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「学生が就活に生成AIを利用」――採用する側の企業はどう考えている? ベネッセi-キャリアの調査結果

4人に1人が利用経験、「志望動機の作成」「自己PRの作成」「面接練習」などに活用

株式会社ベネッセi-キャリアの岡本信也氏(dodaキャンパス事業本部 本部長 dodaキャンパス編集長)

 「就職活動・人材サービス業界におけるChatGPT活用実態 ~就職活動、人材サービスと生成AIの親和性を探る~」と題した報道関係者向けのオンライン勉強会を、パーソルホールディングス株式会社が1月24日に開催。学生の就職活動における生成AIの活用実態や、企業の新卒採用における生成AIの活用実態、学生が就職活動で生成AIを活用することに対する企業の考えなどについて調査結果が報告された。

 勉強会ではまず、株式会社ベネッセi-キャリアの岡本信也氏(dodaキャンパス事業本部 本部長 dodaキャンパス編集長)による「2023年新卒市場振り返りと2024年のトピックス」として、一般的な新卒採用の傾向の説明があった。

 ベネッセi-キャリアは、ベネッセホールディングスとパーソルキャリアの合弁会社で、新卒求人サイト「dodaキャンパス」、書類選考や面接対策を受けられる「doda新卒エージェント」をはじめ、社会で活躍するために大切な問題解決力を測るテスト「GPS-Academic」、英語の検定「GTEC」、20万点を超えるUdemyのコンテンツから厳選された約9500の講座が受けられるeラーニング「Udemy Business」などを提供している。

 株式会社ディスコの「新卒採用に関する企業調査(2023年10月調査)」によると、「エントリーシートの受付開始時期」が大学3年の10月以前という企業は、2024年卒学生では5.3%だったが、2025年卒学生では15.4%に増えている。その分、大学3年の3月から受付開始する企業は、2024年卒学生で47.9%だったのが、2025年卒学生では30.6%に減少している。

エントリーシート受付開始時期(出典:株式会社ディスコ「新卒採用に関する企業調査(2023年10月調査)」)

 「マイナビ 2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(中間総括)」によると、インターンシップの参加者は増えている。「インターンシップ・仕事体験参加に参加経験がある学生」が2021年卒学生で84.9%だったのが、2022年卒学生で79.8%へと下がったものの、その後は2023年卒学生で83.6%、2024年卒学生で87.6%、2025年卒学生で89.5%と上昇傾向だ。

インターンシップ・仕事体験参加に参加経験がある学生(出典:「マイナビ 2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(中間総括)」)

 インターンシップは、入社する企業や業界に結び付く。就職みらい研究所の「就職白書2023 就職活動・採用活動の振り返りと今後の見通し」によると、「インターンシップ等参加企業に入社予定」と「インターンシップ等参加企業と同業種の企業に入社予定」の合計が、2013年卒学生では37.0%だったが、2021年卒学生では64.8%、2022年卒学生では65.0%、2023年卒学生では69.3%と、年を追うごとに増えている

インターンシップ、仕事体験参加企業への入社予定(出典:就職みらい研究所「就職白書2023 就職活動・採用活動の振り返りと今後の見通し」)

 こうした統計を踏まえ、岡本氏は「夏のインターンシップは、早い企業だと(3年生の)5月や6月から始める。このタイミングで学生はある程度、志望する企業を絞る必要がある」としている。

就活での生成AI利用経験者は26.5%、「自分では思いつかない気づきが得られた」などのメリット

 就職活動において、生成AIはどれほど利用さているのか? 「dodaキャンパス」が学生向けに行なった「就活でのChatGPT活用実態調査」(2023年7月)の結果を挙げて説明した。

 「就職活動でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したことがあるか」(単一回答、n=452)と質問したところ、「はい」が26.5%、「いいえ」が73.5%だった。

 「就活のどのような場面でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したか」(複数回答、n=121)については、「企業の志望動機の作成」が63.6%、「自己PRの作成」が62.8%、「面接練習」が24.0%、「添削」が2.5%、「その他」が14.9%だった。

「就職活動でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したことがあるか」
「就活のどのような場面でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したか」

 「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用した理由」(複数回答、n=120)としては、「時間短縮のため(企業分析やES作成などの作業時間)」が60.0%、「時間短縮のため(今後のキャリアや自己分析などの思考整理)」が45.8%、「話題になっているため/興味本位で」が43.3%、「周りの人におすすめされたため」が4.2%、「その他」が21.7%だった。

「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用した理由」

 「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したメリット」(複数回答、n=120)は、「自分では思いつかない気づきが得られた」が77.5%、「時間短縮できた(企業分析やES作成などの作業時間)」が61.7%、「時間短縮できた(今後のキャリアや自己分析などの思考整理)」が40.8%、「就職活動の効率が上がった」が31.7%、「より多くの企業にエントリーできた」が9.2%、「メリットはなかった」が3.3%。「その他」が8.3%だった。

 一方、「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したデメリット」(単一回答、n=118)は、「デメリットはなかった」が65.3%、「期待した気づきが得られなかった」が10.2%、「使いこなせなかった」が8.5%、「生成AIを使うことで、むしろ時間がかかった」が2.5%、「その他」が13.6%だった。

「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したメリット」と「就活でChatGPTなどの生成AIサービスを利用したデメリット」

 「就活にChatGPTを活用しない理由」(単一回答、n=143)は、「就活は極力自分の力でやりたい」が29.4%、「利用の必要性を感じない、利用するという考えや発想がなかった」が12.6%、「理解できていない、利用の機会がない」が12.6%、「恐怖感や不安感(面接時に自分の言葉で話せない、企業側に利用を知られることによるリスクなど)」が11.9%、「信ぴょう性・信頼性に対する不安や、利用のリスク」が8.4%、「不信感、嫌悪感、抵抗感」が7.7%、「就活を終えている、本格的に始めていない」が7.0%、「精度が悪い、内容が当たり障りない」が4.9%――などと続いている。

「就活にChatGPTを活用しない理由」

 調査結果について岡本氏は、生成AIは「時間短縮とエントリーシートの作成」のために利用されているとしている。

 就職活動の早期化により、自己PRや志望動機を作成する時間が短くなり、時間が短縮できる生成AIを利用している。さらに、早い人は2年生から3年生に上がる時期に就職活動を始める。これは、大学に入学してから2年しか経っていない時期だ。

 そのため、自己PRや志望動機を書くために必要な「自分の“ガクチカ”(学生の間に力を入れたこと)と呼ばれるものが見つけられない」としている。重ねて「コロナ禍の学生はアルバイト、ボランティア、課外活動、校内活動ができなかった」ということもガクチカが少ないことの理由として挙げている。

 これらのことから岡本氏は、生成AIについて「このようなところでの利用が非常に多かったのではないかと思う」としている。

就活における生成AIの活用、「必要に応じて利用しても問題ない」と考える企業が64.2%

 次に、採用側の状況として、「doda新卒エージェント」と「dodaキャンパス」による「企業の新卒採用における生成AI利用実態調査」(2024年1月)の結果が報告された。

 「新卒採用に関する業務において、貴社では生成AI(ChatGPT等)を利用しているか」(n=176)との質問に対して、「はい」が11.4%、「いいえ」が88.6%だった。

「新卒採用に関する業務において、貴社では生成AI(ChatGPT等)を利用しているか」

 「学生が生成AI(ChatGPT等)を利用することに対する企業としての考え」(単一回答、n=176)は、「積極的に利用するべき」が6.3%、「必要に応じて利用しても問題ない」が64.2%、「利用するべきではない」が10.8%、「わからない」が16.5%、「その他」が2.3%となっている。

「学生が生成AI(ChatGPT等)を利用することに対する企業としての考え」

 「企業として、学生は就活のどのような場面で生成AI(ChatGPT等)を利用するのが望ましいと考えるか」(複数回答、n=378)では、「企業・職種研究」が26.2%、「企業分析」が22.5%、「今後のキャリアや自己分析などの思考整理」が17.5%、「企業とのコミュニケーション(メール文面の作成など)」が12.4%、「自己PRの作成」が11.6%、「志望動機の作成」が8.7%――と続いている。

「企業として、学生は就活のどのような場面で生成AI(ChatGPT等)を利用するのが望ましいと考えるか」

 「企業として学生が就活に生成AI(ChatGPT等)を利用すべきでないと考える理由」(複数回答可、n=73)としては、「生成AI(ChatGPT等)等に頼らず選考に臨んでほしいと考えるため」が52.1%、「生成AI(ChatGPT等)は信憑性・信頼性などの観点でリスクがあるため」が28.8%、「会社として生成AI(ChatGPT等)の利用を禁止しているため」が2.7%、「その他」が16.4%だった。

「企業として学生が就活に生成AI(ChatGPT等)を利用すべきでないと考える理由」

 これを踏まえて岡本氏は、学生を採用する企業側の考え方として、生成AIの利用は「自己PRの作成や志望動機の作成は自分の言葉でしっかりと考えながら、業界研究や職種研究のような膨大な量の情報を整理していくところには活用していくのがいいのではないか」としている。