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番外編 現役大学生のデジタル事情9

就活の第一歩「自己分析」をChatGPTで~パッとしないと思っていた経験から、“強み”をアピールできる言葉を見つける

 7月21日公開の記事「就活でChatGPTなどの利用経験があるユーザー、大学3~4年生の約25%にも上ることが判明」によると、大学3~4年生の4人に1人が、就職活動においてChatGPTなどの生成AIサービスを利用した経験があるとのこと(ベネッセ i-キャリアの調査による)でした。

 話題の生成AIを利用していること自体は意外ではないかもしれませんが、特に興味深かったのが、利用のメリットとして、77.5%が「自分では思いつかない気づきが得られた」と回答している点です。INTERNET Watch編集部にインターンとして参加している私も就活生(2025年卒業予定)ですが、これまで就活に生成AIを使ったことはありませんでした。しかし、「自分では思いつかない気づき」というコメントが気になり、今回、ChatGPTを使ってみることにしました。

就活の第一歩であり大きなハードル「自己分析」

 就職活動において、はじめの第一歩に位置づけられるのが「自己分析」です。自分の興味や適性に合った業種や職種を探す出発点になるだけでなく、実際にエントリーシートに書いたり面接で話したりする自己アピールも、自己分析をもとに考えるため、自己分析をしなければ就活が始められないとも言えます。

 しかし、この第一歩が就活生にとって大きなハードルでもあります。自分自身のことを「分析」すること自体が難しいことですし、さらにそれを言語化し、自己アピールとしてまとめようとしても、なかなかいいと思える言葉が出てきません。

 ネットや本で自己分析の方法やエントリーシートの書き方を調べると、例として紹介されている内容のほとんどは、学園祭の実行委員長を務めたとか、運動部で優秀な成績を残したといったような、分かりやすいアピールポイントがあるものばかりです。確かに、そんな経験や実績があれば、素直にそのことをまとめるだけで話は済むでしょう。

 でも私には、そうしたアピールポイントがそもそも思い浮かびません。同じように悩んでいる友達に相談するのも気が引けるし、先生に相談しようにも、正直なところ、どんな質問をしたらいいのかも分かりません――。そんな中で、今回はChatGPT(無料版)を使って、等身大の自分の経験から、自分の「強み」として話せることや、自分の適正を見つけられたらと思います。

 さらに、自己分析だけでなく、自己アピールのための言葉も見つけたいと考えています。とはいえ、あらためて「いい自己アピールとは?」と考えてみると、イメージがぼんやりとしていることに気づきました。ネットや本でも「自分の強みを伝えましょう」といった漠然とした内容が多く、具体的にはどのような言葉がいいのか、というイメージがつかめません。

 今回は、インプレスでインターンの面接を担当している上司からアドバイスをもらい、「いい自己アピールの条件」として、次の3点を挙げてもらいました。

  • 具体的である:「リーダーシップがある」「実行力がある」といった言葉だけで納得する人事担当はいない。ある程度具体的なエピソードに基づいて、説得力のあるかたちでアピールする必要がある。
  • 立体的に捉える:長所は短所にもなりうる。「リーダーシップがある」は「強引である」かもしれないし、「実行力がある」は「向こう見ずである」かもしれない。裏表両面があることの自覚がないと、危ういアピールになってしまうおそれがある。
  • 働いているイメージにつながる:目指す職業についたときのイメージにつながるエピソードになっているとベター。記者・編集者を目指す人なら、「書く」ことに関係しているとか、企画力や人との折衝力を感じさせるものとか。

 このことを参考にしながら、自己アピールのための言葉を探したいと思います。

「自己分析を手伝って」で返ってきたのは一般論

 まずは、ChatGPTに向けて、自己分析に苦戦している状況をそのまま伝え、協力を求めてみます。すると、「自己分析の一般的なステップ」について、「自己評価の準備」「SWOT分析」「過去の経験の振り返り」などなど、8つの方法を挙げ、それらの目的や内容を1つずつ丁寧に説明してくれました。

 しかし、これらはネットや本ですでに読んだことがあります。一般論でなく自分のための自己分析を行うには、もっと突っ込んだ質問が必要なのでしょう。

「自己分析を手伝ってくれませんか?」と聞いたら、「自己分析の一般的なステップ」として8つの方法を挙げてくれた

自分ではパッとしないと思った経験から、驚くほどに言葉が返ってきた!

 どのような質問をしたらいいかと考えて、上司が挙げていた「いい自己アピールの条件」の中に、「具体的なエピソードに基づいていること」とあることを思い出しました。私の具体的なエピソードをChatGPTに話して、そこから自己分析を手伝ってもらおうと思います。

 エピソードとして部活動のことを挙げる人は多いと思いますが、私は中・高・大とずっと文化部の副部長でした。重要な役職のように見えるかもしれませんが、部長や会計のように明確な役割を持つわけではなく、実際「何をしていたの?」と聞かれると、ちょっと困ってしまいます。

 自分としては、正直に言ってパッとしない立ち位置だと思っていて、ここからどんなことがアピールできるんだろう……と、想像がつきません。半信半疑の気持ちながら、まずは試してみよう、ということで、ChatGPTに副部長をしていたことを伝えました。

 すると、思いのほか長い答えが返ってきて、驚きました。

「吹奏楽部」と「副部長」というキーワードから話が広がりました

 「吹奏楽部の副部長」というだけの情報をもとに、「リーダーシップと責任感」「協力とコミュニケーション」「問題解決と柔軟性」「継続的な努力と成果」「チームプレイヤー」と5つのキーワードを挙げ、それぞれについて説明もしてくれました。

 この回答を読んでいると、あまり自信の持てなかった「副部長」の経歴も、たしかに「強み」として表現できるのか、と新たな発見が得られました。

 実際の私は「リーダーシップと責任感」があったかと言われるとちょっと自信がありませんが、「協力とコミュニケーション」や「問題解決と柔軟性」については、確かに当てはまると言えるかなと思えます。

 例えば、定例の演奏会に向けての話し合いでは、部長のようにリーダーシップを持って皆をまとめたことはなくても、意見が出ないときに率先して発言したり、意見が分かれたときは、皆が納得できるような折衷案を考えるようにしたりしていました。特別に誇れるようなことではないと思っていましたが、そんな経験をChatGPTに投げかけたら、さらに深掘りしてくれるかもしれません。

 そこで、「演奏会の運営についての話し合いなどで意見が分かれたときは、折衷案を考え提案していた」と送ってみました。すると、ChatGPTはまたいくつかのキーワードを挙げてくれました。

「折衷案を提案していた」ということから、自己アピールのポイントになるキーワードを挙げてくれました

 挙げられたキーワードは「問題の整理」「聴取と尊重」「共通の目標の再確認」「アイデアの結合と創造性」「説得力ある提案」「協力の奨励」の6点。読んでいくと、確かに自分の実際の経験と重ねて考えることができ、これをもとに、自己アピールの文章のイメージができていきました。

 そして、ChatGPTが挙げてくれた6点に沿って、自分の体験をまとめた文章として実際にできあがったのが、次の内容です。自分の「強み」としてアピールするには物足りないのでは……と自信を持てなかった副部長としての経験から、「話し合いで折衷案を出した」というエピソードを引き出すことができました。

 コロナ禍において、対面の演奏会を開きたいという部員と、対面の演奏会の開催にはまだリスクがあると考える部員がいました。そこで私は部員にそれぞれ理由を聞きました。

 その中で、対面の練習が怖いと考えている部員や、演奏会を開催するなら全員が参加しないと意味がないと考えている部員など、さまざまな意見があることが分かりました。しかし、対面でもリモートでも部として何か合奏し、披露することが大事という目標はどんな意見を持つ部員にも共通していました。

 そこで私は、対面希望者が対面で合奏する曲と、リモート希望者を含む部員全員参加のリモート合奏の録音や動画を流す曲の2種類を用意し、演奏会のプログラムに組み込むという折衷案を提案しました。そして実現するには本番の会場でリモート合奏の録音と映像を流すための機材の準備、ガレージバンドというアプリを使った録音、部員たちの録音や映像を編集する作業が必要になることも伝えました。

 そこで、顧問やコーチを交えてそれらを実現することは可能か確認した上で、もう一度部員に提案したところ、みんな賛成し、協力してくれました。

 上に書いたように、コロナ禍に演奏会をすることになった高校の吹奏楽部では、対面で演奏したい部員と対面では怖いと考える部員との意見を聞き、リモート合奏をしたことがありました。このような経験は、「強み」をアピールしようと考えながら書いていると、コロナ禍の状況を逆手に取った新しい試みだったとも言え、志望企業の方にも興味を持ってもらえるのではないかな、と、少し自信を持てるようになってきました。

出来上がった文章に、今度は「企業の採用担当者」視点から意見をもらう

 ChatGPTとの会話の中で出来上がった文章を、ChatGPTに読んでもらって、さらに深掘りしてみたいと思います。上記の体験をまとめた文章に、続けて「これについて企業の採用者として質問・指摘してくれませんか?」とChatGPTに聞きました。

 すると、採用担当者が興味を持つ可能性がある側面として、5つのポイントを挙げてくれました。

自分の体験に対して、企業の採用担当の方の質問として想定される内容が挙げられました

 ポイントを読んでいくと、補足した方がいい内容や、面接の際に聞かれそうな内容が見えてきました。例えば、「提案した折衷案を実現するために必要だった準備や作業について、どのように計画を立て、進行を指導しましたか?」といった質問は、この試みに興味を持ってもらえたら面接などでも実際に聞かれそうです。実施内容を具体的に説明したり、そのときに感じたこと、参加したメンバーの感想から感じた意義などを話せるようにしておくのがいいと思いました。

 「この経験が将来の職場環境でどのように役立つと考えていますか?」といった質問も、冒頭に紹介した上司が考える「いい自己アピールの条件」にも共通するところがあり、本当の面接などでも聞かれそうなので、答えを考えておくのがよさそうです。自分の中で、面接のイメージが一気に具体的になってきました。

自分の経験をどう仕事に生かせるか? も聞いてみる

 冒頭に紹介した「いい自己アピールの条件」、そしてChatGPT扮する採用担当者からの指摘をもとに、「強み」が実際の業務にどのように役に立つのかという視点から、さらに自己分析を深めていきたいと思います。ということで、ChatGPTに「この経験を将来の仕事にどのように生かせるでしょうか」と聞いてみます。すると、5つのアドバイスが挙げられました。

以上の経験がどのように仕事に生かせるかを聞いてみると、アドバイスが返ってきました

 「折衷案の提案」からイメージされる「問題解決力の向上」や「柔軟性と適応力の強化」だけでなく、それを実現する際の行動ににつながる「プロジェクトマネジメントの視点」は、自分では考えていなかった新たな発見でした。これらの5点をまとめることで、単にエピソードを語るだけでなく、そこからさらに自分の「強み」として、どのように実際の仕事に生かせるかをアピールできそうです。

経験談から読み取れる「短所」も、ChatGPTに指摘してもらう

 さて、冒頭で紹介した「いい自己アピールの条件」には「具体性がある」「働いているイメージにつながる」のほかに、「立体的に捉える」という項目がありました。例えば「自分はリーダーシップがあります」とアピールしても、客観的には「強引に引っ張っている」ように捉えられてしまうかもしれません。自分の特性をポジティブ/ネガティブの両面から見ることで、ひとりよがりなアピールになってしまうことを避けられると思います。

 今回のエピソードの内容で言えば、私が使った「折衷案」という言葉は、「衝突を避けた消極的な案」というネガティブな捉え方もできると思います。そこで、「このエピソードからどんな弱みが読み取れますか」と聞いてみると、3点の指摘がありました。

立体的に捉えるため、エピソードから読み取れる弱みについても指摘してもらいました

 ChatGPTは、このエピソードから読み取れる潜在的な弱みとして「自己確信の不足」「独立した決定の避け方」「リーダーシップの独立性(のなさ)」を指摘してくれました。ほかの部員の意見を尊重し、顧問やコーチの意見も聞きながら「折衷案」を提案した、ということは「コミュニケーション能力」や「適応力」という長所としてアピールすることもできれば、一方で「自分の意見がない」「自己主張がない」といった短所としても捉えることができてしまうという指摘は、確かに納得できます。

 しかし、この回答では、最初に想定していた「折衷案」についてのデメリットは指摘されませんでした。そこで、再度「『折衷案』を提案することは本当に正しかったのかを疑う立場から指摘してください」と聞いてみると、折衷案に関して、疑問を持つ立場からの意見が挙げられました。

「折衷案」への疑問として、5点指摘されました

 ChatGPTは、それぞれの意見を妥協させてしまう可能性や、本来の目標が希釈されてしまう可能性から「折衷案」の持つデメリットを指摘してくれました。

 今回のエピソードで言えば、全員参加のリモート演奏曲をプログラムに用意したものの、対面での演奏にも参加する部員と、対面には参加しない部員に分けてしまったことが、部の結束を強めるという演奏会の目標からそれてしまった面があるかもしれません。また、ある面で皆を妥協させてしまった可能性があることも否めません。しかし、このような問題点が考えられることを自覚した上で、その反省点も含めた自分の経験として、将来に生かせることをアピールできるのではないでしょうか。

 今回は「折衷案」という言葉が含んでしまうマイナスの印象について意識していたため、ピンポイントに深く質問してみましたが、最初の「このエピソードからどんな弱みが読み取れますか」という漠然とした質問でChatGPTから得られた回答は、思ったほど踏み込んだ内容ではありませんでした。

 ChatGPTから得られた新しい気づきはたくさんありましたが、当然のことながら、ChatGPTは決して万能のコンサルタントや相談相手ではありません。当たり前といえば当たり前のことではありますが、自分が自覚していないところに問題があっても、ChatGPTとの対話だけでは、気付けない可能性があることに留意しておく必要がありそうです。

気兼ねなく頼めて、何度でも丁寧に付き合ってくれる貴重な相談相手

 ここまで、ChatGPTとの対話を通じて、就職活動に向けた自己分析を行いました。冒頭にも述べたように、自分の適性や、選考でのアピールポイントを考える上で、自己分析は非常に重要ですが、自分なんかにアピールできるような「強み」なんてあるはずないと、自信をなくし、卑屈になってしまうこともあります。

 しかし、自分ではたいしたことないと思ってしまうような些細な事柄でも、ChatGPTに投げかけてみたら、さまざまなアイデアを返してもらえました。特に私が注目したいのは、その「量」です。どんなに短い文章を送っても、ChatGPTはそのキーワードから連想されるアイデアを、とにかくたくさん挙げてくれました。

 さらに、自分のエピソードに対して「企業の採用担当者として」「将来の仕事にどのように生かせるか」「疑う立場から」など、さまざまな視点からの指摘をもらいました。こんなに何度も相談し、さらに、さまざまな立場からの助言まで頼むとなると、友達など身近な相手には、付き合わせてしまって申し訳ない気持ちになりそうです。その点、いくらでも相手してくれて、予想以上の情報量で返答してくれるChatGPTは、有り難い相談相手と言えると思いました。

 自分だけではなかなか持ちにくい視点からのコメントを参考にすることで、「いい自己アピールの条件(具体的である・立体的に捉える・働いているイメージにつながる)」を満たした文章を、自信を持って仕上げられそうです。

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