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福岡市が「スタートアップの高みを目指す」――創業から成長まで一貫した支援を開始

インキュベーション施設「Fukuoka Growth Next」もリニューアル、入居者を募集

「Fukuoka Growth Next(フクオカ・グロース・ネクスト:FGN)」

 福岡市の旧大名小学校を活用した官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(フクオカ・グロース・ネクスト:FGN)」は、2024年春に施設とスタートアップ支援のリニューアルを実施すると発表した。これに伴い、FGNに入居するスタートアップ企業の募集を2023年12月4日から開始した。

 福岡市は、創業のハードルを低くするために、情報提供や相談、交流機能、創業手続きに関するワンストップ機能、人材のマッチング、雇用に関する相談支援機能を担う「スタートアップカフェ」を運営してきた。また、資金調達や人材育成などの支援を行うFGNなどを通じてスタートアップ企業を支援している。

 このようなスタートアップ支援を「スタートアップ都市ふくおか宣言」に基づき発展。スタートアップカフェとFGNの運営を統合し、創業だけではなく成長も一貫して支援することで、スタートアップ都市としての評価を確固たるものとすることを目指す。

 FGNは、福岡市のほかに、さくらインターネット株式会社、GMOペパボ株式会社、福岡地所株式会社が運営に携わってきた。2024年度からは、新たにフォースタートアップス株式会社が加わる。

 2024年度から始まる新たな施策として、1)FGN入居・卒業企業に限らず、福岡のスタートアップへ支援を拡大、2)スタートアップカフェとFGNの運営を一体化し、創業から成長までを一貫して支援、3)大学発スタートアップの支援を強化、4)スタートアップのバックオフィス業務をサポートし、スタートアップの成長を促進、5)イベントスペースをリニューアル――の5点が挙げられる。

 FGNのスタートアップ支援は現在、入居している企業または入居していた企業を対象にしていたが、これを福岡市内に拠点を持つ企業に拡大。コミュニティ化してスタートアップや支援者のつながりを作る。

 スタートアップカフェは、これまで創業の相談窓口として機能していたが、これを拡充。それぞれの事業領域やコーポレート機能、資金調達の専門家を迎え、スタートアップ企業を継続的にサポートする。

 さらにFGNでは、バックオフィスをサポートする。経理・人事・労務・総務などのバックオフィス業務を担うことで、スタートアップ企業は事業に集中できる。

 FGN内のイベントスペースは、収容人数を2倍に拡大し、150人が参加できるようになる。オンライン配信を想定した映像や音響設備も用意される。

FGN第3期 イベントスペース・スタートアップカフェリニューアル パース(パースは計画であり、変更となる可能性がある)

「高みを目指す」ための施策とは? 福岡市・高島宗一郎市長らが説明

 このようなリニューアルについて12月4日に開催された記者発表会では、FGNの運営に参加する福岡市と4社の代表者が登壇し、それぞれが手掛けるサポートなどを説明した。

福岡市長の高島宗一郎氏
福岡地所株式会社 代表取締役社長の榎本一郎氏
フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長の志水雄一郎氏
さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中邦裕氏
GMOペパボ株式会社 執行役員・福岡支社長の永椎広典氏

 主催者あいさつとして、福岡市長の高島宗一郎氏が登壇。FGNのスタートアップ企業は、これまでに85社が365億円を調達したという実績を示した。「地方であってもスタートアップに資金が集まるようになってきた」としている。

 FGNの特徴として挙げられるのは、スタートアップから成長期まで相談できる体制が整っていたり、入居者同士がマッチングできたりすること。「創業から成長までを一貫して支援をしていく」という体制だ。

 今回、サポートの範囲を福岡市に拠点を持つ企業に広げることで、「入居企業だけではなく、卒業した市内の企業も含めて、FGNがこれまで築いてきたネットワークを生かした新たな支援メニューを提供することで、より高みのあるスタートアップを目指していきたい」としている。

 福岡地所代表取締役社長の榎本一郎氏は、「FGN第3期施策概要説明」として今後の展開を説明した。

 今回のFGNのリニューアルは、スタートアップ企業の売上や、上場した際の時価総額を上げるという「高みを目指す」をテーマにしている。榎本氏は、「時価総額100億円のスタートアップを10社育てる」ことを通過点に、「500億円の時価総額のスタートアップ企業が5社生まれる状態に5年で持っていきたい」という。

 このようにスタートアップ企業が成長するために福岡地所は、「国内外屈指のベンチャーキャピタルを引き合わせたい」としている。

 また、これまでのスタートアップはITに関する企業が多かったが、新たに「ディープテック分野」への投資も積極的に行っていく。

2024年度以降の「Fukuoka Growth Next」が目指す姿

 2024年度から新たに加わるフォースタートアップスは、200人体制でスタートアップ事業を支援する企業だ。同社代表取締役社長の志水雄一郎氏は、FGNとの関わりを説明。フォースタートアップスは、FGNに参加しサポートしたスタートアップ企業が「福岡から日本を代表する会社、そして世界を代表する会社になっていく」ことを目標としている。

 これまでは複数の企業が集まり同じ内容の「集合型研修」を行ってきたが、企業ごとに必要な研修は異なる。そのため、これからは「1つ1つの会社に合わせた支援メニューをサポートする」という体制に変えていく。

「Fukuoka Growth Network」の構築

 さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏は、FGNが築き上げてきた裾野の広さを生かして、高みを目指すとしている。

 「スタートアップの裾野が広がることと、頂点を引き上げることを同時に行わなければならない。単に高みだけを目指すだけでは到達ができない」という。裾野の1つとしては、大学の研究で将来的に実用化につながる見込みがある「研究シーズ」も挙げている。

大学シーズ発スタートアップ支援

 GMOペパボ執行役員・福岡支社長の永椎広典氏は、バックオフィスサポートとスタートアップカフェについて説明した。

 永椎氏は、「創業時期はバックオフィスの人材を配置するのが難しい。社長がこのような業務を行うという実態ある」としている。そのため、FGNがスタートアップ企業のバックオフィスを請け負うことで、事業に専念できるとしている。

 FGNは、スタートアップカフェの運営にも関わる。「スタートアップカフェでは、800社以上の企業に貢献してきた。スタートアップ都市として効果が評価される大きな実績だ」としている。

 これまでスタートアップカフェは、創業相談窓口として運営されていた。今後は、FGNと運営を一体化することで、創業の相談だけではなく、資金調達など創業後のサポートの場として展開する。

バックオフィスの負担を軽減し、高みを目指す環境を提供

「Fukuoka Growth Next」の様子