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名刺管理「Eight」のSansan、「オンライン向けイベントテック」に本格参入

参加者募集ページの自動作成機能や、QRコード・名刺を使った来場者登録など

 Sansanは、法人向けセミナー管理システム「Sansan Seminar Manager」およびイベント拡散アプリ「Eight ONAIR」を新たに発売。既存の製品と合わせて、イベントテック市場に本格参入する。

 イベントテックとは、イベントマーケティングソフトウェア、イベント管理ソフトウェア、モバイルイベントアプリなど、オンライン/オフラインを問わず、イベントを主催する際に活用するデジタルツール群で、コロナ禍において、イベントのオンライン化が進展したことで、さらに有用性が注目されている分野だ。

Sansan 代表取締役社長兼CEOの寺田親弘氏

 Sansanの寺田親弘社長兼CEOは、「Sansanは、『出会いからイノベーションを生み出す』をミッションに掲げ、クラウド名刺管理サービスのSansanや、個人向け名刺アプリのEightを開発し、市場に提供してきた。セミナーやイベントは、ビジネスにおける重要な出会いの機会であり、これを、テクノロジーを用いてアップデートしたいと考え、1年以上前から準備をしてきた。出会いの証である名刺にこだわってきたSansanだからこそ、実現できるものである」と自信をみせ、「SansanやEightに続く、もうひとつの柱としてイベントテックを成長させたい」と意欲をみせた。

 同社では、イベントテック関連サービスで、3~5年には3000社の利用を目指すという。

セミナー運用・管理「Sansan seminar manager」最短10分で簡単にウェビナー準備が可能

「Sansan seminar manager」

 今回発表した「Sansan seminar manager」は、セミナーの運用、管理に最適化した製品で、必要な機能をワンパッケージで提供。「誰でも、簡単に、最も少ないリソースで、効果的なセミナー運営の実現を支援する」(Sansan執行役員 新規事業開発室の林佑樹室長)という。

Sansan執行役員 新規事業開発室の林佑樹室長

 ZoomやYouTubeといった配信用のツールを用意するだけで、簡単にウェビナーを開催することができるのが特徴だ。

 出展者や参加者への募集ページの自動作成機能では、あらかじめデザインされたテンプレートに開催概要を入力するだけで、ノウハウがなくても、作成から公開まで最短10分で募集ページの作業が完成する。また、AIフォームでは、「会社名予測機能」と「フリードメイン判定」の2つの機能を搭載。メールアドレスのドメインから所属企業名を推定し、クリックだけで、正しい社名をフォームに入力することができる。

最短10分で募集ページが完成
AIフォーム「正しい情報をかんたんに取得する」

 2020年9月に発表した「Smart Entry by Eight オンライン名刺」を利用すれば、参加者はQRコードを撮影するだけで、自身のビジネス情報をイベントへの来場者登録に使うことができる。「無駄なフォーム入力が不要になり、入力ミスのない正確な情報を主催者は取得できる」という。

Smart Entry 対応「正しい情報をかんたんに取得する」

 さらに、リアルの会場でのオフラインセミナー向けの無人受付システムや、ウェビナー向け自動受付システムも提供。ウェビナー開催時でも、登録者の参加、不参加を正しく把握できる。

無人受付システム:オフラインセミナー向け
自動受付システム:ウェビナー向け

 「セミナー準備に複数人で3日間かかっているといったケースでも、1人が15分でセミナー準備を完了でき、空いた時間を、セミナーの中身などに工数、コストをかけることができる。ウェビナーの開催に必要なことがわからないという場合にも、誰でも簡単にウェビナーが開催できる。また、あらゆるデータやツールとの連携が可能であり、リード情報として管理したり、マーケティングに活用することで効果を最大化できる」とした。価格は、月額5万円から。

イベント拡散アプリ「Eight ONAIR」ユーザーの職業・属性に合わせたおすすめイベントを表示

Eight ONAIR

 一方、イベント拡散アプリ「Eight ONAIR」では、270万人以上のビジネスパーソンが活用する名刺アプリ「Eight」のユーザーに対して、職業や属性に合わせておすすめのイベントを表示。開催中や開催予定イベントの検索や一覧表示機能の搭載、オンライン名刺を使って、イベントにワンボタンで参加できるといった機能も搭載している。

 「イベントに参加したいと思った場合には、課題ベースで能動的にウェブを検索するか、イベントプラットフォーム上で探すか、SNSで紹介されたものに参加するなど、偶然の出会いを待つしかなく、最適なイベントに、なかなか出会うこができないという課題があった。自分の職業や属性に最適なイベントに、Eight上で出会うことができ、その場から参加することができる」とする。Eight ONAIRは、2021年に提供を開始する予定だ。

「Smart Entry」 名刺でイベントに参加登録

 2020年9月24日に発表した、名刺を使って正確で簡単にイベントへの参加登録を行うことができる「Smart Entry」もイベントテックを構成するサービスのひとつに位置づけている。

 Eightユーザーであれば、QRコードを読み込み、内容を確認すれば登録が完了。初めて利用する際でも、名刺を撮影し、認証メールを確認するだけで登録ができる。

Eightユーザーならワンタップ

 「正確なビジネスプロフィールで登録し、フォームに入力する手間がゼロで、無料で誰でもが利用できる」という。

 2020年6月に同社が開催した「Sansan Evolution Week」では、約6000人以上が参加し、Smart Entryを利用したオンライン名刺交換数が3000回以上になったという。

 Sansan取締役兼CFOの橋本宗之氏は、「Sansanは、2019年以降、イベントテックへの投資や自社開発に力を注いできた。既存サービスや出資先のサービスによって、イベントテックに関する大きなポートフォリオを構築できた」とする。

「イベントハブ」 イベントの開催前、開催中、開催後を網羅してサポート

Sansan取締役兼CFOの橋本宗之氏

 イベントテックへの投資では、セミナーやイベントの満足度調査を実施するアンケート調査のCREATIVE SURVEYに出資、イベントプラットフォームのイベントハブへの出資、セミナーやイベントの書き起こしメディアのログミーをグループ化。さらに、今年の株主総会では定款変更を行い、「イベントの企画及び実施並びに関連するサービスの提供事業」、「業務のデジタル化支援サービス提供事業」を追加し、イベントテックへの参入を準備してきた。

 Sansanが提供するイベントテックにおいて、中核サービスとなるのが「イベントハブ」である。

 イベント主催者や参加企業同士のコミュニケーションを促進し、オフラインマーケティングの効果を高めるイベント管理システムで、チケット販売や参加者の登録管理などイベント運営に必要な機能を提供。MA(マーケティングオートメーション)やSFAとの連携により、イベント後の営業活動を効果的に行える。

「eventhub」

 さらに、イベントの開催前、開催中、開催後という観点からもサービスを揃えている。

 イベント開催前には、Eightの持つ国内最大級のビジネスデータを活用し、狙いたいターゲットに対して、多様な広告戦略を展開できる「Eight Ads」、名刺とQRコードを使って、手軽で、正確にイベント参加登録ができるエントリーシステム「Smart Entry」を活用。イベント開催中には、SansanやEightで、オンライン名刺のURLを発行して、誰とでもオンライン名刺の交換が可能な環境を提供することができる。

 また、イベント開催後には、参加者の声を収集し、次回のイベント開催などに生かすことができるヒアリングツールの「CREATIVE SURVEY」、スピーチや対談、記者会見などを全文書き起こしてログ化し、イベントに参加できなかった人を含め、情報をより多くの人に届けるためのサービスである「logmi(ログミー)」を提供。

 さらに、イベント参加者の情報はクラウド名刺サービスのSansanで管理し、名刺情報を企業のデータとして蓄積。イベント終了後の営業活動やマーケティング活動に生かすことができる。「イベントや展示会の本来の意義は、営業活動やマーケティング活動につなげることであり、ここに、Sansanが、イベントテック領域において、顧客企業にもたらすことができる価値がある」と述べた。

イベントテック ポートフォリオ

 橋本氏は、「イベントテックは、日本では馴染みがない言葉だが、海外では新型コロナウイルスの感染拡大以前においても、イベントテックが活用されており、全世界で5000億円の市場規模がある。コロナ禍では、さらにオンラインイベントが増加により、イベントテックの重要度が増し、数々のイベント管理ソフトウェア企業が急成長を遂げている。だが、日本では、市場が確立されておらず空白である。対面でのコミュニケーションや懇親会を重視したり、限られたスペースのなかでコンテンツを凝縮したりといったように、日本独自のローカル性の強い文化があること、日本におけるDXの遅れが理由となっており、海外企業の参入障壁が高い。これは、日本の市場が、イベントテックの恩恵を受けることができていないともいえる」とし、「イベントの開催前、開催中、開催後において、運営の効率化、参加者の満足度の向上、効果の最大化を実現するために、テクノロジーを用いてイベント運営に関わる課題を解決するソリューションを提供する」と語る。

オンライン化によって生じる「イベント機能低下」Sansanのイベントテック参入により改善なるか

 Sansanでは、クラウド名刺管理サービス「Sansan」および個人向け名刺アプリ「Eight」を開発し、名刺管理を起点としたビジネスプラットフォームとして活用できるサービスを、国内外で提供している。

 Sansanは、2020年5月末時点では6754社が全社規模で導入し、外部のサービスと連携させる「Sansan Plus」を新たに開始。Eightは270万ユーザーが利用しているという。さらに、SansanとEightで、オンライン名刺のURLを発行して、誰とでも名刺交換が可能なサービスも提供している。

 寺田親弘社長兼CEOは、「新しい文化も、新しいビジネスも、人と人が出会わなければ生まれない。イノベーションは人と人の出会いから始まる。ビジネス領域において、出会いの場は必須である。しかし、出会いの場におけるイノベーションが必要である。出会いの証である名刺にこだわってきたSansanだからこそ、名刺を使う場所である出会いの場にイノベーションが必要だと感じる。」と前置きし、「リアルの大規模展示会では、受付のわずらわしさ、来場している人が誰が誰だかわからない、会場に行くための時間調整が難しい、限られた時間のなかで必要な情報を得られない場合があり、これは20年前と変わっていない。テクノロジーとデータの力で、出会いの場をよりよいものにしたい」とする。

 また、「コロナ禍でオンライン化は急激に進んだが、同時にたくさんの新たな課題も生まれた。参加者にとっては、どこでどんなイベントが行われているのかといった情報をキャッチアップできない、オンラインでは会った人の印象が薄く新しい出会いが生まれづらい、交流を通じた知識の共有が難しいという課題がある。主催者側では、参加者の情報を正確に取得できない、参加者をつなげるネットワーキングがうまくいかない、手間がかかった割に、成果が出づらいといった課題があり、カンファレンスを成功させることが難しくなっている。オンライン化が急激に進むと、参加者の顔が見えなくなり、イベント機能低下している。こうした課題解決のために、Sansanは、イベントテック参入した」と語る。

 そして、「今後は、多くの企業にSansanが提供するイベントテックを利用してもらい、出会いの価値の最大化を実感してもらえるように各ソリューションの開発、営業活動に注力していく。現在は個別のソリューションの集合体となっているが、統合パッケージとして提供し、イベントを支えるテクノロジーを全方位でサポートする姿を構想している。それらの取り組みのなかで、イノベーションを必要としている展示会やイベントの業界全体を、Sansanが提供するイベントテックによって進化させたい」と述べた。