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7割以上の企業が「インボイス制度への対応準備に6カ月以上」~日本CFO協会/マネーフォワード調査

 株式会社マネーフォワードは12月5日、「インボイス制度・電子帳簿保存法に関するアンケート調査」の結果を発表した。9割以上の企業がインボイス制度を知っているが、明確な対応方針が決まっているのは約半分で、7割以上の企業が対応準備のため6カ月以上かかると想定していることなどが分かった。

 アンケートは9月1日~20日、インターネットにて実施。調査実施は一般社団法人日本CFO協会で、調査協力はマネーフォワード。調査対象は日本CFO協会会員を主体とした日本企業の経理/財務幹部で、有効回答数は464人、そのうち451人が法人事業会社の回答数。

インボイス制度への対応準備、多くの企業が2023年春ごろまでに開始か

 まず、法人事業会社を対象に「インボイス制度について知っていますか?」との質問をしたところ、「知っている」が69.0%、「少し知っている」が26.8%、「あまり知らない」が3.8%、「知らない」が0.4%だった。「知っている」「少し知っている」を合わせると95.8%だ。

「インボイス制度について知っていますか?」

 このように95.8%人が知っているインボイス制度だが、「インボイス制度への対応は行っていますか?(行いましたか?)」と尋ねると、「行っている(行った)」が31.5%、「少し行っている(行った)」が45.7%、「あまり行っていない」が16.2%、「行っていない」が6.7%だった。

「インボイス制度への対応は行っていますか?(行いましたか?)」

 「インボイス制度の適格請求書受領や送付に伴う保存要件に対して、どのような対応をする予定ですか?」と質問すると、「特に何もしない(既に保存要件を満たす仕組みがある、ないしは要件を満たすSaaSを利用している)」が10.8%、「既に対応を始めている(対応を終えている)」が19.7%、「対応する必要性を感じていて、明確な方針が決まっている」が15.9%、「対応する必要性は感じているが、まだ明確な対応方針が決まっていない」が53.6%だった。

「インボイス制度の適格請求書受領や送付に伴う保存要件に対して、どのような対応をする予定でいますか?」

 先の質問で「既に対応を始めている(対応を終えている)」または「対応する必要性を感じていて、明確な方針が決まっている」の回答者を対象に、「インボイス制度の適格請求書受領や送付に伴う保存要件に対応する必要性を感じていて、明確な方針が決まっている、あるいは対応を始めている場合、具体的にどのような対応をしている、あるいはする予定ですか?」と質問。回答は「自社内の仕組みで対応する」が53.8%、「クラウドサービス(SaaS)を導入する」が29.6%、「手作業で対応するための準備をしている」が7.5%、「その他」が9.1%だった。

「インボイス制度の適格請求書受領や送付に伴う保存要件に対応する必要性を感じていて、明確な方針が決まっている、あるいは対応を始めている場合、具体的にどのような対応をしている、あるいはする予定ですか?」

 「インボイス制度に対応することは大変だと感じますか?」と尋ねたところ、「大変だと思う」が58.9%、「少し大変だと思う」が32.4%、「どちらともいえない」が6.3%、「少し大変だと思う」が1.6%、「大変だと思わない」が0.8%だった。

「インボイス制度に対応することは大変だと感じますか?」

 インボイス制度に対応する際、大変だったことは具体的にどのようなことだろうか。「各領域について、具体的に大変だと思うことは何ですか?」(複数回答)という質問に対しては、「紙と電子の請求書の混在(業務プロセス対応)」「インボイス制度対応における業務フローの変更(業務プロセス対応)」「取引先が適格事業者であるかの確認」「受領した適格請求書の記載要件の確認」「紙と電子の請求書の混在(システム対応)」といった回答が上位に挙がっている。

「各領域について、具体的に大変だと思うことは何ですか?」(複数回答)

 「インボイス制度への対応準備にどのくらいの期間がかかると想定していますか?(あるいは、かかりましたか?)」との質問では、「1年以上」が26.1%、「6カ月以上~1年未満」が51.4%、「3カ月~6カ月程度」が14.6%、「1カ月~3カ月程度」が6.3%、「1カ月未満」が1.6%という結果に。合わせて7割以上が6カ月以上かかるとしていることから、2023年10月のインボイス制度の施行に向け、2023年春ごろまでに対応準備を開始する企業が多いことが予測されるとしている。

「インボイス制度への対応準備にどのくらいの期間がかかると想定していますか?(あるいは、かかりましたか?)」

 「取引先が適格請求書発行事業者ではない場合、どのような対応をする予定でいますか?」との質問には、「特に何もしない」が20.7%、「取引先(免税事業者)に適格請求書発行事業者になるように変更を依頼する」が24.1%、「取引先(免税事業者)を適格請求書発行事業者に変更する」が3.4%、「未定」が51.7%だった。

「取引先が適格請求書発行事業者ではない場合、どのような対応をする予定でいますか?」

7割の企業が「インボイス制度開始にあたって、電子請求書を増やしたい」

 「請求書の発行に関して、電子で発行しているのは全体の何割程度ですか?」の質問では、「8割以上」が23.6%、「4割から7割」が19.5%、「3割以下」が56.9%。一方、「請求書の受領に関して、電子で受領しているのは全体の何割程度ですか?」と尋ねると、「8割以上」が8.8%、「4割から7割」が28.3%、「3割以下」が62.9%だった。

「請求書の発行に関して、電子で発行しているのは全体の何割程度ですか?」
「請求書の受領に関して、電子で受領しているのは全体の何割程度ですか?」

 また、請求書の電子化について「インボイス制度開始にあたって、電子の割合を増やしていきたいと思いますか?」との質問に対しては、「はい」が70.6%、「いいえ」が3.6%、「どちらともいえない」が25.7%だった。

「インボイス制度開始にあたって、電子の割合を増やしていきたいと思いますか?」

 「電子の割合を増やしたい理由を教えてください」(複数回答)と尋ねると、「すべて電子で一元管理していきたいから」が37.9%、「紙と電子の混在の対応が難しいから」が36.6%、「インボイス制度により管理が複雑になるから」が30.9%、「テレワークで対応したいから」が27.3%などと続いている。

「電子の割合を増やしたい理由を教えてください」(複数回答)

改正電帳法の電子取引への対応、すでに対策/対応方法を決定している企業は半数未満

 改正電帳法は2022年1月1日に施行されたが、電子化された書類の保存や紙の書類を電子化するためのシステムの導入が進んでいないことから、2年間の猶予期間が設けられた。しかし、改正電帳法に対応している、または対応する予定の法人は半分に過ぎない。

 「電帳法が改正され、電子取引で発行された請求書などは、電子で保管することが義務付けられたことを知っていますか?」との質問では、「知っている」が85.0%、「だいたい知っている」が13.5%、「あまり知らない」が1.3%、「知らない」が0.3%だった。

「電帳法が改正され、電子取引で発行された請求書などは、電子で保管することが義務付けられたことを知っていますか?」

 「電子取引の対応について、すでに対策や対応方法を決定していますか?」との質問では、「決定している」が46.7%、「これから決める予定」が48.2%、「決定していない」が4.6%、「今後も対応しない予定」が0.5%だった。

「電子取引の対応について、すでに対策や対応方法を決定していますか?」

 「電帳法の改正を受けて、クラウドサービスの導入を検討しましたか?」との質問には、「はい」が68.0%、「いいえ」が32.0%だった。

「電帳法の改正を受けて、クラウドサービスの導入を検討しましたか?」

 「電帳法に対応することは大変だと感じますか?」のと質問では、「大変だと思う」が69.0%、「少し大変だと思う」が23.9%、「どちらともいえない」が4.3%、「あまり大変だと思わない」が1.8%、「大変だと思わない」が1.0%だった。「大変だと思う」「少し大変だと思う」を合わせると92.9%に上る。

「電帳法に対応することは大変だと感じますか?」

 このように電帳法への対応は負担に感じている企業が多いが、「電帳法の対応で具体的に大変だと感じることを教えてください」(複数回答)と具体的な理由を尋ねている。「電子帳簿保存法の要件に対応した業務フローの変更」が72.8%、「業務フローの変更による従業員への理解促進」が68.3%、「紙と電子の証憑の混在」が66.2%などと続いている。

「電帳法の対応で具体的に大変だと感じることを教えてください」(複数回答)