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エプソン、A3対応カラーインクジェット複合機「LM」シリーズを発表、CO2排出量低減など環境性能をアピール
スマートチャージ対応、レーザー方式からの置き換えを狙う
2022年11月18日 15:30
セイコーエプソン株式会社とエプソン販売株式会社は11月17日、毎分40~60枚の印刷が可能なA3カラーインクジェット複合機「LMシリーズ」を2023年2月上旬より発売する。プリントやコピーの使用状況に合わせてプランや機器が選べる法人向けサービス「スマートチャージ」の製品で、基本使用料は機器代、インク代、保守などを含んだ「オール・イン・ワンプラン」で月額3万5000円から。
2026年を目標にプリンター本体をインクジェット方式に全面切り替え
11月17日に行われた発表会では、新製品の発表とともに、脱炭素の取り組みとして2026年を目標にプリンター本体をインクジェット方式に全面切り替えし、レーザープリンターの販売を2026年に終了することが発表された。
インク吐出に熱を使わない同社独自のインクジェット技術「Heat-Free Technology」により、レーザー式のように大きく発熱するところがなくなり、低消費電力でエネルギーとコスト削減、消耗品の省資源化による環境負荷の低減など、環境性能が改善されると說明。レーザープリンタからの置き換えにより、CO2排出量を47%以上削減できるとした。
CO2削減だけでなく、メンテナンス軽減や印刷品質アップも実現
続いて、セイコーエプソンの山田陽一氏(プリンティングソリューション事業本部 Pオフィス・ホーム事業 事業部長)から、LMシリーズの特徴の説明が行われた。
LMシリーズは印刷速度の違いで3機種ある。40枚/分の「LM-C4000」(オール・イン・ワンプランの月額基本使用料金3万5000円)、50枚/分の「LM-C5000」(同4万1000円)、60枚/分の「LM-C6000」(同4万7000円)で、それぞれに、増設の給紙ユニットやステープルフィニッシャーなどのオプションを必要に応じ組み合わせる。
LMシリーズは、印刷スピードが毎分40~60枚という、A3複合機の売れ筋のゾーンに初投入された製品。競合他社の複合機はレーザー式で、このクラスのインクジェット方式の製品は、現在のところLMシリーズだけとしている。
CO2削減については、毎分40枚印刷の同クラスのレーザー式に対して、LMシリーズは66~62%の削減になるという。
さらに、環境負荷低減のためとして、インク供給方式を従来の加圧供給から、加圧しないシンプルな構造による水頭供給に変更し、環境性能と保守性を向上させた。また、操作パネルに消費電力を表示させ、環境によい使い方にリーフマークを表示するなどした。
インクジェット方式によるシンプル構造のため、レーザー式のような定期交換部品点数が少なく、メンテナンスの手間と時間を削減できるという。また、レーザー式のように熱を使わないため立ち上がりが速くなり、1枚目の印刷が早く行えるという。
インクジェットプリンターでは、プリントヘッドの状態も印刷品質に影響を与えるが、インク循環システムによってインク内の気泡を排出し、プリントヘッドを保湿して印刷に最適な状態を維持する保湿液循環キャップシステムを採用した。また、LMシリーズが採用したヘッドが左右に動かないラインインクジェットプリンターでは、交換部品も少なくダウンタイムを低減し、サービスマンの手間を削減できるとしている。
採用している水性顔料インクは、レーザープリンターのブラックトナーと同様に退色への耐性に優れ、カラーインクもほぼ同様だという。さらに、インクは用紙に浸透するため、折ったりこすったりしても剥がれずこともなく、文書の改ざん防止の点でメリットがあるとした。
学校向けのアカデミックプランにも注力
発表会では、営業戦略についても説明された。
一般に、業務用のコピー機や複合機の導入は法人が主となり、保守の必要な機器なので、本体をリースとし、印刷枚数に応じた金額を支払うことで、その金額にメンテナンスやトナー(インク)の代金まで含まれる契約をすることが多い。
エプソン販売では「スマートチャージ」のなかで「オール・イン・ワンプラン」というプランをセールスの主力としている。これは、機器使用料と規定枚数までの印刷のほか、インクの自動配送、出張メンテナンスまでを含んだサービスだ。このほかに、学校向けのアカデミックプランも強く打ち出している。
アカデミックプランでは、今回発表のLMシリーズではなく、さらに高速で毎分100枚の印刷が可能なLXシリーズを導入することが多くなるという。基本的にはオール・イン・ワンプランに近いもとのなるが、一般的に金額が高くなるカラー印刷を我慢せず使えるよう、規定枚数まではカラーでもモノクロでも料金を同一としている。
学校は予算がありコスト面からカラー印刷を控える傾向にあったが、アカデミックプランによってカラー印刷が増えれば、教育の質向上につながることが期待できる。実際に、以前は予算面からカラー印刷比率がわずか3%だった学校も、アカデミックプランを導入後、直近では52%にまで跳ね上がり、喜ばれているというエピソードも紹介された。
また、アカデミックプランで導入されるLXシリーズは、毎分100枚の高速印刷性能が学校の現場に合っているという。
学校では短い休み時間に復数の教師が集中してプリントを印刷することが多く、高速印刷性能が求められる。レーザー式では機器が温まるまでの時間がかかり、最初の1枚目の印刷までも時間がかかる。また、学校にはプリント印刷用に孔版印刷機を導入しているところも多いが、印刷そのものは高速でも、版を作るため、1枚目の印刷までには、やはり時間がかかる。休み時間に先生がプリントする、という利用シーンを考えれば、高速なインクジェット機がニーズに合致しているとした。
「インクジェットへの置き換え」は、ハードルの低い環境への取り組み
続いて、営業の取り組みとしては、「インクジェット方式を採用することで、オフィスの環境負荷を低減させられる」ことを広めていくとした。
環境負荷低減の取り組みというと、車を買い替えたり、CO2を減らす照明に交換したりとコストがかかる内容が多い。しかし、リースが主体のプリンターの入れ替えでは、インクジェット機に入れ替えるだけで過度な投資をせず、場合によっては生産性が上がることもあるという。
そこで、エプソン販売では、買い替えの際に役立つよう、出力環境アセスメントとして、オフィスの出力環境やプリンターにおけるCO2排出量の見える化提案を加速、複合機やプリンターなどの出力機器からデータを収集し、最適配置を提案する。
さらに、パートナーとしてキャプラン株式会社と協業、キャプランの「CO2排出用可視化BPOサービス」と「出力環境アセスメントサービス」を組み合わせ、インクジェット式への切り替えによる排出量削減のシミュレーション結果とともに最適な印刷環境を提案し、CO2削減を支援するという。