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Sansan、クラウド契約業務サービス「Contract One」提供開始

日本企業のDXを進めるためには「アナログを許容したデジタル化」が必要

 Sansan株式会社は、クラウド契約業務サービス「Contract One(コントラクトワン)」を発表し、正式サービスを開始した。Sansanが独自に開発したデータ化技術を用いて、紙やPDFの契約書を正確にデータ化してオンライン上に集約。保存と管理を行う「スマート台帳」、押印や製本、郵送を代行する「スマート判子」で構成されており、契約情報のデータベース化により、紙の契約書や電子契約書など、あらゆる契約情報を一元管理できる。月額10万円(税別)から利用でき、契約書のデータ化件数により料金は変動する。2021年7月にプレローンチしており、45社が先行導入している。

 Sansan代表取締役社長兼CEOの寺田親弘氏は、「Contract Oneは、全ての形式の契約書を一元管理し、業務のDXと、リスク管理を実現することができる。紙によるアナログな媒体が多い契約業務のDXを一気に進めるといった気概を持ってサービス化した。電子契約が普及するなかで、残っていた最後のピースを埋めていく存在になりたい。プレローンチでは大きな手応えを感じている。Bill Oneに負けないスピード感で事業を立ち上げていきたい」と述べた。

Sansan株式会社代表取締役社長兼CEOの寺田親弘氏

「スマート台帳」は電子帳簿保存法にも対応、主要7項目を容易に索引

 Contract Oneは、電子帳簿保存法にも対応。Contract Oneで契約書のデータ化を行うことにより、契約書類の検索性を高めるほか、共有の効率性、契約内容の分析と改善を可能にし、法務業務からの事業貢献を実現するという。

 「Contract Oneは、修正や追加の時期も追える仕様になっており、電子帳簿保存法の真実性の担保ができる。また、Contract Oneでは主要7項目を容易に索引できるようになっており、電子帳簿保存法で必要とされる可視性についても担保できる」(Sansan Contract One Unitアシスタントゼネラルマネジャーの松尾佳亮氏)とした。

Sansan株式会社Contract One Unitアシスタントゼネラルマネジャーの松尾佳亮氏

 Contract Oneでは、正確にデータ化した契約書を、「スマート台帳」でどんなフォーマットでも一元管理。索引機能により、過去の契約書を探す必要がある場合も、契約内容や日付、契約企業名などから該当契約書や類似契約書などをすぐに見つけることができる。

「Contract One」トップ画面
「Contract One」契約書閲覧画面
「Contract One」契約書検索画面

押印・郵送といったアナログ作業を「スマート判子」が代行

 また、紙の契約書を取り交わす際には、製本や押印、郵送といったアナログな作業が発生するが、これを「スマート判子」が代行。ユーザー企業は、印鑑(印章)をContract Oneに預けることで、契約書作成に関わるアナログ作業の全てをオンライン上で指示・実行できる。さらに、取引先から契約書を受領する場合は、ユーザー企業はオンラインで契約書の受領を確認し、押印の指示をすると、Contract Oneが押印を代行して、取引先に返送する。

1つの契約業務にかかる時間が、100分以上→約11分に短縮

 契約書の形式に関わらず、契約業務をオンラインで行えるため、確認漏れや紛失のリスクを軽減。全社横断で使用できるため、法務部門を含め、社内で誰がどのような契約を結ぼうとしているのかを把握でき、社内での契約状況の確認に要する工数を削減できる。また、契約書をクラウド上で一元管理できるため、契約更新漏れや二重契約などによる追加費用の発生などのリスクを防ぐことができる。

 「全国で店舗を運営しているある企業では、大量のテナント契約を紙で管理していたが、その管理手法が統一されていなかったため、人事異動で担当者が変わった途端に複数の契約更新が漏れ、立ち退きを迫られたり、新たなテナントを探すための費用が発生したり、不要なテナントでは自動契約が行われたことで、数百万円の損失が発生した例があった。Contract Oneによって、こうしたリスクも防げる。」(松尾氏)

 さらに、高い検索性を備えているため、緊急に契約書を確認したり、新たな契約書のドラフト作成において類似契約を参照したり、契約更新のために過去の契約書を確認するといった作業が容易になるという。

 大規模から中小規模の企業まで、企業規模を問わず利用できるサービスと位置付けており、本社集約型、部門クロス型、部門完結型といったさまざまな契約業務のパターンに適用できるほか、企業のテレワークへの移行やペーパーレス化を後押しし、全ての契約書をクラウド上で管理しているため、自然災害などのリスク対応や、出社を強いること無く安全を確保した契約業務の遂行が可能になるという。

 「従来のやり方では、1つの契約業務に100分以上かかっていたが、Contract Oneを利用することで約11分に短縮できる」(松尾氏)という。

 クラウドサイン、GMOサイン、DocuSign、Adobe Sign、ジンジャーサイン、マネーフォワード クラウド契約、NINJA SIGNの主要な電子契約サービスとの連携も発表。「Contract Oneは、契約のデータ化に関わる包括的なサービスであり、現時点で明確な競合はないと考えている。主要な電子契約サービスと連携しながら、日本のDXを進めていきたい」(寺田社長兼CEO)とした。

日本企業のDXを進めるためには「アナログを許容したデジタル化」が必要

 また、寺田社長兼CEOは「Sansanでは、『出会いからイノベーションを生み出す』をミッションに掲げている。全てのビジネスは人と人の出会い、企業と企業の出会いから始まっており、このビジネスの接点である出会いに注目し、クラウド名刺管理サービスの『Sansan』を皮切りに、出会いの証である名刺をDX化する名刺作成サービスの『Sansan名刺メーカー』、企業と企業の出会いの結果である請求書に着目したクラウド請求書受領サービスの『Bill One』、ビジネスの出会いの場として重要なイベントおよびセミナーに注目した法人向けセミナー管理システムの『Seminar One』を提供している」としながら、「日本はDX後進国である。国内企業のDXを進めるためには、アナログを許容したデジタル化が必要であると考えている。急激な業務プロセスのデジタル化は自社だけでなく、周辺企業にも負担を強いることになる。Sansanが目指しているのは、周りにデジタル化を押し付けることなく、周囲の企業に左右されずに、自分たち本位でデジタル化できる仕組みである。Bill Oneはその考え方によって広がっている。Contract Oneも同様の考え方で契約書のデジタル化を進めていくことになる」とした。

 さらに、「名刺は人流、請求書は金流、契約書は商流であり、それぞれの分野でアナログをデジタル化することができる。これにより、Sansanはビジネスインフラとして認知してもらえることになる。ビジネスインフラになるための動きを加速したい」と述べた。

 なお、電子帳簿保存法の改正において一定条件をもとに2年間の猶予期間が設けられたことについては、「ビジネスへの影響は計りかねているが、2年はあっという間に過ぎると考えている。企業にはDXを進めていく必然性があり、むしろこの2年間を追い風に変えたい。だが、2年間伸びたことについては、日本のDX化を担う立場からは、申し訳なく、悔しい気持ちがある。さらなる期間延長にならないように日本のDXを支えたい」と述べた。

クラウド請求書受領サービス「Bill One」が好調、今後「インボイス制度」も追い風に

 一方、Sansanは2022年5月期第2四半期(2021年6月~11月累計)の決算を発表。売上高は前年同期比25.4%増の95億7700万円、営業利益は前年同期の6億8600億円の黒字から1億3300万円の赤字へ、経常利益は41.7%増の6億4300万円、当期純利益は47.8%増の5億7300万円となった。また、ARR(Annual Recurring Revenue:年間固定収入)は24.1%増の179億3500万円となった。

 「営業利益の減益は、中長期的な成長に向けた開発や営業における人材採用や広告宣伝活動の強化によるものであり、業績見通しに沿った想定通りの実績である。広告宣伝投資は年間35億円弱を予定している。コロナ禍によるマイナス影響は引き続きあるものの、期初公表した連結業績見通しに変更はない」(Sansan取締役兼CFOの橋本宗之氏)とした。

Sansan株式会社取締役兼CFOの橋本宗之氏

 クラウド請求書受領サービスのBill OneのMRR(Monthly Recurring Revenue:月次固定収入)は、前年同期比1131.4%増(約12倍)の6100万円、有料契約件数は前年同期比677.0%増の575件となっている。また、ネットワーク参加業者数は2万2000社に上っている。

 「Bill Oneは、企業規模を問わず、さまざまな業種業態の顧客が利用しており、サービス開始から1年半で、日本の国内企業の約1%がネットワーク参加している。まだ、広大な開拓余地が存在している」としたほか、「2022年1月からの電子帳簿保存法の改正では、電子データのままで請求書を保存することが義務付けられた。そのデータが改ざんされていないことを確認できること、日付、金額、取引先などをすぐに検索できることがデータを保存する要件として求められている。そのため、自社管理では電子保存の難易度が上がるとともに、紙を含めたデータの一元管理が困難になる。さらに、2023年10月のインボイス制度の導入後は仕入税額控除を受けるために、適格請求書の受領が必要になり、受領した企業側には適格請求書であるかどうか、必要事項が記載されているかどうか、記載された登録番号は正しいかといった確認に関する追加工数が発生する。これらの課題を解決するサービスの需要が急激に高まっていることは、Bill Oneの普及に追い風になる」と述べた。

 Bill Oneでは、2022年5月末までにARRで10億円以上、1000件の有料契約件数を目指す。

 なお、2022年5月期通期(2021年6月~2022年5月)の見通しは、売上高が前年比25.0~28.0%増の202億3000万円~207億1600万円、営業利益は38.9%減~8.6%増の4億5000万円~8億円としている。経常利益および当期純利益は黒字を見込んでいるが、現時点では精緻化が困難であることから、具体的な予想数値の開示は行っていない。