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リモートワーク需要の反動でPC、タブレット需要は減少予測

JEITAが「AV&IT機器世界需要動向調査~2026年までの世界需要展望~」を発表

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、「AV&IT機器世界需要動向調査~2026年までの世界需要展望~」を発表した。同調査をまとめたレポートの表紙が黒いことから、業界内では「黒本」と呼ばれており、1991年の初版を発行して以来、今年が32回目となる。

 調査協力を行った富士キメラ総研第二部担当課長の塩原一平氏は、「2021年は、引き続き、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年であり、東京オリンピック・パラリンピックの開催、リモートワークの定着のほか、半導体の供給不足や世界的な物量費の高騰、港湾混雑などによる輸送の混乱といった要素が市場にインパクトを与えた。そのなかで、4K/8Kテレビ、スマートスピーカー、ノートPC、タブレット端末などが成長。自動車の販売が減少するなかでも、安心、安全につながるカーナビやドライブレコーダーなども成長している」とした。

 また、「今後は、5GやDX、クラウド、メタバースのほか、CASEやリモート、SDGs、カーボンニュートラルなどの動向が影響してくる。さらに、コネクテッドをキーワードにした製品の需要が増加することになるだろう。2026年にかけては、IT機器はピークアウトして減少に転じるが、フラットテレビ、4Kテレビ、スピーカーサウンドシステムは巣ごもり需要もあり、2026年までは堅調に成長する」と予測した。

富士キメラ総研第二部担当課長の塩原一平氏

 テレビでは、有機ELやMicro LED、Mini LEDによる高コントラスト化、レーザーテレビの登場が見込まれるほか、動画配信サービスや見逃し配信などのインターネット経由で取得可能なコンテンツの利用の増加や、4K/8Kに対応したコンテンツの増加によって、4K/8Kテレビの需要が促進されると述べた。

 また、IT機器では、動画配信コンテンツを視聴するために4Kディスプレイや有機ELディスプレイなどのテクノロジーが活用されるとしたほか、コネクテッドへの対応、高性能演算処理や高画質ディスプレイを生かした利活用シーンの拡大、e-Sportsやメタバース、動画配信の視聴、リモートワークやオンライン授業、オンラインミーティングの広がりが需要拡大の要素として期待できるという。

4K、8Kテレビの需要増加も、8Kコンテンツの不足が課題に

 主要な品目の世界需要動向を見てみる。

 フラットパネルテレビは、2021年の世界需要が前年比7.7%減の2億2179万7000台となった。新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、日本では2021年前半までは、ステイホーム需要や買い替え需要、東京オリンピックによる需要喚起が進んだほか、北米や西欧の一部では在宅時間の増加によって需要が高まった。

 だが、2021年後半には、先進国ではワクチン接種が進んだことで在宅時間が減少。アジア、中南米、中東、アフリカの新興国においては、ロックダウンで経済が停滞し需要が減少。さらに、世界的な半導体不足による生産減の影響で、供給停滞が顕著に見られたことで、世界全体での通期出荷は前年実績を下回った。

 今後はワクチン接種がより浸透。在宅の長時間化が解消されることや、半導体不足による生産停滞が続くことが影響し、2022年も前年比0.5%減の2億2062万8000台と微減を見込んでいる。また、日本では、2921年が前年比0.7%減の539万7000台、2022年も前年比0.7%減の535万台の市場規模を見込んでおり、これまでは2011年の地上デジタル放送移行に伴って購入したテレビの買い替え需要期にあったものの、今後はこの需要が鈍化すると見ており、微減の見通しとした。

 「ストリーミング型のインターネット動画視聴ニーズが高まると同時に、ネットワークに接続し、動画を視聴可能なテレビ以外のディスプレイが普及し、テレビの所有必須性が薄れ、テレビを買い替えない、あるいは追加で購入しないユーザーの増加が見込まれる」としたほか、「日本では、地上デジタル放送移行前は、年間900万台前後のテレビ需要があったが、若年層のテレビ離れや、動画配信サービスの利用増加、ディスプレイの多様化などにより、今後は同様の需要規模には至らないと見られる」と分析している。

 だが、4Kテレビは、ラインアップの拡充に加えて、低価格化が進展し、購入しやすくなっていること、インターネット動画配信サービスによる4Kコンテンツの視聴の普及が見込まれることから需要が増加。2021年は前年比1.8%増の1億3606万台、2026年には1億6859万台となり、4K化率は、2026年には、世界で71.0%に達すると予測した。

 また、8Kテレビは、2021年の出荷実績が全世界で前年比18.4%増の72万台となり、今後、平均成長率は69.0%増となり、2026年には993万台と予測。8Kテレビの製品の拡充や認知が向上したことにより需要が増加すると見込んでいる。だが、8Kコンテンツの不足は今後の課題になると指摘した。

 日本におけるケーブルテレビ用セットトップボックスは、2021年はケーブルテレビ事業者のユーザー獲得活動の再開、東京オリンピック・パラリンピックの観戦を目的にした4K視聴ニーズの高まり、外出自粛による家庭内での映像鑑賞需要が高まったことで需要が増加。今後も新規ケーブルテレビ契約者向けの需要に加え、ケーブル4K採用局数の拡大、セキュリティ機能を強化したACAS方式に対応したSTBへの買い替えなどの需要を想定。2021年は前年比10.0%増の77万台、2026年は79万台になると予測している。

 BDレコーダー/プレーヤーは、インターネット動画配信サービスの普及によって、世界的に需要の減少が進行。また、2021年は東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてBDレコーダーの需要増加が期待されたが、結果的には限定的な需要増加に留まったという。

 その結果、2021年には前年比8.1%減の3041万台に留まり、さらに、2026年までの年平均成長率は15.5%減とマイナスで推移。2026年には1313万台に縮小するという。4K対応BDプレーヤーは4.1%増で推移するが、2026年でも341万台と市場規模は小さい。

 日本における4K対応BDレコーダーは2021年には前年比18%増の59万台、2026年には70万台と予測。国内BDレコーダーの4K比率は2021年の38.2%から、2026年には56.0%になるとしている。

 DVDは、2021年には前年比15.5%減の2446万台だったものが、年平均成長率は20.3%減で推移。2026年には789万台に減少する。世界的な動画配信サービス普及の影響でDVDプレーヤー自体の需要が減少。BDプレーヤーへの需要のシフトにより、DVDの世界需要は大幅な減少が続くという。

 デジタルビデオカメラは、世界的な需要飽和のトレンドは変わらず、スマホやデジカメなどに置き換わり、市場は縮小傾向が続いている。2021年は前年比4.5%減の438万台だったものが、2026年には382万台に減少すると見ている。

 スピーカーサウンドシステムは、2022年には半導体不足による生産調整や製品の供給不安定などのマイナス要因があるが、世界的な経済の回復や新興国での需要が増加。さらにスマートスピーカーの需要増加が見込まれるという。2021年には前年比8.9%増の1億6727万台だったものが、年平均成長率は5.6%増となり、2026年には2億1927万台に達する。なかでも、スマートスピーカーの需要が増加。2021年でも84.3%を占めており、2026年には89.1%を占めると予測している。

PC関連はリモートワーク、GIGAスクール構想の需要があるも今後減少の予測

 PCの2021年の世界需要は、前年比8.3%増の3億700万台。そのうちノートPCは14.9%増の2億2700万台、デスクトップPCは7.0%減の8000万台となった。

 半導体や液晶パネルの供給不足が一部で見られたが、新型コロナウイルスの影響で広がったリモートワーク向けに、ノートPCの需要が大幅に増加したことが前年実績を上回る結果となった。また、リモートワーク関連の需要は一定程度続くが、今後は反動が見られ需要減少に転じると予測。2022年の世界需要は前年比5.7%減の2億8950万台となると見ている。

 日本では、リモートワーク向けのノートPCの需要喚起や、GIGAスクール構想関連需要が見られたが、全体としては減少し、2021年は、前年比23.4%減の1110万台となった。2022年も需要の減少傾向が続き、前年比16.2%減の930万台になる予測。この需要減少傾向は、2023年まで続く見通しとした。だが、2024年から2026年にかけては、2025年のWindows 10のサポート終了にあわせて買い替え需要の増加や、2020年から2021年にかけて発生したリモートワーク向け需要の買い替えサイクルを主な要因として、需要は微増傾向に転じると予測している。

 タブレット端末は、スマホや2in1ノートPCとの競合により、需要減少が続いていたが、リモートワーク普及による需要喚起により、2020年は需要が増加に転じ、2021年も需要は増加。2021年実績は全世界で1億8200万台となった。だが、今後は、年平均成長率は7.7%減となり、2026年は1億2200万台に減少すると予測した。

 生徒1人1台のデバイス整備を行ったGIGAスクール構想の影響についても説明。「GIGAスクール構想では、日本の小中学生約950万人に、1人1台を配備するものであり、2019年末までにすでに導入されていたIT端末を考慮すると、GIGAスクール構想では新たに760万台の需要が発生。その多くが2020年9月~12月にかけて集中的に配備された」とし、ノートPCでは2020年に350万台、2021年に100万台の合計450万台、タブレットでは2020年に250万台、2021年に60万台の合計310万台が整備されたと見ている。

 「GIGAスクール構想で整備されたPCの今後のリプレース需要は、予算や財源が決定しているわけではないため、特定の時期に集中したリプレースは起きないと考えている。2024年以降は緩やかにリプレースが発生する見込みである。また、高校における1人1台の環境整備に向けた動きが加速している。だが、これも財源が未定の部分もあり、徐々に進んでいくことになる」と述べた。

カーナビ、ドラレコは自動車販売数の回復に伴い増加も、カーオーディオは減少予想

 カーナビゲーションシステムは、半導体不足などの影響により自動車販売台数の回復が遅れたことから、小幅な伸びに留まり、2021年は全世界で1.3%増の3421万台となったが、自動車販売台数の回復もあり、2026年には3894万台に増加するとみている。また、IVIシステムは、ADAS機能搭載車の需要拡大に伴って堅調に市場が拡大し、カーナビゲーションシステム全体に占める割合は、2026年には49.6%を占めると予測している。

 それに対して、カーオーディオ市場は、自動車販売台数が低調に推移したこと、そのなかでIVIシステムの搭載が拡大したことによって減少。2021年は前年比4.1%減の6781万台となり、2026年には6546万台になると予測した。

 また、ドライブレコーダーは、2020年は自動車販売台数の急激な落ち込みによってマイナスとなったが、自動車販売台数の回復や、事故時の状況保存ツールとしての認知度の向上、セキュリティ対策などのアフターマーケットを中心に、全世界で搭載率が拡大しており、高い伸長率が期待されるとした。2021年は14.1%増の2659万台の市場規模が、年平均成長率は11.3%増で推移。2026年には4535万台に達すると予測している。