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フリーランスが「最も収入が得られる仕事獲得経路」として「エージェントサービス」が増加、「人脈」は減少~コロナ禍で
フリーランス協会が「フリーランス白書2022」発表
2022年3月30日 11:00
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(フリーランス協会)は3月29日、フリーランスの仕事に対する意識や実態などを調査した「フリーランス白書2022」を公開するとともに、都内およびオンラインにて記者発表会を開催した。
同白書は、オンラインアンケートによる調査結果を取りまとめたもので、調査期間は2021年11月30日~12月27日。回答完了数は1254人(うちフリーランス/パラレルキャリア活動者は1236人)。回答数上位5職種の属性は、クリエイティブ・ウェブ・フォト系(20.2%)、エンジニア・技術開発系(17.2%)、通訳翻訳系(11.1%)、出版・メディア系(9.5%)、コンサルティング系(8.6%)で、就業形態については個人事業主が回答者の76.6%を占めている。
コロナ禍で人との出会いが減少、「エージェントサービス」の利用者が増加
同白書の今年の特徴としては、「最も収入が得られる仕事獲得経路」において「エージェントサービスの利用」と回答した人が、コロナ禍前の「白書2020」では7.7%だったのに対して、「白書2022」では14.0%と増えたこと、その一方で「人脈(知人の紹介含む)」と回答した人は、「白書2020」の46.1%から、「白書2022」では32.9%へと減ったことが挙げられる。その背景として、今回の調査では、コロナ禍により人と出会う機会が減り、知人から仕事を依頼されることが減り、その代替手段としてエージェントサービスを利用したという声があったという。
「今の働き方に対する満足度」については、全体的には「満足」と回答した人が多いものの、「白書2020」に比べるとその割合は下がっている。特に下落幅が大きいのが「収入」と「多様性に富んだ人脈形成」の2項目で、コロナ禍の影響が現れていることが分かった。なお、「コロナ禍が今年度事業収益に与える影響」については、収益が「減少見込み」と回答した人が、前回の「白書2021」の55.0%に比べ、「白書2022」では36.7%と減った。
経理の「電子化」が進むも、依然として「書面での契約」が多い実態
今回の白書では、経理・法務の電子化への対応に関する調査も行われた。まず、業務の記帳に使用している方法(複数回答)については、「クラウド会計サービス」と回答した人が60.6%、「エクセルやワードなどの電子媒体」が34.1%、「インストール型会計経理ソフト」が13.4%、「紙」が12.9%、「税理士に任せる」が11.0%となっており、デジタルでの記帳を行っている人が多いことが分かった。
続いて「契約の方法」については、「紙、書面」と回答した人が59.2%、「電子メール」が49.4%、「電子契約サービス」が41.3%、「電子媒体(エクセル・ワード・PDF等)」が24.6%、「口頭」が14.0%、「SNS」が7.8%となっており、依然として書面での契約が多いものの、電子メールや電子契約で行っている人も多いことが分かった。
また、「電子化に対する歓迎の割合」については、「請求書をメールで送ること」について「とても歓迎」「どちらかというと歓迎」と回答した人が合計で88.8%に上るなど、歓迎する人が多いことが分かった。
さらに今回は「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」への対応について、適格請求書発行事業者登録の検討状況の調査も行った。「あなたは現在どのように対応しようとお考えですか」という質問に対して、「登録事業者になると決めている(すでになった)」が7.0%、「登録事業者になる方向で検討している」が29.7%、「業種は該当している(B to B取引)が、なるつもりはない」が11.8%、「業種が該当していない(B to C取引のみ)」が8.3%だった。
6割以上が、メインの仕事以外の「マイプロジェクト」を実行
このほか、仕事の選び方に対する意識の調査も行われた。「仕事選択時の重視度」の順番については、全体では「自由度」を1位にした人が29.0%、「収益」を1位にした人が26.5%、「スキル」を1位にした人が24.8%だった。職種別に見ると、クリエイティブ・ウェブ・フォト系および出版・メディア系では「自由度」、エンジニア・技術開発系は「収益」、通訳・翻訳系およびコンサルティング系は「スキル」が1位だった。
また、「メインの収入源となっている仕事以外に、金銭的対価を目的とせず、自らの創作活動、スキルアップ目的とした活動(マイプロジェクト)をしていますか」という質問に対しては、「している」と回答した人が全体の61.5%、「していない」が32.4%だった。
さらに、マイプロジェクトのメリットの有無については、「経験値があがった」の項目で85.1%、「スキルアップにつながった」では73.8%、「人から感謝された」では60.7%、「人脈が広がった」では55.1%、「収入があがった」では30.5%の人が「あった」と回答した。なお、メリットが「なかった」と回答した人が「あった」を上回ったのは「収入」の項目のみで、「なかった」と回答したのは31.7%だった。
フリーランスの「メリット」「課題」とは?
記者発表会では、白書に関する説明のあと、ウェブエンジニアやライター/スモールビジネス支援アドバイザー、ミュージシャン、フードデリバリー配達員、新規事業コンサルタントなどさまざまな職種のフリーランス事業者によるパネルトークも行われた。このトークでは、パネリストがそれぞれの立場からフリーランスのメリットや課題などについて意見を述べた。
「フリーランスのメリット」としては、「会社の都合に合わせる必要がなく、自分の好きなことに特化して仕事ができる」「自己研鑽の時間を持てる」「就業時間など自分で働き方を決められる」「サラリーマンのときよりも時間が自由になるため、家族や趣味のために時間を使える」「新規事業の純度を上げて量をこなすことができる」といった声が聞かれた。
また、「フリーランスの課題」としては、「健康保険の金額が高い」「個人になると入ってくる情報量が少なくなる」「個人事業主は交渉力が弱い」「収入が安定しない」といったものが挙げられた。
フリーランス協会では今回、「フリーランス白書2022」に加えて、フードデリバリー配達員の稼働状況や満足度について調査した「フードデリバリー配達員実態調査」の結果も発表している(別記事『「フードデリバリー配達員」1万人以上の実態調査、平均稼働時間や収入・満足度などの状況を報告~フリーランス協会』参照)。「フリーランス白書2022(全文)」および「フリーランスの最新実態調査 自由回答(全件)」、「フードデリバリー配達員実態調査 自由回答(全件)」のPDFファイルが、同協会のウェブサイトよりダウンロードできる。