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freee、消費税申告がスマホから行える「消費税申告ライト」提供へ

簡易課税と2割特例に対応、“初めての消費税申告”に臨む個人事業主向けに

消費税の申告が4ステップで行える新機能「消費税申告ライト」

 freee株式会社は11月21日、スマートフォンでも消費税申告が行える機能「消費税申告ライト」を今冬にリリースすると発表した。インボイス制度(適格請求書等保存方式)をきっかけに消費税の免税事業者から課税事業者に転換して“初めての消費税申告”を行なうことになる個人事業主を想定した新機能だ。

 利用料金は、「freee会計」の個人事業者版の「スタンダードプラン」と「プレミアム」のユーザーは無料。なお、2024年3月31日までは「スタータープラン」でも無料で利用できる。

消費税の申告書が4ステップで作成できる

 11月21日にオンラインで開催された記者発表会では、freeeの清遠真雪氏(個人事業戦略部プロダクトマネージャー)による消費税申告ライトのデモンストレーションが行われた。

freee株式会社の清遠真雪氏(個人事業戦略部プロダクトマネージャー)

 消費税申告ライトの特徴として「スマホ対応!4ステップの親切設計」「インボイス制度にも対応で安心」「税理士によるわかりやすい解説動画付き」の3点を挙げている。

 従来より法人向けに提供している「freee申告」にも同様の機能があるが、「消費税申告ライトはあえて機能を絞っている」(清遠氏)としている。

 消費税申告ライトは「簡易課税」と「2割特例」に対応。4ステップで申告書類が提出できる。具体的には、1)氏名や納税地などの「基本情報の入力」、2)売上や経費などの「申告内容の入力」、3)「申告内容の確認」、4)「申告書類の提出」――の4ステップで完了する。

 また、分からない用語などを税理士が動画で説明する「解説動画」が用意されている。

金額などを入力すると、スマートフォンにて申告書のイメージが確認できる
分からない用語などを税理士が解説する「解説動画」が用意されている

免税事業者から課税事業者への転換の判断軸とは?

 freeeの高木悟氏(プロダクトマネージャー公認会計士/税理士)は、インボイス制度のおさらいと、アンケート結果を報告した。

freee株式会社の高木悟氏(プロダクトマネージャー公認会計士/税理士)

 インボイス制度の目的は、「取引の正確な消費税率と消費税額を把握すること」にある。2019年10月に消費税の軽減税率が導入されたため、請求書には消費税率が10%と8%の商品が混在している。定められた様式に沿った「適格請求書」(インボイス)を導入することで、消費税率と消費税額が正しく把握できるようになる。

 また、売上に対する消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引く「仕入税額控除」を適用するときには、売り手(仕入先)が発行する適格請求書が必要となる。この適格請求書は、税務署長に登録申請し「適格請求書発行事業者」として登録を受けた事業者だけが発行でき、消費税の課税事業者となる。

インボイス制度のイメージ。仕入税額控除をするためには、仕入先から適格請求書(インボイス)を受領しなければならない

 このようなインボイス制度だが、「必ずしも全ての方が課税事業者に転換するというわけではない」(高木氏)としている。大きく分けると、顧客が個人の場合は免税事業者、法人の場合は課税事業者を選択することが適切だという。

 免税事業者が適切な例として、美容師や学習塾を挙げている。その一方で、接待で利用されることが多い飲食店や個人タクシーなどは課税事業者に転換するのが適切だ。

 顧客が法人の場合は、課税事業者に転換する方がいいという。建設業や製造業は、免税事業者のままだと、取引の排除や値下げを強いられることも考えられるためだ。

免税事業者から課税事業者への転換の判断軸

 フリーランスの場合は「仕事減少リスク」が判断材料となる。免税事業者のままで適格請求書を発行しない場合、買い手が仕入税額控除を受けられなくなるため、仕事が減る原因の1つになる。

 適格請求書を発行しなくても仕事が減少するリスクが低い職種としてYouTuberなどの動画配信者が挙げられており、以下、生徒が個人のヨガの先生、個展が中心の画家、企業案件が多いインフルエンサー、法人取引が多いクリエイター、企業との取引が中心のデザイナーの順に、仕事が減少するリスクが高くなるという。

フリーランスの対応例

インボイス登録したのに「自身が課税事業者との自覚なし」が2割

 また、freeeは個人事業主を対象に消費税申告に関する意識調査を実施し、その結果を公表した。調査期間は11月1日~4日で、インターネットを用いて20代~50代の自営業者を対象に行った。有効回答数は877人。

 「インボイス発行事業者に登録しましたか?」の質問には、「登録した」が24.4%、「年内に登録予定」が2.8%、「登録の時期や要否を迷っている」が20.3%、「登録しておらず、今後も登録するつもりはない」が24.7%、「インボイス制度が何か分からない」が8.5%、「その他(全く検討していない、答えたくない等)」が19.1%だった。

「インボイス発行事業者に登録しましたか?」

 インボイス登録事業者および年内登録予定事業者を対象に「インボイス発行事業者に登録した(登録を予定している)理由は?」(複数回答)との質問には、「取引先から登録を求められたから」が99人、「国の制度だから」が57人、「取引相手が法人(課税事業者)中心で、登録した方が有利だから」が55人、「今やらなくてもいずれ対応が必要になると思ったから」が51人、「フリーランス仲間や同業者等で登録している人が多いから」が23人、「その他/答えたくない」が17人だった。

「インボイス発行事業者に登録した(登録を予定している)理由は?」(複数回答)

 「インボイス制度について、参考にした情報収集先を教えてください」(複数回答)との質問では、「WEB上のニュース記事やブログ記事」が209人、「知人や経営者仲間から聞いた情報」が201人、「テレビ、新聞、雑誌等のマスメディア」が171人、「税理士等の専門家」が155人、「YouTube等のSNSインフルエンサーの発信情報」が150人と続き、「特にインボイス制度の収集は行っていない」が255人だった。

「インボイス制度について、参考にした情報収集先を教えてください」(複数回答)

 「あなたは消費税の課税事業者ですか?」との質問では、「課税事業者」が31.9%、「免税事業者」が37.4%、「自分が課税事業者か分からない」が30.6%だった。

 なお、インボイス発行事業者に登録した事業者のうち、課税事業者と回答したのは77.6%で、免税事業者との回答が9.8%、分からないとの回答が12.6%となっている。すでに登録を終えた事業者のうち22.4%が、自身が課税事業者である自覚がないことが分かったと指摘している。

「あなたは消費税の課税事業者ですか?」

 さらに、インボイス登録事業者または、年内に登録する予定の事業者を対象に「あなたは消費税の申告方法についてどの程度理解していますか?」と質問している。「実際に行ったことがある」が33.4%、「行ったことはないが、申告方法や制度を理解している」が19.6%、「制度があることは知っているが、申請方法等はよく知らない」が36.4%、「『消費税申告』が何か分からない/全く知らない」が10.4%だった。

「あなたは消費税の申告方法についてどの程度理解していますか?」

 「インボイス制度および消費税申告に関する制度等のうち、あなたが内容を理解しているものをお選びください」(複数回答)との質問では、「インボイス発行事業者に登録するには税務署に申請が必要である」が58.3%、「インボイスを発行する為には消費税の課税事業者になる必要がある」が46.0%、「消費税の仕入税額控除を受けるにはインボイスの保存等が必要である」が40.2%、「インボイス制度の実施にあたって経過措置期間が設けられている」が36.0%、「『2割特例』という特例措置がある」が23.9%、「どれも分からない/あてはまるものはない」が28.7%だった。

「インボイス制度および消費税申告に関する制度等のうち、あなたが内容を理解しているものをお選びください」