調査結果では、マイナンバーカードの取得状況は「既に取得済み(申請中を含む、以下取得者)」が54.3%、「取得意向がなく取得していない(以下未取得者)」が32.3%、「取得意向があり取得予定」が13.3%だった。
利用したいマイナンバー活用サービス「特に無い」が最多
年齢別では20代の取得率が低く49.1%で、取得していない理由として「特に理由はない」が一番多く30.9%となっている。その一方で、20代でマイナンバーカードを取得した理由は「身分証明書として使えるから」が29.8%、「利用したいサービスがあったから」が27.5%という明確な理由がある。
NTTデータ経営研究所では「マイナンバーカードによるサービスは、他世代と比べると高い割合で20代のニーズを満たせている」としているものの、「マイナンバーカードに無関心な20代もなお多いことから、未取得者層を含めた幅広い利用者を想定したサービス開拓の余地があることを示している」という。
マイナンバーカードを活用したサービスで「利用したい既存公共(行政)サービス」(複数回答)は、「コンビニ交付サービス」が37.0%、「eTax オンライン確定申告サービス」が23.9%、「自己情報表示サービス」が12.4%、「外部サイト連携サービス」が11.5%、「公金決済サービス」が9.5%となっているものの、「特に無い」が46.3%で最も多い。
同様に「利用したい既存民間サービス」(複数回答)は、「新規銀行口座開設時の本人確認サービス」が16.7%、「スマホ決済サービス利用時の本人確認サービス」が13.7%、「新規証券口座開設時の本人確認サービス」が13.1%、「新規携帯プラン契約時の本人確認サービス」が12.7%、「住宅ローン電子契約時の本人確認サービス」が3.4%となっている。また、公共サービスと同様に「特に無い」との回答が最も多く71.5%だった。
この結果についてNTTデータ経営研究所は「国民のニーズを十分に満たした既存サービスが少ないことを示している」としている。また、「デジタル庁創設の目的の1つに掲げられている『デジタル活用により、一人一人がニーズにあったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会』の実現に向けて、今後新規サービスを開発・導入するうえで、本調査を含めた国民のニーズ調査を行うことが肝要である」と提言している。
ニーズがありそうなマイナンバー活用サービスの分野は?
「新規サービスに対する反応」としては、5つのサービスカテゴリーごとに利用意向を調査した結果、「自己情報・証明書等取得」「マイナンバーカード所持者限定」「手続き簡易化」は、全体の平均の54.1%を上回るサービスが複数あった。
具体的には、公共サービスのライフイベント関連の住民票、戸籍謄本、電子投票、免許更新時のオンライン講習、相続手続き申請、新型コロナウイルス(COVID-19)関連のPCR検査陰性証明書、診断書、航空券予約、海外渡航ビザ申請が全体の平均よりも高くなっている。
その一方で、民間資格、奨学金申請、学習教材のレコメンドなどの「教育関連」、観光パスや農業や漁業体験の「娯楽関連」、食事や運動メニューのレコメンド、複数病院の受付オンライン予約「日常生活関連」は平均を下回っている。
このような新規サービスを「利用したい」と回答した人のうち、マイナンバーカードの発行を「申請したい」と答えたのは30.3%、「申請したくない」が69.7%だった。申請したくない理由としては「なくても生活が出来るから」が48.1%、「サービス自体は良いが、個人情報の漏えいが心配だから」が34.3%、「サービスを利用出来るシーンが少ないから」が29.6%となっている。
このことからNTTデータ経営研究所では、「日常的に利用シーンがあるサービスを増やすことでマイナンバーカードの需要促進が図れる」としている。しかし、利用したいサービスがあるにも関わらず申請をしたくない理由の1つに個人情報の漏えいが心配という声がある。「民間サービスに利用範囲を拡大していく場合には、官民で連携して情報セキュリティ体制・ルールを作ることが必要」としている。