清水理史の「イニシャルB」
技適未取得機器の申請がこんなにカンタンに! マイナンバーカードさえあればスグに実験OK UDM米国版で試してみた
2020年6月15日 06:00
以前の本連載で紹介した「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」が進化し、ウェブサイトからの届出が可能になった。これで従来の郵送や窓口での届出が必要なくなり、オンラインで全て完結する仕様だ。そこで実際に「Unifi Dream Machine(UDM)」の米国版で申請をしてみた。
結果的に2台購入してしまったUDMの米国版を有効活用
ちょっとしたトラブルはあったものの申請自体は実にスムーズ。すぐに実験を開始できる環境を整えることができた――。
何のことかというと、総務省が昨年運用を開始した「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」のことだ。
本連載では、関東総合通信局へ実際に出向いて届け出を行ったレポートや、それを受け、DMM.make AKIBAでシールドルームをお借りした顛末を過去に掲載していた。ただし、従来の方法ではウェブから申請書を作成することはできたが、実際の申請は郵送または窓口での届出が必要だった。
まあ頑張れば丸1日で実験開始にこぎ着けることも不可能ではないが、郵送なら数日かかる場合もあり、少々手間がかかる印象もあった。
ところが、この制度の運用が5月27日から強化され、届出書の記入から提出と、届出内容の参照や廃止までを、全てウェブで完結できるようになったのだ。
実際に利用するには、初回のみ本人確認が必要になるため、これをクリアする必要はある。ただ、一度ユーザー登録してしまえば、後の申請は実にカンタン。ものの5分もあれば、ささっと実験開始のための準備ができてしまう。
というわけで、今回は、手元にあるUbiquiti NetworksのUDM米国版について、申請をしてみることにした。
今年の初めにAmazon.com経由で購入して、いつか本制度を使ってレビューを掲載しようとタイミングを図っているうち、既報の通り、技適取得済みの日本版が発売されて、見事に同じものをダブッて購入するに至った不運な米国版UDMだ。
底面の製品表示を見比べるとすぐに分かるが、米国版にはCEマークは当然あるものの技適マークがなく、認定番号も記載されていない。
しかしながら、ハードウェアやソフトウェアはどちらも一緒であるため、今回の制度を使って、技適なしのUDM米国版の申請を行なえば、期限内であれば、目的として記載した実験のために堂々と運用できることになる。
申請の前にマイナンバーカードなどで本人確認を実行
実際の申請の前に、まずは準備が必要だ。
初めて申請する場合は、以下のウェブページから[新規ユーザ登録」でユーザー登録をする必要があるが、筆者の場合、先行運用で申請済みだったので、簡単な移行手続きだけでIDとパスワードを発行することができた。
筆者の場合、過去に別件での申請実績があったため、11月までは本人確認の手続きをしなくても申請が可能だったが、今回はせっかくなので本人確認手続きもした上で申請を行ってみることにした。
現状は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受けた臨時措置によって、11月までは本人確認の手続を郵送で実施できるが(詳しくはこちらのウェブページを参照)、本来は2つの方法で本人確認をすることができる。
1つは対面による窓口での本人確認だ。本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証、パスポート)などを持って、住所地を管轄する総合通信局または総合通信事務所を訪問し、窓口で確認する方法となる。
そしてもう1つが、マイナンバーカードを使ったオンラインでの本人確認だ。今回はこちらで本人確認を実施した。
まずは、PCにICカードリーダー(今回は非接触タイプのソニー「PaSoRi RC-S380」を使用)を装着し、ウェブブラウザーに「マイナポータルAP」の拡張機能をインストールする。詳しくは、以下のマイナポータルのウェブページで紹介されているが、さまざまなウェブブラウザーに対応している。今回はGoogle Chromeを使った。
準備ができたら、「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」のウェブページから、本人確認を実施しよう。
電子署名をするICカードタイプで「公的個人認証サービス(マイナンバーカード)」が選択されている状態で「電子署名を行う」をクリックする。
すると、なぜか「マイナポータルAPのバージョンパップ通知」の画面が表示されてしまった。「更新」を選んでも案内が表示されるだけで、そもそも最新版がインストールされている(念のため再インストールしたが最新版だった)ので、更新のしようがない。毎回表示されるので、どこかに問題がありそうなのだが原因がよく分からないので、今回は「スキップ」することにした。
続いて、パスワードの入力画面が表示されるので、電子証明書のパスワードを入力する。
マイナンバーカードには、通常のパスワード(数字4桁)と、電子証明書のパスワード(英数字)の2つがあるが、ここで入力するのは、このうちの後者なので、間違えないように注意しよう。
これで電子証明書が読み込まれるので、名前や住所などを確認して「OK」をクリックすれば本人確認が完了する……。
と思ったら、エラーが発生してしまった。「証明書の検証に失敗しました。別の証明書を使用してください」と表示されてしまう。
10数日前に給付金の申請をマイナポータル経由で実施しているので、マイナンバーカードによる本人確認自体には問題ないはずだと、ウェブブラウザーを変えながら何度かトライしたが、全てエラーになってしまった。
試した時間が朝の6時10分前後から6時40分前後だったので、おそらく時間外で証明書の検証ができないのだろうと考え(コンビニの住民票取得サービスは6時30分からなのでできても不思議はないが……)、その日の夕方16時前後にもう一度試したところ、あっさり本人確認が成功した。
時間的な制約か、たまたまメンテナンスなどがされていたのだろう。
申請はスムーズ
ここまでの本人確認がクリアできてしまえば、後は実にカンタンだ。申請する場合は、「開設届出」をクリックして、必要な項目を入力していけばいい。各項目を見ていこう。
実験などの目的
ひな形からでも新規に入力しても、どちらでも構わない。今回は「インプレスINTERNET Watchで行うUbiquiti Networks社製UniFi Dream Machineの機能検証記事掲載のため」としておいた。
無線設備の規格(相当技術基準)
これは、どの規格の無線を使うかの選択だ。今回はWi-Fiルーターなので、「IEEE802.11a」「IEEE802.11ac」「IEEE802.11b」「IEEE802.11g」「IEEE802.11n」の各項目を選択しておいた。
なお、申請ページにも記載があるが、申請ベースなので実際に確認が行われるわけではないようだ。だが、これらの規格に対応していても、国内で使用が禁止されているチャネルや出力で利用することはできないので注意が必要だ。
無線局(使用する無線機器)とその情報
ここには、実験に使う機器の情報を入力する。底面に記載されているシリアルナンバー、機器の製造者、機器の型式または名称を入力するわけだ。
そして設置場所として住所を入力し、「屋内のみ」を選択した。移動しながら実験する場合は、移動の経路なども記載する必要があるので注意しよう。
そのほか
最後に、運用開始日と緊急連絡先を記入し、「技術基準に適合する事実の確認方法」で「無線設備本体や取扱説明書、パッケージの表示により、次の全ての内容を確認しました」を選択する。
これについては、冒頭で紹介した過去2本の記事(特に後編)を参照して欲しいが、製品によってはCEの試験結果などもチェックしなければならないので、ハードルは結構高い。
しかし、今回の米国版UDMの場合、CEの認定を取得していることはもちろんだが、技適取得済みの日本版とハードウェア構成が同じで、同じバージョンのファームウェアが搭載されていることを確認済みだ。
さらに、起動時にロケーション情報を自動的に取得し、国設定が自動的に適用されるようになっているため、日本で禁止されている5.8GHz帯が選択されたり、2.4GHz帯や5GHz帯の電波が日本よりも高いCE基準で出力されることがない点も確認できている。
このため、今回は、すでに技適認証済みの日本版と同じということで、こうした手間を省くことができた。
なお、今回は申請のみなので記載しないが、実際にこの機器の検証結果を公開するときは、特例制度を使った検証であることを記事などで明示する必要もあるので、忘れないようにしよう。
こうして全ての内容を入力後、「入力内容確認」をクリックし、内容をチェックして「送信(届出を行う)」をクリックすれば、申請は完了だ。
申請ベースなので、基本的には申請が届けば実験は可能だ。すぐに受理のメールが送られてくるので、このメールが届いた時点(もちろん申請に記入した実験開始日以降)から実験が可能になる。
思った以上にカンタン
というわけで実際に申請してみたが、やはりウェブで全て完結するのは楽だ。
従来の窓口や郵送の方式でも、申請内容を簡単に記述できるので相当に楽だと思っていたが、現在の方式は、それよりはるかに楽だ。本人確認さえクリアしてしまえば、何の苦労もなく、いくつでも申請できてしまう。
もちろん、実際に実験するとなると、出力を制限したり、チャネルを固定しなければならない場合もあるが、今回のUbiquiti製品のようにグローバルで統一されたハードウェア、ファームウェアで製造されている機器であれば、技術書とにらめっこしたり、電波暗室で初期設定をする必要もない。
本来は開発者向けの制度ではあるが、我々のような海外製品をいち早く使ってみたいユーザーにとっても、実にいい制度と言えそうだ。